我が名は畝傍!艦これの世界にバグ艦男としてログイン! 作:高任斎
おまけ26:鎮守府からほのぼのが消えた日。
畝傍よ、ツンデレの黄金比率について語ろう。
「よし、とりあえず落ち着け」
大事な話だ。
いいか、スイカに振りかける塩が甘味を引き立たせるように、デレを引き立たせるにはツンが必要なんだ。
多すぎてもいけない、少なすぎてもいけない。
何も足さない、何も引かない。
そんな、ツンとデレの割合、それが黄金比率。
「ここのテンプルにな、頭蓋骨の継ぎ目があって、いわゆる人体の急所の霞って呼ばれるここに指をかけて締め上げるのがアイアンクロー」
そんな殺伐とした解説は嫌だあああああ!
つーか、聞けよ。
ツンデレは空想上の生き物じゃない!
「聞く限り、昔からいる素直になれないタイプのキャラをカテゴライズする新しい言葉をあてはめ、新鮮さを演出したんだよな。昔から繰り返されてきた手法だと思うが」
話を聞いてくれ!
ツンデレを語らないと、ヤンデレを語れないんだ!
結論から言う!
鎮守府はヤンデレに狙われている!
つーか、お前がパパになるんだよォォォ!
ふう、大淀さんのお茶が美味しい。
「艦娘の姉ちゃん嬢ちゃん達の様子はどうよ?」
幸いというか、彼女が鎮守府に来て間がなかったから……動揺は最低限、かな。
あと、現場も見てないし、亡骸もないって言うんじゃ、実感そのものがわかないってのもあるだろうしな。
そのかわり、唯一現場を見た彼女は……立ち直れるのか、あれ?
「あー、提督は気づいてなかったか。あの嬢ちゃん、元々ぶっ壊れ気味だったからな……また後で見舞いがてらに甘いものでも作って持って行ってやるか」
ヤンデレを甘くみないでください、死んでしまいます。
つーか、畝傍は艦娘に近づかないでください。
あのヤンデレがいる限り、畝傍の存在は死神というか、死を告げるデュラハン以外の何者でもないから。
あれ……男の俺は平気だよな?
ダメだったら、もう死んでるよね?
「あの嬢ちゃんも、見逃されてるぞ?つーか、『これからも俺の手伝いをお願いね』みたいなことを言われたらしいし」
これだからヤンデレは厄介なんだ。
自分にしか通じない謎理論で行動が規範されるから、ほかの人間にはさっぱりなんだよ。
でも、執着対象はお前。
これははっきりわかるし間違いない。
で、お前に執着してるってことは、おそらくは嫉妬か愛情による犯行。
「ま、待て。嫉妬はわかるが、愛情による犯行ってなんだ?」
頭がおかしくなるほどお前大好きな人間にとっちゃ、『お前に迷惑をかけるような存在』は、『お前のためにぶっ殺す』って理屈が普通に成り立つんだよ。
ここで重要なのは、『迷惑』の判断基準が『ヤンデレ主観』ってとこな。
『お前のために不愉快な存在を消しました』、『だから私を見て、私を愛して、私だけを見て』ってな感じの、ヤンデレ3段論法による犯行作品なんか、腐るほど見てきたよ。
ははは、21世紀なめんなよ。
でも、殺された彼女がお前になんの迷惑かけたかというと、わかんねえ。
お前とはほとんど会話もしてないんだよな?
まあ、ヤンデレの理屈を真面目に考えても仕方ねえって話だけど、愛情よりはまだ嫉妬による犯行の方が納得しやすいって話さ。
嫉妬なら嫉妬で、『なぜ彼女だけが』って謎があるけど。
どう考えても、お前と一番多く一緒にいるのは、お前が拾ってきた彼女だろ?
