我が名は畝傍!艦これの世界にバグ艦男としてログイン!   作:高任斎

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おまけ話を5つまとめてプレゼント。
黒いです。
あと、若い人にはわからないネタをぶちまけてます。


5:鎮守府の愛しき日々は激しく動き出す。

 おまけ16:提督と畝傍は語り合う。

 

 

 マジか……。

 世界名〇劇場、打ち切られちまったのかよ……。

 そういや俺、ロミオの最終回見てねえ……。

 

「い、いや、そのあたりの経緯はよく知らないんだが……少なくとも、俺の頃にはなかったわ。子供の頃、再放送やってるのは見たことあるけど」

 

 もうだめだ。

 よかった探しじゃなくて、絶望探しの旅に出るしかないぞ、これ。

 

「社会人だったんだよな?見てたのかよ?ブラックな働き方してたくせに、見てたのかよ!」

 

 いや、そりゃビデオの録画だよ。

 ……おい、何変な顔してやがる?

 ベー〇派で悪かったな!

 最初に手を出したゲーム機も、ファ〇コンじゃなくてアル〇ディアだったさ!

 市場競争に負けるやつばっかり手を出してやがるとか、さんざん馬鹿にされた俺の古傷をえぐって楽しいのか、チクショウ!

 市場競争ってのはなあ、スペックで決まるんじゃないんだ。

 スペックで決まるなら、V〇Sじゃなくて、最初から一時停止機能があった〇codeが勝つだろ!

 むしろメーカーの販売戦略とか、資本規模に押し切られちまうんだよ!

 俺はそんなこともわからない坊やだったんだ。

 しかし俺は、痛みを経験して成長したぞ。

 サ〇ーンじゃなくてプ〇ステだ!

 知り合いには、『うわ、スペックの優劣も判断できねえの?』とか笑いものにされたがなあ、ゲームのソフト開発環境のメーカーサービスで差が出ると見た。

 クソが、新作ソフトが出る数に差が出始めてから泣きを見やがれってんだ!

 ゲーム機なんざ、ソフトがなけりゃただのゴミなんだよ!

 

「えっと、俺の時代にはもうビデオなんてないですって言おうとしただけで……」

 

 いや、それは予想してた。

 記憶媒体としてビデオが消滅していく流れは当然だろう。

 

「それにしても、プ〇ステとかサ〇ーンって、ちょうどその頃だったんだな。ちなみに…」

 

 プ〇ステとサ〇ーンの競争結果を言ったら殺す。

 

「あ、はい」

 

 シュレディンガーの猫なんだよ。

 俺の判断は正しかった。

 間違ってなかったんだと、そう思わせたままにしてください、お願いします。

 

「じゃあ、話題を変えるけど、俺の時代はプロ野球の人気がガタ落ちで、テレビ中継とかガチで減ったから。オワコンとまでは言わないけど、若い世代とか、野球中継なんか見向きもしないよ。……あ、オワコンの意味が分かんないか」

 

 やめろおぉぉぉっ!

 俺が野球に人生オールインしてた元高校球児だって知ってるだろうがっ!

 ニコニコ笑いながら追い討ちかけんじゃねえ!

 

 

 

 

 ……時の流れって残酷だな。

 母親の若い頃の写真見たときぐらいショックだわ。

 女が早朝に洗面所の鏡の前でヒゲ剃ってた時もショックだったわ。

 産毛の処理とか言われてもなあ、ショックなもんはショックなんだよ。

 まあ、俺に隠れて処理しようとしてたあたりは優しさなんだろうけど。

 

「彼女と付き合ったことのない俺に対する嫌味かよぉぉ!」

 

 

 

 ふぉぉぉぉぉん!

 

 

 あ、はけ口が。

 提督、ちょっと半殺……いや7割殺しにしてくる。

 

 

 

 

 

 

 うわあ。

 暴力って、暴れる力って書くんだなあ。

 普段、どんだけ手加減してたんだよって話か。

 つーか、明らかに最初の頃より強くなってるよな、あれ。

 なんなの、あいつ。

 他の艦娘の練度と違って、レベルアップでステータスが増加していくシステムなの?

