我が名は畝傍!艦これの世界にバグ艦男としてログイン!   作:高任斎

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おまけの話を5つまとめました。
今回はやや黒いです。
あと、艦娘が轟沈する描写があるのでご注意を。


3:鎮守府の愛しき日々は続いていく。

 おまけ6:大本営からのお客様。

 

 

 1日3回、鎮守府襲撃。

 姫級、鬼級、勢揃い。

 大本営よ、これがラ〇トハルマゲドンだ!

 

「信用してくれるわけねえじゃん、こんな報告書!」

 

 俺は、ばっさぁーと、書類の束を撒き散らかした。

 

「あぁっ、ダメですよ提督。もう……」

 

 などと、秘書艦に可愛く怒られて、俺は瞬時に癒された。

 切り替えが大事なのだ。

 戦場では何が起こるかわからない。

 状況に応じての対応の速さと変化が求められる。

 この切り替えの速さが、提督に求められる能力だ。

 そして、艦娘のやる気を引き出すのも提督に求められる能力だ。

 怒られて反省する。

 たしなめられて反省する。

 忠告を受けて、考慮する。

 自分が、自分たちが提督を支え、役に立っていると自覚させることで、作業能力は向上する。

 決して、艦娘に構われたいとか、お世話されたいとかいう理由が主なのではない。(ないとは言ってない)

 ついでに言えば、俺は艦娘の性質や能力の違いを知った上で、対応を変化させている。

 この細やかさも、提督に求められる能力だ。

 そう、俺が提督だ。

 提督とは鎮守府で一番偉い人だ。

 そして『上には上の……』という言葉があるように、この世界には各地の鎮守府を統括する『もっと偉い人』が存在するわけで。

 つーか、今更だけど……この世界において、俺の知らない俺の経歴なんてものが存在してた。

 つまり、書類の上では、俺は足の先から頭のてっぺんまでこの世界の人間ってことになる。

 そしてどうやら、『俺』は鎮守府襲撃によって戦死した前任者の後釜としてここにやってきたという状況だったらしい。

 転移じゃなくて憑依なのかとも思ったが、俺の背格好というか、顔や体のサイズは俺の記憶と相違ない。

 中学校の担任が高校受験前にくれたアドバイス。

 

『5分考えてわからないときは、諦めて次の問題に取り掛かりなさい』

 

 うむ、ほかにも問題があるのだからそちらに取り掛かる方が建設的。

 やはり学校教育は大事だ。

 そう割り切って、そのことについては深く考えないことにしてきた。

 これは、後回しではない。

 前任者も鎮守府襲撃食らって……の割には、全体としてのバランスはともかく、艦娘とかちゃんと出撃が可能な状態だったんだが。

 もしくは、俺が提督に就任するにあたって、整備されたってことなのかねえ?

 だとすると、全滅だったってことになるが。

 まあ、今はそんなこともどうでもいい。

 どうでもいいことを考えられるようになっただけ、余裕が出来たとも言うのか。

 

 最初の2回の襲撃に関して、かなり遅れたが俺は正確に報告書を上げた。

 ほぼ壊滅状態になったこと。

 回復までには時間がかかること。

 本当のことをそのまま書類にするのはそれほど難しくない。

 何が難しいかっていうと。

 本当じゃないことを、本当であるかのように報告書を上げることだ。

 なので、遅々として進まない艦娘の回復というか整備。

 また、それを妨げる鎮守府襲撃。

 もちろん、その規模に関しては色々と修正しつつ。

 

 回復してはまたダメージを受け、それでも鎮守府は前に向かって歩いている。

 

 そういう、日本人好みの物語を綴っていくのも限界がある。

 考えてもみてくれ。

 この鎮守府で、姫や鬼たちのオールスターハルマゲドンが毎日開催されてるってことは、ほかの鎮守府では手薄になってるってことだろう。

 まあ、つまり、なんだ。

 

 各地の鎮守府では快進撃がつづいてるってことで。

 

 自慢じゃないが、俺は空気が読める男だ。

 エアリーディングは紳士の嗜みよ。

 なので、俺の報告書は、襲撃戦力に関して少しずつ『真実』に近づけていくことになった。

 それでもなお、真実には程遠いのだが。

 真実は報告書よりも奇なりとはよく言ったものだぜ。

 

 ……こういう遠まわしな言い方ができるようになったってことは、俺も大人になったってことなのかな。

 つまり、あれだ。

 