でも彼女は見逃された。
次に接触が多いのは、お前が言う食いしん坊姉ちゃんで……迷惑って意味なら、こっちが大本命だ。
一応、俺の方からお前には近づくなって言っておくけど。
推測に推測を重ねて正しい推理ができるかって話だけど、『この娘の居場所は、暗くて昏い、水の底』ってセリフが、俺としては気になるわ。
ヤンデレ女王様がぶっ殺した彼女は、女王様にとっちゃ『深海棲艦』の裏切り者だったのかもな。
自分たちを裏切って、艦娘なんかになった。
裏切り者が、執着するお前のそばにいる。
よし、殺そう。
俺が推測できるのは、このぐらいが限界。
「精神的に病んだ人間なら、会社でいっぱい見てきたんだがなあ……」
こいつはこいつで、無自覚に俺の心をえぐってくるなあ。
どうも危機感が足りないというか……もしかして、『ストーカー』って言葉がない時代?
「……アメリカの事件かなんかをニュースで聞いたような、ないような」
ああ、世間一般的には認知されてなかった感じか。
好きな相手をつけ回した挙句に殺人事件に発展とか、街ですれ違った相手に執着して、周囲をうろついたり、盗撮したり……ある意味、都合良く使われてる言葉って感じもするけど、俺の時代じゃ超メジャーな言葉。
一方通行な執着を認めないのはもちろんだけど、知り合い同士であっても釣り合いの取れないとみられる執着はストーカー扱いされるのが普通。
恋人同士とかでもストーカーは成立するし、元恋人がヨリを戻そうと働きかけるのもストーカー扱いされて捕まる……ある意味、女性を守るための法律だったけど、最近は逆もあり。
「ちなみに、夜のランニング中に、『そういや好きな子の家ってこの近くだったな』とか考えて、家を見に行くとかすると……」
ストーカーです。
完全にアウト認定。
「マジか……恋愛モノでは、ありがちのシチュエーションなのに」
昭和の純愛は、平成のストーカーってのは有名な言葉です。
俺は昭和の時代を知らないけどさ、聞く感じだと、人の距離感におおらかな印象があるな。
平成っていうか、俺の時代は大変よ?
クラスメイトの会話が聞こえて、『へえ、誕生日なんだ』とか話しかけただけでストーカー扱い。
公園で泣いてる子供に大人が声をかけたら、警察に通報。
ストーカーとは関係ないけど、電車に乗ったら男性は全員荷物を抱えるか、両手を上にあげてバンザイ状態。
やりすぎとは思うけどさ、やりすぎなぐらいに規制しないと、被害者がバンバン出るのよ。
そういう社会になったのか、それとも以前からそうで、明らかになっただけなのかはわからないけどな。
まあ、100人の被害者を救うために1万人に不自由をばらまくやり方ってのが俺の本音だけど、実際にそれを口にすると、声のでかい連中に綺麗ごとによるタコ殴りを受けて社会的に抹殺される。
そりゃあ、人の心は確実にすさんでいくよ。
そんな状況だから、下手すりゃ捕まるから、むやみに他人との距離を詰められない。
距離が詰められないから、他人のことがわからない。
そんな他人と人付き合いしていかなきゃならない。
学校とかも、よくわからん相手に友達づきあいとか、マジで大変。
「え、それって友達なのか?」
友達がいないとぼっち認定されて、周囲の人間が距離を取りだす。
あ、ぼっちってのは『ひとりぼっち』のぼっち。
その結果、ぼっち認定されると学校生活に支障が出るから、『俺たち友達だよね?それほど親しくないけど(笑)』みたいな人間関係がわりと普通。
「俺、お前の時代で学生生活を送る自信ないわ……」
俺の時代で、二次元とは言えヤンデレキャラが人気というか固定ファン層が存在するのって、『気持ちがはっきりわかる』からってのがあると思うんだよ。
行動は極端で、謎理論とかも炸裂するけど、『好き』って気持ちだけはわかりすぎるほどわかるから。
他人の気持ちがわからないし、知るための行動が制限されてる時代だから、気持ちが分かるキャラってのは、読み手にとっては一種のオアシスというか、救いになるんだろうなって。
まあ、二次元といっても殺人まで発展する作品は多くないよ。
つーか、内容がやばいと放送中止になったり、抗議を受けて連載終了したりするし。
ストーカー行為に明け暮れるとか、包丁持ち出して暴れるとか、誰も怪我しないで収まるレベルの作品が主流です。
最近では、ヤンデレ行為そのものをギャグとして流す傾向も……。
詳しくて悪かったな!
