戦鬼深淵スカルマン   作:アラバス体系

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暴走・覚醒の兆し

 目の前のノイズに拳を叩きつける。以前の素人のそれとは違う、師匠から教わった技術、かつて銀幕で活躍したとある武道家を参考にした実践的な中華武術。一切の無駄がないその動きで次々とノイズを倒していく。

 

 けれど、敵の数もまた膨大。そして、いるのはノイズだけではない。完全聖遺物デュランダルはここにあるのだから。

 

 「ちったぁ、ましな戦い方をするようになったようだな融合症例第一号」

 

 さらに大量の新しいノイズを引き連れて、白銀の少女が現れる。あの日、出会ったあの少女。

 

 「それじゃあ、今度はあたしの相手をしてもらおうかッ!」

 

 振るわれた鎖をなんとか躱そうとするが、できずに体に傷が増えてくる。それほどに目の前の少女が強いともいえるがそれだけではない。

 

 「グウウウウウウ!りょ、了子さん大丈夫ですか!?」

 

 「なんとか逃げ回っているけどこれはきついわね・・・」

 

 そう、ここにはただの人間である了子さんもいるのだ。さっきはなにか不思議なシールドを作っていたけど、もうできないのかノイズから逃げ回っている。ネフシュタンの少女の相手をしながら、大量のノイズを倒し、了子さんとデュランダルを守らなければいけない。これは響にはあまりにも重い任務であった。

 

 「弦十郎くんから翼ちゃんも急いでこっちに向かってるって連絡がきたわ。もう少しだけ持ちこたえて!」

 

 「そ、そんなこといわれても」

 

 「ペチャクチャおしゃべりとはずいぶん余裕だなぁ。餞別だ、こいつも食らっとけ!」

 

 少女の振り上げたネフシュタンの鎖から巨大なエネルギー弾が飛んでくる。なんとか避けたが、着弾して起こった爆発の余波で吹き飛んで地面に叩きつけられる。

 

 「ここまでか。そんじゃ、おねんねしてな融合症例第一号!」

 

 その好機を逃さず、ネフシュタンの鞭が迫ってくる。シンフォギアで引き裂かれることはないだろうが、気を失うには十分な威力。何より、ここで響が戦えなくなれば、間違いなく櫻井了子は死ぬ。なんとか立ち上がろうとするが足に力が入らない。

 

 (ここまでなの?私には誰も、何も守れないの?あの日のあの人みたいになれないの?)

 

 脳裏に浮かぶのはかつて自分を助けてくれた顔も知らないけれど、憧れの人。誰かに手を差し伸べてあげられる人。そこまで考えて、なぜかある一人が浮かんだ。師匠でも翼さんでもなく、あの髑髏頭の人。

 

 そんなことを考えている間にもう目の前に鞭が迫っていて、とっさに目をつむって衝撃に耐えようとする。

 

 その瞬間、体が浮かび上がる感覚がする。背中や足にぬくもりを感じたことから誰かに抱えられたのだ。響は恐る恐る目をあける。

 

 「スカルマンさん・・・」

 

 そこには赤い眼光を宿した髑髏の仮面があった。

 

 

 

 

 

 

 

 「ようやく出てきやがったな骸骨野郎」

 

 雪音クリスは新しく現れた敵にわずかながらの喜びを感じていた。

 

 「この間受けた借り、お前が死んじまったらどうしようかと悩んでいたところだ。けど、こうしてお前が生きていてくれたおかげで、あたしの怒りもぶつけてやれる」

 

 前の戦いで、この骸骨の強さも大体把握できた。確かに、戦術眼や戦闘技術は高い。けれど、圧倒的に出力が足りない。戦えば戦うほど、それが相手に伝わり力と数で押しつぶされる。

 

 そして、今がその時だ。さらに大量のノイズを出現させ、目の前の骸骨と融合症例に宣告する。

 

 「こんだけのノイズをお前らの貧相な力で叩き潰せるか試してやる。そら行くぜ・・・!?」

 

 けれど、クリスの言葉通りには事は運ばない。閃光が走ったかと思うと近くのノイズたちが消えていく。クリスは、いやクリスだけではない。響も近くの了子も驚きで目を見開く。何が起こったのか三人には分からなかったがノイズが消えているこの状況が異常だということだ。

