宇宙世紀と言う激闘の中で。   作:吹雪型
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仇と敵2

『8つ目…次は』

 

ザクフリッパーは8機目のジム改を撃破して直ぐに次の狙撃ポイントに移動する。ミノフスキー粒子、ビーム撹乱膜を大量に使用したお陰で、攻撃は殆ど来ない。更に此処の暗礁宙域のマップは完全に頭の中に入れている。最早レーダー等必要が無い位だ。更にザクフリッパーの目は非常に良く、敵の索跡には事欠かさない。

 

『此方スピッド1、敵を見失ってる。誰か索跡しろ』

 

『無茶言うな。こんだけミノフスキー粒子が濃いんだぞ。出来たらとっくにやってるよ!』

 

『たかが残党軍にこれ程の戦力を持ってる何て…』

 

地球連邦軍はたった1機のザクフリッパーに手玉に取られてしまってる状況に落ちてしまっていたのだった。

 

『ガルム1、今の状況は不味いですよ?援軍を呼びに戻りましょう』

 

『無理よ。それをやれば背後から狙撃されるわ。今の状況は我慢比べに近いわよ』

 

だが、我慢出来ず攻撃をする連中は居る。

 

『ええい、残党軍にビビるな!各機、俺に続け!』

 

1機のジム改に続き他のジム改も少数続いて行く。しかし次の瞬間。

 

『ぐわああっ!?』

 

あっという間に狙撃され撃破される。撃破されたジム改を間近で見てた連中も動きが一瞬止まってしまう。その隙を見逃す程、敵は甘くは無い。

 

『9つ…10!』

 

10機目のジム改が撃破され、慌てて身を隠す他のモビルスーツ隊。ザクフリッパーからの攻撃を逆算してガルム3のジム・キャノンⅡのビームキャノンからビームを放つが命中した気配は無い。寧ろ逆にカウンターの至近弾を受けてしまう。

 

『うわっ!やっぱりダメです。完全に身動きが取れませんよ』

 

直ぐに機体をデブリに隠すウィル少尉。

 

『参ったわね。このデブリと暗礁の中で機動戦何て出来無いし。艦隊との通信は?』

 

レイナ大尉の言葉に首を横に振るウィル少尉。

 

『手詰まりね。今は兎に角我慢よ。周辺への索跡を厳にして』

 

『了解です。こんな時、シュウ中尉が居てくれたら』

 

確かにとレイナ大尉は思う。一年戦争時、初めての操作で試作ジム改をデブリ内を縦横無尽に動かしていた。それだけでもシュウ中尉の操縦センスは他の誰よりもズバ抜けているだろう。

 

「本人はその辺りは気にして無いけど」

 

知らぬは本人ばかり。しかし、そんなシュウ中尉だからこそ皆んなに好かれてるのかも知れない。

暫く膠着状態が続いている時、1機の機体が暗礁宙域に突入して行く。かなりの速度で有りながらも速度を落とす事は無かった。

 

『レイナ大尉、アレって…まさか』

 

「漸く来たわね。ガルム2!良い女は待たせちゃダメって言ったでしょう?」

 

それに対し直ぐに返信が来る。

 

『此方ガルム2、申し訳ない。少々手間取りましてね。今度何かしら奢らせて頂きますよ』

 

「ふふ、期待して待ってる。ガルム1より生き残ってる各機に通達。これよりガルム2の援護を求めます。ガルム3、行くわよ」

 

『了解です!ガルム3、これよりガルム2に対し全力で援護します!』

 

その言葉を聞きながらレイナ大尉は機体を動かすのだった。

 

……

 

ザクフリッパーのパイロットは困惑していた。モニター越しに見えるのは暗礁宙域を高速で移動してる機体が、此方に徐々に接近しているのだ。だが、此方を発見した訳では無いのだろう。

 

『なら、一撃で仕留める』

 

アレは危険だと、今迄の経験から本能が警告を出す。故に一撃で仕留めなくてはならない。それに、間も無く味方との合流時間にもなる。それに遅れる訳には行かないのだ。

 