好きなんだよ、見るのも読むのも。
だからこそ、現実でここまでやられるとドン引きだよ。
そもそも、ヤンデレ女王のセリフとか、ツッコミどころだらけじゃん!
『感謝してるわ』とか、畝傍の正妻ムーブ振りまいて、痛々しいったらありゃしない。
何をどうこじらせたら、あんなセリフが出てくるんだよ。
しまいには、前世における運命の恋人とか言い出すんじゃねえの?
あれだ、女王とかいいながら、絶対処女こじらせてるわ。
もう、ピュアっピュアだった心が、妄想という名の、どぎつい合成着色料でレインボーな感じに染め上げられちまってるんだろ、絶対。
あることないこと全部一緒くたにして、頭の中がお花畑に……。
こんこん。
うわ焦った。
チクショウ、悪口もろくに言えやしない。
どーぞ。
「失礼します。提督、お茶のおかわりは大丈夫ですか?」
ああ、大丈夫。
わざわざありがとな、大淀さん。
「いえ、そんな……。あ、提督、ドアの前の床が濡れてたんですけど、なにかこぼしましたか?」
……その後、艦娘の1人が水をこぼしたものと判明。
どうやら雑巾を探していたらしい。
正直に言う。
あの瞬間、尿道がちょっと開いた。
パンツとズボンに、股間からお水こぼしちゃった。
何も言わなかったが、畝傍にはバレていたような気がする。
おまけ27:それでも畝傍は変わらない。
体操、牛乳、畑の世話、朝食、そして迎撃。
ちょいちょい順序は変わるが、いつもの朝だ。
大した量じゃないが、収穫した野菜を食堂の勝手口に運んでおく。
昼までは、港の浚渫作業。
最近いい天気が続いたからか、真水で塩を洗った砂がよく乾いた。
あとで資材倉庫に運んでおこう。
まあ、減っているから何かに使ってはいるんだろう。
昼食、牛乳、体操、そして迎撃。
珍しいことに、襲撃してきた軍艦は1隻も沈まなかった。
ちょっと畑の世話をしてから、釣りの仕掛けを手にして海へ行く。
大物は狙わず、防波堤から小アジをひょいひょいと。
そんな時に限って、ハプニングが起こる。
ハリにかかった小アジに、一体何が食いついた?
俺の身体能力はいくらでもお釣りが来るが、ハリやテグスは、大物を想定していない。
そういや昔、渓流で出会った爺さんが言ってたな。
『切れない糸、折れない竿、それは釣りじゃなくて漁だな』
漁は仕事だから確実さをとる。
そして釣りは趣味。
当時は子供だったからな、俺の目の前で竿を折った爺さんを指差してゲラゲラ笑ってやった。
まあ、爺さんはすました顔して予備の竿に付け替えてたけど。
今思うと、あれは手作りか。
あんな細い竿で、器用に釣り上げてたなあ。
多分、自然環境保護を叫ぶ連中は文句をつけるんだろうが。
俺は、魚を追って海の上を歩き回り、2時間ほどしたら疲れ果てた魚が浮いてきた。
やっぱり、体力は大事。
つーか、海の上を歩けるのは魚からすりゃ卑怯だろうな。
ちなみに、アジはアジでも、平アジだった。
サイズは並程度。
畑だけじゃなく、海までおかしくないか、これ。
面倒だったから、ここであらかたさばいておく。
血や内臓は、海に、ぽーい。
おーおー、小アジが群がってくるわ。
見事な食物連鎖。
ちなみに、魚の骨とかは、焼いて砕いて、畑にまいたりしてる。
まけばいいってもんじゃないが、細かな調整は、本職みたいにはできない。
気が向けば、焼いた骨を砕いてから、味付けしながら炒めて、ふりかけにしたりもするけど。
さて、大きめの切り身を2つほど味噌漬けにして、半身を刺身に、残りを煮物にでも、いや塩焼きがいいか?
