宇宙世紀と言う激闘の中で。   作:吹雪型
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一時の休息

オデッサ攻防戦は地球連邦軍の勝利で終わった。

ジオン公国軍、オデッサ総司令官マ・クベ大佐が宇宙に撤退した。それを機にジオン公国軍はオデッサより各ジオン占領地域に撤退して行く。地球連邦軍は追撃戦を実施。ジオン公国軍に対し更なる攻撃を行なった。

そしてRGM-79ジムと量産型ガンタンクが損傷したラングリッジ小隊は追撃戦には参加出来無かった。

 

「代わりに休憩が出来るなら良いもんだな」

 

これは仕方無い事だ。ジムが中破レベルまで損傷してしまったのだから。

 

「全く、お気楽な物ね」

 

「まあまあ、シュウ曹長も戦い続けて来たのですから」

 

レイナ少尉とルイス伍長が此方に来る。

 

「何せ俺達のモビルスーツはボロボロだし、他のモビルスーツ部隊も追撃戦には参加して無いですし」

 

唯、1機だけ無傷の奴は居たがな。そうガンダムハンマー持ちの奴さ。因みに追撃戦には不参加だ。何故なら他の武器を使うつもりが無いかららしい。

 

「ガンダムハンマー以外の武器に興味は無い」

 

と彼はキッパリと言い放った。いや、俺達軍人なんだから我儘言うなよ。気持ちは分かるけど。

 

「ま、追撃は他の部隊に任せても良いかもね」

 

「寧ろ皆さんはゆっくり休んで下さい。後の処理は私達でやれますから」

 

ルイス伍長は俺達に休息を促す。確かに今日の一戦は冷や汗物が有ったな。特にドムが何度も接近して来るのは心臓に悪かったな。

 

「所でレイナ少尉、あのパスコードの意味は何ですか?責任を取る前に意味を教えて下さい」

 

「うえっ!?そ、そんなの言える訳無いでしょう!バカ!変態!」

 

「何で罵倒されるんですか!意味が分かりません。ルイス伍長は分かりま…ルイス伍長?」

 

ルイス伍長は自身の胸の辺りを見ていた。

 

「92…良いなぁ」

 

何故か羨ましそうにレイナ少尉を見る。一体何なんだ?

 

「まあ、何でも良いや。代わりに責任云々も勘弁して下さいよ」

 

「うっ…じゃあ、代わりに買い物には一日中付き合って貰うからね!」

 

ビシッと人差し指を俺に向けながら去って行くレイナ少尉。しかしこの辺りで買い物が出来る場所有ったっけ?

 

「シュウ曹長、今度は私とも買い物に付き合って頂けますか?特に…深い意味は無いんですけど」

 

「別に構いませんよ。買い物ぐらい大丈夫ですよ」

 

「本当ですか!良かった。じゃあ時間が出来た時にお願いしますね!」

 

ルイス伍長もそう言いながら去って行く。

 

「俺もゆっくり休むかな」

 

そう一言呟きながらホバートラックに向かうのだった。

 

……

 

宇宙世紀0079.11月10日。司令部よりMS特務部隊第27小隊に命令が降る。

 

【11月18日にジャブローに来られたし。RGM-79ジム、量産型ガンタンクの戦闘データの回収、及びアップグレード作業を行う】

 

ジャブローまで行く輸送機は4日後になっていた。つまり、3日間は自由な日が出来た訳だ。そんな事を考えていた時だった、巨大な白い戦艦が上空を通過して行く。

 

「あの戦艦は一体?」

 

随分と損傷していた様だが平気そうに飛んで行く。

 

「へぇ。連邦軍もあんな物作ってたのね」

 

「レイナ少尉なら色々知ってそうでしたけど」

 

「そんな事無いわよ。パパなら何か知ってるかもだけど、簡単に聞ける訳無いでしょう。一応軍事機密に入ってるだろうし」

 

その軍事機密を知ってる可能性が高いお父さんは何者ですか?

