宇宙世紀と言う激動の中で。   作:吹雪型
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パイロット候補生VSラングリッジ小隊2

候補生のジム2機を倒せたとは言え、まだ10機のジムが健在だ。そして確実に此方を追い込んで来ていた。

 

「やっぱり戦力差が大きいとキツイな。シールドもそろそろ限界だしな」

 

だが、もう少しでルイス曹長の立案した作戦が始まる。それが決まれば直ぐに候補生達を制圧出来るだろう。

 

「中々エグい作戦だよな。候補生相手にやるとはな」

 

今回ばかりは候補生達に少し同情するよ。そしてルイス曹長から通信が来る。

 

『ガルム1、間も無く敵が近くに来ます。ガルム2はもう暫くの辛抱です』

 

『了解よ。システム立ち上げ準備開始』

 

「ガルム2了解。頼みますよ!」

 

最後の仕上げだと言わんばかりに建物の陰から跳び出し牽制する。俺の動きに釣られて10機のジムが射撃しながら接近して来る。

 

『ガルム1へ、システムを立ち上げて下さい』

 

『了解よ!さあ、反撃よ!』

 

レーダーに反応が一つ増える。位置は候補生達の背後からだ。

 

『あらあら〜後ろがガラ空きじゃ無い♫』

 

楽しそうな声と共に攻撃を始めるレイナ中尉。

 

『な、なんだ!何処からの攻撃だ!』

 

『此方3番機、やられた!』

 

『いきなり現れたのか!?何でだ!』

 

候補生達は慌てて背後を確認する。

 

「おいおい、俺はまだ生きてるぜ?」

 

俺も転身してブースターを使い一気に接近する。そして次々にペイント弾を当て行きながら模擬刀で接近戦をして行く。

 

『そらそらー!早く逃げないと全滅よ!最も、逃さないけどね!』

 

「ルイス曹長の作戦が上手く嵌りましたね。こうも簡単に行くとはね」

 

候補生達と接触する前にルイス曹長はある作戦を提案して来た。ルイス曹長が考えた作戦はレイナ中尉のジムを建物の陰に潜ませる。そして俺が囮になりつつ候補生達をレイナ中尉の近くまで誘導する。勿論レイナ中尉がバレないように気を付けながらだ。その際にルイス曹長からの的確なルート指示が有ったのは有り難かった。

やはり戦術オペレーターの存在は非常に大きい。特にルイス曹長の地形の把握能力は高い。何処にレイナ中尉のジムを隠すか、逃走ルートと攻撃するタイミングの場所を的確に教えてくれる。

 

「さて、後2機だな」

 

圧倒的な優位から劣勢になる候補生。

 

『ちょっと!貴方達何したのよ!』

 

『そうよ。何かズルしたんでしょう。じゃなかったらこんな簡単に』

 

そんな言い訳を聞く理由は無いので速攻で倒す。

 

『ふん、口だけなら誰でも言えるのよ』

 

大分スッキリした表情になるレイナ中尉。まさか最後の生き残りがレイナ中尉に喧嘩してた女性2人組だったとは。こうしてパイロット候補生VSラングリッジ小隊の模擬戦はラングリッジ小隊の勝利で幕を閉じたのだった。

 

……

 

模擬戦が終わり再度全員が集まる。しかし候補生達は全員不満気な顔をしてる。

 

「あんな戦い方は可笑しいです。教練にもあの様な戦い方は有りませんでした」

 

「そうですよ!それにコートニー少尉は殆ど逃げてたでは有りませんか」

 

「オペレーターが付いてる時点で狡いわよ。再戦お願いします!」

 

誰も彼も文句を言う。まあ模擬戦だし別に文句ぐらい聞いても良いさ。だがな、その考え方だと…死ぬぜ?