おっと、そろそろ襲撃の時間か。
多分、帰ってきたら、どれかなくなってるんだろうな。
提督に言われたはずなのに、食いしん坊姉ちゃん、ぶれねえよな。
風呂から上がり、牛乳を飲みながら夜の海を見つめる。
田舎の夜は、街灯なんかないから本当に真っ暗になる。
この鎮守府の夜の海は、何となくそれを思い出させるなあ。
そういや、灯火管制とかあるのかね、この世界。
明かりを目標に、艦隊が襲って来るとか……ありそうな話か。
自分で言うのもなんだが、俺は嵐を呼ぶ男。
提督もそうだが、艦娘達は、俺にこの鎮守府から出てけって言わねえよな。
ましてや、ヤンデレ?の女王様までセットで付いてきたってのに。
俺を生贄にするもんじゃねえの?
戦争ってのは、そういうもんだと思うんだが。
戦争じゃなくても、会社が、学校が、社会全体が、いつだって生贄を差し出そうとしてるってのに。
甘ちゃんだよなあ、どいつもこいつも。
それだから、見捨てられないよな……。
おまけ28:畝傍は何かを試している。
戦艦棲姫が宙を舞う。
空母棲姫が宙を飛ぶ。
駆逐棲姫がアーチを描く。
戦艦水鬼と、空母水鬼が顔面から海面に叩きつけられて、そのまま沈んでいく。
決まり手はほぼアッパーカット。
たまに蹴り上げ。
つーか畝傍よ、安〇キックってなんのネタだ?
香取姉さん、あれ見てどう思う?
「……デタラメですね、としか」
ですよねー。
と、曖昧に微笑み合う俺達。
香取姉さん的にはレアな表情です。
まあ、畝傍の奴が何をやろうとしてるのかはなんとなくわかるけどさ。
あれだろ?
ドロップ艦を狙ってるんだろ?
それで、ドロップした艦娘を餌に……狙ってるんだよな?
女王様を。
ただなあ、『艦これ』におけるドロップ艦は、戦闘終了後、戦闘結果に移行してからドロップするんだよなあ。
ゲームのシステムがそのまま移行してるわけじゃないから、畝傍のそれが間違ってるとも思えない、か。
実際、それが最後の1隻だったみたいだけど、ドロップしたわけだし。
いや、でも戦闘中ドロップとかあったら熱いよな。
難敵を撃破したものの、味方はボロボロ。
そこに、敵からドロップ艦。
そのまま援軍として戦闘続行とか熱くね?
ひたり。
香取姉さんのムチが俺の頬に添えられてビクッとした。
あ、いつの間にか戦いが終わってたわ。
ドロップはなし。
そうそう、Sランククリアで、ガシャンは提督の勲章だよな。
ガシャンを経験せずに提督を名乗るな、ってな。
戦闘結果に移行せずのガシャンは涙の勲章だけどな。
あと、イベント中の猫の挨拶の絶望とかよぉ。
やべえ、頭痛と涙が止まらない、どうしてなんだろう。
これ以上考えるなって言ってるのか、俺の潜在意識。
畝傍、お疲れ。
「おー」
曖昧な返事。
そして、右、左、と宙に向かってパンチを放つ。
10メートルほど離れているのですが、パンチの風切り音が聞こえるってどうなんでしょう。
漫画とかでよくある『ゴウッ!』みたいな感じじゃなくて、『ヒュッ』って空気を切り裂く感じ。
かるーく、腕を振ってる感じなんですが。
つーか、なんなのよ畝傍って。
俺は素人だけど、畝傍の動きっていちいちそれっぽい感じを受けるというか……ジャパニーズビジネスマンってそういうの必須スキルなの?
あ、いや、むしろ高校球児の方か?
