人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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子ギル『はい、エアさん。あなたの個人口座に個人的なご祝儀を振り込んでおきました。どうか御受け取りくださいね』

──ありがとうございます、ギルくん!でも、ワタシはそういったモノも大切だとは解ってはいても・・・やっぱり、ギルくんに御会いできるのが一番の御祝儀になります!楽園に、来てくださらないのですか?

ギルくん『~~。色々、やらかしてしまいましたからね。エアさんに迷惑をかけた償いを終えないと、とても貴女の前に立つなんてできませんから・・・ごめんなさい、エアさん』

──ギルくん・・・。・・・はい、それがあなたの下した裁定ならば。でも待っています!待っていますから、いつか必ず来てくださいね!

『嬉しいなぁ。エアさんと触れ合えるその時を、僕も心から楽しみにしていますね!』

──はいっ!

ギル《なんともまぁ殊勝な事よ。エアの前では思春期の男子めいた言動を取りおって。我が幼年、尽くされるより支えたいタイプであったのだな》

フォウ(償いっていい子だよなぁ・・・なんでアレがオマエになるの?)

《ふはは、歯に衣は着せられんな珍獣。良く見聞せよ、ヤツの償いとやらはエアにのみ向いたモノだ。ただの一言も他者への償いとは口にしておらん》

フォウ(・・・うん!紛れもないギルだったね!)


カウントダウン2・特殊特異点

「お、来たか。随分遅かったな。・・・まぁ無理も無いか。お前の道筋、長かったもんな。ほら、上がっていけよ」

 

リッカが脚を踏み入れた場所、それは豪華極まるパーティー会場・・・とは無縁の部屋の一室。両儀式が居を構える、一通りの生活用品が取り揃えられた淑女の居住たる場所だった。インターホンを鳴らして、出てきたのはYシャツ一枚の式。促されるままに、リッカは部屋へと静かに上がる。

 

「其処の冷蔵庫にアイスが入ってる。好きに食べてけ、それくらいしか無いからな」

 

「わぁい!いただきまぁす!」

 

冷蔵庫をそっと開け、冷やされていたストロベリーアイスをリッカは戴く。彼女は楽園にて警備員と見回りを担当しており、基本が夜勤なので朝方は寝ていたりする事が多いのだが・・・流石に今回は特別なようだ。

 

「・・・振り返る、って言ってもさ。オレと行った特異点なんて思い出したい場所じゃないだろ。恨み辛みと死のマンション。胸糞の悪い親の怨念まみれの地獄巡りだ。なんたってオレが思い出したくない」

 

そう、特殊な特異点を振り返るならばこればかりは外せない。オガワハイムのマンション・・・聖杯にて怨念を肥大化させたリッカの両親を力尽くで叩きのめした特異点である。式は彼女を慮り、あの時の事は決して口にしていない。自分は、何もしていないし何も起きていないと言ったレベルだ。

 

「そんなこと無いよ。一筆爆弾処理とか、ギルガメッシュストアとか、最後の夜明けとか・・・沢山、素敵な事があった特異点だったよ」

 

オガワハイム。死を集め展覧し、自らの手を離れた娘・・・否。模造品を破壊せんと呪詛を撒き散らした二人の人間の深淵。そこに招かれたリッカを助けたのが式だった。あまりにも深い、あまりにも暗い怨念を駆け抜けた特異点も、また確実に存在している。

 

式との思い出も、決して忘れていないとリッカは語る。虹色の魔眼と、手にしたナイフの閃きは自分の確かな希望にして頼もしい力だったと、誇らしげに語るのだ。

 

「私の方こそ、ごめんね。本当は誰の手も借りずにケリをつけなきゃいけないのに、付きっきりでついてて貰って・・・」

 

「いいんだよ、別に。世話を焼かれて面倒を見てもらえるのは子供の内だけだ。子供が子供らしく振る舞えるのは、ほんの二十年だけなんだぞ。お前はもっと誰かを頼っていいんだ」

