宇宙世紀と言う激闘の中で。   作:吹雪型
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和平交渉…

宇宙世紀0079.12月29日。

 

「此方ガルム2準備良し。これより試作ジム改の機動テストを行います」

 

『了解しました。発進どうぞ』

 

「ガルム2、行きます!」

 

俺は今試作ジム改の機動訓練をしている。換装作業や調整は終了したが、機動テストは出来なかった。其処で宇宙要塞ア・バオア・クーに着く少しの間を使って行う事になった。

 

「テストは出来て2時間位だからな。集中してやら無いとな。頼むぜ相棒」

 

機体のコンソールをコツンと叩きブースターを加速させる。

 

「うおっ!?まだ全開じゃ無いぞ!」

 

全開にブースターを使用して無いのに関わらずジムの加速を軽く超えた。それだけで無く、高出力ジェネレーターの影響もあるのか加速に勢いがある。

 

「此奴を2時間で乗りこなせるか?いや、乗りこなさなきゃ駄目だ!」

 

ブースターを全開にする。凄まじい加速とGが俺を襲う。そのまま左右上下に機体を動かす。兎に角機体に振り回されっぱなしだった。機体の加速に付いて行くのが出来無いでいた。だが、徐々に目が慣れてくる。

 

「此処から本番だ。相棒、お前の力を全部見せろ。そして、俺に全てを委ねろ!」

 

更に機体を加速させランダム機動に入る。

 

『おい、見ろよアレ。スゲー下手糞な奴がまだやってるぜ』

 

『おいおい、燃料が勿体ねえだろうに』

 

『そう言うなよ。確か機体の慣らしだろ?まあ、あの調子なら弾除けにもならんがな』

 

他の哨戒任務中のジム部隊が鼻で笑っていた。彼等からしたら機体の加速に振り回されてる新兵に見えてるのだろう。だが、突然試作ジム改の動きが変わる。

 

「そうだ…この動き、この加速…お前は……やっぱり相棒だ!」

 

一気に機体のコツを掴んだ後は楽な物だった。加速に振り回される前に制御する。そしてまた加速させる。ブースターを全開にしても思った通りの機動が出来る。

 

「うはははーーー!!!此奴は最高かよ!!!」

 

機体のブースターを全開にして小惑星群に飛び込む。

 

『おい、彼奴小惑星群に突っ込んだぞ』

 

『え?なら事故る方に賭けるわ』

 

『じゃあ俺無事故な方な』

 

『お前、また分の悪い賭けすんのかよ。因みに俺も事故る方な』

 

他のジム部隊の連中も次々に賭けに参加して行く。但し、無事故派は1人だけだ。

 

「見えるから避けれる。機動が速かろうとも反応出来るから問題無い!さあ、行くぜ相棒!」

 

俺は複雑な小惑星群を駆け抜ける。操縦は慣れれば問題無い。これなら次の戦いでも生き残れる。そして何より嘗てのRGM-79ジムの似た感覚で操縦出来ている。

 

「共に生き残ろうぜ。なあ、相棒」

 

機体を加速させ小惑星群を突き進む。最早戸惑う事も無ければ梃子摺る事も無い。残り時間数分間の間、俺は試作ジム改と完全な一心同体になる為に操縦するのだった。

 

『え?…あの小惑星群をとんでもない機動で進んでんのか?』

 

『嘘だろ?あんなの出来んのかよ』

 

シュウ少尉の機体の動きを見ていた連中は唖然とする。最初は機体に振り回されていたにも関わらず、短期間で物にしたのだから。

 

『やった…賭けに勝ったあああーーー!!!』

 

蛇足だが1人だけ腕を上に突き出し喜びを全開に表してた奴が居たのだった。

 

……

 

試作ジム改をコロンブス級補給艦に着艦させる。試作なだけあって専用のパーツを使う為、整備には補給艦内部で行う事になる。因みについでと言わんばかりにレイナ中尉とアーク上等兵の機体も格納されていた。現在コロンブス級補給艦はサラミス級ロイヤルに接舷した状態だ。これなら直ぐに出撃体制が取れるからだ。

 

「ふう、最後は良い感じに仕上がったな。今日は良い夢見れそうだ」

 

