闇夜を裂く直死の魔眼   作:蒼蠍

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続いたのである。

ピスコ、第三者の視点から前話+その後の組織の様子。

オリ設定有り。
深く考えずに読んでください。


眼に魅入られた者

 黒づくめの組織の幹部、ピスコはあの時のことを忘れることはないだろうと述懐する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれはピスコが表の顔の自動車メーカーの会長"桝山憲三(ますやまけんぞう)"として活動していた時だった。

 

 車で出先から帰る途中に組織からの連絡が入り、運転手に聞かれると面倒なことになるので車を停めさせて、人通りの少ない路地で通話をすることにした。

 特に重要な要件ではなかったため、連絡自体は5分程度で済んだ。

 

 

 

 

 そうして通話を終えたピスコが車に戻るために歩き出そうとすると、曲がり角を曲がったところの先に1人の子供がいた。

 

 こちらから顔は見えないが、子供は壁に寄りかかりながら何やら財布から金を出して数えており、大方スッた財布の中身を確認しているのだろう、ピスコに気づいた様子はなかった。

 

 後ろ姿なので判別がつけにくかったが、長年培ってきたピスコの観察眼であの子供が女性、つまりは少女であることが分かった。

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

 ピスコはその少女を見て驚愕した。

 それは見る限り10歳にも満たない少女がスリを成功させていることに対してではなかった。

 

 

 

 この少女が"気配を一切悟らせずに突然現れた"からであった。

 

 

 

 狙撃手として、殺しを日常として生きてきたピスコは長年の経験により、決して周囲の警戒を怠ることはなかった。

 

 その理由は狙撃手は狙撃の性質上、背後から敵が接近した場合には後方がどうしても手薄になる為危機に陥りやすくなるという弱点を補う為にだ。

 

 故にピスコは気配に人一倍敏感であり、例え曲がり角を曲がった先にいる人間の気配でも察知することなど容易であった。

 事実、少女よりもさらに奥にいる何やら足取りが定まらない男の気配は角を曲がる前に感じ取っていた。

 

 

 だが、この少女はどうだ。

 ピスコが角を曲がった途端、まるで突然現れたかのように気配が生まれ、少女の姿が現れたのだ。

(この時少女は、スッた財布に入っていた金が思っていたよりも大金だったため、気が緩み気配遮断が解けてしまい認識された)

 

 

 

 最初は驚き、硬直していたピスコだったがやがて思考が回復すると

(いや……、そんなことがあるはずがない……。私が油断してしまっていて見落としていたのだろう。)

 と、ピスコは突如少女が現れたという事態を自分の油断による見落としによるものだと考えて平静を取り戻した。

 

 

 それもそうだ。仮にあの少女が気配を絶っていたと言うならそれはもはや人の域を逸脱している。

 この平和ボケしている日本においてそのような隠形をやってのける者がいる、それも幼い少女が、などと言われて信じることなど到底不可能だろう。

 

 

 

 

 だがそのピスコの考えは、次に起こった展開で少女のとった行動によって改めさせられたのだった。

 

 

 

 

 ピスコが頭の中で思考していると、先ほど認識していた男が少女に襲いかかっていく。

 

 男にいとも簡単に押し倒された少女を見て、ピスコはなんの感慨もなく

(ああ、やはり先ほどのアレは私の油断によるもの。偶然起きたことだったのだろうな)

 と思っていると、少女は男から奪ったナイフで男を刺したのであった。

 

 

 ここまではピスコも起こりうる可能性として考えていたため特に驚くことはなかった。

 (例え相手が子供であろうともそういった偶然から来る出来事も、起こらないとは一概には否定できないからだ)

 

 だがこの後に起こった事態は、様々なことを経験したピスコですらも目にしたことがなかったことだった。

 

 

 

 少女はナイフを一旦引き抜くと、腹あたりの傷口を抑えて悶えている男の体をがむしゃらに切りつけた。

少女はただひたすらにナイフを振るっている為、最初に男が受けた傷以外はそこまで深い傷にはならないだろう。

 

そうしていると男は身体中の痛みを我慢し少女の腕を掴もうとしているのがピスコからは見えた。

 

恐らくこれで再度有利な立場が逆転するであろうと見切りをつけたが、男の様子が何処かおかしいとピスコは感じた。

男は呻き声を漏らしていたが、その声がどんどん小さくなっているのだ。

見るからに呼吸が整った訳ではないだろう。では何故.....?

