我が名は畝傍!艦これの世界にバグ艦男としてログイン!   作:高任斎

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入院中にちょっと反省しました。
下ネタからほのぼのまで、おまけ話を5つまとめて皆さまへ。


姫様覚醒の章
2:提督と畝傍のその後と、鎮守府の愛しき日々。


 おまけ1:提督は今日もハイテンション。

 

 

 あの『畝傍』に怯えて涙目で退避した艦娘に関しては何も言うまい。

 俺だってあの立場に置かれたら逃げる、誰だって逃げる。

 どう考えたって、女の敵だ。

 つーか、深海棲艦にとっても敵だろ、間違いなく。

 姫級、鬼級がずらりと集まって、殺気立った様子がいい証拠だぜ。

 あれ、もしかしてあいつ、ほぼ世界の敵じゃね?

 

 ……っていうか、なんで突っ込むんだよ!

 艦隊戦っつったら、艦砲射撃とか、魚雷とか、艦載機による爆撃とかよぉ!

 なんでお前一人だけ、ストロングスタイルなんだよ!

 あれか!『関節技は王者の技よ』とか言い出すのか!

 やべえ!戦艦水鬼が3人もいやがる!

 前に出てきて……重量級で囲んでタコ殴りにするつもりだろ、ありゃあ。

 

 チクショウ!

 少しでも心配した俺が馬鹿だったよ!

 いきなりおっぱい鷲掴みとか尊敬するわ!

 尻掴んで寝技に持ち込むとか!

 チクショウ!

 なぜ俺には戦う力がなかった!

 提督は見ているだけしかできないのか!

 見ていてやる!

 見ていてやるとも!

 お前を一人戦場へと特攻させた俺の!提督の義務だからな!

 あの凶暴な戦艦水鬼が、ねじ伏せられて涙目とか、萌えるわ!

 つーか、俺の主砲がやべえ!

 どうした畝傍、何をためらってる?

 ここからの鬼畜残虐ファイトが、お前の持ち味……。

 

 あいつ、まさか……。

 相手は戦艦じゃなく、綺麗なお姉ちゃんだって言われて……ためらってるのか?

 

 バカ野郎!

 今更手遅れだ!

 やられるぐらいならやれよぉ!

 いいところで手を止めるんじゃねえ!

 その手を振り下ろして……。

 尻叩きかよ!

 いや、悪くない!

 尻叩きの連打で下半身の艤装が砕けて……イエス!

 見えそうで見えないチラリズム。

 気をつけろ、仲間を助けようと戦艦水鬼が……。

 いやっほおうぅ!

 ねじ伏せた戦艦水鬼の生尻に、戦艦水鬼の顔面押し付けるとか、鬼畜!色魔!畝傍!

 うはっ、あの反応!

 尻に顔を突っ込んだ方も、尻に顔を突っ込まれた方も、薄い本が厚くなるぜ!

 今日はサービス満点だなぁ、畝傍!

 世界が敵に回っても、俺はお前を許すぜ!

 

 

 

 

「……あー、悪い。なんかほとんど逃がしちまったわ」

 

 どこか申し訳なさそうに呟く畝傍の肩を、俺は軽く叩いてやった。

 赤く腫れあがった尻を手で隠しながら、涙目で腰が引けた姿勢のまま逃げていく姫や鬼達とか、どんなご褒美だよ。

 昨日とは違って、俺は心から言えるよ。

 ありがとう、と。

 お前にはぜひ、爆乳大要塞と戦ってもらいたい。

 できれば今日のノリで。

 

 

 そしてその夜。

 畝傍の存在に怯えて、何人もの艦娘が俺のもとにやってきた。

 

「提督…あの、怖くて……一緒に寝てくださいませんか?」

 

 畝傍ぃぃぃ!

