宇宙世紀と言う激闘の中で。   作:吹雪型
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ア・バオア・クー攻防戦7

試作ジム改とゲルググはお互いに決定打が出ないまま機動戦に突入していた。

 

「くそ、こっちは試作機と言え高機動ザクを超えてるんだぞ!なのに何故勝てない!」

 

ビームスプレーガンでゲルググを撃つ。だが回避され逆に反撃される。

 

『機体が良くてもパイロットはまだまだ未熟の様だな。だが、悔やむ事は無い。私と君とでは戦う土台からして違うのだからな』

 

「戦う土台だと?戦争に土台もへったくれも有るかよ!」

 

偶々敵の通信を傍受したのだろう。そのまま通信しながら戦う。

 

『ふん。我々はスペースノイドの独立の為に日夜戦い続けてるのだ。貴様等地球連邦の圧政に屈する事がない為に』

 

ゲルググのビームライフルが試作ジム改に放たれる。咄嗟にシールドで防御するが、シールドの限界が来てしまい完全に防ぐ事が出来ず左腕に直撃する。

 

「くっ!?確かに地球連邦がやって来た事は許される事では無い。だが、それで何十億人の人間を殺して良い理由にはならないぞ!」

 

『その圧政を終わらせる為には必要な犠牲なのだ。全ては地球連邦が己自身で招いた結果に過ぎん。貴様等はやり過ぎたのだ!!!』

 

ゲルググはビームライフルを捨てビームナギナタを構えて試作ジム改に突っ込む。それに対してビームスプレーガンを仕舞いビームサーベルを構える。

 

「やり過ぎたのは貴様等ジオンも同じだ!何故同じ轍を踏むんだ。そんな事をする連中が地球連邦を責める資格は無い!」

 

『っ!?言ってくれる。なら、死んであの世で同じ事を言ってみろ!言える筈も無かろうに!』

 

お互い一歩も譲らずビームサーベルとビームナギナタをぶつけ合う。

 

『残念だ。貴様の様な冷静な者が味方に居れば良かった物の』

 

「俺はそんな大した人間じゃ無い。今のこの状況を何とかするぐらいしか能が無いんだよ」

 

ビームサーベルを振るいながら60㎜バルカン砲を撃つ。しかし60㎜バルカン砲の攻撃を物ともせずビームナギナタを振るう。

 

「今だ!」

 

咄嗟に右脚のブースターを使いビームナギナタを受け止める。ビームナギナタは右脚のブースターを切り裂く。それと同時に燃料に引火して爆発する。

 

『ぬう!?貴様!』

 

「貰ったあああーーー!」

 

そのままビームサーベルを突き出す。ビームサーベルはゲルググの右腕を貫通する。しかしゲルググは左腕を振るい殴り掛かる。

 

『モビルスーツは人型故に格闘戦が可能なのだ!覚えておくと良い!』

 

「ぐあ!?この、うおわ!」

 

更にゲルググは蹴りを入れる。試作ジム改の装甲が凹み傷付く。だが、装甲を削らず通常のジム改と変わらない装甲が生死を分けた。僅かに距離が開いた瞬間ビームサーベルを放棄してビームスプレーガンを掴む。そして至近距離からビームスプレーガンを咄嗟に撃つ。ビームスプレーガンから放たれたビームはゲルググの左腕に直撃する。

 

『チッ、最早此処までだな。貴様との決着は預けよう』

 

「負け惜しみを言うな」

 

そのままビームスプレーガンで追撃するがゲルググは回避機動を取りながら逃げ去って行く。だが、今や周りには地球連邦軍しか居ない。

 

『敵が逃げるぞ!逃すな!』

 

『武装も無ければ怖くねえ。くたばれや!』

 

『此奴、さっきから避けんじゃねえ!』

 

戦闘力の無いゲルググに容赦無い追撃を行う地球連邦軍。そんな時通信が入る。

 

『良く見ておけ。これが、貴様等地球連邦軍の奢り故の結果なのだとな!!!』

 

突如ゲルググは向きを反転させ地球連邦艦隊に突撃する。

 

『貴様等の様な者を一人でも多く道連れにしてくれるわ!!!』

 

「不味い。奴はカミカゼをするつもりだ!止めるんだ!」

 

俺は慌ててゲルググを追い掛ける。だがゲルググは機体のリミッター解除して一隻のサラミス級に突っ込む。周辺のジムや艦も迎撃するが抑える事が出来ない。

 

『アリス…今、其方に行くぞ』

 

ゲルググがサラミス級に迫る。

 

『何をしている!落とせ!落とすんだ!何故落とせん!』

 

『ダメです!回避間に合いません!』

 

サラミス級の艦橋内で悲鳴が上がる。その直後ゲルググはサラミス級の艦橋部に激突。そして爆散。更に至近距離での爆発に巻き込まれたサラミス級も後を追う様に轟沈する。

 

「な、何で…こんな事に」

 

あの時、ゲルググを撃破出来なかったのが悪かったのか?それとも追撃をし過ぎたのがダメだったのか?

