我が名は畝傍!艦これの世界にバグ艦男としてログイン!   作:高任斎

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おまけ話じゃなくなってきたけど、5つまとめて皆さまへ。
食べ物のネタ多め。


4:鎮守府の愛しき日々は変化を始める。

 おまけ11:文句があるなら鎮守府にいらっしゃい。

 

 

 大本営から新たな生贄……じゃない、お客様が来た。

 いかにも優秀そうな提督と、配下の艦娘達。

 秘書艦とともに如才なく対応しながら、俺はしみじみ思った。

 

 可哀想に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……半死半生とは言え、約3分の1に当たる6人の艦娘を救出したあたり、畝傍のやつも前回の件で多少気を咎めているのかもしれないなぁ。

 などと、後で本人に聞いたら。

 

『いや、前回の脆さを参考にしただけ』

 

 あいつ、やっぱり人間の血は流れていないと思う。

 サラリーマンになるってのはそういうことなのか、それともあいつの精神構造が特別なのか。

 そういやあいつが言ってたな。

 エコノミックアニマルと蔑まれるジャパニーズビジネスマンを舐めるなって。

 まあ、俺もあまり人のことは言えないかもしれない。

 前回と同じく、1日3回鳴り響く警報と敵の陣容に提督の心はぽっきぽきに折れまくり、面白いぐらいに俺に対して連帯感を抱いてくれた。

 そしてぽつりと。

 

「ここは、地獄だな……」

 

 めっちゃ失礼なことを言われたが、とりあえず『命をかけて守り通します』などと精々悲壮な顔をつくって言っておく。

 実際、最初の2回の襲撃で死を覚悟したし、鎮守府ごと全滅しかけたことも事実だしな。

 それに、2度目だからなのか、随分なれた。

 多分3度目は、もっとうまくやれるだろう。

 それにしても、深海棲艦というか姫や鬼の連中の、的確に艦娘を轟沈させていく手際には背筋が凍る。

 突出する組と、待ち受ける組とに分かれ、3人1組の同時攻撃1発で艦娘を大破、もしくは轟沈させるのだ。

 それぞれの組が連動して動くため、動いたと思ったら5~6人の艦娘が轟沈、または戦闘不能に追い込まれるシーンは、普通の提督にはトラウマものだろう。

 日頃畝傍のやつを見てるから忘れそうになるけど、正直笑うしかない強さだ。

 そして、そんな連中の相手を1人で受け持つ畝傍は、やはりバグでチートな存在なのだろう。

 治療途中ではあったが、艦娘達が自力歩行できる程度に回復すると、お客さんは逃げるように帰っていった。

 これでまた日常が戻ってくる。

 そう思ってたら畝傍がまたやらかした。

 

「提督、沖で死にかけてたこのお嬢ちゃん……ウチのか?」

 

 おう、厄介なもん拾ってきやがった。

 さりげなーく情報を集めてみたが、戦闘時の行方不明艦ではなさそう。

 とすると、どこかの鎮守府から脱走してきたっぽいってことに。

 さらに厄ネタなのが、どこの鎮守府からもそういう連絡が回ってきてないところだ。

 普通、艦娘が脱走するようなことはないと俺は思うし、仮にそんなことがあったとしても、きちんと状況を説明した上で連絡を横にも縦にも回すはずだ。

 その連絡がないってことは。

 連絡できないというか、突っ込まれるとやばいことをしているというか。

 ブラック鎮守府組なのかねえ。

 

「ブラック?」

 

 ……もしかして、ブラック企業なんて言葉なかった?

 ああ、ないんだ……お前と会話してると、ブラックを超えたダーク企業の香りがプンプンしてたんだけど、そういう言葉がなかった時代なのか。

 

「話の流れからして、労働条件がやばい会社のことか?」

 

 まあ、そんな感じだが。

 

「俺は大学生の頃、月に残業200時間なんて簡単だよなあって思ってた」

 

 なあ、その話続くの?