 来ちゃった。(笑)

 

 

 

 おまけ7:提督は畝傍と話を詰める。

 

 

 提督から話を聞いて、俺はちょっと考えた。

 結局、提督がどうしたいかってのを決めてもらわないと、何とも言えないな。

 

「それを相談に来てんだっつーの」

 

 いや、俺はそもそも『艦隊これくしょん』ってゲームのことを知らなかったからな。

『艦これ』ってのは、敵の軍艦が鎮守府に押し寄せてくるのをひたすら防衛するゲームなのかと。

 

「そんなマゾゲー、面白いのかよ!?」

 

 ミサイルコ〇ンドとかそのまんまだけどな。

 シンプルで過酷でパニックで、俺は好きだったな。

 まあ、1980年代と90年代じゃゲームの傾向が変化してたのは確かだが、過酷な状況を与えられてひたすら耐えるとか、そういうゲームがゴロゴロしてたんだが。

 やっぱ、あれだよ。

 より強く、よりハードに、逆境がゲーマーを鍛える、逆境が足りないなら自らを縛って逆境を創り出せ、ライトゲーマーを否定はしない、しかしゲーマーの本質は求道者である、ってな。

 ゲーマーの魂は、克己心とともにあったのさ。

 ギャルゲーのハーレムなんかも、その本質は『厳しいスケジュール管理を己に課した結果』だと俺は思っている。

 一種の縛りプレイさ。

 現実的に考えりゃ、ハーレムなんて面倒くさいだけだろ。

 俺の時代のゲーマーの思考ってのは、そんなもんだ。

 

「そ、そうか……20年って時の流れはすげえな…」

 

 諦めたように、提督が2015年というか、ゲームの事情みたいなもんを語ってくれた。

 それを聞いて、正直、驚きというか、悲しみみたいな感情が浮かんだのは確かだ。

 しかしまあ、仕方ないのか。

 市場の縮小傾向、企業体力のないメーカには、冒険のリスクはとれない。

 売れ線を狙い、シリーズモノで計算し……サラリーマンをやっていた俺には、それが理解出来るだけに悲しかった。

 しかし、大勢が参加するネットゲームってのは、テーブルトークやってたからわかるが、ソシャゲってのがよくわからねえな。

 あと、リアルタイムに連動したゲームシステムってのも……今ひとつピンとこねえ。

 俺がそう言うと、提督が嬉しげに語り始める。

 それを聞きながら、20年という時間の流れを思う。

 変わるものもあるだろうが、やっぱり変わらねえよ。

 ゲームについて、こうして楽しげに語る奴がいる。

 ゲーマーだ。

 ゲームってやつは、どういう内容であっても、どういうプレイをしていても、そこに何かしらの救いがあるもんなんだ。

 まあ、働き出すとゲームやる時間が捻出できねえんだけどな。

 ゲームは1日1時間までというが、それはつまり『1日最低1時間ゲームで遊べない生活は、健康で文化的な最低限の生活を保証されてない』ってことだろ。

 俺の自分語りとは全く関係なく、提督が自分の好きなゲームのことを語り続けている。

 これだ。

 これがゲーマー同士の会話だよ。

 各々が好きなことだけしゃべり続ける。

 仕事に追われて、積みゲーと積ん読を重ねながら忘れかけていたな、この懐かしい感覚を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 提督が連れてた、ちょっと天然で魔性っぽい艦娘に怒られた。

 

 

 これは仕方ない。

 ゲームはゲーム、現実とはちゃんと一線は引いてかないとな。

 うん、それが一番大事。

 そして俺は改めて、提督と現実について語り合う。

 

 つまり、あれだ。

 その、大本営からやってくる提督が、連れてきた配下の艦娘を指揮して、この鎮守府を守ってくれるって話だろ。

 やらせりゃいいじゃん。

 

「無理だって!絶対全滅する!」

 

 そうなのか?