 

「なら開戦当初、地球連邦軍に無かったミノフスキー粒子とモビルスーツを使ったジオン公国軍は狡いと言うのか?戦場でオペレーターや味方との通信出来ない状況で敵に同じ言い訳をするのか?」

 

「それは…」

 

俺の言葉に沈黙する候補生達。中には俺より年上が居るが話を続ける。

 

「戦場はお前達の味方では無い。状況を的確に判断する事、態勢を立て直す為に後退する事、そしてチャンスを掴んだ奴が生き残るんだ。俺はルウムでの戦いでチャンスを掴み生き残る事が出来た」

 

俺の言葉に自然と静かになり話を聞く候補生達。

 

「お前達が戦う理由は色々あるだろう。復讐や敵討ちがしたいから。俺はそれを止めろとは言わ無いし言うつもりも無い。だが、それで仲間を見殺しにする状況にするな。自分が死ぬ状況にするな。周辺を常に警戒する事だ。それと模擬戦でお前達の背後から現れたレイナ中尉のジムの反応は、レーダーにはしっかりと出ていたからな」

 

俺の話は此処迄だ。教官に目配せをする。それを察してくれて候補生達に話し掛ける。

 

「お前達はまだまだ考えが甘い事が良く分かった模擬戦だ。戦力が圧倒的だったのを理由にして索敵を疎かにした。そして自分達が誘われてる事に気付かなかった。明日からの課題はその辺りを徹底的に修正するからな!ラングリッジ中尉、コートニー少尉、エヴァンス曹長、本日は模擬戦有難うございました。総員!敬礼!」

 

教官の号令に候補生達はしっかりと敬礼する。それに対して俺達も答礼する。

 

「さて、行きますか。じゃあなお前ら、死ぬんじゃ無いぞ」

 

こうして俺達は別れる。ふと振り返って見るとお互い話し合っていた。どうやら反省会をしてるみたいだ。

 

「良かったじゃない。私達が相手したのは無駄じゃなくて」

 

「そうですね。この模擬戦でオペレーターや仲間との連携が如何に大事なのか理解してくれれば良いですけど」

 

「大丈夫ですよ。それにシュウ少尉の話を真剣に聞いてましたから」

 

「柄にも無い事言ってると分かってたんですけど。あのまま戦場に行かせたく無かったから」

 

俺はルウムでの戦いは、唯単純に運が良かっただけだ。それ以降も良くもまあセイバーフィッシュで戦ったもんだよ。今やれと言われたら無理と断言出来るよ。

 

「そうだ。レイナ中尉、聞きたい事なんですけど」

 

「あら?何かしら。私のスリーサイズなら特別ご褒美に教えても良いわよ?」

 

「え?マジで?…て、違う違う」

 

一瞬其方でも良いかもと思ってしまった自分がいる。そんな俺をルイス軍曹は冷たい眼差しで見てくるのは辛い。でも、男なんだから許して欲しい。

 

「あの2人の女性少尉とレイナ中尉は知り合いなんですか?」

 

「あら?何でそう思うの?」

 

「何でと言われたら…何となくとしか言えませんが」

 

普通あんな風台詞を上官に対して言う事は無い。そもそも、そんな事をしたら間違い無く教官に怒られる。だが、あのやり取りを見ると違和感しか無い。教官は特に何も言わなかったし、レイナ中尉は気にしてる素振りは無かった。

 

「まあ、知り合いと言えば知り合いよ。よく社交パーティで合ってたし」

 

「社交…」「パーティですか?」

 

レイナ中尉の言葉に俺とルイス軍曹が呟く。て言うか、やっぱりこの人お金持ちなのね。そしてあの女性少尉2人も…。

 

「そう。あの子達が狙ってる男にちょこっとちょっかい掛けるとすっごい怒ってくるのよ?」

 

「そりゃ普通に怒りますし、嫌われますわ」

 

あの女性少尉2人には同情してしまう。ルイス軍曹も口元が引きつってるし。

 

「パイロット候補生になってるなんて今日初めて知ったわ。正直戦場に出る子達じゃ無いわ。多分戦場に出る理由は私と同じかアーヴィントの様に家柄上仕方無い所かな。尤もオペレーターに成ったとしても危険に変わり無いけどさ」

 

レイナ中尉はポツポツと話し始める。

 

「パイロットの訓練時間も短縮されて直ぐに戦場に出される。戦場では簡単に人が死ぬわ。其れこそ普段はティーパーティでお茶してる方が似合う子達でも」

 

「レイナ中尉。まさか、今回の模擬戦は」

 