昭和の高校球児とか、バットで腹殴って腹筋鍛えてるイメージあるわ。
うん、高校球児は戦闘民族、そういうことにしとこう。
しかし、ヤンデレ女王も軽く腕を振っただけで、戦艦を瞬殺したって言ってたっけ。
すごいんだろうけど、戦艦が一撃で大破なんて、提督としては見慣れてるんだよな。
水鬼や、空母おばさんなら、そのぐらい普通にやるし。
あくまでも提督としての視点から言えば、畝傍の方が桁外れてでたらめだ。
ただまあ、唯一の目撃者のあの怯えっぷりが、少し気にかかるってとこか。
なあ、畝傍。
「んー?」
ドロップだして、ヤンデレ女王狙ってんの?
つーか、いざ決戦で、お前の前に軍艦が現れるシーンを想像すると、めっちゃ笑えるんだけど。
相変わらず、軍艦にしか見えないわけだろ?
「まあな」
なんとなく、畝傍を真似て、右アッパーを放つ。
そしたら、腕じゃなく、膝で打てって言われた。
へえ、腕は地面に平行……肘を引かずにそのまま膝のバネで突き上げる、ねえ。
チクショウ、音が鳴らねえ。
おまけ29:畝傍は反省する。
艦娘は激怒した。
かの独断と偏見に満ちた冤罪をはらさんと決意した。
艦娘には政治はわからぬ。
だが、己の身に降りかかった理不尽については、よく知っていた。
自分はただ、おいしくご飯を食べるのが大好きなだけだというのに(以下の文章は削除されている)。
「と、いうわけで、畝傍の料理がいつの間にか消えていた件に関して、明らかに自分が関与したものではないモノがあると、当人はひどくご立腹だ」
全部じゃなくても、心当たりはあるってことじゃねえか、おい。
まあ、誤解があったのは確かだから今度お詫びの料理でも持って行くわ。
甘いもんも好きみたいだし。
「女で甘いものが苦手なのは珍しいだろ」
そうでもないんだがな。
周りが甘いもの大好きっていってるから、仕方なく付き合ってるみたいな愚痴をこぼしてるやつを何人か知ってるよ。
まあ、その話は置いといて、だ。
じゃあ、食いしん坊姉ちゃんの心当たりがない俺の料理を、誰が持っていったかというと。
「ヤンデレ一択じゃね?」
ああ、いや。
大本営での戦いの際に、20日間ずっと見られてる気配があったからな。
その姿を拝もうと思って、スープを提供したわけよ。
まあ、姿見せないまま、空になった器だけ帰ってきた。
……ちなみに、スプーンが帰ってこなかったけど、それはもしかして?
「毎日愛でられてると思います。ペロペロされてても俺は驚かない」
今思うと、ほら、あの芋ほりの日。
俺が料理作ってる時に、陰に隠れてた気配があってさあ。
ああ、まだ俺のことを怖がってるんだなあと、紙皿に料理を取って、そっと……。
「ヤンデレさんが美味しく頂いたと思う。レベルが高かったら、半分は真空パックで永久保存」
なんだろう、この恐怖とはちがう、身体にまとわりついてくるような不安感は。
「餌付けしてんじゃん!お前が餌付けしてんじゃんかよ!深海棲艦に餌を与えてはいけませんって、学校で習わなかったのかよ!」
それだと、料理がなくなり始めたタイミングがおかしいと抗議する所存であります。
まあ、そんなことは今はどうでもいい。
今大事なことは、そのヤンデレ女王様が、『日常的に鎮守府に侵入している』ってことだよな?
これ、めっちゃ重要だよな?
「畝傍さあ、ホントもうお前がパパになっちまえよ。ヤンデレは、きちんとコントロールさえできれば最高の嫁になるって誰かも言ってるし」
え、俺、軍艦相手に頑張らなきゃいけないの?
レベル高くないか、それ?
軍艦マニアはいても、軍艦フェチってのは……。
つーか、その『パパになれ』ってネタなんだよな?どういう意味なんだよ?
いや、意味はわかるが、わけがわからん。
「……なあ、畝傍。お前はご都合主義って信じるか?」
いきなり何を言いだした?
