宇宙世紀と言う激動の中で。   作:吹雪型

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ジオン公国残党軍の意地

宇宙世紀0083.11月8日。

 

暫くコンペイトウにて待機していたが遂に出撃命令が出る。唯、今回出撃するのは第217パトロール艦隊のみになる。

 

「しかし凄いな。コンペイトウ周辺の艦隊数は圧倒的だな」

 

「本当ですね。これだけの戦力が一気に残党軍に向けられたら一瞬で決着が付きますね」

 

「だな。多分艦砲だけで終わるんじゃ無いか?」

 

ロイヤルの艦橋から観艦式に参加する艦隊を見る。サラミス改級、マゼラン改級、更に準ペガサス級まで居る。

 

「あ、アレは準ペガサス級ですよ!自分初めて見ました」

 

「俺はペガサス級を見た事あるけど、随分と形が変わってるんだな」

 

多数の艦隊を見て、改めて地球連邦宇宙軍は復活したのだと感じる。一年戦争には大敗を期したが、その後の立て直しは凄まじいと言える。更にサラミス改級やマゼラン改級等火力増強も計られてるのだから総合火力は更に飛び抜けてるだろう。

 

「全く、味方の艦隊なんて散々見てるでしょう?私なんてもう見飽きたわよ」

 

「いやいや、この圧倒的な戦力はいつまで見ても見飽きませんよ。な、ウィル少尉」

 

「はい、ずっと見てても飽きませんよ」

 

そんな俺達をやれやれと言った雰囲気で見続けるレイナ大尉。そんな時、コンペイトウから1隻の白い戦艦が出て来る。多数の砲塔と対空砲を備え、悠然とした姿を現した。

 

「あれは新造艦?」

 

「あれは観艦式の観閲旗艦【バーミンガム】だよ。そしてグリーン・ワイアット大将が上座されてるのさ」フワァ

 

アーヴィント少佐がバーミンガムに付いて教えてくれる。

 

「しかし観艦式の観閲旗艦ですよね?今から何処に行くんでしょう?」

 

「どうやら周辺の巡察を行うみたいです」

 

「え?大将自らですか?今回の観艦式には随分と気合が入ってるんだな」

 

俺達はバーミンガムを見ながら敬礼をする。多分此方を確認したのか発光信号が送られる。

 

「『貴艦ラノ任務遂行ヲ期待スル』との事です」

 

「うむ、返信『観艦式ノ安全ヲ確保致シマス』とな」

 

そしてバーミンガムを見ながら目的地まで行く。場所はコンペイトウより離れた場所に当たるC区画になる。とは言うものの一年戦争時に出来た多数の残骸が浮遊してる場所でも有る。また、観艦式が近付くにつれジオン公国残党軍の動きが更に活発化してる。

つまり、どの宙域から敵が出て来ても可笑しくは無いのだから。

 

……

 

「それで、早速敵さんのお出ましかよこん畜生!」

 

「ボヤかないの。ほら、早く出撃するわよ」

 

警戒区域であるC区画に到着して数分後に艦隊のレーダーにより敵の接近を確認。その為モビルスーツ隊は出撃する事になる。

 

「此方ガルム2、出撃準備完了」

 

『了解しました。カタパルトへ移動お願いします』

 

ルイス少尉の言葉に従いカタパルトにジム・カスタムFbを移動させる。

 

『カタパルト接続を確認。ハッチ解放、進路クリア。発進どうぞ』

 

「了解。ガルム2、シュウ・コートニー中尉行きます」

 

そして周辺警戒の意味合いも有り、モビルスーツ隊は全機出撃になる。そして全機出撃した後、迎撃及び索跡に入る。

 

「ルイス少尉、敵の数は多いのか?」

 

『いえ、敵の総数は3機のみです。いずれもザクになります。また、周辺にはデブリが多数存在している為奇襲の危険性が有ります。注意して下さい 』

 

「了解した」

 

(相手はザク3機か。なら気を引き締めないとな)

 

そう思っているとウィル少尉が安堵の声を出す。

 

『良かった。敵が旧式機ならなんとかなりそうですね』

 

『コラコラ、旧式機だからと言って油断は厳禁よ』

 

「そうだぞ。寧ろ旧式機だからこそベテランが搭乗してるから危険なんだぞ」

 

旧式機に搭乗するパイロットはベテランが多い。それ故に旧式機とは思えない機敏な動きを見せて来る。

 

『りょ、了解です。気を付けます』

 

ウィル少尉も俺達の言葉を聞いて気を引き締め直す。

 

「ガルム2よりガルム1へ。これより敵の追撃に入ります」

 

『了解したわ。但し、無茶な追撃は厳禁よ。足止めに専念しなさい』

 

「了解です。ガルム2、行きます!」

 

ジム・カスタムFbをブースター全開にする。他のモビルスーツを圧倒する加速と最高速を出しながらザク3機を追い掛ける。距離は見る見る縮まる。

 

「捉えた」

 