 どこまで『艦これ』のシステムから逸脱してるんだよ。

 ちょっとステータス見てみるか。

 読めなくても、表示の変化ぐらいは読み取れるだろうし。

 ステータスオープンっと。

 

 

 

 

 ……うん、何も見なかったことにしとこう。

 

 

 

 

 そうそう、普段から手加減してたってことは、逆に、あれが全力って保証もないことだな。

 しかし、姫や鬼が、恐怖で逃げ惑うってどんだけだよ。

 あれでまだ、改二への改装を残した状態なんだよな……『俺はまだ変身を残している』とか言わせたら、まんまラスボスだよ。

 なんせ最初っから、手加減しながら3人の戦艦水鬼を子供扱いしてたもんなあ。

 女王級が、まだまともに戦ったことがないのが気がかりだったんだが、これを見てるとなんの心配もないと思えるわ。

 

 ……戦闘力に関してはな。

 

 ゲームやアニメの話をするのは楽しいんだがなあ。

 どう切り出せばいいのかわかんねえ。

 

『お前、艦娘の顔とか認識できてる?』

 

 とか聞けねえし。

 そもそも、『だからどうした?』って言われたら、その通りだしな。

 中学校のクラスメイトの顔なんてほとんど覚えてない……下手すりゃ高校も怪しい。

 人の顔なんて、所詮その程度の情報に過ぎない。

 俺も最初から、畝傍のことを『チートでバグな存在』とか言い続けてるし。

 

 まあ、畝傍の件とは別に……なんか、嫌な予感がしやがる。

 提督の勘ってやつかもしれない。

 ……ドタバタしたり、騒動に巻き込まれたりはしたけど、平和な日々が続いてたからなあ。

 

 やっべ。

 こんな時こそ、あのセリフの使いどころじゃね?

 俺は、執務室の椅子に腰掛けて、窓の外に視線を向けた。

 表情筋に力を入れ、キリッと引き締める。

 

 

 

 

 嵐の予感がするぜ……。

 

 

 

 おまけ17:嵐を呼ぶ男。

 

 

 女王級。

 この新たに発覚した存在に、大本営は戦慄した。

 多数の姫や鬼を従え、全国の各地を練り歩くように鎮守府を襲撃して回る。

 いつしかこの集団は、提督と艦娘達に絶望を与えて回る、絶望艦隊と呼ばれるようになっていた。

 遠征途中の艦娘達がいきなり連絡途絶となり、鎮守府の全戦力で迎撃を試みれば返り討ちにされ……文字通り殲滅されるのかとも思いきや、大破状態の艦娘にトドメを刺すことなくその場から去っていったりすることもある。

 どうも行動基準が読めないというか、それが余計に不気味だとも感じられて、大本営に控える面々は頭を痛めていたのである。

 というか、大本営には、この災害とも呼ぶべき脅威に対してなすすべを持たなかった。

 

 

 

 

 

 

 

『畝傍貸して』

 

『俺らに死ねって言ってるのか!?』

 

 

 

 

 

 

 おう、簡潔でわかりやすい説明ありがとよ。

 つーか、色々とまずいな。

 提督や俺にとってはこの鎮守府が全てだが、ほかの連中にとっては『ただの』鎮守府に過ぎない。

 金力、腕力、権力でゴリ押しされるのは目に見えてる。

 例の、この鎮守府の『地獄っぷり』を知ってる提督たちだって、フォローするにも限界はあるしな。

 

「というか、既に詰んでる気がしなくもない」

 

 何を持って『詰む』と判断したかは知らないが……。

 俺が大本営の連中に好き勝手働かされている間、提督は艦娘のお姉ちゃん達や嬢ちゃん達を連れてどこかに避難してるって方法はあるんだぜ?

 

「……怒り狂った鬼や姫が、鎮守府を壊滅させる光景しか浮かばねえよ」

 

 何を言ってる?

 壊されたら再建すればいいだけの話だろ?

 お前や、艦娘の姉ちゃん嬢ちゃん達は、死んだらそこでおしまいだ。

 物と人を、同じ視線で眺める方が間違ってる。

 

「20人以上の艦娘を見殺しにした畝傍が言うと、説得力が違うな」

 

 勝てないなら逃げろ。

 基本だろ。

 あの艦娘達が逃げなかったのはともかく、撤退できなかったのは指示が出せなかったグズのせいだ。

 戦いってのは、スペックだけでやるもんじゃない。

 経験がモノを言う場面はいくらでもある。

 なのに、毎回毎回バンザイアタックさせてどうなるよ。

 戦いから逃げたものは、もう一度戦えるってな。

 しかも、前回の経験値を上乗せした上で、だ。

 提督も言ってたじゃないか、『大破はさせても、轟沈はさせん。それが提督のプライドであり仕事だ』って。

 