機体から降りて試作ジム改を見上げる。最初は量産の見込みの無い試作機と言われて不安と不満は有った。だが今は違う。此奴は最高の機体だと。

暫く機体を見上げているとレイナ中尉とアーク上等兵が此方に来た。

 

「お疲れ様。機体の調子はどう?」

 

「最高ですよ。最後の方では自分の思い通りの機動が殆ど出来ましたからね」

 

「そっか。なら、これでよかったのかな?」

 

「まあ、そうだよな。シュウの機動は凄いもんな」

 

何やら2人の様子が可笑しい。何時もならもっとテンション高いのだかな。気になりアークを見る。するとアークは肩を竦めながら理由を教えてくれた。

 

「ほら、俺達小隊だろ?」

 

「そうだな。今更そんな事言ってどうすんだよ」

 

「俺達…お前の機動に付いて行くのが出来無いんだが」

 

アークの言葉を聞いて少し考える。そして2人を改めて見る。アークは仕方無いと言った表情をしていた。そしてレイナ中尉は少し剥れ気味である。

 

「私達がシュウに着いて行くだけの技量が無いのは理解してるわ。でも、足手纏いにだけはなりたく無かった」

 

「レイナ中尉。別に足手纏いなんかじゃ無いですよ」

 

「それでもよ」

 

そう言ってレイナ中尉は格納庫から出て行く。

 

「一応伝えとくわ。俺達はお前の援護が出来無いと判断したら徐々に後退して、旗艦のロイヤルと母艦のコロンブス級の護衛に廻る。まあ俺達の所為でお前の邪魔をする訳には行かないからさ」

 

アークは「お前も休めよ」と一言言い残し去って行く。俺は再び自分の機体を見る。これから先、小隊行動が出来無い状況になる可能性も有る。出来る事ならそんな状況にはしたくない。だが、最悪そうなる可能性も有るのだ。

 

「それでもやるさ。この戦争で死にたく無いしな」

 

俺も身体を休ませる為に自室に向かうのだった。

 

宇宙世紀0079.12月30日。レビル将軍率いる第1連合艦隊は宇宙要塞ア・バオア・クーに集結させる。星1号作戦は最終段階に入る。

艦隊を第3戦闘ライン集結させ決戦準備に入る。その時ジオン公国軍の戦艦【グレート・デキン】から和平交渉の連絡から来る。

 

……

 

サラミス級ロイヤル。

 

突然の警戒命令が来る。俺はすぐ様パイロットスーツに着替えてブリッジに向かう。

 

「一体何が起こったんだ?」

 

ブリッジに着くと全員がモニターを見ていた。其処にはジオン公国軍の旗艦役等に使われるグワジン級戦艦がレビル将軍の乗るマゼラン級【フェーベ】に近付いていた。

 

「きっと和平交渉の為に来たのよ」

 

レイナ中尉はモニターを見ながら誰にとも無く呟く。

 

「和平交渉?それは本当ですか!」

 

「間違い無いわ。だってジオン公国軍の象徴的とも言えるグワジン級が来たのよ」

 

「レイナ中尉の言う通りです。どうやらあのグワジン級戦艦には特使としてデキン公王が乗ってるとの事です」

 

「ほう。遂にジオンも落ちたか。まあ、この戦力を前に抵抗する自体間違ってる事だかね」フワァ

 

和平交渉に特使が来た。その時点で俺はモニターに釘付けだった。漸くこの長い戦争は終わる。誰もが願い続けて来た事だ。それが遂に叶う時が来た。

自然と口元が緩む。だが、こんな嬉しい知らせは最高に気分が良い。

 

地球連邦軍の兵士達は遂に戦争が終わると思っていた。この悲惨で残酷な争いに終止符が打たれる。何十億人の死が漸く報われる時が来たんだと。もう、誰かを殺す必要が無くなったと。

 

宇宙世紀0079.12月30日21:00。グレート・デキンはレビル将軍の乗るフェーベに接舷する。

 

終戦への第一歩が今正に始まろうとしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

「老いたな…父上。時既に遅しなのだよ」

 

 

 

 

 

 

大きな悪意を残したままで。

 








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