宇宙世紀と言う激闘の中で。   作:吹雪型
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AE社テストパイロットVSシュウ・コートニー

試験は順調に進んでいた。俺の機動、射撃データを元にジム・カスタムFbの動きは徐々にスムーズになって行く。そして、遂に最終試験に入るのだった。

 

宇宙世紀0083.8月5日。

 

ジム・カスタムFbの最終試験は模擬戦になる。先ずはAE社の3名のテストパイロットが相手になる。AE社側の機体はRGM-79Cジム改。地球連邦軍の主力機になる。

しかし本番は次の模擬戦だ。何故なら、次は仲間内での戦いになる。そして相手の戦力は公開されて無い。恐らく艦載機は殆ど出撃すると見て良いだろう。

 

『コートニー中尉、準備は宜しいでしょうか?』

 

「はい、問題ありません。唯一つ気になる事が有るんですが良いですか?」

 

『構いません。何でしょうか?』

 

「何故テストパイロット達は俺に対してあんなに好戦的何ですか?」

 

最初に顔合わせしたが凄く睨まれてしまったのだ。まあ、大体の予想は出来ない事は無いが。

 

『ああ、それは恐らくコートニー中尉の乗る機体を取られてしまったからだと思います」

 

簡単に言うと本来ならジム・カスタムFbはAE社のテストパイロットが行う予定だった。しかしコーウェン中将の鶴の一声で変わってしまった訳だ。

 

「成る程な。でもそれだけでは無いでしょう?」

 

『と仰いますと?』

 

「いや、だってさ。彼等はどう見ても前菜の立場じゃん。この後のメインの為の噛ませ犬じゃん」

 

彼等は曲がりなりにもAE社のテストパイロットだ。腕前は間違い無く高い連中ばかりだろう。そんな連中が前菜扱いされれば不機嫌になるのは道理だ。そしてオペレーターは苦笑いを浮かべるだけだ。

 

「そう考えるとテストパイロット達には同情するよ」

 

『コートニー中尉、その辺りはお気になさらずに。元はと言えば全ては此方のテストパイロットの技量不足が招いた結果に過ぎません。ですので遠慮無く模擬戦に挑んで下さい』

 

中々辛辣な事を言うオペレーターだ。だが、そう言われてしまったなら仕方無い。此方も意識を切り替える。

 

「了解した。なら此方は問題無しです。何時でも行けます」

 

オペレーターに伝えてモニター越しにテストパイロットが居る方向に視線を向ける。此方の武装はロング・ライフル。対して相手はジム・ライフルが2機、ビームスプレーガンが1機。模擬戦なだけ有って無難な武装だろう。

因みに武装に関しては特に縛りは無いとの事だった。

 

『それでは、模擬戦開始のカウントを始めます』

 

オペレーターの言葉を聞いて気持ちを切り替える。モニターとレーダーの再確認を直ぐに行う。

 

『カウント5、4』

 

操縦レバーを握る手に力が入る。

 

『3、2、1』

 

ペダルを軽く踏めば小気味良くバックパックからの振動が伝わる。

 

『模擬戦開始です。御武運を』

 

その瞬間、俺は月の宇宙へとジム・カスタムFbを駆け抜けるのだった。

 

……

 

「タンゴ1より各機、周辺警戒だ。相手は1機だが油断はするな」

 

AE社のテストパイロットであり隊長でもある彼は仲間達に警戒を促す。

 

『タンゴ2、了解』

 

『タンゴ3、了解』

 

彼等は無駄な動きをする事無く隊長の指示に従って行く。

 

『しかし、今回の模擬戦は気に入りませんね。まるで我々が噛ませ犬扱いとは』

 

『全くだよな。本社は何を考えてるやら』

 

部下達は現在の状況に不満がある様だった。だが、それは致し方無い所だろう。隊長自身も不満を抱いてるのは事実なのだ。

 

「なら本社と連邦の連中に一泡吹かせるぞ。このままタダで済ます訳には行かんからな」

 

『隊長…そうですね。本社に我々の実力の再確認させる良い機会ですよ』

 

『タンゴ2良い事言うじゃねえか。それに、あの機体は元々俺達の機体なんだ。返して貰わ無いとな』

 

やはり彼等もジム・カスタムFbに対して思う所が有る。自分達のお株を見ず知らずの奴に奪われてしまっては、プライドを大きく傷付けられたのも同然だ。

その時だった。レーダーに反応が有った。それは真っ直ぐに此方に接近して来ていた。

 

『おいおい、小細工無しで来るのか?随分と舐められた物だぜ』

 

『仕方無いでしょう。奴に出来る事など殆ど無いでしょうし』

 

そして彼等は目にする。ジム・カスタムFbが上から突っ込んで来る姿だ。

 

