ジオン公国軍のNフィールド防衛の要とも言える空母ドロスが大小様々な爆発を起こしながら轟沈する。
『何て事だ…Nフィールドは抜かれるぞ!』
『俺達の母艦が!畜生、この状況で戦えって言うのか!』
『連邦が流れ込んで来る!敵を抑えきれなッ!?』
空母ドロスが轟沈したのを境に第2、第3大隊はNフィールドに突入。そのまま宇宙要塞ア・バオア・クーに取り付く為に突き進む。
『最終防衛ラインに敵が侵入します』
『各砲座外すなよ。この距離ならビームの威力は大して落ちない。確実に敵を撃破して行け!』
宇宙要塞ア・バオア・クーからのビーム砲台から次々と攻撃が開始される。しかし、それは地球連邦軍艦隊のビームの射程にも入っているのと同じである。
『敵宇宙要塞の砲台座標確認。各砲座、艦隊にデータリンク良し』
『モビルスーツ隊の進行を援護。後に陸戦隊を射出だ。ア・バオア・クーの制圧に全力を注がせるんだ。砲撃開始』
マゼラン級とサラミス級からの砲撃の応酬をまともに受ける事になる。
『行け行け行けーーー!このままジオンを押し潰せ!』
『此方ジャロン中隊間も無くア・バオア・クーに取り付ける』
そしてNフィールドだけで無くSフィールドでもア・バオア・クーに取り付きつつある。
『全地球連邦軍将兵に通達する。ザビ家を打倒してスペースノイドを真の意味で解放するのだ。そう、これは聖戦なのだ。各員、これを最期の戦いにするのだ!』
今や地球連邦軍の士気は非常に高い。そしてSフィールドでの防衛を行なっていた要となる存在も遂に地球連邦軍の前に落ちる。
宇宙世紀0079.12月31日10:10。Sフィールドにて大型空母2番艦【ドロワ】撃沈。乗員の一部は生存確認。またドロワはアナベル・ガトー大尉の母艦でも有った。
それはジオン公国軍の将兵達に衝撃な報告で有った。しかし、宇宙要塞ア・バオア・クー司令部の指揮能力は最早絶望的と言っても良い状態だった。
ギレン・ザビ総帥を失ったショックは司令部に居た者達に衝撃が強過ぎたのだ。そしてギレン・ザビ総帥の戦死は前線に戦うジオン公国軍の将兵達にも徐々に伝わり動揺が走る。そんな中、状況を直ぐに理解する者が居た。
「何っ!?ギレン総帥が戦死されたと!?」
「はっ、ア・バオア・クー全権はキシリア閣下元に移行しました」
エギーユ・デラーズ大佐はギレン・ザビ総帥の戦死の報せを聞き椅子を強く握り締める。彼はその直後血反吐を吐くかの様に呟く。
「謀ったな…キシリア」
その直後デラーズ大佐は直ぐに判断を降す。
「全艦、及び全モビルスーツを集結させよ。我が隊はこの宙域より撤退する」
宇宙世紀0079.12月31日11:00。エギーユ・デラーズ大佐はギレン・ザビ総帥の戦死をキシリア・ザビ少将の暗殺と看破。自身の艦隊と周辺の艦隊を率いて戦線離脱。
そして宇宙要塞ア・バオア・クーでの戦闘は遂に要塞内部での戦いに移行して行く。
『白兵戦用意!連邦が来るぞ!』
『陸戦隊戦闘準備。敵を此処で食い止めるぞ』
『モビルスーツの相手はモビルスーツに任せろ。俺達は撤退するぞ!』
そして味方ジム、ボール部隊はア・バオア・クーに乗り込んで行く。しかしジオン公国軍も諦めた訳では無い。遮蔽物を利用して戦いを有利に運んで行く。しかし、そんな彼等には地球連邦艦隊からの艦砲が降り注ぐ。
「味方のジム中隊は順次ア・バオア・クーに取り付いてます」
「そうか。しかし先程から少し敵の圧力が弱まってたな」
サラミス級ロイヤル内でアーヴィント中尉は敵の防衛に違和感を感じていた。空母ドロスはジオンにとって重要な艦だった筈。にも関わらず後続の増援が少なく感じていた。
「Sフィールドの第1大隊が上手く行けたのか?まさか、噂に聞くニュータイプが此処までやったのか」
だからと言ってNフィールドの防衛を弱める理由にはならない筈だ。此方は第2、3大隊を持つ大艦隊だ。見逃される筈は無い。