 

「お前が1日3回、迎撃してる連中ってのは、いわゆる姫とか鬼とか呼ばれてる……その、あれだ、ボスモンスターなんだよ」

 

 提督は頭をかき。

 

「ド〇クエ知ってるよな?竜〇とかゾー〇とかが、大勢でやってきてると思ってくれ。本来は、複数の艦娘でタコ殴りにしてやっと1体倒すような敵なんだよ。それが12~18~24人コンスタントにやってくるとか、正しくハルマゲドン以外の何ものでもないレベル」

 

 ああ、なんとなく理解した。

 つまり、真面目に報告書作っても、誰も信用しないってわけか。

 ……やっぱり、やらせりゃいいじゃん。

 なんでって、そりゃあ……真実を理解してもらわないと。

 そうだな、どのぐらいの戦力を連れてくるかわからんが、全滅直前に2~3人を救出してやりゃいいか。

 その娘たちの治療をしてやりながら、続けて襲撃の様子を見せてやりゃ……え、夜はまずい?

 ああ、暗くて見えないからか。

 

「な、なあ……お前って、艦娘を見殺しにして平気なのか?」

 

 平気じゃないさ。

 慣れてもいけないと思う。

 偉そうな事を言っても、所詮俺は戦争を知らない世代で、甘やかされて育ったお坊ちゃんだ。

 だからこそ見捨てる。

 提督より上の立場の人間が、やるって言ってんだろ?

 責任も、負い目も、一切合切、その馬鹿に押し付けてやるさ。

 俺は体育会系の人間でサラリーマンだったからな。

 上に立つ連中のタイプはある程度理解してるし、本音は『自分のケツは自分で拭け』ってとこさ。

 それに、危なくなってすぐに助けると『お前らが邪魔をしたからだ』とか『お前らが言うことを聞かなかったから』とか言い出して、間違いなく提督に責任をおっかぶせてくるよ。

 後腐れなく全滅するまで放置すれば、残された俺たちに責任を回してくる。

 誰のせいでもないなんて綺麗ごとが通るのは、物語の中だけだ。

 社会や組織は、誰かのせいにして物事を片付けるようになっている。

 俺は田舎の人間だったからな、ドラマの話じゃなくてマジで不良がバイクで校舎の廊下を爆走しながら金属バットを振り回して窓ガラスを叩き壊していくとかあったからな。

 同年代の都会の人間がびっくりしてたよ。

 え、不良って言葉はもう死語だったって?

 ヤンキーは?

 ギャグとしてかろうじて使われるぐらい?

 ……マジか。

 まあ、いい。

 えーと、お前らの時代にも、学校の暴力事件とかあるんだろ?

 騒ぎになって責任を取らされるのは校長や担任だろうが、本当に校長や担任だけが悪いと思うのか?

 ありゃタダの生贄で、儀式の一環ってやつさ。

 提督は大学生だったんだろ?

 社会人になった先輩の物言いが『一概には言えないが』とか、『例外はあるけど』みたいな言葉を多用しなかったか?

 あれはな、日本ってやつは減点方式が転じて、断言したやつが責任を取らされる社会だからだ。

 社会人になると、そういう自己保身の技を覚えないと生きていけない。

 誰もが責任をとりたがらず、誰もが責任を他人に押し付けて自分を守ろうとする。

 例外もいるだろうが、見ればわかるよ、そういう連中はな。

 提督よ、腹をくくれ。

 真実がどうとかじゃなく、これは戦いだ。

 この鎮守府にやってくる連中の、心を折って折って折りまくって、二度と立ち直れないまでにたたきつぶせ。

 じゃないと……提督が潰されるぜ。

 

「い、いや、しかし……」

 

 考えてもみろ。

 この鎮守府が、その、ボス連中を引きつけているからこそ、ほかの鎮守府が戦いを有利に運べている。

 提督はやるべきことをやっている。

 むしろ評価されるべきだ。

 わかるか。

 お前は今、不当な評価を受けている。

 間違っているのはお前じゃない。

 守りたいものがあるなら戦え。

 守るべきもののために、心を鬼にしろ。

 

 

 

 

 

 

 

 俺は断言する。

 この提督、チョロイ。

 

 

 

 おまけ8:畝傍は初めて艦娘の戦いを見る。

 

 

 ほう。

 なるほど、これで戦場を俯瞰するように見て提督は指揮を執るわけか。

 俺は感心すると同時に、苦笑した。

 なるほど、ゲームの世界か。

 色々とありえない。

 それはさておき。

 大本営からのお客さんが、顔面蒼白でいらっしゃるけど大丈夫なのか?