「うん。本当は私の方から模擬戦を申請する予定だったわ。でも、彼女達から来てくれたからそれに乗っちゃった。巻き込んでゴメンね」

 

両手を合わせて首をコテンとさせて可愛らしく謝るレイナ中尉。

 

「だからレビル将軍も簡単に許可出したんですね」

 

「最初はゴップのオジ、大将にお願いしたの。そうしたら偶々レビル将軍も話を聞いてくれてね」

 

「因みにゴップ大将とも知り合い何ですか?」

 

と言うか最初会った時顔馴染みぽかったし。

 

「ええ。社交パーティで何度か会ってるわ」

 

「成る程、色々納得しましたよ。もう俺からは特に言う事は無いですよ」

 

「私も模擬戦とは言え戦術オペレーターとしての役割をもっと役立て無いといけませんね」

 

「2人共ありがとう。正直何も聞かずに協力してくれて助かったわ」

 

そんな俺達に感謝の言葉を口にするレイナ中尉。

 

「しかし、俺の言葉は届いてくれるかな?正直レイナ中尉の言葉を取ってしまった感が有るんですが」

 

「そんな事無いわよ。私が言うより確実にシュウが言った方が良かったわ。それにシュウも彼等を死なせたく無いんでしょう?ならシュウの言葉は彼等に届くわよ。それに稀に見る真面目な表情だったし」

 

「稀に見るとか関係無いですよね!寧ろ常に自分は真面目ですから!」

「「それは無いわね、です」」

 

俺達は話しながら歩いて行く。レイナ中尉の家柄とかが少し垣間見れた時だった。そんな中、自分の中に少しシコリが残っていた。今回の模擬戦でRGM-79ジムのリミッターを外さなかった。だが、物足り無かったのだ。出力、機動性に不満を感じたのだ。いや、正確に言うならリミッターを外してても物足り無いのを薄々感じてはいた。勿論RGM-79ジムが良い機体なのは分かるけど。

自分の中の問題点も少し考えながらレイナ中尉とルイス曹長と話をして行くのだった。

 

……

 

模擬戦を観戦していたレビル将軍とゴップ大将他の高官達は満足気な表情をしていた。

 

「如何でしたかな?彼等の戦い方は」

 

「うむ、中々優秀じゃ無いか。特に2番機のジムだったかな。中々良い動きをする」

 

そう、まだ完成とは言えないRGM-79ジムでもザク以上の戦いが出来てると判断したからだ。

 

「はい。それに間も無くホワイトベースもジャブローに着くと言います。そうすれば我が軍のモビルスーツもいよいよ完成しますな」

 

「その様だな。さて、我々も仕事に掛かるとしよう」

 

「それで一つ宜しいですかな?MS特務部隊第27小隊のラングリッジ中尉、アルドリッジ中尉ですが、本人の希望が有ればジャブローでの教官職に就かせたいと思うのですが」

 

「ゴップ大将、君も世話好きだな。親御さんなら何か言われたのかね?」

 

レビル将軍は少々呆れた表情をしつつゴップ大将に理由を聞く。ゴップ大将も少し苦笑いになりつつ答える。

 

「レビル将軍の仰る通りです。自分の可愛い息子娘が激戦区を渡り歩くなんてとんでも無いとね。尤も、本人達は残るつもりの様ですが」

 

「その辺りはもう一度本人達に聞けば良かろう。それで望めば後方配備も止む無しだ。代わりに成績優秀な2名を配属させる様にしなさい。彼、確かシュウ・コートニー少尉だったな。間も無く彼にジム・ライトアーマーが配備される。この意味が分かるな?」

 

レビル将軍はゴップ大将を静かに見る。ゴップ大将も目を逸らさずに頷く。

 

「勿論です。我が軍にもエースと呼ばれる存在は必要です。そして、そのエースの邪魔をさせない様にする事も」

 

「これから先、戦場は宇宙になる。元々彼は宇宙軍所属の者だ。そうすればジオンに対してより一層猛威を振るうだろう」

 

レビル将軍とゴップ大将はコクピットから降りているパイロット候補生達を見る。これから先の戦いのビジョンを考えながら。

 








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