「今は考えても仕方ないか。ラングリッジ小隊はどうなってる」
「現在ア・バオア・クー要塞付近で戦闘中の模様です」
「そうか。なら味方艦と連携しつつ砲撃は続行だ。ア・バオア・クーの砲台を全て破壊するんだ」
艦隊は今や宇宙要塞ア・バオア・クーに向けて攻撃を行なっている。そして要塞内部では徐々に爆発が起こり始めていた。そしてジオン公国軍の一部の部隊や艦隊はキシリア・ザビ少将の指揮下に入るのを拒否し戦域より離脱して行く。
そんな中ラングリッジ小隊は宇宙要塞ア・バオア・クーの地表の上を飛行して行く。
「良し、味方は取り付いてるな。これなら行けるか」
『そうね。私達はこのままこの宙域を制圧するわよ。これより前方の敵艦隊に攻撃をしている味方の援護をするわ。ガルム2は前衛、ガルム3は私と一緒に援護よ』
「了解。では行きます!」
『了解です。頼むぜシュウ少尉、こんな所まで来て落とされんなよ』
「当たり前だ。お前も周りの警戒を怠るなよ」
戦い続けている味方の援護をすべく敵艦隊に突撃するのだった。
……
未だにジオン艦隊は健在してる。しかし戦いは徐々に追撃戦に以降して行く。だが彼等は抵抗を止めるつもりは無い。いや、止める訳には行かないのだ。彼等の後ろにはサイド3が有る。それは彼等にとって故郷で有り守るべき者達が居る所。
『モビルスーツ隊は艦隊の護衛に回れ。接近する敵影に対し攻撃開始』
1隻のチベ級重巡洋艦と4隻のムサイ級巡洋艦は移動しながら攻撃をする。護衛のザク、ドムそして指揮官機のゲルググは前面に展開する。
『流石新型のゲルググだ。連邦のモビルスーツ何ぞ恐るに足らんな』
指揮官機のゲルググは次々とジム、ボールを撃破して行く。今迄のゲルググとは動きが全く違う。
『この機体がもっと早く配備されていれば良かった物の』
『少佐、仕方有りませんよ。機体もそうですが我々古参はザクやドムに慣れ過ぎましたから』
『時間が無さ過ぎたな。だが、此処で連邦を食い止めれれば勝機は有る』
ゲルググはザク、ドム隊を率いて再度ジム、ボール部隊と打つかる。
『この!何でこっちの攻撃が当たら無いんだ!?』
ジムがビームスプレーガンを乱射する。そんなビームの弾幕を物ともせず突っ込んで行くゲルググ。
『所詮、有象無象の連中にやられる物か』
ゲルググはジムに向けてビームライフルを向け射撃。更に続けてビームナギナタを使い接近。ジムはビームに貫かれ瞬く間に爆散して行く。その直後僚機もビームナギナタにより爆散して後を追う。指揮官機のゲルググに仲間達は続き次々とジム、ボールを撃破して行く。その動きは古参故の卓越した連携と機動だった。その時彼等の母艦であるチベ級から新手が来ると通信が来る。そして暫くするとレーダーに反応が出る。
『少佐、新手が来ます。連邦は数だけは一丁前ですね』
『おいおい、そう言ってやんなよ。まあ作ったモビルスーツは良かった物の、パイロットはイマイチな出来だったがな』
『そいつは傑作だな。やはり中身の出来は我々スペースノイドに分が有る様だしな』
彼等の言動は地球連邦軍と戦い続け、生き残って来た自信の結果だった。確かに地球連邦軍は強い。だが、勝てない相手では無いと考えているのだ。
『お前達、敵を侮るな。我々は孤立しつつ有るのだ。他の部隊や艦隊が撤退している。ならば我々も撤退するのは明白だ』
しかし、そんな彼等の気を引き締めてさせる。局地的には優勢だが大局的に見ればジオン公国軍は敗北している。そして、つい数分前にチベ級重巡洋艦から秘匿通信が来ていた。
【我、指揮能力無し。各自の判断にて行動せよ】
その通信は彼の部下達には伝えては無い。何故なら現時点での部下達の士気は高い。そんな中、辛い現実を伝える訳には行かないのだ。
そして再び彼等は戦いを始める。しかし彼等の上方から高速で接近する機影が居たのだった。
ストック切れたので止まります。