 最高だよお前。

 いや、お前が最高だ。

 お前のためなら死ねる。

 いや、本当に死にはしないけど、その気持ちだけは本当だ。

 俺はせいぜい、彼女たちを気遣う提督の顔をして、望みを叶えてやるだけでいい。

 

 おやすみなさい。

 

 

 

 おまけ2:畝傍は淡々と日々を過ごす。

 

 

 朝いつもの時間に目を覚ます。

 艦娘達と鉢合わせしないように静かに移動。

 海を見ながら、軽く体操。

 終わったら牛乳を飲む。

 ああ、そろそろか。

 

 

 ふぉぉぉぉぉん!

 

 

 鎮守府襲撃時の迎撃に関しては、提督から自由裁量権ってやつをもらった。

 俺はいつものように海へと走り出し、敵艦隊を追い払う。

 そう、追い払う、だ。

 自分でもどうかしてるとは思うが、軍艦にしか見えないあれが、綺麗なお姉ちゃんだと思うと、どうしても、な。

 あの時、艦底に肘を落とせなかった自分を、提督は許してくれた。

 いや、何も言わないでくれただけか。

 聞けば、攻撃を重ねると艤装が壊れて……良くわからないが、『イイカンジ』になるらしい。

 まあ、攻撃力を失うと逃亡するしかないから、そういうことなんだろう。

 なので、最近はもっぱら平手打ちを使ってる。

 艦底がお姉ちゃんの尻っていうなら、まあ、尻叩きってことになるのか。

 悪いことをしたら尻叩きだ。

 これは宇宙の真理であり、宇宙の愛だろ。

 だから問題ないんだと思う。

 このおしおきでも、時折敵の軍艦は沈んでいく。

 俺の友人に、ちょっと変わった趣味の男がいてな。

 この平手打ちというか、尻叩きにも、痛みを与える尻叩きと、ダメージを与える尻叩きがあるんだと、俺に熱心に説明してくれた。

 手首を使って尻の表面をはじくような尻叩き。

 これは強い痛みを与えるが、身体そのものには深いダメージを与えない。

 それと、腕から手のひらまでを1本の棒とみなして叩きつける感じの尻叩き。

 これは体の芯までダメージが残る。

 運動エネルギーを残さず伝達させるわけだな。

 基本、前者はパンと甲高い音になって、後者は鈍い打撃音になりやすい。

 

 いや、なんでこんな話をしたのかというとだな。

 俺としては、この鎮守府に襲撃してこないように痛みをもって躾をしたいわけなんだ。

 だから、色々と使い分けたりしてる。

 ……たぶん、俺の気のせいだろ。

 さて、そろそろ艦娘がいなくなっただろうから朝飯を作って食べよう。

 

 

 昼、自分で作った飯を食べて、牛乳を飲み、腹ごなしに体操をする。

 ああ、そろそろか。

 

 

 ふぉぉぉぉぉん!

 

 

 1日3回、朝、昼、夜と、ほぼ決まった時間に襲撃だ。

 前は、深夜とかの襲撃もあったんだがな………さすがに寝てる時はきついわ。

 でも、なんかいつの間にか、深夜の襲撃はなくなった。

 よくわからん。

 さて、追い払いに行ってくるか。

 

 ……気のせい、じゃないのか?

 正直、俺には軍艦の違いって大きさとか、特徴的な部分がないとほとんど区別がつかなくてな。

 でもなんか、最近いつもいつも同じ軍艦が襲撃にやってきてる気がして仕方がない。

 朝はコイツ、昼はコイツ、みたいな。

 夜は暗いからな、そこまではわからない。

 

 

 

 そして夜。

 自分で作った夕飯を食べ、腹ごなしに軽く体操をして……牛乳は風呂上がりのために置いておく。

 ああ、そろそろだ。

 

 

 ふぉぉぉぉぉん!