 

 そして、それを誰が、正確には何がやったのかがすぐに確認できた。

 

 「‥‥‥ロボット?」

 

 それらは二足歩行の人型ではあったが人間ではなかった。全身を黒い鋼で覆われた人形たち。顔の部分に液晶体とバイプを持った物言わぬもの。手には、丸みを帯びた銃。万人がこれを見れば響の呟きに同意しただろう。

 

 響はこれが何か少しは知っていそうな骸骨男に説明してほしいと目を向ける。

 

 「人の業が生み出させしもの。闇から現れる糸にて操られしゼンマイ仕掛けの人形」

 

 「えっと…」

 

 「あなたのように鎌倉からの直接の援軍ではないけれど、違う協力者が指示を出してる兵器というわけね」

 

 分かりづらい言葉で戸惑うが、了子が分かりやすく翻訳する。

 

 「それにしても、こんな隠し玉があるとわね。日本政府も大したものだわ、シンフォギアを開発させておいて私たちにも内緒でこんなものを作っているなんてね」

 

 「‥‥‥日本政府、ましてや鎌倉でもない。あれは、獅子身中の虫にもなりえるものだ。信じるに能わず、ただ力として扱うのみ」

 

 「‥‥‥ふーん、そういうこと。まあいいわ、彼らは私たちに協力してくれるんでしょ。なら、さっさとノイズたちを倒してちょうだい」

 

 「と、とりあえず今は頼もしい味方ということですね、分かりました!」

 

 

 

 

 「さっきから黙って聞いていれば、、そんなガラクタが増えた程度でもう勝ったつもりか?」

 

 思わずいら立ちが漏れる。たかが人形が増えたからなんだというのか。こっちにはネフシュタンの鎧とソロモンの杖という完全聖遺物がある。ノイズだって、この骸骨野郎を絶対に殺すためにもともと大量に用意してさらに増やすことだってできる。

 

 「そのガラクタがノイズを倒せることは驚いたが、そんだけだ。ぶっ壊しちまえば何の問題もない!!」

 

 ああ、体が熱い。怒りに体に残ったままのネフシュタンの破片が反応してるのだろうか。でも、そんなことはどうでもいい。あたしはあたしの目的の為に、フィーネの命令の通りにデュランダルを手に入れるだけ、そのためには目の前のこいつらが邪魔だ。融合症例はぶちのめすだけで済ませてやるが、この骸骨野郎とガラクタはここで終わらせてやる。

 

 ソロモンの杖に『殲滅』のコマンドを打ち込み、ノイズたちを動かす。あたしも、奴らも互いに武器を構える。

 

 「所詮、お前は何の価値もないただの障害だ。因縁もここで終わらせて、あたしの目的の贄になりな!いくぜ、まずは一球、こいつでも喰らいな!!!」

 

 あたしのエネルギーボールを合図に、殺し合いが再開する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 光線が飛び交い、瓦礫が飛び交う。ノイズが消え大量のすすが舞い、時折機械の残骸が散らばる。

 

 スカルマンは焦っていた。ホグートの寄こした援軍は思ったよりも使えたが、それでも戦いはじり貧だ。ノイズの数が多すぎる。敵はどうやらこの矮小な身も律儀に敵として認識してくれたらしい。どれほど倒しても数は減るどころかどんどん増えていく。

 

 ホグートのロボットたちも一体、また一体壊れていく。ちらりと横目で見れば、立花響の体にも傷が増えていく。

 

 「ほらほらほら、どうしたどうした!?」

 

 ネフシュタンの攻撃もさらに激しさを増していく。おそらく、俺の出力が低いことを見きったのだろう、一切の小細工をさせないために力づくで押してくる。大量のノイズとネフシュタンの攻撃の前に俺たちは孤立させられ連携も出来やしない。最も、形だけの協力体制の俺たちにできるかどうかは別だが。

 

 ネフシュタンの鞭をスカルスピアで逸らしていくがこの前よりも一撃が重く、一撃ごとに腕がしびれていく。何度もそれを繰り返していくうちに、スピアが吹き飛ばされる。

 

 「‥‥‥しまった」

 

 「もらった!」

 