 

「大丈夫じゃないだろうなあ……」

 

 ちなみに、最初お客さんは俺を見て首をかしげたが、提督はサラリと俺のことをこう紹介した。

『艦息(かんむす)です』と。

 2回ほど同じ質問をされたが、『艦息です』と言い張った。

 くく、いい根性してるぜ提督のやろう。

 そんな提督が俺を見た。

 

「お前ってさ。やっぱりあれが軍艦にしか見えねえの?あいつらが何か言ってるとか、聞こえねえの?」

 

 静かに首を振る。

 軍艦は軍艦でしかない。

 軍艦が喋るとしたら、中に人がいて、それをマイクか何かで喋ってんのかなぁ、程度にしか思わない。

 提督が何故かため息をついた。

 

「連中、目当ての誰かさんがいないからめっちゃ怒ってる。ひどいことになるわ、これ」

 

 

 

 

 

 

 ひどいことになった。

 

 

 

 

 

 やってきた艦娘のほとんどは轟沈し、生き残ったというか、俺が助けたのも半死半生状態。

 救出の際に毛布を被せる程度の気は利かせた。

 しかし、よりすぐりの精鋭と聞いていたが、脆すぎねえか。

 何故か、提督からツッコミを受けた。

 解せん。

 まあ、救出そのものはタイミングだけの問題だったというか、俺が姿を現した瞬間、全軍艦が俺をめがけて突っ込んできたからちょっとだけ焦った。

 まあ、ちょっと焦っただけでいつもと同じように追い払ったが。

 ちなみに、お客さんの提督は、2度目の襲撃に腰を抜かし、部屋で頭を抱えて震えたままらしい。

 念入りに心を折るため、お客さんの部屋に鎮守府襲撃の警報が大きく鳴り響くようにアドバイスしておいた。

 壊れかけのものは、下手に治そうとするより完全に壊したほうが後々やりやすい。

 骨と一緒だ。

 まあ、関節なんかはそうでもないが。

 俺がそう言うと、なぜか提督に睨まれた。

 甘いとは思ったが、そういうリーダーシップもある。

 とりあえずアドバイスはしておこう。

 お客さんの心がポキポキに折れたところを見計らってな、温かい飲み物でも持って行ってやれ。

 それでな、優しく語りかけてやれ。

 

『貴方は、この鎮守府の現状をどのように説明されてここに行けと命令されたのですか?』

 

 おそらく、お客さんは優秀なんだろう。

 色々と、そう、色々と考え始めるはずさ。

 あとは、優しく親身になって心配してやればいい。

 ファウストも言っている。

 心を折ってから説得せよってな。

 提督も被害者、お客さんも被害者、そうやって連帯感を育め。

 孤独を感じるものは、無意識に味方を求める。

 提督は、命をかけてこの鎮守府を守るとでも宣言すればいいさ。

 大っぴらにじゃなくても、現状維持のための援護射撃はしてくれるだろうよ。

 反対する奴?

 はは、そんな奴は、次の生贄じゃないか。

 この鎮守府で地獄を味あわせてやればいい。

 あのお客さんが、喜々として放り込んでくれるだろうよ。

 

『そこまで言うのならば、貴方があの鎮守府に乗り込んでみれば良いでしょう』ってな。

 

 戦争を知らない世代でも、闘争の仕方は知っている。

 生きるってことは、戦いの連続だからな。

 自由ってことは、味方の足を引っ張る自由もあるって勘違いしてる奴が多いからな。

 自由を保証する母体が倒れたら全部パーなのによ。

 いるのさ。

 自分がするぐらいは大丈夫だろうって、会社に損害与えるやつが。

 え?

 ずっと大学生でいたい、だと。

 はは、俺もそんなことを思ってた時期があったな……。

 

 

 ふぉぉぉぉぉん!

 

 

 おっと。

 もう、夜の襲撃の時間だったか。

 じゃあ、行ってくるわ。

 提督はお客さんの様子でも見てきなよ。

 え?

 提督は戦いから目を背けずに見守るのが義務だって?

 真面目なんだな、提督は。

 

 

 

 おまけ9:鎮守府は平穏を取り戻す。

 

 

「うねびー」

「うーねーびー」

 

 おう、嬢ちゃんらか。

 こんな早朝からどうかしたかい?