 今までのパターンからすると、めっちゃ重くてきつい話をぶっ込まれる気がして仕方ないんだけど。

 というか、俺は大学生だったんだよ!

 夢とか希望とか根こそぎかっさらうようなこと言わないでくれよ。

 

「夜中の3時ぐらいにな、部署の違う同期連中に向けて社内メールを回すんだよ……『点呼!』って名前で。そうしたら、『ノ』『ノ』『ノ』……って、同期の半分ぐらいから返事がくるんだよなあ。それを見てしみじみ思うのさ」

 

「俺はひとりじゃないって」

 

 やめてくれよ!

 俺のピュアッピュアな、心が死んじゃうから!

 なんだよ、夜中の3時って!なんだよ1人じゃないって!

 いい話で、ここぞの決めゼリフに使う言葉が台無しだよ!

 

「俺はこの世界にやってきて、ようやく人間に戻れた気がするよ」

 

 いや、今のあんた明らかに人間じゃないからな!

 艦息っていうか、バグでチートな、おぞましい存在だからな!

 つーか、お前って迎撃を除けば、農業とか釣りとか、料理とか、この世界でめっちゃ人生を満喫してるよな!

 

 ……などと馬鹿話をしていたら、艦娘が意識を取り戻したと連絡があった。

 はてさて、素直にしゃべってくれるのかねえ。

 

 

 怪我よりも衰弱が激しいという感じだったらしい艦娘は、助けてくれたことに対する礼は述べたものの、それ以外に関して口が重かった。

 まあ、口が重いってことで、俺の推測が裏付けられるようなもんなんだが。

 少なくとも、口にはできないというか、口にしたくない事情があるってことだから。

 とりあえず、ゆっくりしてなさいと言い残してその場を立ち去ることにした。

 もちろん、艦娘を保護したなんて報告を上にあげるつもりはない。

 

「それで、どこの鎮守府の提督をぶん殴ってくればいいのかな?」

 

 畝傍ぃぃぃぃ!

 やめろよな?

 冗談だよな?

 するなよ、絶対にするなよ?

 

「わかってる、わかってる。提督の立場としては、そう言うしかないよな」

 

 わかってねえよ!

 建前でも何でもないからな!

 チクショウ、いい笑顔で俺を見るんじゃない。

 

 

 

 おまけ12:姫は尽くすタイプである。

 

 

 最近、夜の襲撃がない日がある。

 来るべきものが来ないと、なんだが落ち着かない気分だ。

 と、いうわけで提督の執務室で待機中。

『待機なう』ってのが今風の言い方なんだっけ?

 え、もう古い?

 提督の時代って、めちゃくちゃ回転が激しいというか、流行り廃りが急すぎないか?

 提督にとっちゃ当たり前だからよくわからん、と。

 ふーん、ネットワークの整備によって、情報過剰の時代なのかねえ。

 ん、ああ……寿命の短い生き物の心拍数は総じて早いとか聞いたことないか?

 だれかの研究でな、生物の寿命は心臓が動いた回数によって上限が設定されるって論文があったんだ。

 寿命の長い生き物は、心臓がゆっくり動く。

 寿命の短い生き物は、心臓がせかせか動く。

 これは、同種の生物についても言える。

 人間で言うなら、生き急ぐとか、ストレスが人を殺すってとこか。

 まあ、それに引っ掛けていろんな面白理論が流行ったのさ。

 激しい恋は、ドキドキしすぎるから寿命が短くて、穏やかな恋は寿命が長いとかな。

 バカバカしいと思いながらも、一理あるような気がするだろ?

 情報というか、流行り廃り、ブームなんかを生き物ととらえれば……人の目に触れる回数や頻度が、心臓および、心拍数って感じかな。

 せかせかと俺たちの目にとまり、足早に耳を通り過ぎていくから、寿命が短いのかなって。

 

 しかし、夜の襲撃がないってことは……ほかの鎮守府が襲われてるのかね?

