宇宙世紀0079.12月30日21:05。
宇宙要塞ア・バオア・クー司令部
「ア・バオア・クーのギレンである。敵のレビル艦隊の主力は3隊に別れて進行中であるが、ソーラ・レイ、ゲル・ドルバ照準でこの半分を壊滅出来る」
其処にはジオン公国軍の新兵器【ソーラ・レイ】が地球連邦軍本隊レビル艦隊に向けられていた。そして、発射命令がジオン公国軍総帥ギレン・ザビから降さる。
「ソーラ・レイ、スタンバイ」
『ソーラ・レイ、スタンバイ!』
【ソーラ・レイ】。それは彼等の故郷でも有り大切な場所でもあったコロニーの慣れ果て。ブリディッシュ作戦で自らの住処でもあったコロニーを再び兵器としてしまった。その犠牲となったサイド3のコロニー【マハル】だった。
『さあ、行ってくれ。お?825発電システムのムサイ、下がれ。影を落とすと出力が下がる!』
『アサクラ大佐。ソーラ・レイ稼働8秒前。7、6、5』
これから始まる光景に人は自らの行いに恐怖する。しかし、戦争がその感覚を鈍らせてしまう。
『4、3、2、1』
その瞬間、宇宙に光が走った。
……
サラミス級ロイヤル
「な、何だこの光は!!!」
「きゃあああ!?」
艦橋に居る者達は全員目を腕で隠す。圧倒的な光の何かが地球連邦軍第1連合艦隊の第1大隊とグワジン級を呑み込む。どの位の時間目を隠していたかだろうか。多分10秒か?1分位だろうか?光が収まった所を見る。
地球連邦軍第1連合艦隊の第1大隊は大半が消えていた。
そう、光の塊は地球連邦軍第1連合艦隊の多数の艦隊とレビル将軍の乗る旗艦マゼラン級フェーベとグワジン級グレートデキンをこの世から消したのだった。
『此方ナルナン!艦の被害甚大!救援を!』
『第1大隊は何処に消えた!?まさか消失したのか!』
『状況を確認し救助隊を編成しろ!』
『レビル将軍は?レビル将軍はどうなったんだ!』
『何が…何が起こったんだよおおお!!!』
通信には悲痛な通信しか傍受しない。俺は第1大隊が存在していた場所を見る。其処には沢山の残骸が浮かんでいた。
「艦隊が…消えたのか?」
自分の目の前の光景が信じられなかった。ほんの数分前まで存在していた大艦隊が消えた。そして、それを意味する事を理解する。いや、理解せざるを得ない。
「戦争は、終わるんじゃ無いのかよ!!!」
理解した瞬間我慢出来ずサラミス級のガラス部分を殴る。拳は痛むが気にしてる余裕が無かった。
「シュウ、嘆くのは後よ。今は機体に乗って警戒に入るわよ。アーク上等兵も聞いての通りよ」
「了解しました。シュウ少尉、これ以上の被害を出すのはな」
「分かってる。今、行くさ」
俺達モビルスーツパイロットは全員スクランブル出撃に入る。
「周辺警戒を厳にせよ!また救助隊の編成を行え。僚艦にも通達、第1大隊の救助を最優先とする!」
「了解しました。此方旗艦ロイヤル、これより救助隊を編成せよ。繰り返す救助隊を」
アーヴィント中尉は救助部隊を編成を急がせつつ僚艦にも打診する。俺達も急いで各自モビルスーツに搭乗して行く。
「コートニー少尉。一体あの光は何だったんです?」
整備兵の1人が聞いてくる。恐らく格納庫のモニター越しに見てたのだろう。
「あの光は…絶望の光さ」
皮肉も何もなく、唯そのままの意味を込めて教えた。多分この時の俺の顔色は優れなかっただろう。整備兵はそれ以上聞く事なく頷くだけだった。
「機体チェック。油圧、核融合、スラスター、OK。此方ガルム2、出撃準備よし」
『了解です。暫く待機していて下さい』
コクピットの中で考える。これから先どうなるのか。こんな状況でも戦いを続けるのか。考えても答えは出そうに無い。
『シュウ少尉、大丈夫?』
「レイナ中尉。大丈夫…とは言えませんね。後少しで停戦だったと思ってましたから」
『そうよね。でも、戦うしか無いわ。もし私達が戦わなかったら仲間が死ぬ』
「…そうですね。それだけは不味いですからね」
『その通りよ。それに、私達ラングリッジ小隊は仲間を見捨てないんだから!アーク上等兵も良いわね?』
レイナ中尉はアーク上等兵に対しても伝える。
『勿論です!シュウも周辺警戒をしっかりとな!』
「お前は相変わらずで安心したよ」
こんな状況下でもレイナ中尉とアーク上等兵は普段通りに振舞ってる。2人も色々不安があるだろうに。だが、そんな2人の姿を見て何となく落ち着く事が出来た。今は目の前の事に集中するしか無い。そして出撃命令が出る。
『艦隊の殆どは一時後退して部隊を再編成するとの事です。私達は周辺警戒と味方の救助を行います』
『了解よ。ラングリッジ小隊出撃用意。絶対に生存者を見つけるわよ』
