『ゲーティアの指輪』
──・・・思えば、この特異点はあなたと初めて会った場所でしたね。ゲーティア。あの時には、あなたにこの世の総ての嘆きと哀しみを見せられ、そして無価値といった貴方の言葉に怒りを懐いた・・・。
(今なら解ります。あなたたちは、ただ肯定してほしかった。自身達の偉業を信じながらも、誰かに、自身以外の誰かに『よし』と言ってほしかった。だから・・・全能でありながら、無銘のワタシを求めた。レメゲトン、新たな同胞として)
──あなたたちに示した命題を、ワタシ達はこれからも掲げて行きます。総ての未来と世界を尊び、重んじ、理不尽な終わりをもたらす総てと戦う。だから、安心して見ていてください。そして・・・
エア「──ワタシに、魔神達の祝福を込めた名前をありがとう。レメゲトン・・・その名前を、ワタシはずっと手放しません」
ロマン「その指環に誓って、かな?」
「はい。ゲーティアへのかん、しゃ・・・ふぁ!?」
ロマン「お、驚かせてすまない。ギルに頼んで、君との時間を取りたかったんだ。ボクよりずっと、魔神達と心を通わせた君と、話をしたくて」
「ロマン、さん・・・。──はい。ワタシに、話せることならなんなりと」
「ありがとう。君に教えてほしい。三千年もの間、死を克服する命題に挑み続けた彼等の総てが、終わりを受け入れた。──彼等に、どんな言葉と答えをもたらしたのかを──」
第四特異点。ロンドン・・・近代発展と産業革命が巻き起こった人類史においてとても重要な意味を持つターニングポイント。そして、ブリテンの反逆の騎士と駆け抜けし特異点。アーサー王の地を荒らして良いのは自分だけ。そんな歪んだ自負と共に、リッカ達の剣となり戦った第四の地。此処にもまた、平凡な在り方は一つも無い。
「がんばれ、もーさん。ふらんはもう、かどうが、だるい」
「頑張れじゃねー!オメーも頑張んだよ!ったくクッソ、なんでトレイターのオレがガキと一緒に飾り付けしてんだ?まぁ楽しいからいいけどよ・・・」
「モード、楽しい?わたしたちも楽しいよ!」
「御茶会は準備から楽しいものよ。流した汗を砂糖に変えて、甘い一時を楽しむの!素敵だわ!」
「そういう訳だ。子供の分まで何倍も働け。騎士は聖剣を振り回すだけが能で無いところを見せてみろ。最近のジャンルではそういうギャップが大いに受ける!そら、働け働け!」
「おい最後のショタジジィはふざけんなよお前!ペンより重いもの持てねぇとか抜かしたらぶっ飛ばすからな!」
「まぁまぁ、この謎のヒーローXも手伝うから穏便に・・・」
モードレッドだけではない。アリス、ジャック、アンデルセン、ジキル、シェイクスピア、玉藻、パラケルスス、そしてヒーローXとヒロインXとで騒がしく駆け抜けた特異点でもある。魔神柱との戦い、そしてその偉大なる大本を騙っていたゲーティアとの戦い。大きく展開を区切らせた、極めて重要な場所であるからこそ、皆は決して忘れない。此処は本当に、あらゆる面でターニングポイントだったのだから。
「やはり時代はワンオフ、交流イルミネーション!安心したまえモードレッド卿、このニコラ=テスラにかかれば眩しき雷神がごとき輝きがたちまち満ち溢れよう!」
「人手にはホムンクルスを受注しましょう。こういった作業はやはり、ゴーレムとホムンクルスが得手ですから」
『計算の是非は任せてほしい。完璧な受注と言うものを魅せよう』
「あーあー好きにやってくれ。・・・?あの金ぴかとリッカは何処行った?」
「あぁ・・・『親子水入らず』、ですよ」
そー言うことかよ。モードレッドは納得しひらひらと手を振る。親子の情など縁がないモードレッドではあるが、リッカが大切にしているものを否定はしない。他者の重んじる誇りを踏みにじるは騎士に非ず。畜生に担う騎士道は無いとモードレッドは頬を叩く。
「っしゃ、じゃあ準備進めっぞ!オレに続け、ボンクラども!!」
「そうだ、キリキリ働け!肉体労働はお前の様な無駄にパワフルな騎士様の役目だからな!」
「張っ倒すぞテメー!!」