 

『……ム2!返事をしなさい!ガルム2!』

 

「あ、此方ガルム2。どうしましたか?」

 

『良かった。生きてたわね。全く、無事なら直ぐに返事をしなさい』

 

『まあ、ミノフスキー粒子で通信が繋がりにくかったんしょう。シュウ無事で良かったぜ』

 

この後レイナ中尉とアーク上等兵と合流しつつ味方と共に追撃戦に入る。機体の損傷は有るが、まだ戦える。これ以上味方の犠牲を出したくは無いのだ。

戦いは遂に終盤へと向かう。間も無く長く辛い戦争が終わりを告げようとしていた。

 

宇宙世紀0079.12月31日11:30。RX-78-2ガンダムは【MSM-02ジオング】と交戦の末、宇宙要塞ア・バオア・クー内部にて大破。

宇宙世紀0079.12月31日12:05。キシリア・ザビ少将は宇宙要塞ア・バオア・クーより脱出を図るも地球連邦軍サラミス級の艦砲射撃によりザンジバル級機動巡洋艦撃沈。キシリア・ザビ少将戦死。

宇宙世紀0079.12月31日12:15。宇宙要塞ア・バオア・クー内のミサイル工場や弾薬庫が戦火により誘爆。電力機能の喪失により陥落間近となる。

宇宙世紀0079.12月31日12:30。地球連邦軍ペガサス級ホワイトベースは宇宙要塞ア・バオア・クーにて撃沈。乗員は運良く脱出した。

 

……

 

宇宙世紀0079.12月31日13:00。

 

現在地球連邦軍は追撃戦を行なっていた。俺達ラングリッジ小隊も簡易的な修理と補給を行い味方部隊と共に追撃戦に参加している。地球連邦軍は未だに降伏勧告を行なっていない。ギリギリまで追撃を行うのだろう。

 

(気持ちは分からんでも無いけど)

 

初戦のコロニー落としにソーラ・レイによる第1大隊の喪失。これだけやられて復讐しない連邦兵は居ない。

 

(本当、どっちもどっちだ。自分達が蒔いた種から目を逸らし続けた結果だと気付かないなんて)

 

いや、気付か無い振りをしてるのかも知れないな。例え気付いてたとしても、どうしようもない状況だ。それに今此処で事実を言った所で無視されるのが目に見える。

 

「はあ…本当、戦争終わらないかな。ん?」

 

その時、前方で損傷してるザクを発見する。良く見ればザクのコクピットに損傷は見られない。

 

「此方は地球連邦軍だ。其処の壊れたザクのパイロット、生きてたら返事しろ」

 

暫く待つが返事は無い。その時、モノアイが一瞬動き此方を見る。

 

『こ、此方…ジオン公国軍第124突撃戦隊。ヤルク・ハーマス曹長です。此方は抵抗の意思は無い』

 

ザクの腕を上げて無抵抗を示す。なら別に大丈夫だろう。

 

「了解した。後方に居る艦隊まで送る。但し、少しでも怪しい動きが有れば撃墜する」

 

『了解した。寛大な処置に感謝する』

 

俺は後方に居るサラミス級ロイヤルに通信を繋げる。そして収容許可が降りた為ザクに近付く。

 

「良し、コクピットから出るんだ。武装は駄目だからな」

 

そして少し待ちザクのコクピットがゆっくりと開く。その直後、コクピットに向けて一筋のビームが貫く。

 

「なっ!?くそ!」

 

慌ててザクから離れる。その直後にザクは爆散する。そしてビームが放たれた方を見ながら言う。

 

「何故撃った…アーク・ローダー上等兵」

 

『……怪しい動きが有ったので撃った迄です』

 

其処にはビームスプレーガンを構えているガルム3のジムが居た。

 

「怪しい動きだと?コクピットから出るだけで怪しい動きな訳が無い。アーク、お前がやった事は唯の虐殺だぞ」

 

『何言ってるんですか?最初に虐殺したのはジオンだ。そして味方や民間人を大勢殺したのもジオン。なら、此処でジオンを始末する事は正しい事だ』

 

モニター越しに見るアークの表情。ヘルメットのバイザーにより見難くなってる。だが、その表情には狂気を感じた。俺はアークの表情を見て一瞬気圧される。いや、アークだけじゃ無い。この戦争に参加してる誰もが同じ感情を持ってるんだ。

 

「アーク、綺麗事を言わせて貰うが…死んだ連中は帰っては来ない。敵討ちをするなとは言わんが限度を守れ。じゃないと戦争は終わらんぞ」

 

アークの表情は見えない。だが、静かな笑い声が聞こえて来る。

 

『構わねえよ』

 

「何?お前、今何て言った?」

 

『戦争が終わら無くて構わねえよって言ったんだよ。そうすればジオンをもっと殺せるからな』

 

