宇宙世紀と言う激動の中で。   作:吹雪型

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救出作戦

ギレン・ザビ総帥による演説により多少の混乱は起きたが、艦隊は何とか前線基地の港に到着した。

 

「君達モビルスーツ部隊のお陰で何とか無事に前線基地に着けた。感謝しているよ」

 

「しかし、護衛艦2隻と輸送艦4隻を守れませんでした。それに、他の護衛艦と輸送艦の甲板を凹ませてしまって」

 

然も護衛艦の速射砲を踏み潰した時はヒヤッとしたけど、無人仕様で良かった。

 

「気にする事は無い。甲板や速射砲等は直せば良いだけだ。君は多くの仲間を救ったのだ」

 

俺達はダラス大佐と他の乗員から敬礼を受ける。それに対して答礼で返す。

 

「これから先は長い。死ぬんじゃ無いぞ」

 

艦隊は積荷を降ろし、艦隊は修理を行う為に簡易ドックに入る。其処で修理が終了しだいベルファスト基地に戻る事になる。そしてMS特殊部隊第27小隊も次の戦場に向かう。

 

「ようこそ地獄の三丁目の名前の無い欧州前線基地へ。君達MS特殊部隊第27小隊を歓迎しよう。早速だが、君達に任務を与える」

 

少し嫌味ったらしい言い方で歓迎されるが気にしない。恐らく演説により気が立ってるのだろう。それより任務内容の方が重要だ。

任務内容は味方歩兵、戦車部隊の救出任務。及び敵戦力の撃破。

現在、この前線基地より70km先の市街地に味方部隊が敵部隊により退路を断たれてしまった。よって、我々は損傷したモビルスーツの修理が完了次第出撃を開始。そして退路の確保を第一優先となる。味方戦力は歩兵300人、61式戦車5型4輌。軽車両数台。

 

「以上だ。では、君達の健闘を期待する」

 

そう言って基地司令は出て行った。

 

「ふっ、僕は後方から援護しよう。勿論護衛も必要だろう。レイナ、頼むよ」

 

「お断りするわ。寧ろ私達はルイス伍長と仲間達を守る立場なのよ。それが嫌なら部隊から抜けて頂戴」

 

「なら君も一緒に抜けるべきだ。そうすれば全て解決するんだ」

 

「それは貴方の中だけよ」

 

やれやれ、正直痴話喧嘩は他所でやって欲しいものだね。

 

「痴話喧嘩じゃ無いわよ!失礼ね!」

 

「俺一言も言ってませんでしたよね!?」

 

顔に書いてるのよ!と怒られてしまう。何この理不尽。

 

「あはは〜。シュウ曹長は考えが顔に凄く出ますからね。今迄賭け事には勝った事あります?」

 

「んー、言われてみれば無いかもな。それに賭け事自体勝てないからやらなくなったし」

 

この後レイナ少尉とアーヴィント少尉は暫く話し合いをする事になった。そして、俺は整備班長モンド伍長と話をしていた。

 

「コートニー曹長、単刀直入に聞きます。ジムの制御装置のリミッター外しましたね」

 

「えっと、はい外しました」

 

「成る程な。曹長、何故モビルスーツに制御装置が有るか知ってますか?」

 

「危ないからですか?」

 

モンド伍長は煙草を咥えて火を点ける。

 

「正確に言うならパイロットを守る為ですよ。勿論機体の各部の負荷、ジェネレーターの暴発から防ぐ訳ですからね」

 

一息付いて煙草の煙を出す。

 

「唯、やるなとは言いません。戦場に居る以上何が起こるか分かりません。しかし、リミッターを解除するなら長くて五分までです。それ以上はジェネレーターが耐えられない」

 

「五分ですか。長い様で短いですね」

 

「其処は諦めて下さい。ジムのジェネレーター自体が大した物では無いですからね。まあ、ザクよりかは高性能ですがね」

 

