宇宙世紀と言う激闘の中で。   作:吹雪型
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ア・バオア・クー攻防戦8

俺はリミッターを解除した試作ジム改で黒い高機動型ザクに突撃しながらロング・ライフルで射撃する。

 

「貴様…絶対に、絶対に許さない!!!」

 

だが、奴は90㎜弾をアッサリ避けてザクマシンガンで反撃してくる。

 

『ふん、今更嘆いた所で全て手遅れだ。だが安心しろ。貴様も直ぐに後を追うのだからな』

 

此方に向かって正確にザクマシンガンで攻撃して来る。機体は損傷している為、機動力は落ちてしまっている。だが、損傷してるお陰か変則的な回避機動が出来た。後はモニターと計器頼りだ。

 

『中々奇抜な機動を取る。だが、パイロットはそう長くは持つまい!』

 

お互い機動戦に突入して行く。

 

「お前だけは絶対に!許さない!」

 

ロング・ライフルの弾が切れた為放棄。そのままビームスプレーガンに切り替えて射撃して行く。だが全て回避されて行く。

 

『貴様の腕前が有れば多くの同胞を殺して此処まで来たのだろう。それに、今更自分だけ都合良く来れると思っていたのか?』

 

「黙れ!!!」

 

俺が叫ぶと相手は笑いながら喋り続ける。

 

『今の貴様は滑稽其の物だな。この戦争に参戦した時点でこうなる運命だ。誰もが涙を流し憎しみを抱く。そして!』

 

相手はザクマシンガンを放棄してヒートホークを掴む。

 

『その程度の感情に流される者に我々ジオンに敗北は無い!』

 

ヒートホークを構え此方に迫る。

 

「そ、その程度の感情だと?巫山戯るな!貴様には人の心が無いのか!」

 

ビームスプレーガンを仕舞いビームサーベルを抜く。そしてお互いの武器が打つかり合う。

 

『我々ジオンにはスペースノイドの独立と言う大義が有る。だが貴様等地球連邦は、我々の大義を常に踏み躙って来た』

 

お互い一歩も譲らず打つかりながら機動戦に入る。そのまま敵味方の残骸が多数漂っているデブリ帯に突入する。

 

『貴様には戦う理由は有るのか?仲間達の死を糧に戦い続けるだけの理由が』

 

戦い続ける理由。それを聞かれて一瞬考えてしまう。

 

『私には有る。いや、全てのジオン兵には持っている。貴様等には無い崇高たる使命がな』

 

使命。俺にはそれだけの物は無い。そもそも地球連邦軍に入隊した理由だって、その場の流れで入っただけに過ぎない。

 

「だからと言って!死んだら皆んな帰っては来ないんだぞ!何も、何も無くなっちまう!」

 

当たり前の事を声に出す。それは戦前なら誰もが持っていた普通の事。

 

『いや、無くなりはしない。私の中には死んだ戦友達が悠然と存在している』

 

ビームサーベルとヒートホークが打つかり合う。しかし機体は限界に近付いていた。小さな残骸やデブリに打つかり各部に損傷アラートが出ていた。

 

「そんな、そんな簡単に割り切れるかよ。死んだら戻って来ない事には変わりは無いんだぞ!」

 

『その程度の覚悟しか無いからこそ、我々ジオンは貴様等に敗北はしないのだ!!!』

 

黒い高機動ザクが迫る。その鬼気迫る姿に気持ちが押されて反射的に機体を後退させてしまう。

 

『うおおおおーーー!!!』

 

「こんな、所で!」

 

ヒートホークの攻撃ラッシュを捌ききれず装甲を幾つも削られて行く。

 

(俺は死ぬのか?こんな所で)

 

此奴の様に覚悟も無ければ仲間の死を受け入れる事も出来無い。だから死ぬしか無いのか?

 

(……は、今の俺は無様だな。だけどな)

 

黒い高機動ザクがヒートホークを振り上げる。

 

『これで終わりだ!!!覚悟!!!』

 

そしてヒートホークを振り下ろした瞬間、機体のブースターを全開にして前に出す。ヒートホークが左肩に直撃するも深くは無い。

 

「こんな、戦争で!死んでたまるかあああ!!!」

 

その場の流れで戦争に参戦した。そして様々な悲惨な死を見続けて来た。コロニー落としとシドニーの消滅。更に第1大隊の壊滅的な被害。それ以外にも沢山の人達が死んで行った。そして、目の前で散って逝った親友であるアーク・ローダー。その死を見続けて来たからこそ簡単に死ぬ訳には行かない。生きてる者としてそれを後世に伝える義務がある。

 

「うおおおおーーー!!!」

 

『貴様!無駄な足掻きを!?』

 