ワイワイと騒ぐ、かつての記録を持つ者達。招かれておらぬ者達もいる以上、明日は今よりもっと騒がしいだろう。
「えっ!?御主人様おらっしゃらないとかデジマ!?最悪です豪勢なお弁当作ってきましたのに・・・!」
「お、うまそ。どれどれ(パク)うめー!差し入れサンキュー!」
「ぎゃわーーーー!?差し入れじゃねーですよこの脳筋反逆騎士様ーー!??」
「フォックス・・・頭からイカレちまってよぅ・・・むぁリッカは傷物でも受け入れらぁ、元気出せって、な?」
「誰がサブヒロイン落ちの敗北ヒロインですかっ!?うぉおぅ、エクステラの存在とかマジ赦せねー・・・!サブヒロインや剪定事象なんて誰得設定生やして玉藻ファンを傷付けまくった恨みはサービス終了まで忘れてやらねーですよーだ・・・!!」
「たまに、何言ってるかわかんねぇじゃんフォックス・・・」
「たまに?しょっちゅうだろ」
そんな荒ぶる巫女狐に呆れる騎士とゴールデン。そして、その傍ら・・・部屋の一角では、静かに思い出に浸る『親子』の姿が在り──
~
「はい、童子切の御手入れは終わりましたよ。余計な刀傷は付けず、大切に扱って下さっているのが伝わりました。リッカは本当にいい娘です。さ、受け取ってくださいな」
「ありがとう、母上!いつも助けてもらってるもん、この刀に・・・母上に、ね」
二人だけの部屋で語り合う、リッカと彼女の魂の母親・・・源頼光。こうして水入らずの空間で、二人を結ぶ護り刀である『童子切』を手入れしながら、かつての想いを語り合っているのだ。
「『何をすれば、愛してくれますか』・・・背筋の凍るような懇願と慟哭から、もう一年・・・あっという間で、遠い昔の様な感覚すら感じるけれど。あの時の気持ちを、片時も忘れた事はありません。あの瞬間、私はあなたを愛して愛して、愛し抜こうと決めたのです」
リッカの抱える闇を、彼女は受け止め受け入れた。代わりとして、自身の完全な続きとして。人格も、人生も剥奪され、完璧な存在として、血の繋がった他者に求められたリッカの慟哭。期待に応えられなければ、誰かの為でなければ愛されることなど有り得ないと、本気で信じていた彼女の言葉。
それを救うために、頼光は母性の総てを彼女に捧げた。自らの座に記録を、リッカの存在を刻み込み、護り刀を託し、疎んでいた自らの魔性すら心に寄り添わせ、彼女を愛して愛して愛し抜いた。彼女がいなければ、リッカはリッカとしていられないという程に。
「はいっ。血は繋がってなくても・・・私は母上の事、本当の母親だと今も思ってます。本当に、本当にありがとう。母上のお陰で、私は愛してもらえることの嬉しさを知れました」
リッカは心から感謝している。誰かを愛すること、想うこと。それがどれ程尊く、素晴らしいかを彼女から学んだ、教えてもらった。これからも絶対に忘れないし、これからもその気持ちを護り抜く。──踏みにじる者を、決して赦さない。宿業を切り捨てる為に、極みに辿り着く程に。
「──今だから言うけれど・・・ごめんなさい、母上」
「?何故、謝るのです?母もまた、あなたという娘を得てこの上なく幸せなのですよ?」
「・・・私の事、背負わせちゃったから。座に刻み込んでくれるくらい愛してくれて・・・でも、母上には、ちゃんと四天王や、金時兄ぃもいるのに。関係無い私を、そんな絆に割り込ませちゃって・・・」
英雄達は、世界を救うために契約している。それはあくまで一時の夢であり、契約が果たされた暁には大抵は座に返る。記憶は記録となり、他の召喚の地には持ち込まれないのが通例だ。あくまでサーヴァントは座の本体のコピー。『その時代にその英雄がいたらどうなるか』を、極めて精巧に行っているに過ぎないのだ。
そんな英霊が、座の本体に記憶を刻み付ける。それはとてつもなく鮮烈で、衝撃的な事だ。最早その出来事、その記憶はその英霊の一部となり、経験となってしまう。何処に召喚されようと、何処に招かれようとけして消えないのだ。だから、頼光は最早リッカを決して忘れられない。現代に得た娘として、永劫想い続ける事になる。