モンド伍長からの忠告を聞きながら俺はジムを見る。見た目は平気だが関節部やジェネレーター部分に整備兵が点検を行っていた。

 

「後は、曹長の機動は少々乱暴な所がありますからね。宇宙なら問題ありませんが。勿論地上でそれもやるなとは言いませんが程々でお願いします。関節部に負荷が掛かりますからね。戦闘中に機体が壊れましたなんて洒落にならんでしょう?」

 

「了解です。程々にしときます」

 

そう言うとモンド伍長も整備に向かう。俺は暫くジムを見つめる。色々負荷を掛けてしまった様だ。戦闘中に機体が壊れるのは勘弁して欲しいしな。

 

(それに、無茶な機動で機体を壊したなんて知られたらチェイス教官に怒られてしまう)

 

多分良い笑顔で特別鬼メニューの訓練が出されるだろうな。ジムと量産型ガンタンクの修理が完了してトレーラーに載せていく。そしてトレーラーを発進させる。

 

「頑張れよー!」

「ジオンの連中に目に物見せてやれ!」

「負けんなよー!お前らに賭けてんだからな!」

 

有難い声援を受けながらMS特殊部隊第27小隊は出撃する。

 

「ねね、そろそろ私達の部隊名とコードネーム決めましょう!」

 

「部隊名ですか?隊長の苗字を取ってラングリッジ小隊で良いのでは?」

 

「それで良いの?」

 

「ラングリッジ自体余り聞かない苗字ですし」

 

部隊名はあっさり決まる。分かり易い方が良いしね。しかし、コードネームか。

 

「ガルムを推薦します。以前はガルム12で通ってましたし」

 

「えー、可愛く無いから却下。マルポロにしましょう?私が昔飼ってた子犬の名前なの」

 

「なら僕からも。高潔からノーブルにしよう」

 

「コードネームですか。でしたらゴーストは如何ですか?私達は特殊部隊ですから絶対に敵に捕まる訳には行きませんから」

 

ルイス伍長…結構皮肉過ぎます。この後話し合いの結果あみだくじで決める事にした。神様頼むよ、マルポロだけは勘弁してくれ。

結果はガルムになった。聞き慣れたコードネームだから安心する。そして現在の味方の状況を確認する。

 

「現在味方残存部隊は市街地に籠城してます。敵戦力には旧ザク1機、ザク4機、そしてグフ1機確認してます。また後方に敵歩兵、戦車部隊も確認しています」

 

「此方の戦力は残存部隊とジム2機に量産型ガンタンク1機か」

 

「正面から戦うのは厳しいわね」

 

「ふっ、量産型ガンタンクが有れば火力では勝てるさ」

 

「その火力を活かせればでしょう」

 

レイナ少尉は容赦無くアーヴィント少尉を切り捨てる。

 

「そんな君も素敵さ」

 

しかし、効果は無い模様。

 

「敵の配置は退路を絶ってる方に旧ザク1機にザク2機になってます。後はマゼラ・アタック戦車が10輌以上です」

 

「ジオンに兵無しなんて嘘っぱちだな」

 

「こらこら、レビル将軍に文句言わないの。ルイス伍長、何か策は有る?」

 

「ジム2機が正面から敵を引き付けます。そしてアーヴィント少尉の量産型ガンタンクで狙撃です。後は戦線を後退させながら敵部隊を此方に引き付けます」

 

「籠城してる味方部隊と連絡が取れれば良いんだけどな」

 

あの市街地周辺にはミノフスキー粒子が出ていた為連絡が取れないのだ。そして暫く考える。すると良い事を思い付いた。

 

「発光信号を送りましょう。戦闘開始と同時に味方に伝える事が出来れば多少はマシです。勿論敵にも気付かれますが、もしかしたら反対側にいるグフとザクを此方に引き寄せれるかも知れません」

 

「却下だ却下!僕達が囮?君はナンセンスだよ。戦争をやり過ぎて気が狂ったのかな?」

 