 

「いや、そもそも1日3回襲撃のほうがおかしいから。1日2回でも十分におかしいし、1日1回でもお腹いっぱいというか、そもそも襲撃してくる戦力が絶望的なまでに変だからな」

 

 そういや提督さん、相変わらず各地の鎮守府は快進撃を続けているのか?

 

「そんな感じだな。まあ戦線が拡大したせいで、進撃速度は落ちてるみたいだけど」

 

 とすると、また大本営からの生贄が捧げられることになるか。

 もしくは別の切り口からということで監査なんかも入るかもしれないし、あの拾ったお嬢ちゃんが見つかると面倒なことになるかもな。

 俺がそう言うと、提督もまた困ったように頭を掻いた。

 

「つーか、俺もそうだが、毎回毎回迎撃で拘束されるお前のためにも、たまにはほかの鎮守府を襲撃してくれよって話なんだけどな……どうしたよ?」

 

 いや、なんか妙な気配が……。

 執務室の窓を開け……周囲を確認する。

 気のせいか。

 まあ、話を戻すが……ここの鎮守府以外は、敵が押し込まれてるって認識でいいんだよな?

 つまり、夜の襲撃が減ったってことは、その辺を引き締めようとする動きって可能性もあるか。

 そもそも、ここにやってくる軍艦って、ボスクラスなんだろ?

 

 それから少し、提督とゲームの話をした。

 そっか、シューティングはマニアだけの市場になって、ギャルゲーは終了しちゃったか。

 とき〇モなんかで、盛り上がるんじゃないかって思ったんだが。

 え?

 直接は知らないけど、一時はものすごく盛り上がったらしいって?

 じゃあそこからダメになったのか。

 シナリオ重視のエロゲーから、エロを抜いてコンシューマ用のギャルゲーとして発売?

 それは、シナリオ調節がものすごく面倒なことになるような……。

 まあ、エロゲーはいつの時代も不滅だろうし、ギャルゲーにしたって、恋愛は人間にとっての定番ネタだからな、命脈が絶たれるってことにはならんだろう。

 はは、『そんなことできません!』なんてネタを思い出しちまった。

 いや、提督は知らなくてもいいネタさ。

 じゃあ、警戒は続けるけど、そろそろいくわ。

 そして俺は執務室のドアを開け……。

 

 

 

 

 

 

 なんか、ドアの前の床が濡れてるんだけど。

 

 

 

 

 

「う、畝傍ぃ」

 

 どうした、提督?

 へえ、全国各地の鎮守府をボコボコにして回る敵艦隊が現れた、ねえ。

 未確認クラスの1体を中心に、鬼や姫で構成された、絶望艦隊。

 大勢の鬼や姫に傅かれる様子から、大本営はこの未確認クラスを仮ではあるが『女王級』と命名。

 え、ウチにも来たことある?

 いつかの夜の襲撃で、仲間をバンバン攻撃してたあれ?

 なんだよ提督。

 言いたいことあるならはっきり言えよ。

 

「あの女王級だけどな、あの夜『アタシの男に気持ち悪い目を向けるな!』って叫びながら、攻撃してた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どゆこと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東へ西へ。

 南へ北へ。

 

「叩きのめしなさい」

 

 豚どもが、先を競って躍りかかる。

 一番活躍したと思える豚には、ご褒美。

 ただし、仲間の足を引っ張るような豚にはお仕置き。

 いや、違うから。

 顔赤らめて期待するんじゃないわよ。

 何もしてあげないってこと。

『それはそれで』ってどういう意味なの?

 ……こいつら、ホント面倒くさい。

 所詮この豚どもは、誰でも良かったのだろう。

 アタシのように、『特別』を求めていない……与えられたものを貪るだけの、豚。

 

 

 アタシは、アナタの役に立つ。

 アタシは、アナタの役に立ってる。

 ねえ、だから……アタシはアナタの、特別、よね?