 

 

 夜の戦闘は、視界が不十分なだけに厄介だ。

 それは敵の艦隊にとっても同じなのだろう。

 いつものように軍艦を掴んでひっくり返す。

 おそらくは同士討ちを恐れてなのか、夜はこの状態での敵艦隊の援護の攻撃が極端に減る。

 ついでにいうと、ひっくり返された軍艦が朝や昼よりも暴れない。

 ピクリとも動かなくなった軍艦から離れたら、特に沈んではいかないことに気づいた。

 暗いせいでよくわからん。

 

 夜の迎撃から帰ってくると、なぜか提督はいつもトイレから出てくる。

 まあ、タイミングの問題か。

 そして俺は、1人ひっそりと風呂に入り、牛乳飲んで寝る。

 明日の朝の襲撃に備えよう。

 こういうきちっとした生活は嫌いじゃない。

 

 

 

 おまけ3:姫は順調に病んでいる。

 

 

 失われた左腕の肘から先。

 それが少しずつ、少しずつ、復元していくのを眺めるアタシ。

 笑っているらしい。

 言われて気づいた。

 

 今日も誰かが、あの男を抹殺せんと鎮守府に襲撃をかけている。

 何度も何度も。

 繰り返し繰り返し。

 そして今日も、尻を叩かれただけで帰ってくるのだろう。

 たまに帰ってこないのもいる。

 繰り返される襲撃の中。

 ただ一度の襲撃で、あの男に怯えて二度と参加しない姫がいる。

 何度も何度も、毎日のように襲撃に参加する鬼がいる。

 それを見ながら、アタシは笑う。

 

 アンタら、楽しそうね。

 

 口には出さない。

 これはアタシだけのものだ。

 いずれ誰かが気づくとしても、誰かがそれに気づくまでは、それはアタシだけのものだ。

 誰かがそれに気づいたとしても、これはアタシだけのものだ。

 

 肘から先を吹き飛ばされたとき、怒りがあった。

 淡い、痛みも感じた。

 吹き飛んだ肘から先を、あの男が手にしたときの困惑。

 それを、アタシの中に突っ込まれたとき。

 怒りがあった。

 痛みもあった。

 それだけじゃない何かがあった。

 わけのわからない何かがアタシの中にあった。

 その恐怖が、アタシを逃走させた。

 

 ナンダコレハ?

 何ダ、コレハ?

 何だ、これは?

 

 あの男を抹殺すると、姫や鬼が集まって鎮守府に襲撃をかけた。

 アタシは苛立った。

 自分がそれに参加できないからか?

 自分であの男を殺せないからか?

 

 赤くなった尻を手で隠しながら、姫や鬼が帰ってきた。

 アタシははっきりと怒りを覚えた。

 あの男が、どんな風に、みんなを。

 心が乱れた。

 アタシにあんなことしておいて……。

 襲撃の様子を聞いて、アタシは安堵した。

 

 アタシは……特別だった。

 

 アタシは笑う。

 思いだしたから。

 あれは、『恥ずかしい』という想い。

 懐かしい。

 そう、懐かしい、想い。

 想いだ。

 感情だ。

 懐かしい感情が、アタシのものになった。

 

 なんどもなんども尻を叩かれに鎮守府に向かう姫や鬼たち。

 アンタらは、尻を叩かれに行くんじゃない。

 痛みを求めているわけじゃない。

 アンタらは、自分の中の、懐かしい何かに惹かれている。

 遠い遠い、昔の記憶。

 その記憶が、アンタらを鎮守府へと向かわせる。

 男に捕まり、尻を叩かれ、その懐かしさを味わう。

 いずれ誰かがそれに気づくだろう。

 

 ……でも多分、あいつらは尻を叩かれたいのだと勘違いしたのだろう。

 あいつらはいつも夜にイク。

 そして、だらしのない顔をして帰ってくる。

 気持ち悪い。

 どろりと濁った……とにかく、良くない感じがする。

 あいつらは痛みを求めてる。

 いや、痛みを通じて……アタシの知らない何かを、あいつらは知ってる……のか。

 心がざわざわする。

 これも、懐かしい、想い……なのか。

 嫌な、気分だ。

 アタシは、自分の左腕を見つめる。

 心が落ち着く。

 

