「―――――ねぇ響、骸骨男の噂知ってる?」
「あ~、夜の街に現れるっていう最近噂の。でも、ただの都市伝説でしょ、もしくは変質者。いや~、春先だと変わった人も現れるもんだね。」
私、立花響15歳。この春、私立リディアン音楽院高等科一年となった。今話しているのは小日向未来、私の大親友。
ちょっと前に、私が大変な目にあっていた時も近くで支えてくれた自慢の友達だ。
そんな私たちは、学校からの帰り、お好み焼き屋の「ふらわー」によって行こうとして歩きながらたわいもない話をしていた。
「骸骨男」。それは主にネットで広がっていた謎の人物。昨日はテレビのニュースでも取り上げられていた。とは言っても、写真なんかの証拠はなし、テレビでもネットでちょっと盛り上がっているという感じでさらっと扱われただけで、次のニュースの連続殺人事件に隠れて大抵の人はすぐに忘れただろう。
私が覚えていたのはさっき言っていた大変な目、認定特異災害ノイズの一件があったからだ。
ノイズ、それは特異災害の一種。外見は生物みたいで変な鳴き声を上げるけどおそらく生物じゃないだろう。現れてから一定時間経つと消滅するけどそれまでが大変だ。
ノイズに触れたら最後、炭になって死んでしまうのだ。しかも、彼らには攻撃の一切が効かず人間は為すすべもなく逃げ惑うしかない、まさに災害だ。
私は、大人気アーティスト風鳴翼さんとその相棒天羽奏さんのユニット、「ツヴァイウィング」のライブでノイズにあってしまった。
もちろん、今ここにいるのだから死んだわけではない。大けがをしたけど、頑張ってリハビリをして元気になった。
・・・なったはよかったんだけど問題はその後だった。きっかけは週刊誌の多少大げさに表現した一文、けどそれがきっかけとなり、遺族たちが補償金をもらっていたこともつながり大バッシングにつながった。
私も色んなことを言われて、私の家族も言われて、お父さんもいなくなって、治ったことがよくないことのように思えてきて、押しつぶされそうになった。
けど、あの時、ノイズにあって大けがをして意識が朦朧としたときに言われた言葉。
「生きるのを諦めるなッ!」
深く、槍のように突き刺さったその言葉を胸に、私は生きてきた。
・・・実はある
その人の名前は分からない。私の家に訪ねてきたその人を、強引に取材をしにきたマスコミと勘違いしたお母さんが合わせてくれなかったのだ。
だから・・・
「はい、いらっしゃい。」
「おばさん、豚玉一つ!」
「もう、響ったら、がっつきすぎよ」
もし会えたなら、その時名前を聞いて、ありがとうと言いたい。
日本O市。とある製薬会社の産業城下町として発展した中型の地方都市。
大雨が降り注いでおり、時間が夜ということもあって普通なら出歩く人はいないだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ、はッ。」
だが、その男は見るからに普通ではなかった。服は乱れていて、一部には血が滲んでいる。身を突き刺すような雨を気にもせず、その顔は鬼気迫るものがある。目を見開き、呼吸は粗い。時折、足がもつれるがそれでも走り続ける。まるで、誰かに追われているようだ。
「これ以上手間をかけさせてくれるな、悲しき獣よ。」
「ッ、あぁ!来るんじゃねぇ、骸骨頭!」
全てを飲み込んでしまうような夜の暗闇の中、二つの赤い光が現れる。鬼火だろうか?