 

「きゅうりとトマト、くださいなー」

「サラダに使うっぽい」

 

 と、かごを掲げる嬢ちゃんたちが微笑ましい。

 おう、きゅうりとトマトなら、まさに売るほどある。

 もってけもってけ。

 ……って、収穫してよいものかどうか見分けはつかねえか。

 ちょっと待ってろよ。

 朝食の下ごしらえを済ませ、俺はふたりを連れて畑の中へと足を運んだ。

 サラダ用ってことは、こいつとこいつと。

 

「ぽい、ぽい、ぽい」

 

 俺が手渡した物を、嬢ちゃんがカゴの中に入れていく。

『ぽいぽい』言うから気になるが、手荒に扱っているわけじゃない。

 

「うねびー、このでかいのは?」

 

 おう、作物ってのはデカけりゃいいってもんじゃなくてな。

 体だけ大きくて、中身がさっぱりな人間みたいなのもあるんだ。

 しっかり味付ける料理ならともかく、サラダ用ならぎゅっと中身が詰まったものの方が良い。

 まあ、偉そうな事を言っても、俺もちゃんとわかるってわけじゃない。

 なんとなく、そう、所詮はなんとなくわかる程度だ。

 やがて、二つのかごがいっぱいになったところで畑を後にする。

 

「おかわり!」

 

 と、空になった鍋を俺に向かって差し出す美人の姉ちゃん。

 調子に乗って料理を作りすぎたとき、ご馳走してやったことはある。

 しかし、今朝は食べて良いとも言ってないし、食べていいかと聞かれてもいない。

 そもそも、料理の途中の……最後の仕上げ前のものを食われると、心がモヤっとするぜ。

 しかし俺に向かって鍋を差し出したままの姉ちゃんを見てると、言うだけ無駄だと思ってしまう。

 こんな大人にはなるなよ、と嬢ちゃんたちに釘を刺しておく。

 そして育ちすぎたきゅうりを2本ばかり、美人の姉ちゃんの口に突っ込んだ。

 

 ……嫌味のつもりだったんだが、ポキポキと楽しそうに食べやがる。

 

 仕方ない、襲撃の時間まで釣りにでも行くか。

 

「おかわりは?」

「わがまま言わないー」

「一緒に帰るっぽい」

 

 

 

 いかん。

 心の乱れのせいか、全然釣れねえ。

 ふっと、糸が重くなる。

 引っ張られるというより、重くなる、だ。

 嫌な予感がする。

 

 案の定、ウツボだった。

 別名、海のギャング。

 まあ、わからないならデブの海蛇みたいなもんと思ってくれ。

 油断すると噛まれるというか、毒はないけどでかいのは人の指ぐらいは食いちぎるから注意だ。

 まあ、石鯛なんかもそうだが、ウツボはエビやカニ、タコなんかも食べるが、貝の貝殻ごとばりぼり噛み砕いて餌にするから、歯の鋭さはお察しだ。

 コイツがかかると、仕掛けに巻き付くだけでなく、その鋭い歯でガシガシ噛み付いて、釣りの仕掛けをたいていパーにしてくれる。

 磯の釣りで大物を狙うときは、ワイヤーとか使うからな、それがめちゃくちゃになるわけだ。

 今の俺は海の上を歩けるし、身体能力が向上してるせいであれだが、本当は釣り上げるのにもっと苦労する。

 それなりに引きは強いし、油断すると岩の根に……ああ、海底の岩だらけの穴と思ってくれ……に、引きこもる。

 テグスが岩に擦れて切れたらおしまいだ。

 たいていの釣り人は、釣り上げたあとテグスごと岩に何度も叩きつけて殺しにかかる。

 まあ、仕掛けをダメにされた腹いせってやつだ。

 クールな人は、用意しておいたトンカチで頭を何度もぶったたいて殺す。

 釣り人にとってウツボは憎い外道というやつだ。

 

 だからこそ食わねばなるまい。

 

 先に言おう。

 食える。

 高〇県出身の友人は、子供の頃は仲間と磯に潜ってウツボをヤスやモリで刺してよく捕まえたらしい。

 持って帰って、唐揚げにしてもらうとか……そのままでは食えないものの、ある意味、季節限定のおやつ感覚だったそうだ。

 見た目が見た目だけにあれだが、どこかの地方では名物料理だと、聞いたこともある。

 表面というか皮がぐにゃぐにゃでさばきにくいが、うなぎみたいに頭を釘で打ち付けて開いていく感じでいい。

 たしかウナギ目で、うなぎの仲間だから納得だ。

 悪食だから内蔵は確実に取り除き、あとは骨の処理が面倒なぐらいか。

 尻尾の方ほど、骨が密集してる。

 友人も言ってたが、見た目のグロテスクさと骨の処理の面倒さなんかのせいで、母親に嫌がられることも少なくないらしい……なので下処理は自分でしたそうだ。

 とりあえず、軽く炙って冷やして……硬くて鋭い小骨をとってタタキにした。

 皮ぎしの部分のぷりゅっとした食感を味わうと、なるほどうなぎの仲間なんだなと実感できるはずだ。

 やや磯臭さがあって、好き嫌いは分かれると思う。

 サッパリ系のポン酢なんかで食べるのが主流だが、磯臭さを消したいとかなら、ごまだれなんかもありだと思う。

 ……焼肉のたれで食べたチャレンジャーがいたが、まあ、詮索するな。

 