『貴様は…此処で死んで行け』

 

そう呟き135㎜対艦ライフルを撃つ。そして、弾は確かに命中した。だが、奴は咄嗟に此方に気付いた。それと同時にシールドを構えたのだ。弾はシールドに命中したが、それで終わる。

 

『奴め…化け物か』

 

恐ろしい程の反射神経だと。その時、背筋がゾッとした。間違い無い、奴は此方を見つけたのだと理解したのだった。

 

……

 

「そこか。場所が分かれば後は仕留めるだけだ」

 

一瞬光が瞬いた瞬間、反射的にシールドを構えた。次の瞬間にはシールドが吹き飛ばされた。だが、コレで敵の位置が分かった。

 

「此方ガルム2よりガルム1へ。これより敵に向かって突撃する」

 

『了解よ。ガルム3援護するわよ』

 

『了解です。敵を確認次第即時撃ちます』

 

ジム・カスタムFbを再び加速させる。また敵からの狙撃が来る。だが、当てるのは難しいだろう。此方もかなり変則的な動きだが、更に追加ブースターにより通常機より動きが違うのだから。

 

「スナイパーなら理解してる筈だ。自身の位置がバレた時、それは死を意味する物だと」

 

しかし、敵スナイパーは撤退する様子は無い。確かに後退はしてるが反撃は随時して来る。だが、反撃をすればするだけ距離が縮まる。

 

『馬鹿め。此方に誘われたと気付かないとは』

 

デブリに隠れたと思えばMMP-80を2丁持ちながら此方に射撃をして来るザクフリッパー。此方もデブリを使いながら回避機動を取りながらロング・ライフルで応戦する。

 

『中々やるじゃ無いか。だがっ!?チッ、臆病者共が意気がりやがって』

 

先程まで隠れてた味方がザクフリッパーに対し攻撃を仕掛ける。ジム改からの90㎜の弾幕とジム・キャノンⅡからのビームがザクフリッパーを襲う。だが、味方の攻撃をデブリ等を使い巧みに避けて行く。

 

『最早此処までか。撤退する』

 

ザクフリッパーが本格的に逃げようとする。だが、今奴を逃すと後々厄介な事になるのは明白だ。

 

「悪いが逃す訳には行かない」

 

再びザクフリッパーを追う。機体の性能差も有り徐々に追い付く。

 

『振り切れん。まさか、この宙域で俺が逃げ切れないとは』

 

MMP-80の銃口を再び此方に向ける。それと同時にロング・ライフルの銃口から90㎜弾が放たれる。ザクフリッパーからの攻撃を避けながら反撃を緩めず射撃する。そして90㎜弾が多数ザクフリッパーに命中して行く。

 

『こ、こんな場所で。おのれ…連邦め』

 

そして敵スナイパーであるザクフリッパーは爆散するのだった。

 

「ふう、スナイパーの相手は厳しかったな。ガルム2よりがガルム1へ、敵スナイパーを撃破。他にスナイパーは居るのか?」

 

『分からないわ。だけど警戒はしておいて』

 

周辺を確認する。味方艦隊は今でも戦闘を続行している。今彼処には奴が居る。ウィスキー、ロック小隊に任せてはいるが心配だ。

 

「ガルム2よりガルム1へ。これより味方艦隊に戻ります。なので此処の警戒をお願いします」

 

『ダメよ。まだ敵を完全に索跡出来て無いのよ。もし残存部隊が居たらどうするの?』

 

『そうですよ。それに此方の艦隊の方が戦力は圧倒的なんですよ?心配する事何て殆ど無い筈です』

 

ウィル少尉の楽観的な発言に対し良い事を教えて上げる事にする。

 

「ウィル少尉、お前は良く俺の事をエースパイロットと言ってるな」

 

『え?は、はい。実際シュウ中尉はエースパイロットと言えますし。それが何か?』

 

