『おい!ロッテル隊のマーカーが消えたぞ!』
『畜生!やられたのか!なら敵がこっちに来るぞ!』
『落ち着け。こっちには戦車も居るんだ。補給部隊は先に行かせるぞ。俺達は戦車隊と共に敵を迎撃する』
旧ザク2機とザク1機は戦車隊と連携を組む。ザク3機は前衛になり戦車は後衛になる。そしてシールドを構えたジム2機を視認。更に量産型ガンタンクに61式戦車も確認する。
『あれが噂の連邦のモビルスーツか。奴等に本当のモビルスーツを見せてやるぞ!戦車隊、奴等の足を止めろ!』
この時、61式戦車隊も同時に砲口から火を噴く。お互いの戦車隊の砲撃の中モビルスーツは接近するのだった。
……
戦車隊の砲撃の中をシールドを構えながら前に進む。そしてブースターを使い跳びビームスプレーガンで旧ザクを狙う。
「先ずは1機目」
ビームスプレーガンを撃つ。旧ザクも慌てて回避するが右腕に被弾。更に左肩、頭部に直撃させる。
『動きが止まった!貰った!』
61式戦車からの砲撃がコクピットに直撃。そしてゆっくりと前に倒れる。しかし旧ザクとザクはザクマシンガンで61式戦車を攻撃。61式戦車3輌が爆散する。
『これ以上はやらせんよ!』
量産型ガンタンクの120㎜低反動キャノン砲がザクを狙い撃つ。ザクは咄嗟に左腕を前に出すが、砲弾は貫通してザクは倒れる。
『これで決めるわ!受け取りなさい!』
ガルム1の90㎜ガトリングガンが旧ザクを撃ち抜く。
『う…嘘だろ?こ、こんな…所で』
そして旧ザクは爆散。残ったのはマゼラ・アイン戦車とマゼラ・アタック戦車のみだ。
『バンブル1からガルム1へ。こっちの戦車隊は俺達に任せな。此処は本職の戦車乗りの出番だぜ』
『分かったわ。ガルム3はバンブル小隊と共に敵戦車隊を片付けて。ガルム2は私と一緒に補給部隊を叩くわよ』
『待ってくれレイナ。僕も一緒に行くよ!』
『おい人型擬き。お前の遅さじゃあ敵に逃げられちまうぜ。諦めな!』
バンブル小隊から笑い声が出て来る。
『くっ…僕だって、僕だって!』
『ガルム3、気持ちは嬉しいわ。でも冷静に状況を考えて頂戴。ガルム2行くわよ』
「了解です」
何だかちょっと気不味いな。でも量産型ガンタンクだと色々厳しいだろうしな。ジムのブースターを使い敵戦車隊に攻撃しながら敵補給部隊を追う。
『不味いぞ!2機抜けられた!』
敵戦車隊も急いでジムに攻撃しようとする。だが、そこに40㎜の弾の嵐が飛んで来る。
『レイナは僕が守る!お前達は僕が倒す!』
アーヴィント少尉の量産型ガンタンクが怒涛の勢いで攻撃する。それに続けと言わんばかりにバンブル小隊の61式戦車も追撃する。
『良いぞ!人型擬き!やっちまえ!』
『此奴は良いな。中々の弾幕じゃないか』
量産型ガンタンクを主軸に敵戦車隊を攻撃するのだった。
そして俺達も目標を発見する。
『見えたわ。絶対に逃さないわよ』
『了解です』
武器を90㎜マシンガンに切り替える。軽車両やトラック相手なら90㎜マシンガンでも充分だ。ガルム1も90㎜ガトリングガンで狙いを付ける。
そして90㎜ガトリングガンと90㎜マシンガンの弾が敵補給部隊に次々と当たり爆発する。
『この野郎!好きにやらせるかよ!』
その時、横合いからワッパが数台やって来る。そして対戦車バズーカやマシンガンを撃ち込んでくる。
『ちょっと!何よ此奴等!』
「ガルム1落ち着いて下さい。敵の歩兵です。まさかワッパで来るなんて」
最初はそんな武装でジムを倒せるかよと思っていた。だがウロチョロとジムの周りを飛行するし、マシンガンでメインモニターに攻撃して来る。更にバックパックに対戦車バズーカを撃ち込もうとする奴も居る。
