人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
貴様の王の在り方を。――この⬛⬛⬛⬛⬛⬛の疾走を――
かつての王命、この胸に――
降り注ぐ
落石、風、光線の嵐
「貴様は私など覚えてすらいないだろう――」
仕掛けられる
地の理、地形の歪み、天候の理、
「だが、私は片時も忘れたことなどない――」
仕掛けられる、無数の罠
「貴様に挑みし王の背中を――」
仕掛けられる――
「そして、輝ける貴様の姿を――!」
気迫と、男の意地――!!
「英雄王、ギルガメッシュ――!!」
「――」
――知略に長けた英雄、それは解っていたつもりだったが、予想以上だ・・・!
振るわれる手段すべてが効果的、振るわれる手段すべてがこちらを徹底的に阻害する十重二十重に張られる罠に通ずる罠
罠を一つ避けた先にまた罠があり、攻勢に転じようとすればそれを阻害する罠が張られている
体勢を立て直さんとすれば罠があり、それを払おうとすれば罠がある――
人間離れした鑑識眼、すべてを把握し仕掛けられる綿密な罠と計算、
そして、それら総てを油断なく行う、目の前の男――!!
――強敵だ!紛れもない――!
「ほう、この最大級の計略と警戒、確かに我という王の威光と脅威を心得た対応だ。貴様は確かに我を知っているな」
「知っているとも。貴様はある意味で私のもう1つの目標、その頂点だ。忘れられる筈もない――忘れられるものか、その姿を!」
財を選別――しようとする瞬間に大地が揺らぎ割れる。
飛び退く先に落石が降り注ぐ。迎撃しようとするのを阻みビームが飛んでくる
結局行えるのは、自分への防御のみ――!完全にあちらのペースだ・・・!全てを見通す英雄王ならともかく、一山いくらの凡魂では分が悪い――!
「ならば我の威光も知っていよう。このような稚拙な罠をいくら仕掛けた所で、我の命に届くなど望むべくもないとな」
財を――選別するより早くまたビームと落石に阻まれる
っっ~~~!思い通りにならないというのはこれ程までにやりにくいものなのか・・・!
「あぁ、承知している。本来ならば私は、貴様の前に立つ資格すらない。私という存在は、英雄となる偉業や功績など何も残してはいないからだ」
パチンと指を鳴らす、大地が崩れ、更に移動が制限される
「だが――何の因果か宿業か、私はとある軍師の依代として現代ならぬ此処へと召喚された」
ビームと落石が此方を打ち据える。それを防ぐ内に、新たな罠が張り巡らされる
「私はどうなったのか?未来はどうなったのか?ここにいる私は正しいのか?益のない回答に途方にくれていた矢先に――貴様を察知した」
こちらの反撃を許さぬ、転身すら許さぬ罠の暴力。自らは動かず敵を滅する軍師の御業――
「瞬間、総てが抜け落ちた。そして――胸が、高鳴った。」
「――」
「心が躍った。紛れもない英雄の頂点が此処に、紛れもない世界の果てが此処にあったのだから。この力は私のものでない。擬似サーヴァントが本来のサーヴァントに太刀打ちできはすまい。――王ならざる身で、最強の王に届くなど自惚れはすまい」
男が、たぎる魂を燃やす
「――知ったことか!目の前に果てがあるならば、己が身1つを持って相対し、この身を以て乗り越える!確率や勝算など関係ない。無理や道理などもどうでもいい。誰に何を言われようが意に介さん。無能でいい。無知愚昧、威を借る雑種大いに結構!」
一人の男が真っ直ぐに、頂点を睨む――!
「そんな屁理屈で、胸の高鳴りを抑えられるものか――!無能無謀大いに結構、王に真っ向勝負を挑んだ愚かな軍師としての謗り、甘んじよう」
「・・・」
「そのような些末事、総て捨て置き愚者(バカ)になろう――!!そうでなければ頂点なぞ望めまい!――常に頂きは遥か遠く。だがそれでいい。彼方にこそ栄えあり――届かぬからこそ挑むのだ!」
高まる魔力、高まる覚悟――来る!
「覇道を謳い、覇道を示した、――あの背中を私に魅せつけし王の様に――!!」
空中より飛来せし石柱、総てが周りに落石し建てられ輝き始める!
「刮目せよ、英雄王!これが我が意地、大軍師の究極陣地――!!」
かつての軍師が、敗走の折に造り上げたとされる巨岩の陣――迷いしものを死に至らしめる至高の陣地!
「『石兵八陣』――!!破ってみせるがいい――!!」
ギルガメッシュを完全に閉じ込め、永遠の迷路へと叩き落とす――!!
「――――」
静寂。そして、無音
「・・・・・・・・・」
固唾を飲み、構える男
完全に全てを振り絞った戦いだった。罠も、知略も有らん限りを振り絞った
英雄王を完全に封殺せし陣地だった。誘き寄せると決めた瞬間から、砦全てを英雄王を仕留める兵器に変えた
届いたのか?凡人の知略が、あの英雄王に?