「ガルム2了解」
『ガルム3了解です!』
『ラングリッジ小隊出撃願います』
コロンブス級の前方ハッチが開かれる。漆黒の宇宙は唯静かに有るのみ。
『ガルム1、出るわよ』
「ガルム2、行きます」
『ガルム3、出るぜ』
俺達は周辺警戒を主にして生存者を探す為に出撃するのだった。
……
ソーラ・レイの攻撃により地球連邦軍の30%の戦力が壊滅した。この結果を得たギレン・ザビ総帥はア・バオア・クーに居る全将兵に対し演説を布告する。
【敢えて言おう!カスで有ると!!!】
この演説によりジオン公国軍の士気は最高潮に達したのだった。
宇宙世紀0079.12月31日5:00。地球連邦軍残存艦隊の再編成完了。
宇宙世紀0079.12月31日8:10。地球連邦軍は宇宙要塞ア・バオア・クー攻略戦を開始する。
今此処に宇宙世紀最大と言われる戦いが行われる。それは地球連邦軍とジオン公国軍の最後の決戦。後に一年戦争と呼ばれる激戦と言える長い戦争が終焉に向かう。
例え、誰もが望む結果になる事が無くとも。
……
コロンブス級補給艦
地球連邦軍は艦隊の再編成を終わらせ、星1号作戦の強行を決めた。またあの攻撃を受けたら堪らないからな。それなら今の戦力でア・バオア・クーを攻略した方が良いだろう。
MS特殊部隊第27小隊ラングリッジ小隊は地球連邦軍第2、第3大隊と共にNフィールドに攻撃を仕掛ける事になる。
「そろそろ時間だな」
機体の状態を確認すると同時に武装も確認する。
BR-M-79C-3ビームスプレーガン。
今迄のBR-M-79C-1ビームスプレーガンより高性能化。更に射撃センサーも取り付けられている。前作のビームスプレーガンは全て頭部センサーに頼っていた。理由は量産性を重視していた為だ。しかし戦場に置いて頭部破損率は低くは無い。そして此処に至りRGM-79Cジム改に合わせて配備されている。
GR・MLR79-90㎜ロング・ライフル。
90㎜マシンガンの構造を利用して開発された。現在教導隊等の一部部隊で実戦運用試験が行われてる。今回試作ジム改に合わせて配備された。恐らく試作ジム改の序でに高機動戦闘時に於ける実戦データの収集が目的だろう。唯、マガジンは120発と多く90㎜マシンガンより継戦能力は高い。
R-4ビーム・ライフル。
RGM-79SCジム・スナイパーカスタムの専用武装と言っても過言では無い武装。ジム・スナイパーカスタムの頭部センサーに合わせたFCSになっており、基本他の機体での運用は想定されては無い。
RGM-79CRP試作ジム改にはビームスプレーガン、ロング・ライフル。
RGM-79SCジム・スナイパーカスタムにはビーム・ライフル、90㎜ガトリングガン。
RGM-79ジムにはビームスプレーガン、ハイパーバズーカ。
「しかしロング・ライフルか。見た感じは結構いい感じに仕上げられてるんじゃ無いか?」
本来の目的は支援分隊火器としての役割だ。命中率も高く装弾数も多いが、銃身は長く取り回しは良いとは言えない。しかし試作機と言い運用試験武器と言い、俺はいつテストパイロットになったんだろうか?
『皆、そろそろ出撃になるわ。これから先激戦区に入る。私から皆にに言う事は少ないわ。私達は生き残る。生きて帰るわよ。その為には仲間を絶対に見捨てない事』
レイナ中尉は静かな口調で俺達に語り掛ける。
「レイナ中尉、そんなの当たり前ですよ。この小隊だけじゃ無い。この艦隊とも生きて帰りたいですからね」
『シュウ少尉の言う通りですよ。俺達は生きて帰る。絶対に仲間は見捨てませんよ』
俺もアーク上等兵も充分に理解している。そして遂に出撃命令が下る。コロンブス級補給艦にはカタパルトが設置されており、其処に機体を設置させる。
「此方ガルム2。カタパルト接続良し。出撃準備完了」
『了解です。進路クリア、発進どうぞ』
ルイス軍曹の言葉を皮切りにブースターを吹かす。
『シュウ少尉、どうか御無事で』
モニター越しのルイス軍曹は不安そうな表情をしている。俺は右手でグッドサインを出しながらウィンクする。これはレイナ中尉の直伝の技である。
「ガルム2、シュウ・コートニー少尉…行きます!」
カウントダウンが終わり加速的なGが身体を襲う。そして漆黒の宇宙に大小様々な光が瞬いている中に向かって行く。目標は目の前の敵を倒し宇宙要塞ア・バオア・クーに取り付く事だ。
「さぁて、此処からが正念場だ!行くぞ!!!」
自身に気合を入れながら敵の弾幕の中を突き進んで行く。これから先の平和を勝ち取る為に。
今年は此処までです。またストック出来次第投稿して行きます。
それでは皆さん、良いお年を〜(・ω・)ノシ