「このままだと味方は全滅します。敵モビルスーツの相手をするだけでも味方の生存率は上がります」

 

「代わりに僕達の生存率は下がる訳だがな」

 

「この作戦の一番の肝はアーヴィント少尉の量産型ガンタンクによる狙撃です」

 

「っ!」

 

RX-75量産型ガンタンク。砲身が延長されてるし、索跡センサーも強化されてる。それがこの作戦の肝だ。

 

「ジムにはシールドが有ります。多少の被弾は何とかなります。中距離からのビームスプレーガンの威力は心許ないですが、ビーム兵器を使うのを見せれば敵は攻めるのに躊躇します」

 

「…リスクは高いわね」

 

この作戦はリスクが高い。だが、味方と連携が取れれば退路を絶ってる敵を一方的に叩ける。暫く考え込むレイナ少尉。

 

「賭け要素が大きいわ。でも、嵌れば此方の被害はかなり少なくなるわ」

 

「本気か!レイナ、考え直せ!」

 

「アーヴィント少尉、シュウ曹長が言った通り貴方の狙撃がこの作戦の肝よ。頼むわよ」

 

「っ!…ふっ、まあ君にそう言われたら仕方無いな」フサァ

 

(レイナ少尉は小悪魔系だな。こうやって惚れさせた男を手玉に取るんだな)

 

「シュウ軍曹、今はそんな事を考えてる場合じゃ無いですよ?」

 

ルイス伍長が小声で注意する。そんなに分かり易く顔に出てます?

 

「はい、バッチリと」

 

この後暫くトレーラーに揺られる。そして目的地の市街地まで10kmの所でモビルスーツを起動させる。

 

「システムチェック良し。武装も良しと。ガルム2よりガルム1へ、此方の出撃準備OKです」

 

『此方も準備OK。ガルム3は如何?』

 

『今起動完了したよ。いつでも行けるさ』

 

『ならラングリッジ小隊出るわよ!』

 

市街地に向かい前進する。ルイス伍長は指揮車両ホバートラックから通信にて戦況を教えて貰う。そんな時、レイナ少尉から秘匿通信が入る。

 

「如何しました?秘匿通信なんて使って。バレたら怒られますよ?」

 

『シュウにも一応教えておくわ。アーヴィント少尉の件についてよ』

 

「許嫁の件なら知ってますよ?」

 

『ちっがうわよ!て、其方じゃ無いの。アーヴィント少尉はね、モビルスーツ適性が低いのよ』

 

「え?低いんですか。それって大丈夫なんですか?」

 

『正直大丈夫じゃ無いわ。だから彼には量産型ガンタンクが配備されたのよ』

 

レイナ少尉は疲れた表情をしている。

 

「しかし、此処まで来たら後戻りは出来ないでしょう。アーヴィント少尉にはなるべく敵を引き付けない様にするしか無いですね。今此処で量産型ガンタンクが無くなれば火力が半減します」

 

『そうね。アーヴィントも悪い人では無いのよ。唯、ちょっとお馬鹿さんなのよ』

 

お馬鹿さんて…。秘匿通信を終える。そして、戦闘区域に入る。

 

『此処から先はレーザー通信のみよ。敵と接触する可能性は高いわ。充分に注意よ』

 

俺達は更に前進させる。ルイス伍長のブラッドハウンドは後方に待機。その場で索跡開始する。

 

『索跡出ました。11時の方向、距離3kmに震音確認。震音データ、旧ザクとザクです』

 

『なら早速信号弾を打ち上げるわ。景気付けに丁度良いわ!』

 

ジムから信号弾が打ち上げられる。戦闘開始だ。

 

「自分が前に出ます」

 

『了解よ。カバーするわ。ガルム3は所定位置で待機よ』

 

『分かった。敵が来たら直ぐに助けに来てくれ給えよ!』

 

量産型ガンタンクは少し離れた場所に移動する。そして俺達の戦いが今始まる。

 


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