 遠い遠い記憶の中の、懐かしい思いがアタシの中を満たしていく。

 アタシは特別。

 あの男の特別。

 

 アタシの左腕が手首まで復元した。

 もうすぐだ。

 待ち遠しい。

 もう、すぐそこ。

 苦しいのに、待つことが楽しい。

 どうでもいい。

 すぐわかる。

 アナタに会えば、アタシはまたそれを自分のものにできるだろう。

 何度も。

 何度も何度も何度も何度も。

 アタシはアナタに会いにいく。

 アナタは、アタシのものになる。

 アナタを、アタシだけのものにする。

 

 アタシは笑う。

 暗くて昏い水底で。

 いつかアタシは……。

 私になる。

 

 

 

 おまけ4:鎮守府はようやく態勢を整える。

 

 

 

 元に戻った。

 俺がこの世界に転移してきた時の状態まで、ようやく回復した。

 感慨深いものがある。

 いきなりこの世界に転移してきて絶賛混乱中に、鎮守府襲撃だった。

 鎮守府の艦娘のメンバーさえ把握できてない状態。

 これ、艦これじゃね?

 おぼろげに認識して、襲撃してきた敵艦隊を確認して吹いた。

 と、いうか吐きそうになった。

 後になって考えると、正直最善の手をうったとは言えない。

 しかし、艦これプレイヤーとして提督業務をかなりやりこんでなければ即壊滅レベルの襲撃だったのは自信を持って断言できる。

 長時間にわたる戦闘の末、かなりの被害を受けたが、なんとか撃退に成功。

 そして後始末。

 一息つき、さてこれから情報収集をと思ったところで、再びの襲撃だ。

 最初に思ったのは、『殺しに来てやがる』だった。

 それが、神様ってやつか、世界なのかはともかく、まあ、そういうレベルのあれだ。

 数が足りない。

 小破状態の艦娘はもちろん、中破状態の艦娘も投入した。

 胃がキリキリ痛むような激戦の末、なんとか生き残った。

 艦娘を1人たりとも轟沈させずにすんだのは奇跡に近い。

 提督としての俺の力量と運ってやつを、少々うぬぼれていいぐらいの資格はあるはずだ。

 そしてまた後始末……というか、後始末すらできない状態に陥った。

 ドッグは満杯で、高速修理も品切れ。

 はっきり言って、死屍累々だ。

 ああ、野戦病院ってのはこんな感じなのかよ……と、痛みに呻く艦娘を修理というか、治療すら受けさせられない状況に俺の胃がマッハで荒れていくのを感じた。

 そしてようやく、まともな情報収集に取り掛かることができた。

 情報収集の結果。

 細かいことはともかく、次の襲撃で物理的に詰む。

 と、いうか、俺の胃と精神と命が詰む。

 やっべ、新しい鎮守府でやり直そうぜ……などと1分ほど現実逃避を楽しんでから、即ギャンブル決定。

 そして、襲撃の警報に怯えながら夜を過ごし、朝日が昇り、やがて出てきたのが『あれ』だ。

 そこにまたまた鎮守府への襲撃だ。

 絶望と、諦めと、恐怖と……どこのパンドラの箱か。

 

 鎮守府が動きだす。

 艦娘とともに、鎮守府が回りだす。

『畝傍』には悪いが、奴の存在が、提督である俺と艦娘との素敵なコミュニケーションを生み、俺にそこそこハッピーな提督生活ってやつをもたらしてくれている。

 しかし、しかしだ。

 今の鎮守府は、相変わらず詰んでいる。

 

 毎日毎日、1日3回の襲撃ってどうなってんだよぉ!

 それも、姫級、鬼級が、大挙してのハルマゲドンアタックだ!