『もう!何なのよ此奴等!本当に嫌!』
ガルム1はそう言うとブースターを使い跳んで逃げる。俺も前にブースターを使い高速で移動する。それと同時に何台かのワッパが吹き飛ぶ。
彼等の抵抗も虚しく、俺達は敵補給部隊を攻撃する。すると敵から通信が来る。
『こ、降伏する!だからこれ以上の攻撃をやめてくれ!』
これ以上の抵抗は無意味だと判断したのだろう。
「やれやれ、やっと終わりか」
俺は90㎜マシンガンを降ろす。そしてレイナ少尉のジムを見る。しかしレイナ少尉のジムは90㎜ガトリングガンを降ろしていなかった。
『私達は何も聞いていない。そうよね?ガルム2』
「何言ってるんですか。そんなの認められる訳無いでしょう」
しかし返信は沈黙する。レイナ少尉のジムはゆっくりと降伏したジオン兵に近付く。
『私はジオンを絶対に許さない。此奴等は死んで当然の事をし続けて来た。降伏?シュウ曹長、甘いわよ。そんな考えは捨てなさい。上官命令よ』
「拒否します。例え軍法会議に出る事になっても」
お互いのジムをモニター越しに睨み合う。因みに通信は音声のみになってしまってるからだ。
『私にはね、母と13歳になる筈だった弟が居たの』
(母と弟が居た…か、成る程な)
今時珍しく無い事だ。身内の誰かが死んだ事は探せば直ぐに見付かるぐらいだ。
『何となく予想は付くでしょう?私の弟はね、シドニーに居る母方のお爺ちゃんの家に行ってたの。あの子お爺ちゃん子だから、母と一緒に凄く楽しそうに出かけて行ったわ。その時私は丁度熱を出してたの。だから私と父は少ししたらシドニーに行く予定だったの』
そして、あの日…シドニーは地上から消えた。
『これは私の戦争よ。その邪魔はさせない。コートニー曹長、其処を退きなさい。退かないなら…』
90㎜ガトリングガンを俺に向ける。だが…退く訳には行かない。
「お断りします。俺達は戦争をやってるんです。殺戮をする為に戦争をしてる訳では無い!」
『ッ!?先に殺戮をしたのはジオンよ!!!何十億人を殺した連中なのよ!!!』
「それを知ってるなら同じ轍を踏む理由には成りません!」
『貴方は大切な家族を失った事が無いからそんな事を言えるのよ!知らないとでも思ってた?貴方は何時も一歩引いて観てるもんね!』
俺の機体からロックアラートが鳴る。レイナ少尉は俺のジムをロックしたのだ。
『何も失って無い奴が私に指図するな!!!』
何も失って無いか…。
「そうですね。俺には家族と呼べる存在は居ません。強いて言うなら部隊の仲間の敵討ちぐらいです。ですが、敢えて言わせて貰います。誰かを失う悲しみを知っているなら自分がしようとしている事も充分理解してる筈だ」
『煩い!知った風に言うな!!!』
「レイナ少尉の母親と弟はこんな虐殺行為を喜ぶのですか?父親はこんな事をする為に、その武器を渡したのですか?違うでしょう。レイナ少尉が生きてて欲しいが為にお父さんは無理をしたんでしょう?」
レイナ少尉からの返事は無い。それでも伝える。言わなければ、言葉にしなければ伝わらないから。
「この悲惨な戦争を生き残って、自分が体験して来た事を後世に伝えて下さい。そして、レイナ少尉の様な人をこれ以上増やさない様に。それが、戦争をしている者達の義務です」
『……ッ…ッ〜………でも……それでも……私は……私は!!!』
90㎜ガトリングガンの砲身が回転する。そして……
90㎜弾の銃声が戦場に響き渡るのだった。