宇宙世紀と言う激動の中で。   作:吹雪型

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沢山の誤字報告ありがとうございます。色々助かります。

そして、今回はあの有名な機体に搭乗しますよ!もう、皆さんの期待してる機体さ!←寒い


一年戦争終結2

宇宙世紀0080.1月1日。この日、一年戦争が終結した。この戦争により軍人、民間人合わせて約50億人の命が散って行った。正に悪夢が現実になったと言える程、人類史上最悪の犠牲者が出たのだ。

そして、ジオン公国はジオン共和国に変わり連邦体制に移行した。これによりザビ家主導のジオン公国は消滅したかに見えた。だが戦後もジオン公国残党軍は多数残存しており、様々な場所で武装蜂起を行い地球連邦軍に対し抵抗の意思を示し続けるのであった。

 

宇宙世紀0080.1月15日。ジオン公国軍、カラマポイントに集結。しかしNBC兵器使用の罪により【シーマ艦隊】はアサクラ大佐により離脱を命じられる。

 

決して小さくは無い怨恨がいずれ大きな禍と成るとは、誰も…まだ気付かない。

 

……

 

宇宙世紀0080.2月1日。

 

戦争終結。この言葉が偽りで有るのは明白だった。何故なら未だに抵抗を続けてるジオン公国残党軍が俺達パトロール艦隊を襲撃しているからだ。

 

「本当にボールで出るしか無いのかよ!」

 

「少尉、何と言えば良いのか。御武運を」

 

モンド軍曹から憐れみと敬礼を受けながら出撃準備に入る。

 

「漸く戦争は終わった筈なのに。これで戦死したら成仏出来ないよな。全く」

 

RB-79ボールの起動システムを立ち上げながら独り愚痴る。アークが死んだ事を哀しむ暇すら無いとはな。

 

『ほらほら、ボヤかないの。ボヤいても敵は止まらないわよ』

 

「そうですね。因みに自分の機体はボールですから後衛配置希望します。と言うかボールで前線は無理」

 

正直この機体で戦ってる連中は度胸が有るとしか思えない。まあ、ジムの配備が間に合わなかったのも大きな理由だろうけど。

 

『当たり前よ。私が前に出るから援護お願いね』

 

「了解。まあ、レイナ中尉を守らないと俺も死ぬのは決定的でしょうけどね」

 

前衛機の居なくなった後衛機なんて直ぐに落とされるのが目に見えるぜ。

 

『レイナ中尉、シュウ少尉。其方の状況は如何でしょうか?』

 

『もう直ぐシステムが立ち上がるわ』

 

「此方は大丈夫です。出撃準備完了しました」

 

『了解しました。敵はムサイ級巡洋艦3隻とザク、ドムの混戦部隊です。現在味方のジム部隊が戦闘に入ったとの事です』

 

ルイス軍曹から現在の状況が伝えられる。俺達ラングリッジ小隊も間も無く戦場に突入する。

 

『此方ガルム1、出撃準備完了』

 

『了解しました。ガルム1出撃して下さい。続いてガルム2もお願いします』

 

『了解よ。ガルム1出るわよ』

 

「ガルム2、行きます!」

 

そして、俺達は再び漆黒の宇宙に飛び立つ。其処でお互い殺し合う為に戦場に向かう。

 

『あの、シュウ少尉。戦争は何時になれば終わるのでしょうか』

 

「ルイス軍曹?何言ってるんですか。もう戦争は終わってますよ。今はまだ駄々捏ねて我儘な連中が居るだけさ。もう直ぐ静かな宇宙に戻りますよ」

 

『そう、ですよね。変な事聞いてすみません』

 

ルイス軍曹の表情は暗い。そう、俺だけが辛い訳では無い。誰もが辛く哀しい感情を抱いてる。だからこそ軽い感じに言うのだ。

 

「大丈夫ですよ。もう直ぐ全て終わりますよ。それまで死なない様に戦えば充分さ」

 

そしてモニターとレーダーを確認する。他の部隊のジムとボールも共に出撃している。

 

「アーヴィント艦長。味方モビルスーツ部隊出撃完了しました」

 

「うむ。これより艦隊は味方の援護の為距離を詰める。敵は烏合の衆に過ぎない。だが、あの戦力を放置する訳には行かない。艦隊前進!」

 

サラミス級ロイヤルを中心として6隻のサラミス級が前進する。艦数、モビルスーツ数共に此方が上だ。だが、決して油断出来る訳では無い。アーヴィント艦長は帽子のツバを掴み位置を直す。そして目の前の敵を見据えるのだった。

 

……

 

一瞬の光が瞬く。その光は人の命が散って行く光。時には何百人の命が一瞬の光となって消えて行く。その光の瞬く中に突入して行くモビルスーツ部隊。

 

「この、落ちなさい!」

 

ジム・スナイパーカスタムから90㎜ガトリングガンから多数の弾幕が展開される。その弾幕に飲み込まれるザクは装甲を削られながら爆散する。

 

「次『ガルム1上だ!回避しろ!』ッ!」

 

ドムがジャイアントバズを撃ちながら接近して来る。私はブースターを使い回避する。しかし敵にとって想定内だったのだろう。そのままヒートサーベルを構え更に接近。

 

「伊達に女パイロットやって無いんだから!舐めないで!」

 

左腕のビームサーベルを展開して近接戦に入る。ビームサーベルとヒートサーベルが打つかる。一瞬離れてまた斬り合う。何方も引くつもりは無い。

 

『ガルム1、そのままで』

 

シュウ少尉の声と同時にドムの脚部が吹き飛び体勢が崩れる。その隙にコクピットに向けてビームサーベルを突き付ける。

 