 そこに鞭が迫ってくる。自分で後方に飛んで少しでもダメージを減らそうとするが、鞭についている刃で体が切り裂かれながら吹き飛ばされる。

 

 「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 少しの間浮かんだあと、近くの工場の壁に叩き付けられ、そのまま壁と共に崩れ落ちる。

 

 「ようやく、捕まえたぜ。ま、確かにお前の技術は高かった。けど、圧倒的に力不足だ。戦うための力がないから、弱いからこうなる。そうさ、弱さは罪だ、弱いから誰も助けられねぇ、弱いから理不尽に傷つけられる」

 

 「それは俺に言っているのではなく、自分に言い聞かせているな。己の心をだまなければ悪さえ成せぬか」

 

 「‥‥‥いちいちイラつかせてくれる。けど、これでお終いだ」

 

 少女は俺を吹き飛ばさんと力をためる。

 

 「じゃあな、骸骨野郎。あの世で一足先に、閻魔様に挨拶してくれ。いずれはあたしも行くからよ」

 

 ‥‥‥ここまでか。まあ、時間は稼げた、おそらく風鳴翼も到着するだろう。その後のことは俺も知らん、決める力もない。

 

 そうして消し飛ばされる覚悟を決める。しかし、そうはならなかった。

 

 突然、あたり一面が光照らされる。光の方向を見るとそこに原因のものがあった。

 

 「デュランダル!」

 

 高まるフォニックゲインにあてられたのか、その力を覚醒し始めていた。

 

 「こんな時に目覚めるのか、あともう少しだってのによ!」

 

 目の前の少女は、今まさに止めをさそうとしていたのにそれを邪魔されていら立ちを隠せない。

 

 「ッ!ああ、もう、クソ!」

 

 しかし、第一の目的はデュランダル。それを忘れていなかったのだろう。周りのロボットたちがデュランダルめがけて走っていくのを確認すると、少女もデュランダルに向かっていく。

 

 「お前ら邪魔なんだよ!あれはあたしのだ!!」

 

 ネフシュタンでロボットたちを砕きながらデュランダルに手を伸ばす。あともう少しで手が届きそうというところ。

 

 「痛!」

 

 だがそうはさせない。気付かれぬように放ったナイフが手に突き刺さる。わずかな足止め。だがそれで十分だ。

 

「とった!」

 

 「しまった!」

 

 その間に立花響がデュランダルをつかむ。そのまま、逃げ回ることが出来れば最悪デュランダルだけでお守ることが出来る。

 

 「ぐあああああああああああああああ!!!」

 

 しかし、デュランダルをつかんだ響は突如叫び始めたかと思うと、その姿が黒く染まっていく。

 

 「暴走だと・・・?」

 

 デュランダルのエネルギーにあてられたか。響の絶叫はデュランダルの輝きと共にその強さを増していく。

 

 「ノイズども!全方位から一斉に突っ込め!」 

 

 デュランダルを奪おうとノイズに指示を出すが、それに反応したのか響はデュランダルを振りまわす。その強大な光の奔流でノイズたちが消し飛ばされていく。あの大量のノイズたちが。

 

 「そんな、馬鹿な!」

 

 ネフシュタンの少女の悲鳴もむなしく、ノイズたちはすべて倒された。しかし、そこで響は止まらない。

 

 「アアアアアアアアアアア」

 

 「よせ響!」

 

 あの立花響が人を殺そうとしている。それはいけない。君がそれをしてはいけない。勝手なものだ、あんなに殺意が持てないなら去れと言ったのに持った瞬間止めようとするとは。

 

 なんとか立ち上がろうとするが、ダメージのせいかうまく立てない。そうしてもたついているあいだにネフシュタンに向けて斬撃が放たれる。

 

 「畜生ォォォォォォォ」

 

 そのまま、光に飲み込まれる。

 

 「こんなとこでも、間に合わないとはどれだけ俺は弱いんだ!」

 

 響のもとへ体を引きづっていく。まだ、響にはデュランダルによる暴走が終わっていない。何とかそれを終わらせる、それが俺のスカルギアならできるはずだ。制御にかけては随一なのだから。

 

 「正気に戻れ響。君にその姿は似合わない」

 