 

「それより、明日は街に買い物に行くわよ?ちゃんと準備して起きなさいよ」

 

「街?ああ、近くの中立街ですか。大丈夫なんですか?正直あまり近付かない方が良いと思いますが」

 

「だって、他に街無いもん」

 

無いもんて…子供ですか。

 

実はこの欧州には地球連邦軍、ジオン公国軍に協力しない街が有る。戦争に参加しないと公に宣言しているのだ。そうする事で街に被害を出さない様にしてる。尤も、大した経済力も無ければ重要な施設が有る訳でも無い小さな街が宣言した所で意味は無い事だが。

そして次の日になり、俺とレイナ少尉は中立街に出掛けるのだった。

 

……

 

中立街には地球連邦軍のラコタを一台借りて行く事になった。この時レイナ少尉の小悪魔っぷりが発揮されて、あっさりラコタは借りれた。

 

「本当にレイナ少尉は同性からハブられてたんですね」

 

「ちょっと!何でいきなりディスってんのよ!」

 

「いや、だってねぇ?」

 

あのやり取り見てた女性士官が軽く舌打ちしてたし。そう思うと少し涙が…出て来ないわ。

 

「やっぱり自業自得ですよ。諦めてハブられて下さい」

 

「ハブられて無いもん!ただ、皆とのタイミングが合わなかっただけだもん」

 

そんな下らない話をしながら中立街に行く。やはり戦争の痕跡は多数有る。建物が倒壊してたり、旧ザクが倒れ込んで居たり。野戦病院や避難民や家が無くなった人達がテントで暮らしていた。意外な事に物資等が地球連邦政府から配られてるみたいで、連邦軍のシンボルマークの付いた袋やら木箱が並べられている。そして被害を免れた建物や地区がある所ではそこそこ賑わいがある。恐らく欧州での戦いが一段落着いて、復興の兆しが見え隠れしてるからだろう。因みに裏路地に行けば闇市が普通に開かれてる。

中立街に着くと先ずは軍服を隠す為にフードを着る。欧州周辺は再び地球連邦軍の占領下になったものの、ジオン公国軍の残党が居る可能性は高い。よって無闇に刺激しない方向で行く事になった。それと武装もしっかりと準備はする。

 

「思ってた以上に被害が大きいですね。帰って基地の売店で買物しません?」

 

「それじゃあショッピングの意味が無いでしょう!気持ちはちょっと分かるけど。ほら、行くわよシュウ」

 

「了解です。レイナしょう、レイナ」

 

こうして俺達は中立街に入る。因みにお互い軍人だとバレない様に階級は言わない事にしている。

 

……

 

戦場の被害が無い場所は意外にも物が揃っていた。恐らく地球連邦政府が援助はしてるのだろう。だが、避難民や野戦病院などの状況を見るとこの街を全て救う分は無い。本当に必要最低限なのだろう。中立宣言をしてるとは言え、此処も地球連邦政府の所有地だ。変に援助とかを打ち切れば敵に寝返ってしまう可能性が高いだろう。そうなればゲリラ屋の巣窟に早変わりになるだろうな。

 

「あー!このイヤリング良いなぁ〜。それにコッチのネックレスも。ねね、どっちが似合うかな?」

 

そんな事を考えてると、いつの間にかレイナは二つのアクセサリーを此方に見せて来る。しかし、イヤリングとネックレスか。どっちも身に付ける場所が違うんですけど…。比べ様が無いんだけど。

 

「そうですね。イヤリングの方が似合ってますよ。何かレイナにぴったりな感じがしますし」

 

「ふ〜ん、そっか〜。ならイヤリングに決めた」

 

レイナはあっさりイヤリングに決めてお会計を済ます。それで良いんですか?

この後も服を見たり、試着したり、感想言ったり色々やった。因みに買う事はしなかった。だって基地の売店より3倍以上の値段だったし。そして漸く昼御飯になった。

 

(いやー、長い買い物だな。信じられるか?まだ午前中何だぜ?)