 

そう考えたのもつかの間、男が突然倒れ込んだのだった。

 

 

「なっ⁉︎」

 

 

 これには今までに数え切れないほどの人間を殺してきたピスコも目を見張った。

 

 

 あの少女のナイフでの傷はどう見ても死に至るようなものではなかったのは明瞭だった。

 それにナイフが刺さった箇所も出血はしているものの、出血死に陥るような傷の深さではなかった。

 

 

 

(一体どうなっている⁉︎あの切り傷でどうやって⁉︎)

 

 

 

 この未知の光景をピスコは何が起きたか理解することはできなかった。

 

 何せ心臓や脳を狙ったものでない攻撃で人間が死ぬだろうか?

出血死の可能性もなく、男は死んだ時、ぷっつりと糸が切れた操り人形のように死んだのである。

銃で撃ったとしてもあんな死に方はしないだろう。

 

 ナイフに何か仕込まれていた?

 いや、ナイフは見る限りシンプルな作りをしている為、何か仕込むことは不可能だろう。

 それにあのナイフは男の所持していたものであったが、見た限り男が細工など手の込んだことなどしない人物であるように思えた。

 

 となるとあの少女に"何か"が……?

 

 

 そう疑問を胸に抱えつつ、ピスコは平然を装って少女に声をかけた。

 この時ピスコはこの少女を逃してはいけない。自分の命令に従う都合の良い傀儡にしよう、と考えていた。

 

 相手の少女はナイフを持ち、どうやってかはわからないが相手を即死させる術がある可能性がある。

 普通であればそんな相手を相手取るのは無謀と言っていい行為だった。

 

 

 だがピスコは長年の経験から、眼前の少女が男に簡単に押し倒されていたことから身体能力は己の脅威になるものではなく、仮に襲ってきてもその駆け出す速度は年相応だろうとあたりをつけた。

 

 また、ピスコとてナイフを主武装とする敵を相手取ったことは何回もあり、接近戦での立ち回りは心得ていた。

 故に少女と敵対することになったとしても、対処法さえ立てておけば恐れることはない。そうピスコは判断して動いたのだった。

 

 

(さて、事態はどちらに転ぶか?なるべく対立を避け、平和的にいければ良いのだが)

 などと考えていると、声をかけられた少女はやがて此方に振り向いた。

 

 

 そうしてピスコは振り向いた少女の顔を目にした途端

 

 

  心を奪われたのだった。

 

 

 

 

 

 

 少女の顔は幼いながらも中性的な顔立ちをしており、黒髪がその顔立ちによく似合っていた。

 

 だがそれ以上に少女の眼にピスコは引き込まれた。

 

 日本人であるはずの彼女の眼は黒色ではなく、赤青いものだった。

 虹彩に異常が有るのか?

 いや、それはあり得ないだろう。

 

 少女の眼は、まるで夜明けを迎える空のように徐々に色が深い青色から薄い水色に移り変わっていたのだ。

 

 それは明らかに普通の人間の眼ではなかった。

 事実、少女の眼を見ていると首に死神の鎌を添えられたような錯覚に陥る。

 

 だがピスコには少女の眼を見て恐怖を感じたものの、違う感情が胸の内で渦巻いていた。

 

 

 "美しい"と思ったのだ。

 

 

 先程までに考えていた少女を利用するという考えはいつの間にか消え去っており、今はあの少女を手に入れたいと思っていた。

 

 

 これはある種の一目惚れだったのかもしれない。

 それほどまでに少女の眼にピスコは惹かれていたのだ。

 加えて先程の不可解な出来事だ。

 少女をみすみす見逃すわけにはいかなかったのである。

 

 

 ピスコは逸る気持ちを抑えつつ、少女を賞賛して自分についてこないかと誘いをかけた。

 