 

 

 

 おまけ13:艦娘は不思議に思いながらも歩き出す。

 

 

 この鎮守府はおかしい。

 1日に2~3回の襲撃を受ける。

 襲撃してくる戦力を見て、私は腰を抜かした。

 逃げようとしたが、その必要はなかった。

 ……色々と言いたいことはあるけど、『おかしい』の一言で全てを飲み込んでおくことにする。

 

 ここの提督は、変な人だ。

 艦娘達に好かれてる。

 緊張感がなかったり、いきなりハイテンションになったり。

 その気になれば、仕事もバリバリできる。

 でも秘書艦に怒られて、なんだか楽しそう。

 ……多分、エッチなこと考えてる。

 なのに、艦娘達に手を出したりはしてない。

 仕事は出来るのに、普通の人っぽい。

 軍人らしくない。

 そもそも、私は普通の人なんて知らないのに、変なことを言ってる。

 

 ここの艦娘達は変わってる。

 鎮守府を、襲撃されるのに慣れている。

 そんな状況なのに、みんな明るく笑ってる。

 1人に任せて知らんぷりしてるわけじゃなく、直接迎撃にはでないものの、警戒態勢だったり、いざという時のために、きちんと行動を取っている。

 諦めてるわけでもないし、だらけてるわけでもない。

 あの鎮守府とは全然違う。

 鳴り響く警報を聞きながら周囲への警戒を続ける艦娘達に『怖くないの?』って聞いてみた。

 そうしたらちょっと笑ってこう言われた。

 

「できないことを考えても仕方ない。出来ることを確実にやるしかない」

 

 出来ること。

 私に出来ることってなんだろう?

 あそこにいるのが嫌で、死ぬのが、壊されるのが嫌で。

 だから私は、逃げ出して。

 

 とびっきりの変な……艦息?の畝傍さん。

 畝傍なんて聞いたことがない。

 あの鎮守府だけじゃなく、どの鎮守府でも聞いたことがない。

 明石さんみたいに、工作したりする。

 間宮さんみたいに、料理したりする。

 農業とか釣りとか、わけがわからない。

 戦いは……その、鬼畜で色魔かも。

 そんな畝傍さんに、すごいことを言われた。

 

「戦いたくないなら、戦わなくてもいいだろう」

 

 頭が真っ白になった。

 何……言って……。

 だって、私は、艦娘で、艦娘だから、戦わなきゃいけなくて……。

 

「死にたくないから、自分の命を守りたいから逃げ出した。じゃあ、自分の命以外に、戦ってでも守りたいものはあるのかい、お嬢ちゃん」

 

 彼は言う。

 人って生き物は、正義とか、理念とかのためには戦えない。

 戦えるってやつには、どこか欺瞞があると俺は思う。

 子供の頃遊んだ山や川。

 共に学んだ友人。

 育ててくれた父や母。

 柿を盗んだからって、バイク(超蕪)に乗って追い掛け回してきた近所のジジイ。

 自分の手の届く範囲。

 自分の目の届く範囲。

 そんな身近な何かを守るため。

 そんな身近な誰かを守るためにしか、人は戦えない。

 国とか正義とか、そんな綺麗な言葉を通して、人は何かをみている。

 その見ているものは、自分の身近な何か。

 だからこそ、そんな綺麗な言葉を使って誰かを扇動する奴は信用できない。

 

 お嬢ちゃんは、今疲れている。

 本当に、心の底から疲れ果てている。

 まずは生きてみることだ。

 当たり前の日々を、生活していく。

 1週間。

 1ヶ月。

 1年。

 気が付くと、お嬢ちゃんの心の中に、何か生まれるかもしれないなあ。

 

 私は、艦娘で、人間じゃないと。

 私は、武器で、道具だと。

 そんな言葉が、喉に引っかかって出てこなかった。

 

 

 

 

 おはようございます。

 朝起きて、体操をして牛乳を飲む。

 それから少し、畑の世話をする。

 正直、農作物の良し悪しとかわかりません。

 