 

ぶっきらぼうで面倒臭げな態度が普段の姿ではある式。だが、目の前にいる少女の強さと背負ったものの重さに関しては態度を鋭敏にする余地など無いと言った様子だった。

 

「お前を支えてくれる連中は沢山いるよ。忘れるなよな、どいつもこいつもお前を放っておけないってヤツしかこの場所には残ってない。無茶も面倒も、もっと回りに押し付けてやれ。愚痴くらいなら、いつだって聞いてやるからさ」

 

ぼんやりと空を眺める式の言葉は、態度に反して柔らかく親身だった。何処の世界に、子の人生を呪う親がいるのか。産まれるべきで無かったなどと宣えたのか。そして何より──

 

「信じられないよ。お前がお前でいられたことにさ」

 

「えっ!リッカ系女子はそんなインポッシブルな存在!?」

 

苦笑する式。もう立派に冗談をかませるようになっているじゃないか。割と心配し、いつふと思い出してしまうか、などと式はやきもきしていたのだ。あんなものは、思い出したくもないだろうし・・・

 

「そうじゃない。──トンビ・・・トンビが鷹を産むってヤツ、じゃないな・・・なんだろ。あぁ、芋虫が龍を産むかな」

 

「そんなに大袈裟じゃなくない!?私は別に、最初から選ばれた存在なんかじゃないよ。それはAチームみたいな人達だし」

 

「他人なんかオレは知らん。お前がお前だからオレは此処にいるんだよ」

 

「ぁ・・・り、がと。ござます・・・」

 

何より、きっちりと自分を見付ける事が出来た今のリッカを見て、式は静かに頷く。・・・本当なら、『アイツ』のように普通で平凡ながらも懸命に頑張るのがこの娘の運命だったのかも知れない。が、今のコイツはそうじゃない。だけど、それはきっと誰にも真似できない『コイツ』だけの人生だ。

 

「──良かったな、リッカ」

 

「──うん!」

 

言葉は少ない。式は口が上手い方でも無いし、今更誉める言葉なんて飽きるほど貰っているだろう。だから、軽い一言二言だけ。

 

だけど、その意味は確実に伝わっている。肯定の言葉と、その表情で確かに感じ取っているのだろう。その笑顔と振る舞いは、もうコイツだけのものなんだ。誰のものでもない、誰の代わりでもない。それを、自分とのマンション巡りで掴み取れたというのなら・・・少しは、自分が此処に来た意味があるというものだ。

 

「よし、オレなりのお祝いだ。特別にアイスもう一つ──」

 

なんだか気分が良くなり、リッカにもう一つアイスを配ろうとしたその時──

 

「やっほーリッカちゃーん!スペシャル特異点担当とお話するんでしょー!それつまり私って事じゃーん!沢山ネタ考えて来たから語り合いましょー!」

 

「バイト帰りにまがりまぁす。式さんこんにちは。アンニュイ・ふじのんです。レバノンは杉です」

 

「・・・うるさいのが二匹・・・」

 

「アルク!ふじのん!こんにちはー!え、この空間のグランドヒロイン指数が際限なく高まっていってるような・・・!」

 

あーぱー吸血鬼、アルクェイド。橋をへし折るよろず屋、ふじのん。彼女らもまた特殊特異点で出逢い、リッカと縁を紡いだ者達だ。待ちきれなかったらしく、つまみやビール、烏龍茶などを用意し持ち込んでいる。

 

「やっぱりガールズトークには外せないわよねー!つまみにビール!ジャーキー!いやぁ、リッカちゃんに酌するの楽しみにしてたんだからね!」

 

「店から許可とって貰ってきました。語り明かす準備は万端です。いぇい」

 

「オレの部屋でやるなオレの部屋で。やるなら食堂とかでいいだろ」

 