 

「シュウは何食べる?私はこの野菜パスタにしようかな」

 

「そうですね。自分はミートパスタにしますよ。しかし、まさかパスタ食べれるとはね」

 

オデッサ攻防戦は地球連邦軍の勝利に終わり、欧州周辺は地球連邦軍の占領下になった。その結果、欧州に於ける戦争は収束に向かって行った。この中立街も戦地に成ったのは一度や二度では無いだろう。それでも戦争が落ち着いたからか、街には随分と活気が有る。恐らく戦いに巻き込まれる心配が無くなったからだろう。

 

「私達が守った物が、今見ている光景よね」

 

レイナは外の景色を見ながら呟く。子供が母親と手を繋いで歩いていたり、老夫婦がベンチに座ってたり、壊れたザクの腕に登ってる奴とか、男同士手を繋いでたり…え?いや、その辺は人それぞれだしな。

俺達は暫くその光景を見てた。しかし、実はもう一つ見ていた者がある。嘗ては当たり前の光景を眩しそうに見ているレイナ・ラングリッジの姿はとても綺麗で正直見惚れてしまっていた。

 

……

 

この後も引き続きレイナの買い物に付き合う事になった。だがウィンドショッピングだけで、ただ街を見て回っていた。特別な事は無い。普通の買い物だった。と言っても闇市とかには行かず、表通りの場所だけだが。

 

「あ!ねね、彼処のアイス食べましょう!勿論シュウの奢りで!」

 

「別に構いませんよ。アイスぐらいどれでも好きなのを」

 

「本当?やった!何にしようかな〜♫」

 

レイナは嬉しそうにアイスを選ぶ。そんな姿を見てふと思った。戦争の傷跡以外は去年まではこんな風景は当たり前だった。だが、戦争が始まり11ヶ月が過ぎた。その間に数十億人が死んで、兵器群の技術は途轍も無い勢いで成長している。

この戦争はまだ続くだろう。その間にどれだけの人間が死ぬのか。その間にどれだけの技術が進歩するのか。その答えが出るのはずっと先になるのだろう。

だが何れ答えは出るだろう。唯、それがどんな答えになるかは誰にも分か無い。例え噂話の域にしか居ないニュータイプとやらでもさ。

 

「まーた小難しい事考えてる」

 

「ふがっ」

 

気がつくとレイナがアイスを片手に俺の鼻を摘む。勘弁して下さい。

 

「私にはシュウが何考えてるかは分からないわ。でも、結局自分の望む答えを出せる人なんてほんの一握りよ。例え戦争が始まって無かったとしてもね」

 

「レイナ…」

 

未だに俺の鼻を摘みながら真剣な表情で話す。

 

「だったらさ、望む答えに近づける様にやれば良いじゃ無い。それで得た物は間違い無く掛け替えの無い物になるわ」

 

言われてみればその通りだ。生きてる限り様々な事が有る。それに納得しようがしまいが、時間は戻ら無いし止まら無い。なら、今を精一杯生きるだけだ。

 

「正直、色々悩む事は有ります。ですが、今は目の前の事に全力を尽くします」

 

「それで良し!さーて、なら早速買い物の続きよ!シュウ、全力で行くわよ!」

 

レイナは手を差し出して来る。俺はその手を取る。

 

「勿論です。これから盛り上がって行きますからね!」

 

俺達は再び買い物に行く。戦争や情勢は一旦棚上げだ。俺は今目の前にいる人と買い物に来ているのだから

 

宇宙世紀0079.11月13日。MS特務部隊第27小隊ラングリッジ小隊は地球連邦軍本部、ジャブローに向かい移動を開始する。

しかし、彼等はまだ知ら無い。自分達が激戦区の中に足を踏み入れて行く事を。争いの渦は様々な人々を巻き込んで行く。その渦に巻き込まれたら逃れられる事は誰にも出来無い。








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