「敵には俺と同じ様な…いや、それ以上のエースパイロットがいる。そして、連中は1人1人が熟練兵と言っても良いんだぞ。それが何を意味してるか分かるか?」

 

先程のザクフリッパーの動きを見れば一目瞭然だ。この暗礁宙域を自由自在に移動していた。機体の性能差が有るとは言え中々追い付けなかったのだから。

 

『じゃ、じゃあ。今の艦隊は不味い状況なのでは?』

 

「だから俺が戻るんだ。ガルム1聞いての通りです。艦隊に戻る許可をお願いします」

 

『それは厄介ね。ガルム1よりスピッド1、聞こえる?』

 

『此方スピッド1。どうした?何かトラブルか?』

 

レイナ大尉が今の状況をスピッド1に伝える。

 

『成る程な。ガルム2以上の腕前を持つエースが居るとなると味方部隊に被害が出るな。了解した。この宙域の索跡には我々も協力しよう』

 

『感謝するわ。ガルム2大丈夫よ。さあ、行きなさい』

 

「了解です。スピッド1感謝します」

 

『おいおい、感謝するのはこっちの方だぜ。この宙域を狂った速度で突っ込んだ行った奴のお陰で生き残れたんだ。この位平気さ。今度飯でも奢らせてくれ』

 

スピッド1は敬礼しながら愉快そうに笑う。此方も答礼をして味方艦隊に向かう。

 

「それでは自分は先に艦隊に向かいます。ガルム3、レイナ大尉を頼むぞ」

 

『了解です。御武運を』

 

機体を加速させる。ウィスキー、ロック小隊が足止めしてくれてる。だからこそ早く艦隊に向かわなくてはならない。

 

「頼む…無事で居てくれ」

 

これ以上仲間を死なせたく無いから。しかしデブリを避ける様に機体を動かしてる中、ふと思う。いつから仲間だけ無事なら良いと思う様になったのだろうか?相手も同じ人間だと言うのに。

 

(多分…あの時だろうな)

 

嘗ての戦友で有り親友で有る存在。アーク・ローダーを目の前で失った瞬間からかも知れない。

 

「ダメだ。今は目の前の戦場に集中しろシュウ・コートニー」

 

自身に言い聞かせる様に言い放ち戦闘に集中するのだった。

 

……

 

ウィスキー、ロック小隊とベルガー・ディートリッヒ少佐との戦闘は続いていた。ウィスキー、ロック小隊を援護する様に艦隊からの対空砲が火を噴く。だが、その戦力差を物ともせず戦い続けるベルガー少佐。

 

『ぐわあああ!?畜生!右腕と右脚をやられた!』

 

『ロック3こっちに来て固まれ。離れたら即やられるぞ』

 

『何だよ此奴…弾が全然当たりゃしねえ』

 

『ボヤく前に弾幕を張れ!』

 

しかしジム改6機の内3機は損傷が大きく、まともに戦闘出来る状況では無い。然も離脱が出来ずジリ貧になっている。

 

「ふむ、中々粘る。それに孤立する事はしない辺り良い判断だ」

 

ベルガー少佐は逃れようとする奴を逃すつもりは無い。しかし、目の前の6機のジム改はシールドを構えながら味方を守る様にしている。

 

「だが、何時迄も貴様等の相手をするつもりは無い。そろそろ旗艦を仕留めさせて頂く」

 

黒い高機動型ザクのモノアイが白いマゼラン改級グレイトを見つめる。そして機体を再び加速させる。

 

「私の機体の燃費は少々悪いのでね。そろそろ終わらせる」

 

再び加速した黒い高機動型ザク。それに対してウィスキー、ロック小隊、更に艦隊と味方のジム改が迎撃する。

 

『うおおお!速えええ!?』

 

『駄目だ抜けられるぞ!』

 