 

 

 ふぉぉぉぉぉん!

 

 

 

 ……朝の襲撃を迎撃し、戻ってきた。

 計画通り。

 ニコニコしながら食ってやがる。

 美味いか、美味いだろう。

 なあ、美人の姉ちゃん。

 今お前が食ったの、これだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 よう、提督。

 ちょっと作りすぎちまってな、一緒に食わないか、うまいぞ?

 ウツボのタタキをポン酢につけてうまそうに食う提督。

 俺は、背中に隠したウツボの頭を握りながら思った。

 

 今度こそ。

 

 

 

 おまけ10:姫はクラスチェンジを果たす。

 

 

 夜の襲撃の際、なんか仲間割れが起きた。

 正直よくわからん。

 そもそも視界が暗いし。

 月明かりでなんとなく。

 1隻の軍艦が、大暴れしてるって感じだ。

 不思議なことに、俺に近づこうとする軍艦を撃ちのめしているような気がする。

 そしてなぜか、1隻の軍艦が逃げるようにしてその場から離れていき、沈まなかった軍艦がそのあとを追いかけていった。

 なんだったんだろう?

 それを見守っていたせいで、いつもより時間がかかった。

 

 鎮守府に戻って提督に聞いたら。

 なんか曖昧な笑みを浮かべて首を振った。

 知らない方が良いってことだろうか。

 確かに、世の中にはそういうこともある。

 

「あー、それはそうと畝傍」

 

 ん?

 改二ってなんだ?

 クラスチェンジみたいなもの?

 つーか、ステータスとかバグってて読めないんじゃなかったのか?

 

「読めないよ。相変わらず読めないよ。でもさあ、選択肢がさあ……」

 

 よくわからんが、躊躇うぐらいならやらないほうがいいんじゃないのか?

 どうせ、強くなったら維持費が大きくなるとか、そういうデメリットがあるんだろ。

 毎日ログインさせるボーナスとか、課金とか、提督の時代のゲームって依存させる気満々なところがちょっと怖いよな。

 

「そうなんだよなぁ…」

 

 とりあえず、今のところ俺に不自由というか不都合はない。

 なんか、あるのか?

 

「いや、さっきの襲撃でさあ……姫がなぁ、姫が……何になったんだろうなあ、あれ」

 

 は?

 よくわからないが、選択肢を残しておくってのも1つの答えだと思うぞ。

 なんだか煮え切らない提督をおいて、俺は畑のそばに作った小屋へと戻った。

 小屋といっても寝るだけの場所、物置程度のもの。

 

 時間がかかったせいか、もう寝る時間だ。

 

 

 

 

 目が覚めた。

 自然な目覚めじゃない。

 辺りは暗い、丑三つ時ってやつか。

 明かりを付け、小屋から外に出る。

 ふ、と。

 足元が濡れているのに気づいた。

 地面を明かりで照らす。

 小屋の周りをぐるりと。

 そして小屋から海に向かって。

 

 いや、怖くはないけどね。

 ほら、明日も早いし。

 だから俺は寝る。

 寝るったら寝る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……可愛い寝顔だった。

 窓から覗くようにして見るだけで、胸の中が満たされる。

 そんな寝顔だった。

 あれが私のものなのか。

 あれが私だけのものなのか。

 胸が安らぐ。

 

 あれは、1人で寝ていた。

 鎮守府の、艦娘達とは一緒にいなかった。

 ほっとする。

 自分の特別を、再確認する。

 場合によれば、鎮守府にいる艦娘達を皆殺しにしてやろうと思っていたがやめた。

 

 ああ、愛しきアナタ、また来るわ。

 何度も何度も会いに来るわ。

 そのためには、あのまとわりついてくる豚どもをどうにかしないと。




次の話は未定。
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