しかし、すぐにそれは否定される。
それはおそらく目であろう。おそらくとつくのは、それは本来、眼球が存在する部分にあるからであり、それは男に近づくにつれ分かった。
それはまさしく怪人と呼ぶにふさわしかった。黒いコート、黒い手袋、黒いブーツを装着しており、本来頭があるはずの部分には本物の骸骨と見間違うようなものがあるが、口が露出していることから多分マスクであろう。
その姿は見るもの全てに恐怖を抱かせる。目の前の男は本当なら腰を抜かしていたかもしれない。
そうはなっていないのは命の危険があるからであり、その原因はまさに目の前の怪人であった。
「くそッ、俺が何をしたってんだ。なんで俺を殺そうとする?!」
「子供4人に女が二人殺しておいて白を切るか、己が罪を認めぬことはこの世で最も罪深きことだぞ。」
うっ、と男が言葉に詰まる。自分でも自覚があったのだろう。
しかし、今は自分の命が掛かっている。生をつかむため、もしくは少しでも生の時間を延ばすため、男は言葉を重ねる、それが言い訳じみてることを心の奥底で感じながら。
「け、けど、仕方なかったんだ。この俺の体じゃ、俺の心を抑えきれなかった。悪いのは俺じゃねぇ、俺を改造したあいつらだ、この国だ、この世界だ!俺だって被害者だ!」
「・・・そうだ。本来ならば、汝に罪はなく、汝が罰を受ける道理はない。」
「だったら!」
「だが・・・」
怪人は男の言葉を遮り、離し続ける。
「汝はもはや人でいられなくなった。人の理を保てなくなり、獣の道へ落ちてしまった。それが汝の意思でなくとも、人の世に獣が生き続けることは出来ない。死こそが汝の未来となるしかない。
・・・もう、限界でなのであろう。既に、人である時間よりも獣である時間の方が長い、いずれ完全に獣と化す。ガ號計画の生き残りはここにおいて他には無し、他のものと同じように安らかに朽ちるがよい。」
「な、て、てめえ、俺の仲間たちを・・・。ユルセネェ!!」
瞬間、衣服が破れ男の姿が異形へと変わる。その姿はあえて言うなら鳥であったが、二足歩行の鳥など居るはずもない。加えて、鋭利な爪を生やしており、人間程度なら簡単に切り裂けるだろう。
対して、怪人はコートの袖からナイフを出し、拳に握る。
二体の怪物は、じりじりと距離を詰めあった後、同時に切りかかる。お互いの獲物でつばぜり合い、片方が切りつければ片方はいなし、片方が突けば片方はかわす。だが、互角というわけではない。骸骨頭の方の動作はその技巧の高さを感じるが、鳥男の方の所作は拙い。そのため、時間が経つにつれ鳥男の傷が増えていく。
仕切り直しをしようとしたのか、鳥男はその翼を羽ばたかせようとするが・・・
「ハァッ!」
「グ、グァァァァァァァァァ!!!イ、イテェ、イテェヨォォォォォォ!!!!」
一閃。ナイフが翼を切り裂き鳥男を地面に叩き付ける。片方は無傷、片方は傷だらけで地面で悶えている。もはや、勝負はついた。
骸骨男は決着をつけようとするのかニードルを掲げる。
「ナゼダ、ナゼオレガ、オレタチガコロサレナケレバナラナイ!オレタチハ、ノゾン、デ、コンナ、カラダニナッタンジャ、ナイ。オレタチハ、タダ、イキタカッタンダ。ソレ、トモ、イキテイルコトガ、ツミダト、イウノカ。コタエロヨ、コタエテクレヨォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!」
息も絶え絶えで喋ることも苦しい中で、それはどこに向けて問われたのか。目の前の骸骨男だろうか、それとも世界だろうか。
・・・骸骨男は答えず、ただナイフを振りかざした。
一段と激しくなる雨のなか、眼窩から一滴の水が零れ落ちる。それは、マスクに溜まった水だろうか、それとも・・・。そのことは、本人にすら分からないのかもしれない。
「ふぅ・・・」
一人の男が缶コーヒーを片手にため息をついた。その近くにはバイクがあり彼がライダーであることが窺える。全身黒づくめで、雨に打たれてひどく濡れている。
「ガ號計画もこれで終わりか。さて、これからどうっすかねぇ?」
その時、男の懐の携帯電話の着信音が鳴り響く。
「はい、こちらスカル。・・・・・・何?そうか、とうとう動き出すのか?わかった、すぐそちらへ向かう。」
飲み終えた缶をゴミ箱に投げつける。
「では行くとしますか。懐かしの我が街、東京へ。」
バイクに跨り男は夜道を駆けていく。深い闇に男の姿が溶けていく。
もう、雨はやんでただそこには静寂だけが残っていた。
今回はちゃんと終わらせたいと思います。ただ、あくまで希望なので実際どうなるかはわかりません。
あと、ガ號計画とかありますが多分本編では一切触れず、用語集とかで説明すると思います。