「そうなんだけどさあ、そうなんだけどさあ、畝傍、お前今、ものすっごい悪い顔して笑ってるぜ。何故だ?」

 

 ははは。

 だって、提督が言ってたじゃん。

 敵のボスクラスの軍艦がこの鎮守府を襲撃しに来るのは俺が目当てだって。

 

「……あ」

 

 そりゃあ、俺がいなくなったあと、2、3回かは襲撃されるかもしれないがな。

 俺には軍艦にしか見えないが、姫や鬼のボスクラスのやつは、人間並みの知能を示すって言ってたよな?

 だったら、俺がいない事を悟ったあとは、俺を探して別の場所を襲撃しだすんじゃねえの?

 これはまあ、俺の推測でしかないけど。

 

 そういや提督はこうも言ってたよな。

 あのメンツの襲撃はまさにハルマゲドンだって。

 それはもう大災害ってことだろ。

 その大災害が、俺を探して全国各地を彷徨うって……。

 大本営が言う絶望艦隊と、提督が知ってる襲撃の嵐、どっちが本当の絶望なんだろうなあ。

 いやあ、大本営は、嵐を呼び寄せる俺みたいな超厄ネタをどこに配置するつもりなのかねえ?

 どうせ、自分の身の安全を確保したいとかいう、くそジジイが無茶言い出したってとこだろ?

 俺は言われたとおり、その『絶望艦隊』を相手にするけどさあ、その他のことは知らないぜ?

 おっと、いかんいかん。

 その他のことにはとても手がまわらないの間違いだった。

 実際、俺は1人しかいないし、手は2本しかない。

 俺に出来るのはせいぜい、この手が届く範囲のものを守るぐらいのことだよ。

 

 おいおい提督、なんて顔してるんだよ。

 こんな時は笑うんだよ。

 俺は今、最高の笑顔を浮かべているだろ?

 ほら提督、俺みたいに笑えよ。

 気持ちいいぜぇ。

 

 提督が、引きつった笑みを浮かべた。

 

「……みんな、聞いてくれ」

 

 ん?

 ここには俺と提督しかいないぞ?

 

「俺の目の前に、ラスボスがいる」

 

 ひどい言い草だ。

 俺の笑顔はそんなに邪悪かよ。

 

 

 

 おまけ18:畝傍のいない鎮守府。

 

 

 いきなりだが、鎮守府は復興に向けて歩んでいる。

 畝傍にアドバイスされたとおり、資材や施設の中の重要機材、その他の書類等。

 全てを避難、確保した上でだが、鎮守府は深海棲艦の暴風雨に蹂躙された。

 施設は被害を受けたが、艦娘は誰も死んでない。

 それどころか、どさくさまぎれとはいえ、鬼級を2体撃破している。

 誰かさんを見ていると感覚が歪むが、これは特筆すべき戦果レベルだ。

 鎮守府が置かれた状況を知りながら、防衛の要である畝傍を引き抜いた責任とは別に、畝傍以外の艦娘の戦力を形として示せたのは幸運だった。

 

 資材と機材さえ確保しておけば、施設の修復は難しくない。

 一番被害が大きかったのは、畝傍の畑だろう。

 あいつに拾われた艦娘が涙目になりながらなんとかしようとしているが、どうも知識も経験も足りないらしく、失敗続きで回復が見込めないらしい。

 逆恨みではないかもしれないが、『あいつら絶対許さない』などと怨念混じりの呪詛を吐いているのがちょっと怖い。

 

 海の青さが目にしみる。

 鎮守府を吹き抜ける潮風は爽やかだ。

 しかし、空を駆ける雲の流れを見れば、上空の風の流れの激しさは明らかだ。

 この一週間、鎮守府は襲撃を受けていない。

 警戒を怠っているわけではないが、朝と昼、場合によっては夜も、艦娘達が決まった時間に警報の方に目をやるのが笑える。

 

 昨日は、近海とは言え初めて艦娘を遠征させた。

 帰ってきた艦娘の1人が、興奮した顔で『海は青かったです』って報告してきたのは、ギャグだったんだろうか?