試作ジム改と高機動ザクがお互い押し合う。しかし試作ジム改は対高機動型ザクを念頭に設計されてる。更にジェネレーターはRX計画で設計された高出力ジェネレーター。機体に損傷が有るものの出力系統は此方が上。結果一時的に拮抗するも高機動型ザクは押し負ける。

そのままマゼラン級の残骸に向かって打つける。

 

「このまま!押し通す!」

 

『く、何故だ?何故、信念無くして戦える』

 

覚悟か。そんな物…持って無いから。持って無いが此処まで来た。唯運が良かっただけ。戦場に信念を持つ必要は無い。

 

「それより生き残る方が何倍も難しい。信念や覚悟何ぞ後から考えるだけでも充分だ!」

 

結局そんな物は自身を正当化するツールに過ぎんだろうよ。

 

『やはり、貴様とは相容れぬ様だ!』

 

「合わなくて結構だ!」

 

ビームサーベルで高機動型ザクを攻撃する。相手はマゼラン級を背にヒートホークで応戦する。だが、マゼラン級の機銃部分がヒートホークの動きを阻害してしまう。

 

「貰ったあああーーー!!!」

 

そのままビームサーベルを突き出し高機動型ザクの右腕を貫く。

 

『私の負けか。さあ、殺すが良い。だが覚えておけ。我々ジオンは決して負ける事は無い。何故なら使命、信念、覚悟。それら全てが貴様等無能なる連邦より上なのだからな』

 

「何が…上だよ。そんなんで死んだ連中が納得すんのかよ」

 

俺はビームサーベルを再び構える。そしてコクピットに向けてゆっくりと近付ける。

 

「アーク…俺は、俺は」

 

これで良いのだろうか?これでお前は満足するのか?それとも…。

ビームサーベルを高機動型ザクのコクピット手前で止める。手が震えてしまう。これ以上誰かを殺すのは…もう、嫌なんだ。

 

(畜生…俺は、意気地無しだ)

 

「此方、地球連邦軍MS特殊部隊第27小隊…シュウ・コートニー少尉。直ちに武装解除し投降せよ」

 

最後の言い訳。敵を捕虜にすると言う理由で相手を生かそうとする。だが、結果は非道な物だった。

 

『断る。投降はしない。さあ、やるがいい』

 

「くっ!?この、大馬鹿野郎があああ!!!」

 

どいつも此奴も狂ってる。戦争が全て変えた。結局、自身の無力を唯痛感するだけだった。個人が正しい事をやっても無視されるだけ。今、この場も同じ。

ビームサーベルを突き出す。狙うはコクピットのみ。もう、止まる事は無い。一瞬の動きがゆっくりと見える。ビームサーベルがコクピットに向かって…。

 

「な!?ビームサーベルが!」

 

その時、ビームサーベルの出力が一気に低下。その結果ビームサーベルが解除されてしまった。

そして、その隙を見逃す相手では無い。敵は此方に向かって足でコクピットに向かって蹴りを入れる。咄嗟の行動で反応が遅れてしまう。

 

「ぐあ!?に、逃すか!」

 

60㎜バルカン砲を高機動型ザクに向けて撃つ。だが、敵は此方を無視して逃げて行く。

 

『シュウ・コートニー、貴様との決着は必ずこの私ベルガー・ディートリッヒが着ける。其れ迄生きて待っていろ』

 

そのまま逃走して行く黒い高機動型ザク。此方も追い掛けるが各部に警告アラートが出ており追い付けない。モニターで確認すると機体内部もかなりの損傷を受けている。もう戦える状態では無い。

 

「く…畜生……っ」

 

この時、悔しいとか憎いと言った感情は有った。だが1番大きかった感情は安堵だった。

アークの仇より、これ以上誰かを殺す必要が無くなった事に安堵してしまったのだ。それに気付いた時、俺はアークを裏切ってしまった感情に苛まれてしまう。

 

「アーク…俺、俺は…どうしたら良かったんだ?お前の行動は…正しかったのか?」

 

あの時、投降を呼びかけなければ間違い無く奴は倒せた。だが僅かに残ってた感情が動きを鈍らせた。

 

「アーク、すまん。お前の仇を…取れなかった」

 

だから謝る事しか出来なかった。もう戦えない事に安堵してる自分が情けなく。親友の仇を取れなかった後悔。そして、もう会う事が出来無い哀しみ。様々な感情が混ざり合い混乱してしまう。だから泣くしか無かった。唯、泣いて涙を流す。そして意識が徐々に薄れて行く。

薄れて行く意識の中、誰かの声が聞こえた気がする。少しお茶目な所が有るけど頼りになる女性の声が。その声を聞いて安心してしまい意識を手放したのだった。

 

宇宙世紀0080.1月1日15:00。月面都市グラナダにて地球連邦政府とジオン共和国臨時政府にて終戦協定及び講和条約が結ばれた。

尚戦費保証、賠償等は棚上げになるのだった。








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