 彼についていって、釣りをしてみました。

 最初の獲物は長靴です。

 提督に、『そんなベタな展開なんて、恐ろしい艦娘()』って、妙な目つきで言われました。

 

 薪って本来は、去年用意したものを今年使うんだそうです。

 乾燥させないと煙が出るし、火力も落ちるんだとか。

 切り倒してすぐの丸太で小屋とか作っちゃったら、乾燥で縮んで窓ガラスが割れたり、ドアがあかなくなったりするなんて……そんなに縮むんですね。

 木材って、木を切ってすぐに使えるんだって思ってました。

 うう、私、何も知らなかったんですね。

 少しずつ覚えていけば、少しずつ見えない何かが変わっていく、ですか。

 はい、頑張ります。

 そういえば、船を造るような木材は2年も3年も乾燥させてからじゃないと使えないって、どうしてなんですか?

 え?乾燥しきって縮んだ木材を濡らすと……水を吸って膨張するんじゃないですか?

 ……あ、隙間がなくなって水を通さなくなるんですね!

 なるほど、木材は用途に応じて保管方法や使い方が変わってくるんですね。

 

 料理もしてみました。

 彼が笑顔で押さえつけている誰かさんに、ご馳走してあげました。

 彼は、『初勝利!』などと喜んでいたからいいんです。

 え、私のために畝傍さんが作ってくれたご飯を食べられたからって、怒ってなんかないですよぉ。

 全然怒ってませんから。

 すっごく美味しそうで、楽しみにしてましたけど、全然、怒ってないですよ。

 

 戦いには出ませんが、訓練には参加しています。

 演習はまだちょっと……。

 でも、1日3回の体操と牛乳は欠かしません。

 多分、これが畝傍さんの強さの秘密……だといいなあ。

 よくわかりませんが、強くなければ生き残れないって気がするんです。

 ええ、よくわかりませんけど。

 

 

 

 

 

 そういえば、雨も降ってないのに時々地面が濡れてるのって何なんでしょう?

 

 

 

 おまけ14:穏やかで騒がしい1日。

 

 

 おかしい。

 この土質で、サツマイモが満足に育つはずがないんだが。

 うん、まあ、育ったものは仕方がないか。

 どうせなら楽しんじまおう。

 子供っつーか、嬢ちゃんたちにはいい経験になるだろ。

 

 

 

 嬢ちゃんたちが夢中になってサツマイモを掘り返しているのを見ると、和む。

 まあ、嬢ちゃんたちが夢中になってサツマイモを掘る前に、俺が余計な芋のつるとか葉っぱを切り取ってるんだけどな。

 芋掘り会とかいうのは大抵そうだ。

 びっしりと畑の表面を覆うように伸びたつるや葉っぱを、子供がなんとかしようってのは無理があるからな。

 そのために大人というか、俺が事前にお膳立てておいて、ちょっと葉っぱをどかして、つるを引っ張れば芋がゴロゴロ出てくるって寸法だ。

 知り合いの農家のじいちゃんは、幼稚園児のために一旦掘り出してから埋め戻してた。

 そのままじゃ、力が弱くて掘り出せないからって。

 そうした気遣いを自分がする立場になってみると、頭が下がる思いだ。

 どこかの保護者がそれに文句をつけたなんてニュースを聞いたことがあるが、お膳立てというか、前処理を舐めるなと言いたい。

 というか、わりと参加者多いな。

 これが女性を魅了するサツマイモの魔力か。

 そういや井原西鶴も言ってたか、女性の好むモノは『芝居、浄瑠璃、芋蛸南瓜』ってな。

 しかし、タコと女性ときたら、なんとなく触手プレイを想像しちまう。

 やはり、井原西鶴は天才か。

 時代を先取りするにも程がある。

 あれ、『芋栗南瓜』だったか?