は?改二?
クラスチェンジみたいなもんだったっけ?
いやいやいや、だからなんで俺がヤンデレ女王様とゴールインする前提で話を進めようとしてるんだよ。
もう、ゴールしてもいいからって、なんのネタだよ。
おいおいおい、待て待て待て待て。
「ポチッとな」
うお。
なんだ…何かが俺の周りに集まって…。
「いいね、その厨二ロール」
いや、何言って……。
かすかな光を俺を包んで……気が付くと、俺の両手には、殴ってよし、掴んでよしのオープングローブが。
右手は白、左手は黒。
まあ、正式な名前はオープン・フィンガー・グローブっていうが、オープングローブで通じる。
釣り人が、指先を切り飛ばした手袋をはめてるが、あれのゴツイ版で、拳を保護する感じの防具ってとこだ。
とりあえず、『指ぬきグローブとか、うは、ナイス厨二装備』などとゲラゲラ笑ってる提督に試してみるか。
『厨二』という言葉の意味はよくわからんが、とにかくすごいムカツク。
おまけ30:提督と畝傍は再びめぐり合う。
鎮守府襲撃。
俺は、鎮守府を背に、迫り来る艦隊を見据えた。
どこから見ても、軍艦です。
綺麗なお姉ちゃんになんか見えません。
ははは、ご都合主義破れたり。
いつものようにひっくり返して、船底をべしべし叩いて、叩いて、叩きまくる。
ははは、新しい装備のオープングローブ、全く関係ねえ。
いや待て。
色違いってことは、左手で叩けば、何かが……変わった感じはない。
1隻、2隻、3隻、4隻……。
俺は次々と軍艦を追い払いながら、1隻の軍艦に注意を払っていた。
俺の方に船首を向けたまま、微動だにしない。
主砲で攻撃してくるでもない。
艦隊は、1隻、また1隻と撤退していき……やがて、その1隻と俺だけが、その場に残された。
鬼とか姫とか、人型と言われても軍艦にしか見えなかった俺だが、目の前の軍艦からは、知性らしきものを感じ取っている。
逃げたければ逃げればいい。
俺が両腕を開いてみせても、軍艦はその場を動かない。
俺もまた、攻撃を加えるでもなく、あらためて軍艦を見つめる。
うん?
この軍艦……。
俺は踏み込んでいた。
そして、あの時と同じように膝のバネを十二分に活かして……。
軍艦が宙に舞い、綺麗な放物線を描く。
そして、海面へと車〇落ち。
寒そうな格好をした艦娘の姉ちゃんがそこにいた。
提督の執務室。
俺と、提督と、艦娘の姉ちゃんの3人。
「……なあ、畝傍」
なんだ?
「お前さあ、やっぱ艦娘の顔を認識できねえの?」
なんだ、気づいてたのか。
おっと、そんなに驚くなよ艦娘の姉ちゃん。
別に個人が認識できないってわけじゃねえよ。
髪型、服装、体格、声、あとは少しなら気配も……ただ、顔の部分がぼんやりと霞んだ感じで、はっきりしないってだけだ。
つーか、提督よ。
そういうこと言い出すってことは、やっぱこの姉ちゃん……あの姉ちゃんと同じ姉ちゃんなのか?