「私は嬉しいけれど、とっても嬉しいけれど。・・・源頼光なんて素敵な人を、私の存在で縛ったとも考えられるんだと、ふと思っちゃって。・・・ごめんなさい、母上・・・私を、忘れられない様にしてしまって・・・」
頼光は日本の英雄、私物化していい存在ではない。そんな彼女に、自分という存在を背負わせてしまった。これが、彼女や未来に会うマスターの邪魔や重荷になってしまったら、とても心苦しくて──
「──。・・・もう。繊細に過ぎますよ、リッカ」
「んむっ・・・」
頼光は、そんなうつむくリッカを優しく抱き寄せた。彼女にとって、理屈が愛に挟まる余地は何処にもない。
「あなたは重荷等ではなく、大切な、大切な私の娘です。娘を忘れる親が何処におりましょう。娘を思わぬ親が何処におりましょう。貴女を愛すると誓った時から、それは決めていた事なのです」
「母上・・・」
「子を愛するに理由は要らず。貴女を愛するには、私も全霊を懸けると誓ったが故の心と行動。後悔も何もあるものですか。──愛とは、理屈ではないのです。だからリッカ、忘れないで。『私が愛したいから、愛している』。何をすれば、など考えないでいいのです」
『何をしても、愛している』。無償の概念に疎いリッカに、母は優しく諭す。自信を持ち始めた娘、でも自身の事は遠慮しがちな、一人の娘へ。
「どうか、あなたの想うままに生きなさい。私はそんな貴女の総てを・・・愛しているのですから。解りましたか?藤丸、龍華?」
「・・・~ーお母さぁ~~んっ!」
リッカの心はとうに癒えている。これはまだ、照れと遠慮の発露。・・・彼女はまだ、人として一年しか生きていないから、たまに不安にもなってしまう。
でも、心配はいらない。こうして、総てを受け入れる絆はもう手に入れた。後は注がれる愛を、皆から貰う愛を正しく認識するだけ。
「えぇ。私はあなたの母ですよ。ずっと、ずっと──」
母にしか見せない、弱さと甘え。そんな顔を見せてくれるリッカに心からの感謝と愛を捧げながら、頼光は彼女を受け止める。
子が母に救われたように、母もまた子に救われる。親子とは、きっとそういうものだ。この二人の間にある絆はきっと・・・
──間違いなどでは、無いのだから。
ヒロインX「ふ、二人きりで飲みたいだなんて・・・ギルにしては、気が利きますね!実はこうして、グラスも注文していたんですが!奇遇ですね!」
ギル「それは丁度良い。我の活躍なぞ叙事詩を紐解けばいくらでもある故、今更語るまでもない故な。こうして貴様との喧騒に浸るも悪くはあるまい」
ヒロインX「記録で見ましたが・・・スゴかったですね、ギルの本気。そんなにエアちゃんに懸けた想いは凄かったんですね」
ギル「当然だ。我に相応しい宝を獲得し守護するが我が王道。穢らわしい手で我が至宝を簒奪したとあれば最早下す裁定は一つしかあるまい」
ヒロインX「・・・私、エアちゃんがギルと一緒で本当に良かったと思います。普段のギルガメスとなんか、目があっただけで殺しあいですから」
ギル「であろうな。我も恐らく、手に入れた瞬間興味を喪うであろうよ。我に刃向かうからこそ、輝いて見える部分も多分にあろうからな」
ヒロインX「じゃあ・・・、今の私は、嫌いですか?」
ギル「いや?我もゴージャスという特注品なのだ、貴様の様なアルトリアと特注品同士語るも悪くは無かろう。可憐さは足りぬがな」
ヒロインX「そうですか・・・実は、実はですね!」
ギル「ん?」
ヒロインX「エアちゃんと!エアちゃんといるギルは、私!──好きです!割と!」
「知っているわ、たわけ」
ヒロインX「えぁっ・・・。そ、そう、ですか・・・それなら・・・何より、です・・・」
ギル「・・・・・・・・・」
ヒロインX「・・・・・・何か、言ってください」
ギル「・・・・・・・・・」
ヒロインX「・・・言ってくださいよ・・・」
ギル「・・・・・・・・・」
ヒロインX「・・・・・・ばか・・・」
メモリアルバトル
ギル
VS
ヒロインX
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