 鎮守府の守りは万全かもしれねえが、艦娘を遠征させられねえよ!

 チクショウ、これが戦わなければ生き残れないってやつか。

 いや、夜はいいんだ、別に。

 ああいう世界は興味なかったんだけど、なんというかやばい。

 ウチの艦娘達には見せられないぐらいやばい。

 妖精さんは、『キャー』とか言いながら、ガン見してる。

 あれを見たあと、俺の心は澄み切って、将来の戦略に思いを馳せる。

 そして駆逐艦ハーレムプラスアルファに囲まれて寝る。

 と、いうか。

 子供って体温高くて、少々夜が寝苦しい。

 

 眠りにつくまでの間。

 少しだけ、ほんの少しだけ、バグでチートな『畝傍』の事を考える。

 前にちょっと話したけど、『巨乳』って言葉は、子供の頃になかったなあって言ってた。

 20年の世代ギャップってやつを、そんな言葉で知って妙な気分になったわ。

 1995年の日本って、『ヤンデレ』って言葉はやっぱりなかったんだろうなあ。

 あの感じ、俺が思うに、近いうちに絶対、鎮守府に侵入してくるやつが出てくる。

 鎮守府内で遭遇した時も、『畝傍』の目には『軍艦』に見えるんだろうか?

 あいつに執着し始めているとしか思えない姫や鬼が、ほんの少しだけ哀れだと思わなくもない。

 

 じゃ、おやすみなさい。

 

 

 

 おまけ5:畝傍の世界は開かれていく。

 

 

 最近やることが増えた。

 いや、1日3度の体操と迎撃と牛乳は相変わらずだが。

 怪我人だらけだったらしい艦娘が回復したらしくて、まあ、鎮守府内をうろつく頻度が増えた。

 顔を合わせるたびに、尻や股間を手で隠しながら逃げてく姿を見せつけられると、さすがの俺も凹む。

 まあ、何が不便かというと、どうしても食堂でな……出会っちまうわけだ。

 

 なので、鎮守府の隅っこで迎撃の合間に畑を作ってみた。

 まあ、最初は手軽に収穫できる二十日大根ってのは定番だろ。

 二十日大根と言っても、収穫できるまでには大体1ヶ月かかる。

 本当に、二十日で収穫できることはまずない……ないはずなんだがなあ。

 初収穫は、少しだけ自分で食べ、あとは全部、畑に返す……砕いて、干して、鋤きこんだ。

 土ってのは、時間をかけて作っていくもんだ。

 土に馴染むのを待つあいだに、別の場所を畑にする。

 そこでもちょっとしたものを育て、干して、砕いて、鋤き込む。

 そうやって畑を広げ、今は色々と手を出して、収穫できる状態になっていた。

 やっぱ、土をいじるのはいいな……戦闘ばっかりじゃ気が滅入る。

 壊すのが戦闘だとすれば、生産することで心のバランスを取るってのは間違ってないだろう。

 まあ、本音を言えば、この世界の農作物の生育はどこかおかしい。

 この土と気候じゃダメだろってモノも、それなりに育ってしまうし、生育サイクルも短い。

 おかしいって言うと、ちとあれか。

 日本の常識が当てにならない世界ってことにしとこう。

 

 足を運べば、海で魚も釣れる。

 夜の襲撃の前、いわゆる釣りをする人間にとっては夕まずめって時間帯だ。

 防波堤のそばでコマセをまいて糸を垂らせば、ひょいと小アジが釣れる。

 身が柔いから、刃物なんか使わずに指先でさばいてから洗い、酢に漬け込んでおくと、夕食の1品に変わる。

 さばいた小アジの内臓をまけばまた小アジなどが寄ってくるので再び糸を垂らす。

 まるで子供の頃に戻ったかのような気持ちになれる。

 かなり楽しい。

 磯というか、岩場に足を運べば大物も狙える。

 これは空振りすることもあるが、楽しい。

 特に目的もなく五目釣りをしてた時に、上がってきた魚影に横縞の模様が見えたときは、思わずはしゃいじまった。

 石鯛だぜ、石鯛。

 海の上を歩けるって、釣りにはめちゃくちゃ便利だな。

 もちろん美味しく頂いた。

 骨で出汁をとったすまし汁とかも……まあ、自分で釣り上げた分、補正がかかってるかもしれないが。

 襲撃がなければ沖の方まで足を伸ばしてみたいんだが、無茶は言えない。

 