征服王が挑み、駆け抜け、それでも届かなかったあの最強に――
僅でも、勇姿を記すことができたのか?
「――ライダー、私は・・・」
「――思い出したぞ。いつかの聖杯戦争の折、征服王に付き添っていた臣下がいたな」
吹き飛ぶ石兵八陣。木っ端微塵に消し飛ぶ陣地。紅く荒れ狂う暴風
「な――」
「ウェイバー・ベルベット。それが貴様の名であったな。随分と華奢に成長したものよ」
悠然と歩む英雄王。右手に握りしは黄金の乖離剣
「凡夫雑種の分際でよくぞここまで我を陥れた。その勤勉ぶり――我が裁定を忘れてはおらぬようだな」
「――まさか――馬鹿な。貴様が・・・私ごときに、ソレを抜く、だと――」
「あぁ、我の油断と慢心を当てにしていたならばすまなかったな。今の我には一欠片もソレはない。一々小賢しい迷路を抜けるのも面倒だったのでな。慣らしもかねて吹き飛ばしてやったわ」
――そう。自分は躊躇いなく乖離剣を選びとった
彼方と知り挑むその熱き生きざま
己の総てを駆け挑む、男の路
熱く胸を躍らせる――一人の旅路
それら総ては――この無銘の魂を震わすに充分であった
なんと熱い生きざまか
なんと目映い生き方か
熱い魂の血潮は――迷うことなく、王の至宝を以て対するべきだと確信したのだ
「我が頂点と言ったな。無論だとも。我は人類最古の英雄王。――その所以、その頂点の威光を見せてやろう」
左手で指を鳴らす
「!!!」
瞬間鎖にてウェイバーの身体が完全に絡め取られ、指1つ動かせぬ有り様に陥る
空中よりヴィマーナが現れ、火器と宝具の絨毯爆撃により罠の総てが一掃される
「凡俗がいくら息巻いた所で雑種は雑種。――貴様の王ですら届き得なかった高みだ。貴様には仰ぎ見る事すら不遜と知れ」
「――・・・・・・何日も何日も練り上げた秘策がこの様か。――貴方にとって、私の挑戦はどこまでも取るに足らない、と言うわけか・・・」
呟くその声音に、絶望は見られない
「これが英雄の頂点、どの山より高く、どこまでも続く世界の果て――・・・あぁ――ライダー、やっぱりお前はすごいや。――こんなデタラメな王に、真っ向勝負を挑んだんだから・・・――」
晴れやかに笑うウェイバーの表情は、自信と爽やかさに満ち充ちていた
「・・・・・・」
――勝負は決した。この場での自分の役割は終わった
意識を眠らせ、コントロールを王に委ねる
――ここから先、彼にかけるは紛れもない王の言葉だ
部外者の己は沈黙しよう。――無粋と狼藉で、王の言葉を汚すまい
「小僧。貴様があのライダーのマスターか?」
「違う。私は縁により彼を助けただけだ」
「そうか。貴様への王命を覚えているか?」
「忘れるはずはない。――私は生きろと命じられた」
「我に挑めば貴様は死ぬ。それを知り、我に挑んだのか?紛れもない不敬、王に背きし逆臣となるのは明白な筈だ」
「――違う。私は臣として、貴方に挑んだわけではない。私ごときが、敵討ちなど烏滸がましい」
「――ほう?」
「――今日、貴方に挑んだのは、軍師でもない。臣でもない」
「――」
「ただの――一人の。愚かな男だ」
「――そうか」
突き刺す。右手に唸りし乖離の剣で、確かに男の命を奪う
「――貴様はまだあの王の足元にも及ばぬ。貴様に許されるのはただ、頂を強く睨むことだけだ」
「――解っているとも。だが」
「よい。届かぬからと逃げることこそ真の不敬、かの王の王道に唾を吐く、背信であろう」
「・・・――」
「誇るがいい。忠臣、ウェイバー・ベルベットよ。貴様はその在り方で、貴様の王の王道を、我に魅せつけたのだ」
「――英雄王――」
「胸を張り、凱旋し、征服王に鬨の1つも聞かせてやれ。――此度の蛮勇、見事であった」
「――――!!!」
「これからも、幾度となりとも挑むがよい。我は君臨し続ける。我はけして――貴様の挑戦を拒むことはない」
「――そうか。あぁ、そうか――・・・アイツが挑みたくなるのも道理だ。当たり前だ」
「・・・」
「・・・――こんなに偉大な頂点なら。こんなに眩しい輝きなら。あいつが挑み、征服したくなるのは当たり前じゃないか・・・」
役目を終え、ウェイバーは退出する
「――励めよ、ウェイバー・ベルベット。・・・努、覇王の臣たるその在り方を損なうな」
――熱い、胸の高鳴りを。無銘に残して――
果ての潮騒、どこまでも遠く
果てのソラには、星が輝く――