 少女は少し悩んだようであったが、やがて自分の娘となることを選んだ時、ピスコは思わず声をあげて喜びそうになる。が、そんな姿を見せるわけにもいかずに必死に喜びを堪えた。

 

 

 だが、次の瞬間少女が倒れた時には肝を冷やした。

 

 少女の容態を確認し、呼吸はしているので命には別状がないことが分かったが、少女を抱き抱えたピスコは足早に車に戻った。

 ピスコは運んできた少女に驚く運転手に、裏でつながりのある病院に向かわせた。

 

 そうして少女の運命が定まったのであった。

 

 

 

 それから数年後……

 

 

  "ピスコが少女を養子にして、組織に入れた"

 このことに組織の幹部は驚きを隠せなかった。

 

 何せ"あのお方"の部下として長年仕えてきて、幹部の中でも別格であるあのピスコが、年端もいかぬ何処の娘かも分からない少女を養子にしたのだ。

 あまつさえその少女を組織に入れ、"アスティ"というコードネームまで与えたのだ。

 そんなことをするなどピスコが一体何を考えているのか理解できなかった。

 

 ピスコは"アイリッシュ"というピスコの古い友人の息子の育て親をしていた。

 アイリッシュを育てていた理由は亡き友人との友情からくるものだろうと考えることが出来る。

 

 アイリッシュは最初のうちは自分より年下のアスティのことを邪険に扱っていたものの、同じ育て親を持つものとして共に行動する機会が増えた結果、関係は改善された。

 

 

 話は戻るが、アスティの育ての親になった理由はアイリッシュの時と同じなのだろう。

 そう考えた1人の幹部がピスコにその娘の親は誰なのかと聞けば

 

「知らぬよ。もとよりあの娘は孤児であった」

 

 と返したので、その線は消えた。

 ならば何故組織に入れたと聞くと

 

「なあに、いずれ分かるさ」

 

 と言うので、渋々アスティにせめて使い物になるように訓練を開始すると、彼女の驚くべき身体能力が判明したのであった。

 

 射撃の腕は突出したものではなかったが、走力、跳躍力、身軽さや反射神経などは6歳という年齢にも関わらず成人男性に匹敵するものであった。

更には気配の消し方が並外れていたのだ。

 また、ナイフを得物としての戦闘訓練では、指導をしていた組員を幼いながらも圧倒していた。

 

 このことから、少女が成長した場合更に強くなるということが予想できた。

 また、プロの暗殺者顔負けの気配断ちによる暗殺、諜報活動なども期待できる。

 

 そうしたことが分かった訓練の結果を聞いたピスコは大いに喜んでアスティに偽造した戸籍を与えたのであった。

 言うなれば少女が"表"で生きることができるようになったという事だ。

 その反面この行為は将来この少女が組織を離反した場合には"表"で生活することができてしまい、組織に縛り付けることが難しくなるというリスクが含まれているものであり、本来"裏の人間"は決してすることのないことだった。

 

 だがそんなことも気にならないほどに、この時ピスコはアスティにかなり入れ込んでいた。

 計り知れない才能を秘めた少女への期待は、いつの間にか父親が娘に向ける親愛の情に変わっていたのかもしれない。

 ピスコは独身であったため、そのような父性に目覚めたのは無理のない話であったのだろう。

 

 

 

 

 そうして組織の内での立ち位置をアスティは確保したのである。

 このことからアスティが組織の幹部のうちの一人と目されることになるのに、そう時間が掛かることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オリ設定:ピスコがアイリッシュを育てている経緯


ピスコの思考
中々使えそうだし操り人形にしたろ!→あの眼を持った少女が欲しい!→私の娘は世界一ィィ!

自分で描いててピスコがロリコンに見えた。


今後の展開ですが、ピスコとアイリッシュをできるだけ生存させるのは決まっているのですが、テキーラとカルバドスを生存させるか迷っています。
飽くまで生存させるだけで、頻繁に出て来る訳ではないですが
黒づくめの組織の戦力が減らずにコナン、FBI側がハードモードになるだけです。

そこで活動報告でアンケートを取りたいと思っていますのでよろしくお願い致します。
詳しくはアンケートにて!


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