 デュランダルを握った響の手に手を重ねる。エネルギーを制御して無理矢理放出させる。俺の体にもその熱が伝わり体が焼けるにおいがする。心なしか、スカルギアも反応している。今までこんなことはなかったのに、大量のフォニックゲインを浴びて活性化している。

 

 しばらくして、ようやく制御が完了し、立花響が崩れ落ちる。とりあえずようやくこれで終わったか。

 

 「アアアアアアアアアアア!」

 

 どうやらまだ終わってはいないらしい。ネフシュタンの少女は生きていたらしく、瓦礫の中から立ち上がる。立花響が人殺しにならずに済んだことは嬉しいが、もはや戦える者などいない。

 

 「よくもやってくれたな、融合症例第一号!さっさと起きてあたしと戦え!必ずぶちのめしてやる!」

 

 少女の姿はネフシュタンによって再生されていたが、無理な再生だったのかところどころにその影響が出ている。肌の一部にはヘビの鱗の様なものが浮かんでいるしその眼もヘビに近づいている。

 

 「青銅のヘビの鎧を纏いしものよ。一刻も早くその鎧を脱いだ方がいい。そのままだと、人ではなくなるぞ」

 

 「何馬鹿なことを言ってやがる!いいからあたしと戦え!そうじゃなければ」

 

 

 「そうじゃなければ何だというのか?」

 

 空から翼が現れる。ようやく到着したのだろう。

 

 「すまない、遅くなった。立花は・・・」

 

 「気を失っているだけ・・・と言っていいのかは分からないがとりあえず今は大丈夫だ」

 

 「そうか。それであなたはどうする?このまま私と戦うか?」

 

 「‥‥‥チッ」

 

 悔しそうに舌打ちした後、立ち去っていく。消耗した身で、風鳴翼と戦うのは得策ではないと判断したらしい。

 

 「とりあえず、デュランダルを守り切ることが出来たか」

 

 ボロボロの身でようやく腰を落ち着けることが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「投入した対ノイズ兵器試作型、全機ロストしました」

 

 「20分。少々予定してたより早いな。まだ、実践には通用せんな」

 

 だが、ノイズたちに対抗する道は開けた。それを確認できただけでもよいと納得させる。

 

 「今回の共闘で、当分の間は日本政府との協力体制は続くだろう。あわよくばデュランダルの確保もしたかったがそれは欲張りすぎか。しかし、あのネフシュタンをたたくことが出来なかったのは惜しいな」

 

 しかし、もうすでに過ぎたことを気にしても仕方がない。思考が次の作戦に移っていくが、そこに待ったがかかる。

 

 「ほ、ホグート様!わずかですが、例の反応が!」

 

 「何!」

 

 モニターにデータを移させる。そこにはわずかではあるが、とある特殊な波形が確認されていた。

 

 「そうか、デュランダルだ。あれの強大なフォニックゲインで覚醒が始まりかけているのだ」

 

 思わぬ収穫だ。完全聖遺物のフォニックゲインがカギであることが分かるとは。

 

 「今回の戦い。我々が生き残るために勝たねばならんが、もしかするとその先も決めることが出来るかもしれない」

 

 アレが目覚めればあの二体も目覚めさせることが出来るし、盟約により奴らも協力する。そうなれば、その功績によって私ににも何らかの報酬がもらえるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はあ、はあ、はあ。クソ、熱い、痛い、苦しい」

 

 体をネフシュタンが侵食してくる。今までにもこういうことはあったが今回は特にひどい。デュランダルの攻撃を受けたからか。

 

 デュランダル。フィーネからの指示。それを果たすことが出来なかった、フィーネの信頼を裏切ってしまった。それにフィーネは、あれがあれば計画がさらに進むといった。それなのに・・・

 

 「あの骸骨野郎め。あいつさえいなければ・・・」

 

 誰にも見つからないように路地裏を歩いていく。フィーネになんて言われるだろうか、失望されるだろうか。

 

 『それは自分に言い聞かせているな』

 

 「うるせぇ・・・」

 

 自分に言い聞かせている?違う、弱ければ何も守れない、何もできない。現に弱いからあたしはこうして無様をさらしている。

 

 そんなあたしの思いを、聞いてくれる人もいらず、あたしは自分にため込むことしかできなかった。

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