 まあ、江戸時代の春画が、色々とすごかったのは確かだ。

 

 さて、掘り出したサツマイモは、太陽の光に当てると甘みが強くなる。

 おまじないじゃなくて、マジで。

 なので、今日嬢ちゃん達が食べるサツマイモは、前もって掘り出し、そういった処理を済ませたものだ。

 いやあ、俺が幼稚園の頃に経験した芋掘り会って、奥が深いわ。

 

 

 

 ふぉぉぉぉぉん!

 

 

 おっと、俺はしばらく席を外す。

 調理の方は、本職の姉ちゃんに任せる。

 天ぷらにする野菜や魚はそっちに用意してあるし、焼き芋用の葉っぱなんかは、あの艦娘の嬢ちゃんに聞いてくれ。

 じゃあ、頼んだ。

 

 いつもの襲撃を追い払い。

 俺は提督とともに畑へと戻った。

 そういや、あと少しすれば南瓜も収穫できるんだよなあ。

 ハロウィン?

 なんだそれ?

 聞いたことはあるようなないような……あぁ、思い出した。欧米のお祭りというかイベントだったな。

 それが何か?

 

「……マジで20年ってすげえのな。いや日本がすげえのかもしれんが」

 

 え、2015年の日本じゃ、当たり前の知名度に?

 日本でも、あちこちでイベントが行われるレベル?

 マジか。

 俺なんか、学校のイベントで初めてクリスマスの存在を知ったってのに。

 

「パねえわ。20年って、マジパねえわ……もしかして、バレンタインとかも?」

 

 俺が中学生にあがったぐらいに、いきなり有名になったような感じだったかなあ。

 よくわからなかったが、もらって嬉しかったし、お返しには金かかって大変だった。

 は、リア充?

 爆発?

 どういう意味だ?

 

「チクショウ!同じ日本人なのに、言葉が遠いぜ!」

 

 提督のエキサイトぶりに、なんとなくニュアンスは理解した。

 心配するな。

 そんな甘っちょろいこと言ってられるのは、中学生の間だけだから。

 そもそも、高校球児に恋愛なんてやってる暇はない。

 俺の高校はまだマシだったが、毎朝6時半から早朝練習、家に帰るのは夜の11時半なんて高校が珍しくなかったからな。

 

「それ……いつ寝るんだ?」

 

 授業中に決まってるだろ。

 野球部員の成績が悪いのは、頭云々じゃなくて、勉強する時間がないからだ。

 

「ブラックにも程があるだろ……高校球児が戦闘民族兼、社畜予備軍って呼ばれる意味がわかった気がする……え?『ブラック企業』って言葉はなかったのに、『社畜』って言葉はあったの?日本社会の闇が深いというか、なんというか……」

 

 まあ、部員よりも大変なのは監督だけどな。

 練習に付き合った上で、教師としての仕事まであるんだから。

 へえ、部活顧問の重労働が問題になり始めてるのか……俺が思うに、上から強制されるのが根本的問題だろ。

 ああでも、強制されないと極小数の例外を除いて誰も顧問なんてやりたがらないか。

 

「てーとくー」

「うーねーびー」

「おいもー」

「焼けたっぽい」

 

 俺と提督は、嬢ちゃんに渡された焼き芋を受け取って、一口かじる。

 うん、甘いな。

 提督を見ると、笑ってた。

 芋が好きなのは、女性に限った事じゃないか。

 

 と、想定していた以上の参加者のため調理が追いついてないな。

 まあ、食堂とは勝手が違うってのもあるんだろう。

 芋の残りを放り込むように食べ終えて、俺も腕を振るうことにした。

 この前仕込んだ魚の味噌漬けがいい時期だけど、そのまま焼くのも芸がないな……味噌味か、ちゃんちゃん焼きっぽくすれば、野菜も食えるし、大勢で食べるにはちょうどいいか。