更にアークから笑い声が聞こえて来る。俺にはその笑い声には狂気と憎悪の声に聞こえた。

 

『2人共其処までよ。今は戦闘中よ。話し合いなら終わった後にしなさい』

 

その時レイナ中尉から通信が来る。だが、このまま放っておく訳には。

 

「しかし!」

 

『了解です。ほら、次行きますよ少尉殿』

 

アークはそのまま機体を前に出し追撃戦に向かう。

 

「レイナ中尉、貴女もアークの言い分に納得するんですか?」

 

『アーク上等兵の気持ちは痛い程分かるわ。私だって追撃戦で手を抜くつもりは無いもの』

 

「だからと言って無抵抗の兵士を殺すのを容認するんですか?それを許せば収集は付かなくなります」

 

レイナ中尉は俺の話を聞いて目を閉じる。そして。

 

『残念だけど、今の貴方の声はきっと誰にも通じないわ。アーク上等兵だけじゃ無い。他の人達も同じように思ってる筈よ』

 

「レイナ中尉…」

 

そしてレイナ中尉もアーク上等兵を追い掛けて行く。確かにジオンは多くの人達を殺した。現に俺の第2の故郷と言えるサイド2はシドニーと共に消えた。

 

「この戦争が、全てを変えてしまったのか…」

 

戦術、戦略、数々の兵器群。そして…人の心さえも。

俺は誰よりも運が良かっただけだ。自身の境遇は決して良かった訳では無い。だが、それ故に思入れも少なかった。唯、それだけだ。今や殆どの連邦兵はジオンを憎んでる。そんな中、一人常識を言った所で黙殺される。最悪誤射されかねん。

 

「今は無理でも落ち着いた時に後悔するのだろうか?」

 

俺には今後の展開が分からない。そして溜息を一つ吐いてから2人を追う為に機体を動かす。その時、モニターとレーダーに反応が有った。

 

「あ、あの機体は!」

 

モニター越しに確認する。それは間違い無くあの黒い高機動型ザクだった。黒い高機動型ザクはムサイの残骸に身を潜めていた。そして、奴が向かってる先は2人が居る場所。

 

「不味い。ガルム1、3!下方から敵が来てる!逃げろ!」

 

俺はブースターを全開にして追う。2人も高機動型ザクに気付いて応戦する。ガルム1のジム・スナイパーカスタムからビームが放たれる。だがそのビームをあっさり回避してしまう。ガルム3のジムも90㎜マシンガンで応戦する。

 

『此奴!あの時のザクか!』

 

『ガルム3回避しなさい!』

 

ガルム3も慌てて機体を動かす。だが、もうその間合いは高機動型ザクの間合いだった。高機動型ザクからマシンガンが放たれる。徐々に被弾するガルム3。ガルム1の援護射撃を物ともせず突っ込む。

 

『クソッ!こっちに来るのか。なら、やってやる!お前らジオンを全員潰してやるさ!』

 

ガルム3は90㎜マシンガンを撃ちながら高機動型ザクに迫る。高機動型ザクは90㎜の弾幕を掻い潜りヒートホークを構える。

 

『舐めるなあああ!!!ジオンの分際で!!!』

 

ガルム3は90㎜マシンガンを放棄してビームサーベルを抜き、そのままの勢いで高機動型ザクに斬り付ける。しかし、ビームサーベルを持つ右手だけをヒートホークで斬り飛ばされる。

 

『ヤークル…お前への手向けだ。受け取れ』

 

『なっ!?こんなのって!うわあああ!?』

 

その直後、ジムのコクピットにヒートホークが直撃。そのまま胴体から半分になりガルム3…アーク・ローダーの乗るジムは爆散した。

 

「アーク…嘘だろ?おい、おい!返事をしろ!」

 

『ガルム3!嘘…此処まで来て』

 

そして黒い高機動型ザクは此方を見る。

 

『また会ったなオレンジの奴。悪いが敵討ちはさせて貰ったがね』

 

突如通信から敵兵の声が聞こえる。その声は間違い無く目の前の黒い機体からだった。

 

「貴様が…貴様がアークを」

 

『ふん。貴様等とて私の仲間を殺して来たでは無いか。それに、今更後悔したとて無駄だ。お前達も直ぐに後を追わせてやろう』

 

黒い高機動型ザクはガルム1に向かう。だから、俺は試作ジム改のリミッターを解除した。

 

「これ以上!仲間をやらせるかあああーーー!!!」

 

アークが死んだ事が未だに信じられない。だが、それでレイナ中尉を見殺しにして良い訳が無い。俺はバランスの悪くなった機体を無理に動かして黒い高機動型ザクに突っ込む。

 

『そうだ!そのまま来い!貴様を殺し全てを終わらせる!』

 

「何が終わらせるだ!絶対に許さない!」

 

そのまま機動戦に突入する。その時ふと冷静な自分が呟いた。

 

ああ、この感情を持って誰もが戦争してるんだな…と。








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