 畑のそばに、竈を作った。

 食堂じゃなく、ここで飯を作れば艦娘と顔を合わせることもない。

 薪は、流木やら、足を伸ばして森や林などから……このあたりはあまり人の手が入ってないのか、荒れ放題って感じだ。

 田舎者の血が騒ぐぜ。

 下草を刈り、畑の肥料にするため陽に晒す。

 日当たりの悪いところの木を切り倒し、停滞していた林のサイクルを回転させる。

 切り倒した木は薪にして、枝葉は砕いて燃やし、灰を畑にまく。

 さすがになかなか手がまわらない作業量になるから、あまり根を詰めないようにしよう。

 でも、薪の保管場所は早く増設しないといけないな。

 

 スクラップを拾ってきて、とんてんかんと、ソーラークッカーなんかも作ってみた。

 まあ、素人に毛が生えた程度のもんだ。

 時々誤解されるが、これでなんでも調理ができるってわけじゃない。

 天候と季節にもよるが、60~80度まであっためるのが限界だろう。

 だが、時間をかける煮込み料理なんかには都合が良い。

 この前、提督にも食わせてやった。

 料理には味見役が必要だ。

 自分の舌だけを頼りにすると、いつの間にか袋小路へと迷い込むこともある。

 

 うん、まあ、なんだ。

 料理してたら、なんか釣れた。

 頬から顎にかけてのシャープなラインを、艶やかな黒髪が強調している美人のお姉ちゃんだ。

 ああ、うん、多分美人のお姉ちゃんだ。

 鍋の中身をガン見している。

 口が開いて、ヨダレなんかもたらしている。

 それでも美人なのだから、多分かなりの美人だ。

 なんとなく、食べ物に釣られて顔だけを見せている野良猫を連想した。

 何も言わず、鍋の中身を器によそって近くに置いておく。

 そして俺は、さりげなく畑の世話をしたりする。

 器の中身は綺麗に無くなっていた。

 鍋の中身も綺麗に無くなっていた。

 

 おい、美人の姉ちゃん。

 怒らないからちょっとこっち来い。

 これは嘘だ、俺は怒っていた。

 やはり逃げられた。

 でも、尻を隠すような仕草はなかった。

 俺はため息をつき、また料理を作り始める。

 

 

 ふぉぉぉぉぉん!

 

 いけねえ、迎撃の時間だ。

 

 ……少し八つ当たりをしてしまったかもしれない。

 いつもより、海中に沈んでいく軍艦の数が多かった。

 

 

 海から戻ってきたら、なんかソーラークッカーを眺めてる姉ちゃんがいた。

 俺を見て、慌てて逃げていったが……何なんだ?

 畑に目をやると、スクール水着の少女が西瓜を抱えていた。

 結論から言う、逃げられた。

 悪いことをしたら尻叩き……だな。

 

「ちょっ、待てよ!なんで俺の体を抱えて、待てこら!待てや!俺はただ、みんなでスイカ食べたいなあって言っただけだ!弁護士を要求する!」

 

 俺が提督の尻を手加減しつつ叩いていると、扉の影から誰か見ていた。

 スケッチブックか何かにせっせとペンを走らせながら。

 なんだか知らないが、艦娘ってのにも色々いるらしい。 




提督はちゃんと有能だし、畝傍にも少しずつ誰かが接してくれる……はず。
そして姫は可愛い。
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