ウィスキー、ロック小隊の戦術は基本防御に徹し、敵の攻撃の隙を見て一斉に反撃する。しかし今や火力は半減、更に損傷機を守る様にしてる為満足に戦え無い。

艦隊の弾幕をいとも容易く抜けて行くベルガー少佐。そして、そんな狂気の沙汰とも言える黒い高機動型ザクの戦い方に恐怖を覚えるスタンリー・アルドリッジ准将と乗組員達。

 

「な、何をやってる!?たかが残党軍の、旧式のザクに何を梃子摺る!?」

 

「対空弾幕何やってるか!奴を叩き落とせ!この艦には准将が乗っておられるのだぞ!」

 

若干髪を乱れさせながら吠えるスタンリー准将。副長も即時迎撃する命令を降すが黒い高機動型ザクは落ちない。

 

「さあ、仲間への手向けだ。逝くが良い」

 

ザクバズーカを左手に装備。その銃口がスタンリー准将の居る第1艦橋に向けられる。その時、ロックアラートが鳴り出す。

 

『ベルガー・ディートリッヒ!!!』

 

「っ!?貴様か、シュウ・コートニー!!!」

 

暗礁宙域を抜けた瞬間、リミッターを解除されたジム・カスタムFb。その圧倒的な速度によりベルガー少佐に接近。そしてジム・カスタムFbと高機動型ザクとの戦いが再び始まる。

 

「ほう、中々の性能じゃ無いか。だが、此方も性能差では負けては無いぞ」

 

ベルガー少佐は機体のリミッターを解除する。そして、遂に黒い高機動型ザクの本性が現れる。

 

「見た目はザクだが、中身はゲルググだと言っても良い。いや、機動力では此方が圧倒だ!!!」

 

『此奴、食い付いて来るのか!?』

 

お互い近接戦闘に入る。ビームナギナタを振るう高機動型ザク。それをビームサーベルで真っ向から受け止めるジム・カスタムFb。そして至近距離からのザクマシンガンとロング・ライフルの応酬。

 

「貴様が目障りなのだ。故に此処で死んで行けシュウ・コートニー!!!」

 

ビームナギナタを振るいジム・カスタムFbに迫る。それに対し60㎜バルカンを放つシュウ中尉。

 

『そう簡単に死ねるか!戦争は終わったんだぞ!もう、これ以上戦う意味は無いんだ!』

 

「意味は有る」

 

シュウ中尉の言葉を否定するベルガー少佐。

 

「多くの仲間達が思い描く、スペースノイドの真の独立。これを成就して漸く我々の戦いは終わる。其れ迄…戦いを止める訳には行かんのだ。でなければ死んだ者達は一体、何の為に…」

 

その時、ベルガー少佐に通信が入る。

 

『ベルガー少佐聞こえますか?もう、これ以上は限界です。それから、スカウト1からの通信が途切れました。恐らく…』

 

「そうか…了解した。これより撤退する」

 

少し間を開けた後帰投の返信をするベルガー少佐。

 

「シュウ・コートニー、貴様が何と言おうとも我々の戦いは止まら無い。そして、貴様の言葉は誰にも届きはしない」

 

そして、そのまま離脱するベルガー少佐。勿論簡単に帰す程連邦軍は甘くは無い。だが、ジオン公国残党軍のムサイ級3隻が牽制射撃を行い邪魔をする。

 

「ま、待て!逃す訳にはっ!く、3分過ぎてたのか」

 

機体の状況を示すモニターにはこれ以上のリミッター解除が不可能と表示されている。流石にそれを解除する訳には行かない。

 

「誰にも届かないか…。そんな事、言われるまでも無いさ」

 

一年戦争の時に充分理解した。誰もが深い哀しみ、憎しみ、怒りを抱いている。時間が解決する等と言う戯言を口にしてはいけない。例え何年経とうとも失った悲しみは癒える事は無いのだから。

この戦争も此処まで来たら、ジオン公国残党軍も地球連邦軍も引き下がれ無い。引き下がれる訳が無いんだ。そんな事を思いながら敵が撤退して行くのを見届けながら、此方もロイヤルに帰投するのだった。








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