「各機散開するぞ。タンゴ2は右翼。タンゴ3は左翼に回り込め」

 

『タンゴ2了解』

 

『タンゴ3了解!堕とされんなよ』

 

そして遂に彼等の武器の射程内に入る。

 

「攻撃開始!!!」

 

テストパイロット達は躊躇無く引き金を引いたのだった。

 

……

 

ジム改を目視した時、ロング・ライフルで狙撃と言う手もあった。だが、それではジム・カスタムFbの性能テストにならない。

 

「なら、一撃離脱で仕留めるか。多分機動戦には乗って来ないだろうし」

 

戦力比は1対3。だが、機体性能に差が有るのは向こうも理解してる筈だ。だったら此方の土俵だけで戦えば良い。

 

「さて、行くぞ!」

 

俺はブースターを一気に全開にして彼等に向かって突っ込む。月の重力も借りる様に行けば、更に加速に拍車が掛かる。

相手は散開して攻撃をしてくる。だが、お陰で仕留め易くなった。先に左に居るジム改に狙いを絞る。ロング・ライフルで残り2機のジム改に牽制を掛け続ける。

 

『タンゴ2回避しろ!』

 

『大丈夫です。自分が仕留めます!』

 

タンゴ2は弾切れになった90㎜マシンガンを放棄して模擬刀を抜く。それと同時に此方も模擬刀を掴む。

 

『貰ったああああ!!!』

 

タンゴ2は模擬刀を振り下ろす。だが、模擬刀が振り下ろされる直前に肩部に有る追加ブースターと脚部のスラスターを使い機体を捻る。そして擦れ違う直前に模擬刀を抜く。

 

「先ずは1機目」

 

そのままコクピットを切り裂き離脱する。

 

『タンゴ2、コクピット直撃により大破。戦闘続行不能』

 

『嘘だろ…?こんな呆気なく』

 

オペレーターの言葉にタンゴ2は呆然としてしまう。

 

『クソ!何て推力だ。追い付けない。隊長、こうなったら自分が囮になります』

 

『…それしか無いか。タンゴ3頼むぞ』

 

『了解です!唯、仕留めてしまうかも知れませんけどね!』

 

タンゴ3は月の地表から離れる様にして行く。その下付近にタンゴ1は陣取る。

 

『さあ、来い!タンゴ2の仇を取ってやる!』

 

『焦るなよ。落ち着いてやれば良い』

 

ジム・カスタムFbを迎え撃つ為に構えるタンゴ1、3。

 

「良いね。なら、俺も正面から相手してやる」

 

再び月の宇宙に上がる。そして2機のジム改を見据え、ブースターを全開にして突撃する。

 

『隊長!奴が来ます!』

 

『この自信の表れ…間違いない、奴は本物のエースだ。タンゴ3、此方も行くぞ』

 

お互い再び射程内に入る。タンゴ1からビームスプレーガンからビームが放たれる。それと同時にタンゴ3からも90㎜マシンガンから弾幕が張られる。しかし、その弾幕を最低限の機動で回避する。

 

「その程度の弾幕は有って無い様な物だ!」

 

紙一重に近い回避をする姿を間近で見たタンゴ3は衝撃を受ける。自分はAE社のテストパイロットでエリートだと自負していた。例え正規兵だろうと負ける事は無いと。だが、それがたった今全て叩き潰された。

 

『だからと言って引き下がれるか!俺にもプライドがあんだよ!』

 

模擬刀を抜き接近戦を挑むタンゴ3。だが、その攻撃は空振りに終わる。シュウ中尉はそのままタンゴ1に対しロング・ライフルを撃つ。

 

『くっ!この弾幕は!?』

 

ロング・ライフルの装弾数は120発。その攻撃にシールドを構えて防ぐタンゴ1。しかし、そのまま硬直させてしまったのが駄目だった。その隙に側面に回り込まれてしまう。

 

『隊長!右です!』

 

『しまっ!?』

 

至近距離からロング・ライフルの攻撃を受け、タンゴ1は撃墜判定になる。

 

『隊長!貴様ーーー!?』

 

タンゴ3は勢い良く突っ込み模擬刀を振るう。

 

「悪いな。仕留めさせて貰うよ」

 

俺は最後のジム改に向かって行く。そして間合いが詰まりタンゴ3は模擬刀を振り下ろす。だが、その瞬間と合わせて左脚を上げる。

ジム改の右腕をジム・カスタムFbの左脚で止める。それと同時にロング・ライフルをタンゴ3のコクピットに合わせる。

 

「これで決まりだ」

 

『なっ!?何なんだよ、その動きは…』

 

こうしてAE社のテストパイロット達との模擬戦は終わったのだった。








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