「えー!しみったれたアパートの一室で顔を付き合わせてシャツ一枚でクダを巻くって私憧れのシチュエーションなのにー!やだー!此処でリッカちゃんやあなたとトークする!するする~!」

 

「楽園の手入れと設備が行き届いた手間のかかったTHE・殺風景を私達の凶りで彩りましょう。生活感無いOLの飲み会めいて素敵ですよきっと」

 

「あーそうか。アレだなお前ら。喧嘩を売りに来たって認識で合ってるよなソレ」

 

「ステイ!待って式!?ナイフ出さないでこの面子で喧嘩はダメだから!」

 

「あ!しってるしってるー!ソレあれよね!志貴がいつも振ってる・・・えーと・・・」

 

「フルーツ(ボソッ)」

 

「果物ナイフ!それそれ果物!不思議よね~。魔眼あればそんなナイフでもスパスパ行けちゃうんだもん。御値段いくら?にーきゅっぱ?」

 

「変な嘘を教え込むな。業物だ!業物!」

 

「見てみてリッカー!柿ピー!わさび味!わさびってなんであんなにつーんってするのかしらね?すりおろして使うのも不思議よね~」

 

「わさびはですね。日本のわびさびから来ていてツーンとする忍耐だって日本人は余裕だぜーって意味のわさびなんです」

 

「へー!そうなんだー!じゃあリッカも式もわさびなのね!あんまり好きじゃなかったけど、それなら好きになれそう!ハロウィンの仮装作りも兼ねて!わさび味食べていこー!」

 

「酒も入ってないのにこのハチャメチャぶり・・・これがグランドヒロイン・アルクェイド・・・!」

 

「・・・お前、本当に大変だよな・・・」

 

人だけに留まらず、あらゆる存在といい関係を築かなくてはならないカルデアのマスターの並々ならぬ苦労に、式は今心と感覚で理解と把握を示した。

 

『特異点を振り返るわ!リッカちゃんとのハロウィンスッゴク楽しかった!以上!』

 

などと振り返りを終わり楽しげに場を占拠してはしゃぐアルクェイドに付き合うリッカを見て、式は心から感嘆を示したのだった。

 

「どうします?仲良しの証として一緒にラジオ体操でもやります?」

 

「死ぬまでやってろ」

 

ストロベリーアイスを一緒に食べながら、よく解らんノリの腐れ縁含む来客に呆れる式でありましたとさ。

 




イリヤ「魔法少女特異点ではいっぱい御世話になったよね、リッカさんに・・・!よーし!この肩たたき券を献上して話題をつくろー!」

ミユ「イリヤ、それは別に無くても大丈夫・・・」

クロ「気持ちよ、気持ち。こういうのはギフトの価値にとやかく言わないのが礼儀なの」

ルビー『そうですそうです!なんならぶたさん貯金箱でもいいんじゃないかと言ったんですがねぇ?』

イリヤ「あ、あれはだめーっ!Switch買うためにお小遣い貯めてるのー!」

クロ「一から作ってもらえばいいんじゃないの?あ、此処ね。リッカさんは・・・」

イリヤ「なのはさんや響さんも待ってる!是非是非来てもらわなきゃ!すみませーん!」

アルク「でねでね!バラバラにされた身体は何で止めたと思う?じゃーん!セロテープゥー!くっつくアルク!あはははは!面白くない!?」

式「へぇ・・・割とくっつくもんなんだな。バラバラにされたときはセロテープを張れよ、リッカ」

リッカ「そんなわけ無いよね!?いい子とマスターは絶対真似しちゃダメだよ!?」

ふじのん「アイス美味しいです」

イリヤ「も・・・もう堪能してた・・・!?」



ライネス「やはり、振り返りには紅茶じゃないかな?我が盟友」

オルガマリー「美味しくなって、美味しくなって。ありがとう、ありがとう、ありがとう・・・」

グレイ「おぉお・・・」

ライネス「・・・君達楽園の連中は、ずいぶん珈琲に拘るんだな・・・」

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