 心配していた艦娘達のメンタル面も、何の問題もなさそうに思う。

 みんな笑っている。

 雰囲気も明るい。

 俺がこの世界にやってきた直後とは全然違う。

 

 

 ……ああ、うん。

 畝傍のことは考えないようにしてる。

 考えないようにしてるんだけどさあ。

 

 さっき、大本営から通信文が届きました。

 内容は簡潔。

 

 

 

 

 

『タ・ス・ケ・テ』

 

 

 

 

 

 

 あーあ、俺たちは鎮守府再建で忙しい。

 鎮守府再建でみんな疲労がたまってるだろうし、よーし、今日はみんなに間宮アイスおごっちゃうぞ。

 

 復興作業中の艦娘達から歓声が上がる。

 警戒中の艦娘達は口元だけでちょっと笑い、訓練中の艦娘達は、気合のこもった動きで喜びを示す。

 

 穏やかに時は流れている。

 でもそれは、表面上の話だ。

 

 何やったんだよ、何やってんだよ、畝傍。

 チクショウ、付き合いが長くなったせいか、あいつが何をやってるのかある程度想像できる自分が悲しいぜ。

 あいつ多分、『畝傍を扱えるのは俺だけ』って、大本営の偉いさん方に納得させようとしてやがる、きっとそうだ。

 まあ、具体的に何をしているのかまではわからんが、多分ろくなことじゃない。

 

 家が燃えてるのを見つけたら、普通のやつは水をかけて火を消そうとする。

 頭の回るやつは、それに加えて取り残された人がいないか確認したり、周辺への飛び火を恐れて警戒したりもするだろう。

 じゃあ、畝傍は何をするか?

 ダイナマイトで吹っ飛ばして火を消す。

 俺の認識する畝傍の性格は、そんな感じだ。

 良くも悪くも自己中心。

 

 でも多分、畝傍は今ものすごく働いてるはずだ。

 あの女王級率いる絶望艦隊とは関係なく、1日3度の襲撃をもたらしていた『嵐を呼ぶ男』。

 ただひとつ俺に言えることがあるとすれば。

 あのメンツで1日3度の襲撃を受け続けると、目に見える被害がなくとも、普通は精神のほうが先にやられてしまうってことかな。

 最近気付いた。

 ここの鎮守府の艦娘達のメンタル、普通じゃない。

 いや、多分……普通じゃなくなった。

 

 しかもまだ続きがある。

 1日3度の襲撃に、絶望艦隊による襲撃が重なったらどうなるか。

 ははは、さすが大本営。

 俺らの知らない恐怖にチャレンジするなんて、そこにしびれないし、憧れない。

 大本営の連中は、畝傍がいないと死ぬけど、畝傍がいても死ぬ。

 

 ははは、頑張れ、超頑張れ。

 

 

 

 

 おまけ19:畝傍のいる大本営。

 

 

 大本営は、陸の孤島と化している。

 いや、鎮守府が海岸にあるのは当然だし、大本営が内陸に位置するのもわかってた。

 ちょっとばかり、俺は誤解していた。

 内陸にあるんだから、大本営そのものには軍艦というか、艦隊による襲撃はあり得ないって思ってたんだ。

 そして、俺に突きつけられた現実はというと。

 

 軍艦が陸の上を滑るようにやってくるって、超シュール。

 

 最初見たときは、笑っちまったよ。

 これって、倒したらどうなるんだって思ったけど、当然地面に沈んでいくなんてことはなく、その場で動かなくなるだけだった。

 そして、半日ほど時間が経つと消える。

 わけわからん。

 

 まあそれはさておき。

 陸と海の違いはあれど、いつもの襲撃と同じかといえばそうではない。

 考えてもみてくれ。

 鎮守府襲撃は、基本的に海の方角からやってくる。

 大本営襲撃は、ぐるりと360度、全方向からやってくる。

 こんな形で、自分の手が全てを守れるわけじゃないのを思い知るとは思わなかったぜ。

 ついでに言うと、大本営の建物に向けて砲撃までくわえられたりする。

 迂闊なことに、俺にはその発想がなかった。

 

 ははは、ゲーマーの血が滾ってくる状況だ、燃えるぜ。

 

 などと、戦っている俺が昂ぶっているのとは裏腹に、大本営の連中の精神状態がマジでよろしくない。

 おっかしーな。

 あいつら全員軍人で、しかも前線における戦闘経験とか豊富だったって話なのになあ。

 この程度で何をオタついてんだか。

 俺は元々軍人でもない素人だし、鎮守府の提督も最初はともかく随分肝が据わってたのによ。

 