『チクショウ!!!ぐああああっ!?!?』

 

ドムのパイロットは爆発と共に散って行く。

 

『ガルム1、無事ですか?て、前々!敵が多数来てます!』

 

私はガルム2からの警告を聞いて前を見据える。ザク3機編成が接近して来る。味方モビルスーツ部隊も迎撃しているが逆に撃破されて状況。間違い無く手練れのパイロットなのだろう。

 

『誰か!あのザクを何とかしろ!艦隊に近付きつつ有り!』

 

『ミサイル発射!敵を近づかせるなど許さんぞ!』

 

サラミス級からミサイルの弾幕が形成される。しかし、1機のザクが3連ミサイルポッドからミサイルを発射。ミサイルは艦隊から発射されたミサイル手前で爆発。その瞬間ミノフスキー粒子濃度が更に上昇する。

 

「まさか、チャフのつもり?不味いわ。抜けられる!」

 

90㎜ガトリングガンで弾幕を展開。しかし、ザクはランダムな機動をして弾幕を潜り抜ける。

 

「其方はガルム2が居る!シュウ逃げなさい!」

 

しかしシュウの乗るボールはザクの正面に居ながら射撃している。ザクが反撃体勢を取った時だった。

 

『今だ!艦砲撃ちまくれ!』

 

その言葉と同時にガルム2のボールは急上昇。その直後艦隊から艦砲が射撃される。ガルム2のボールに気を取られたザク1機が艦砲の直撃を受けて爆散。しかし、味方の敵討ちだと言わんばかりにザク2機がガルム2のボールに接近。

 

『貴様!ボールの分際で!』

 

『馬鹿正直に真っ直ぐ来てくれてどうも』

 

180㎜低反動キャノン砲がザクマシンガン直撃。しかし、もう1機のザクがザクバズーカをシュウの乗るボールを狙う。

 

「シュウはやらせないわ。喰らいなさい!」

 

スナイパー・ビームライフルでザクバズーカ装備のザクの背中を狙い撃つ。ビームはザクのバックパックに直撃する。

 

『ジ、ジークッ!?』

 

ザクは爆散して行く。だが、最後のザクはそのままヒートホークを掴みボールに斬りかかる。しかし、ボールは逆にザクに接近する。

 

『何!?貴様、体当たりする気か!』

 

ザクは慌ててヒートホークを振るう。しかし、間合いが甘くボールの左腕を斬るに終わる。

 

『この距離なら外す事は無いぞ』

 

ザクのコクピットに向けて180㎜低反動キャノン砲を狙う。そして、その距離は零だ。容赦無く180㎜低反動キャノン砲が火を噴く。そしてザクのコクピットを貫通する。ボールは直ぐに離脱する。その直後ザクは仲間の後を追うのだった。

 

『此方ガルム2。機体損傷が激しい為、戦闘続行は困難です』

 

「それよりシュウ、貴方は無事なの?」

 

『何とか。正直死ぬかと』

 

シュウの雰囲気は何時も通りに見える。だが、何時も通りなのが違和感を感じてしまう。

 

「分かったわ。兎に角一度離脱しなさい。出撃出来る機体は…今は無いわね」

 

しかし、戦闘は今や地球連邦軍が優勢だ。恐らく間も無く降伏勧告が出されるだろう。だが、それに従う程敵は甘くは無い。恐らく殆どのジオン公国残党軍は降伏はしないだろう。

 

『ジオンは……』

 

「シュウ?今何て言ったの?」

 

『何も言って無いですよ。取り敢えず母艦に戻ります』

 

シュウはそう言って母艦に戻って行く。しかし、先程小さな声では有ったが確かに聞いた。決して気の所為では無い。

 

【許さない】と。

 

……

 

戦闘が終わりコロンブス級補給艦の窓から宇宙を見る。先程の戦闘が有った事が嘘の様に静寂な宇宙が広がってる。

 

「機体、また壊しちゃったな」

 

RB-79ボールの損傷は結構酷い状態だった。しかし、間も無く補給が来る。その時にRGM-79Cジム改を受領出来る手筈になっている。

 

「ニュータイプはこの宇宙をどう思うのだろうか?」

 

俺には星が適度に煌めく静かな宇宙にしか見えない。しかし、ニュータイプならどんな風に見えるのか。死んだ連中の魂がこの宇宙で漂ってるのが見えたりするのか?

 

「シュウ少尉、お疲れ」

 

「あ、レイナ中尉。お疲れ様です」

 

レイナ中尉から飲み物を渡される。有り難い頂こう。

 

「シュウ、さっきの戦闘は危なかったわよ。ボールで囮をやるなんて」

 

「二度としたくは無いですね。もう一度やれと言われたら敵前逃亡上等ですよ」

 

そう言ってストローに口を付ける。うん、イチゴミルクは美味しい。

 

「なら良いけど。あんまり無茶はしないでよね」

 

「少なくともジム改が来るまで無茶はしませんよ。まあ、乗機が壊れたから無茶出来ませんが」

 

それからお互い黙って宇宙を見る。

 

「宇宙は静かな物ね。私達が戦ってた事なんて無かったみたい」

 

「そうですね。案外、人間何てこんな物かも知れないですね」

 

宇宙の広さに比べたら人間何て小っぽけな存在だと言う事だ。

 

宇宙世紀0080年。地球連邦軍は軍備を増強させて行く。そして、徐々に地球連邦軍上層部での派閥争いが激しさを増す。その派閥争いは時に現場の兵士達や民間人をも巻き込んでしまう。

 

宇宙世紀0083年。この年、遂にジオンの亡霊が動き出す。漢達の熱き戦いが始まろうとしていたのだった。


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