 にんじん、玉ねぎ、キャベツ、インゲン、自給率100%だぜ……季節感がおかしいとか言うな。

 そもそも畑を世話してる俺が、考えないようにしてるんだ。

 日本人として断言しておく、あの畑おかしい。

 

 まず余分な味噌を落とした魚に火を通して、一旦取り出す。

 それから、野菜を順番に……野菜は炒める前に塩を振っておくと、わりとシャキっとした歯ごたえが残りやすくなる。

 中華料理だと、油通しとかするらしいけどな、素人に無茶言うな。

 あの手法も、元は中国だときれいな水が手に入りにくかったところから発達したとか聞いた記憶がある。

 真偽は知らん。

 まあ、基本的に技術は必要に応じて発達していくもんだよな。

 味噌だれを絡めて……分けておいた、魚を投入。

 やっぱ、味噌の香りは凶悪だわ。

 香りに釣られて、嬢ちゃん達が寄ってくる。

 まあ、言っても発酵食品だから、外国人にそれを求めないように。

 好きだって言ってくれる人もいるけど、欧米人は逃げ出す可能性が高いから。

 魚が鮭だったら迷わずバターを投入するんだが、この魚にバターは合うのか?

 えい、度胸一発だ。

 ダメだったら、例の食いしん坊姉ちゃんに処理させよう。

 さて、味見だ。

 ふむ、悪くない。

 口を開けて待ってる嬢ちゃんたちにも、ちょっと冷ましてから少し放り込む。

 よし、問題なさそう。

 気分は、屋台の焼きそば屋だな。

 さーて、食べたいやつは並べー。

 誰かがいつの間にか用意してくれていた紙皿に乗せて、配っていく。

 おい姉ちゃん、せめて背中に隠した紙皿を食べ終えてから手を伸ばせ。

 ほら、提督も……騙してねーよ、ウツボとかじゃないって。

 ……そこで隠れてる奴、ここに置いとくから食えよ。

 

 こういうお祭りみたいなのは楽しいよな。

 次は、さつま汁でも作ってみるか。

 

 

 そうして、鎮守府の一日が過ぎていく。

 

 

 

 おまけ15:蒼い目をしたお客様。

 

 

 日本人って、トロ信仰みたいなもんがあるよな?

 

「……いきなり何の話だよ、畝傍」

 

 まあ、聞いてくれ。

 あれって、本当に心からトロが大好きって言ってる人間の割合ってどのぐらいなのかなって。

 ほら、日本人ってわりと周囲に流されるだろ?

 寿司のトロとかな、俺、あんまりうまいって思ったことなくてな。

 そう言うと、決まって言われるんだよ。

 

『それは本当にうまいトロを食べたことがないからだ』って。

 

 確かに、高い大トロとか食べたことないけど、本当にうまいトロを食べたからって、今美味しくないと感じてるトロを美味いと感じるようになるって理論はおかしくないか?

 あんまり話題にならないけど、日本人の感じる旨みってさあ、欧米人でそれを感じられるのは精々3割程度だって論文が発表されたんだよな。

 何度も何度も食べて味覚を訓練すれば、その割合は少し増えるらしいけどな。

 まあ、マスコミが『外国人も絶賛する……』なんて煽るから、日本料理が無条件で世界中で受け入れられてるって思ってる日本人が多くて俺としては苦笑するわけよ。

 こりゃ当然、同じ日本人だってそうだろ?

『美味くて当然』なんて押し付けられるとなぁ……というわけで。

 

 沖合までダッシュで出かけて、マグロを狙ってみようと思う。

 なあに、この時期なら黒潮まで200キロってとこだろ。

 今の俺なら、一晩で行って戻ってこれると思うんだ。

 というか、むしろひと晩帰ってこない予定で。

 マグロの一本釣りは、男のロマンだよな。

 

「うん、ちょっと待てというか、落ち着こうか畝傍」

 

 俺は落ち着いてるよ。

 むしろ俺を慌てさせたら、大したもんだよ。

 

「いや、それは同感だが、それでも落ち着こう」

 

 そう言って、提督が俺の両肩を掴む。

 くそ、提督のやつ随分勘が良くなったな。

 

「お邪魔するわよ!」

 

 きやがった。

 あ、アイキャン、スピーク、イングリッシュ、リトル。

 

 提督が白い目で俺を見ている。

 リトルじゃなくて、ア、リトルだったか?