 まあ……俺に向かってやってくる襲撃に関してはいいんだ。

 ただ、それとは別口の襲撃がやばい。

 俺を避ける。

 その上で、大本営を周囲から切り離そうとする。

 物資が届かない。

 連絡が途切れがちになる。

 まあ、物資といっても戦えるメンツがいないも同然だし、俺のスタイルは武器弾薬を必要としない。

 とはいえ、戦いという観点で言うなら、ここ、大本営での戦いは既に敗北していた。

 それなのに何故俺が戦い続けているかというと。

 

 お偉いさんの心をポッキポキに折って折りまくって、木っ端みじんこにするためだ。

 

 中国の、戦争上手も言ったじゃねえか。

 まず心から攻めよって。

 つまり、俺が攻めるべきは、お偉いさん方の心だ。

 まあ、もう少し時間がかかると思ってたんだが、連中の精神状態は随分と香ばしい感じになっていて、通信室に張り付いて、いろんな鎮守府に向けて『助けてくれ』だの、『救援を乞う』だの、見苦しくあがいているらしい。

 いやいやいや、どうにかできる戦力がいないから、俺を呼び寄せたんじゃないの?

 ははは、現場の状況をきちんと把握しないで振り回すお偉いさん連中が、慌てふためく姿を見るのは本当に楽しいなあ。

 よーし、やる気出てきたぞ。

 おう、やる気は出てきたんだけど、気がかりがひとつ。

 

 ずっと、見られてる気配がするんだよな。

 

 俺に向かってくる連中とは別口の、俺を避ける襲撃を行ってる連中。

 おそらくは、その指揮官。

 女王級……だったな。

 提督の言ってた意味不明の叫びはともかく、狙いはなんだ?

 一応、そっちの軍艦は、見つけ次第殲滅するようにはしてるが……さて、覚えているだけでも10隻ばかりは潰したはずだが、後どれぐらいの配下がいるのやら。

 

 ドン、と腹に震える音とともに、大本営の建物に向かって砲弾が飛ぶ。

 それに向けて、倒した軍艦をぶん投げる。

 いや、別に頭がおかしくなってるわけじゃない。

 出来ちゃうんだから仕方ないだろ。

 そして、出来るならやるしかない。

 砲弾と軍艦が衝突してはじけ飛ぶ……その間に、艦砲射撃をくわえた軍艦との距離を一気に詰めて、引っこ抜くように抱え上げて、ジャンプして、船首から地面に向けて叩き付ける。

 今度はこれを武器と盾、飛び道具に使う。

 使っているうちに、勝手にトドメになるからな。

 はじけ飛んだ軍艦はともかく、砲弾はどうなったって?

 ははは、お偉いさん方は、責任を取るのが仕事じゃないか、何を言ってるんだ。

 

 しかし、俺が言うのもなんだけど、サイズの感覚がなあ……。

 大きくても人間の2倍程度までのサイズの軍艦なのに、人間の胴体ぐらいのサイズの砲弾を発射するんだぜ?

 一体どうなってんのかねえ?

 まあ、戦い続けるしかないんだけど。

 

 ちなみに、ここでの戦いはかなり撃破率が高くなってる。

 そりゃあ、尻を叩いて返してやるってわけにいかないからな。

 一応、逃げていく軍艦は追わないけど……襲撃してきた軍艦の4割近くを撃破してる感じがする。

 近代戦争ではありえない消耗率だと思うんだが、次から次へと軍艦が湧いてきてるのか?

 

 さーて、もうひと踏ん張り。

 

 

 

 おまけ20:戦いすんで、途方に暮れて。

 

 

 提督が言ってたな。

 なんかのネタらしいが、『人生って、こんなはずじゃなかったってことばっかりだ』……だったか?

 俺は、20日に渡って戦い続け、なんとか大本営の建物を小破状態で死守した。

 まあ、周辺は綺麗に焼け野原じゃなくて、廃墟の街って感じだが。

 この光景を見てると、なぜか地球では3分しか戦えないヒーローの主題歌を口ずさみたくなった。

 

 ああ、お偉いさんはどうなったかって?