「……俺にとっちゃ当たり前のことだったから気付かなかったがな、前に大本営からお客様が来ただろ?あの時連れてきた艦娘の中に、お前も知ってるはずの艦娘が何人もいたわけよ。次に来たお客さんも、同じ艦娘を何人も連れてきてたわけよ。艦こ……艦娘のことを知らない畝傍なら、ツッコミが入るはずだよな、そうだろ?」
提督は、俺とも、艦娘の姉ちゃんとも視線を合わさずに語り続けた。
「同じ姿かたちをした艦娘が、全国各地の鎮守府に数え切れないほどいるって話さ。ここの鎮守府にはいないが、同じ鎮守府に、何人も同じ艦娘がいるってこともある……轟沈した艦娘を、新しく建造することもできる。ただ、それが同じ姿形をしていても、同じように泣き、笑い、しゃべりはしても、同じ艦娘じゃない。決して、同一の艦娘じゃない……俺はそう思っているよ」
どこか祈るような提督のつぶやきに、俺は以前提督が語った『大破はさせても、轟沈はさせん。それが提督のプライドであり、仕事だ』というセリフを思い出した。
いかなる連想が働いたのか、兄が語ってくれた太平洋戦争時の話を思い出す。
『帰ろう。帰れば、また来られるから』という悲しい言葉。
そう言って撤退を促した帝国軍人の言葉は、実現することなく終戦を迎えたと聞いている。
轟沈せずに鎮守府に戻った艦娘は、ある意味、何度も地獄を見ることになる。
それもまた、提督の背負うべき苦しみというべきか。
「その上で聞く」
提督が、艦娘の姉ちゃんに視線を向けた。
強い、眼差しだった。
「お前は……あの時と同じ艦娘だな?」
小さく、だがしっかりと艦娘が頷く。
思わず、口を開きかけた。
それはつまり、あの軍艦……深海棲艦が艦娘になり、また深海棲艦に戻って、それがまた……。
「……女王級に襲われ、瀕死状態だったお前はどこかに連れて行かれた。だが、身体が回復した後、やつらの隙を見て逃げ出して戻ってきた。提督としての公式見解だ、異論は許さん」
鉄を思わせる提督の言葉が、俺の思考を遮った。
ほう、こんな声も出せるのかと、感心する。
そして提督は、ふっと表情を緩めて艦娘の姉ちゃんに語りかける。
「それと、この鎮守府にはお前のことを心配していた仲間がたくさんいる。無事な顔を見せてきてやれ」
執務室には、俺と提督の二人きり。
「艦これのゲームとしては、深海棲艦についての公式設定というか発表はない。まあ、一部の姫や鬼なんかは、明らかに艦娘と似てるのがいるから、プレイヤーの間では妄想逞しい設定が語られていたよ」
キャラデザの問題じゃね?
「身も蓋もないこと言うなよ……でもまあ、『この世界』でどうなってるのかはマジでわからん。だからこそ今回の件は……」
やばいな、どう考えてもやばいだろ。
大本営あたりで情報が止められてるならなおさらヤバイ。
俺の予想としては、提督あたりにはある程度情報が共有されてるんじゃないかと思うんだが。
「そのあたりの記憶はさっぱりないな。俺としてはある日突然この世界にやってきたと思ったら、既に提督だったとしか」
それはまあ、俺も突然この世界にやってきたと思ったら、『鬼畜!色魔!畝傍!』とか罵られる始末だよ。
俺と提督は、少し笑った。
明日以降の話になるが、調べるとするなら『ドロップ艦』だったか?
それが、提督レベルで普通に認識されているかどうかから探りを入れるべきだな。
もしこれが認識されていないとか、噂にもなってないとすれば……この件は徹底的に秘匿すべきだと思う。
まあ、これはおいおい詰めていけばいい話だ。
それよりも。
俺は一旦言葉を切り、提督を見た。
来るなら今夜か?
「ああ。今夜殺しにやってくるよ、間違いなく」
(モニターを指さしながら)猫が!猫が!(某提督の航海日記はここで途切れている)
知人に聞いたところ、最近はサーバの調子も良くて昔のようなことはないそうですね。
古いネタで申し訳ない。
『昭和の高校球児とか、バットで腹殴って腹筋鍛えてるイメージ』
……実話です。
もちろん、フルスイングじゃなくて、先っぽでゴンゴン腹を突く感じ……スイングだと、アバラをやっちゃう危険があるので。
まあ、絵ヅラはやばすぎますが、2人1組で、加減しつつ交互に。
ちなみに、部員同士で腹を殴り合う学校もありました。
あと、近距離からお腹にボールぶつける学校とか。
ははは、ボクシングで、メディシンボールぶつけるのと一緒、一緒、問題なし。
もちろん、当時でも少数派です。