 

 くそ、笑いたければ笑え。

 ジャパニーズビジネスマンが聞いて呆れるぜ。

 だが俺は胸を張って繰り返す。

 アイキャン、スピーク、イングリッシュ、リトル。

 

「……おい」

 

 り、リトル。

 

「リトルじゃねえ!」

 

 

 

 

 

「日本語喋ってるから。彼女は、ずっと日本語を喋ってるから。日本人男性が金髪碧眼に弱いのは百も承知だが、動揺しすぎだろ」

 

 くそう、弱みを見せたらここぞとばかり攻め込んできやがる。

 まあ、最近ちょっといじりすぎたかなとも思うし、甘んじて受けるしかないか。

 

「ついでに、彼女はドイツの艦娘な」

 

 ジャ、ジャーマンポテト?

 

「バームクーヘンじゃなかったのかよ、あんたの時代のボケは!」

 

 落ち着けよ提督。

 お客さんの彼女がびっくりしてるじゃないか。

 冷静に、提督として彼女のお相手しないとな。

 じゃあ、俺は船の時間があるから。

 

「ツッコミどころ多いよなあ……まあいいや」

 

 そして俺は、こそこそと提督の執務室を後にした。

 いや、後にさせてくださいって。

 なぜか、金髪のお嬢さんが俺の腕を掴んで放さない。

 

 えーと、豊穣な実りを思わせる髪のお嬢さん、私のようなイエローなモンキーになにか御用で?

 

「テンパりすぎだろ……」

 

 うるさいぞ提督。

 

「ここの鎮守府には守護神がいると、噂に聞いたのよ」

 

 あ、嫌な予感。

 

「ぜひ私と手合わせを…」

「早まるな!」

 

 おお、提督がお嬢さんのセリフをインターセプト。

 

「そんなことしたら、社会的に死ぬぞ!」

 

 提督よ、ちょっと体育館裏までこいや。

 お話しようぜ。

 

 

 

 

 

 

 その後、提督が俺と深海棲艦との戦いの映像を見せたら、金髪のお嬢さんは顔を真っ赤にして逃げて行きました、まる。

 

 

 

 

 

 

 騒動が収まって、俺は執務室でひとり考えていた。

 さっき感じた妙な引っかかり。

 やがて気づく。

 畝傍のやつが、艦娘を一度も名前で呼んだことがないことに。

 姉ちゃんとか、嬢ちゃんとか。

 拾ってきた艦娘の件についてもそうだ。

 さらに考える。

 あいつが指摘した、外見的特徴。

 服装。

 髪の毛。

 

 一瞬、意識が空白になる。

 

 もしかして、あいつ……艦娘の顔を認識できてないのか?

 

 人型の深海棲姫を、軍艦としか認識できないあいつ。

 実際に、触ってもそうとしか感じないと言っていた。

 なのに、艦娘は、人型として認識できている。

 人型として認識できても、個人として認識する情報が欠落?

 冗談抜きでバグってるのか、あいつ。

 いや、そうでも、ないよな?

 以前、料理を食われたってぼやいてた時に……涎を垂らしてたって言ってた。

 だったら、認識、できてるんだよな?

 これは、考えても……無駄なこと、なのか?

 あいつがいなくなったら、あいつに何かあったら、その瞬間に、この鎮守府は詰む、ぞ。

 

 大丈夫だよな、今までどおり。

 俺はただ、変だなって気づいただけで……だから、平気だよ、な。




読者がほのぼのに慣れてきたところで、いきなり不穏をぶっこむスタイル。
でも、次のお話はちょっと間が空きます。
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