 もちろん、生きてる。

 生きてるんだがな。

 人間歳を取ると、信心深くなるってじいちゃんが言ってたが、間違ってないのかもしれないな。

 

 俺は、拝まれている。

 いや、お偉いさん方に、ものすごく拝まれている。

 涙と鼻水で顔をぐっちゃぐちゃにしながら、ひたすらに俺を拝み続けているお偉いさん方。

 

 心、折りすぎたか?

 

 ちなみに、お偉いさん方以外の生き残った連中にも拝まれている。

 まあ、拝まれたからといって増長するつもりはない。

 というか、むしろ引く。

 どうせ、喉元すぎれば熱さを忘れるってやつで、コロッと手のひらを返してくるのが、こういう連中だ。

 話半分どころか、1割未満で見とかなきゃな。

 それはそれとして、どうもこういう雰囲気は苦手だ。

 

 あんたら、腹減ってないか?

 

 その一言で、固まっていた空気が動きだす。

 冷静さを取り戻すより先に指示を出して、人を動かす。

 

 飯だ、こいつらに飯を食わせる。

 

 どんなに悲しい時でも、美味しいものを食べれば笑顔になるなんて言葉があるが、俺はそんなもの信じない。

 悲しい時に美味いものを食べると涙が止まらなくなる。

 怒ってる時に美味いものを食べると、怒りの原因についていろいろ考える。

 人間の感情ってのは、カロリーを必要とする。

 何かを考えるのにも、カロリーが必要だ。

 カロリーを摂取すれば、思考が働き出す。

 思考が働けば、感情の変化のキッカケになるかもしれない。

 それだけだ。

 

 温かいもの。

 胃に優しいもの。

 食材は限られている。

 ……スープか。

 鎮守府だったらなあ、魚は漁れるし、野菜もあるのに。

 安直だが、砂糖かザラメを使うか。

 その分、出汁はキツめにとろう。

 

 生き残った連中が、器を拝むように持ってスープを口にする。

 大したスープじゃない。

 ただゆっくりと飲ませた。

 おかわりもさせた。

 おそらく、眠気を感じるだろう。

 緊張から解き放たれて、温かいものを胃に入れて。

 

 そして、彼らを運ぶのは俺か。

 

 全員を運んだところで日が暮れた。

 大本営の建物から出て、廃墟と化した街で焚き火をする。

 露骨すぎたか。

 俺を見つめる気配は姿を現さない。

 まあ、軍艦がぬっと現れても、対応に困るんだが。

 なんとなく、俺は飲みかけのスープの器を、少し離れた場所においてみた。

 焚き火の位置は見えない場所だ。

 

 揺れ動く焚き火を見飽きたら、星空に目をやる。

 気配が、動いた。

 ゆっくりと視線を落とすと、見えない場所に置いた器が、見える場所に置かれていた。

 器は返ってきたが、なぜかスプーンはなくなっていた。

 軍艦だからか?

 軍艦でもスープは飲むのか。

 そうじゃなくて、俺の目にそう見えるだけの話なのか。

 俺の目の前で、炎が揺れる。

 俺を見つめる気配は、消えない。

 

 20日戦い続けて、俺は本当に人間じゃないんだなあと実感した。

 身体能力に関してはいまさらだ。

 眠らなくても平気。

 食べなくても平気。

 人間というより、生き物なのか、これ。

 平気は兵器、とかな。

 

 艦娘はどうなんだろうか。

 俺と同じなのか?

 眠らなくても、食べなくても、なんともないのか。

 身体能力も、判断力も鈍ったりしないのか?

 今度、提督に聞いてみよう。

 そうだな。

 あの鎮守府に帰ろう。

 いきなりは無理か、明日、連中が目を覚ましたら少し話をして。

 面倒になりそうだったら、誠心誠意、物理的にお話だ。

 そして俺は、あの鎮守府に帰ろう。

 鎮守府に帰ったら、また提督と馬鹿な話をしよう。

 1日3度の襲撃の合間に、畑の世話をして、魚を釣って、料理を作って。

 ああ、体操と牛乳も忘れちゃいけないな。

 艦娘の嬢ちゃんたちのために、苺でも植えてみるか。

 拾ってきた嬢ちゃんは元気にしてるかねえ。

 美人の姉ちゃんには……ナマコ料理を食わせるか。

 ……普通に『おかわり』とか言ってきそうな気もするが。




次の投稿は、週末までないと思います。

ファ〇コンではなくアル〇ディア。
ビデオのベー〇。
レーザーディスク。
血を流しながら、みんな生きてきたんですよね、きっと。
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