それと同時にザク3機も反応する。そして此方を視認したのと同時に散開する。

 

『此奴は速いぞ。各機集中して素早く破壊するぞ。連邦の後続が来る前に殺っておきたい』

 

『了解』『了解です』

 

ザク3機は素早い動きでデブリを壁にしながら、此方の射線を上手く切りながら接近して来る。そしてほんの僅かな隙間を縫う様に攻撃を仕掛けて来る。

 

「中々良い動きをするな。だが、負けるつもりは無いぞ」

 

例えデブリにより機動戦に制限が有ろうとも、それは向こうも同じ事だ。デブリを踏み台にしてブースターを使って行く。その度に凄まじいGが身体を襲い掛かる。だが、この程度のG等に泣き事を言うつもりは無い。

 

『此奴は…かなりの手練れだぞ。この場で確実に仕留めるぞ』

 

1機のザクがザクマシンガンを撃ちながら接近して来る。それと同時にザク2機も援護の為、射撃を開始する。

 

「チッ、連携が上手い」

 

前衛のザクを主軸に援護に徹するザク2機。堅実だが隙が無い。なら、堅実な所を崩せば良い。ジム・カスタムFbの加速性は生半可な物では無いのだから。

ロング・ライフルを乱射しながら一気に前衛のザクに接近する。そして、そのまま素通りしながり援護をしているザク2機に対しても攻撃をする。

 

『此奴、無茶苦茶な機動を取りやがる』

 

『このままだと狙いが付けれんぞ』

 

『俺が足を止める。その隙に仕留めてくれ』

 

反転して再び攻撃をする。しかし、ザク3機のザクマシンガンの弾幕が此方を襲う。シールドを構えつつロング・ライフルで反撃をしながら接近。

 

『来たか。ならば!』

 

1機のザクがザクマシンガンを放棄してヒートホークを装備。そのまま接近戦を仕掛けて来る。それに応える様にロング・ライフルを仕舞いビームサーベルを抜く。

 

『良い度胸だ!だが、俺は負けん!!!』

 

そしてザクとジム・カスタムFbが一瞬の交差をする。そして…。

 

『ば、馬鹿な…くっ、すまん』

 

その通信を最後にザクは爆散する。

 

『あ、ああ…ダムの奴が』

 

『お前は先に行け。もう連邦が来てる』

 

デブリにより進行速度は遅いが、連邦軍モビルスーツ隊が徐々に迫って来る。

 

『待てよ!それじゃあ、お前はどうするんだ?』

 

『決まってるさ』

 

ザクマシンガンの弾倉を新しい物に変えながらジム・カスタムFbに接近する。

 

『連邦を1人でも道連れにする。さあ、行け』

 

『だ、だが…』

 

『問答してる暇は無いんだ!俺の…俺達の意地を無駄にするな!行けえええーーー!!!』

 

ザクはジム・カスタムFbに対しザクマシンガンを撃ちながら機動戦を仕掛ける。

 

『…待ってるからな。予定ポイントで待ってるからな!!!』

 

そしてザク1機は戦線を離脱する。

 

『さて、俺と楽しく戦おうじゃ無いか!』

 

「そこまでして戦う理由は何だ?一年戦争は終わってるんだぞ!」

 

デブリの中を機動戦を行いながら駆け抜ける。

 

『はっ、それはお前達連邦軍だけの話だ。俺達はずっと前から戦い続けてる。そう、3年間ずっとな!』

 

ザクマシンガンを撃ちながらデブリを使い機動戦を行う。それは、先程シュウ中尉が行った機動に似ている。

 

『くっ…こんな無茶な機動をしやがって。だがな、手前に出来て俺に出来無い訳が無いんだよ!』

 

「デブリが邪魔で捉え切れ無い。このままだと逃げられる」

 

ロング・ライフルで狙いを付けるがデブリを使い鋭い機動を取るザク。その時、味方が追い付いて来る。

 

『ガルム2、無事なの?』

 

「此方は平気です。しかし、ザク1機が戦線を離脱して行きます」

 

『了解したわ。此方で追撃をするわ。ガルム3はガルム2の援護よ』

 

『了解しました。中尉、今援護します』

 

そのままザクを無視して、もう1機のザクの追撃を開始する連邦軍。だが、それに待ったを掛ける奴が居た。

 

『手前ら…そう簡単に行かせる訳が無いんだよ!』

 

ザクはそのまま追撃を開始しようとする味方に対しザクマシンガンを撃ちまくる。

 

『此奴、オープン通信で挑発すんのか?』

 

『だったらお望み通りにしてやるぜ。ウィスキー小隊続け』

 

『ロック小隊も行くぞ。早死にしたいなら手伝ってやるよ』

 

しかしザクはデブリを使い巧みに回避、反撃をする。

 

「チッ、加速が出るから追撃し難い」

 

ジム・カスタムFbの性能は間違い無く目の前のザクを超えている。しかし、それ故に限定的な戦場では高性能なジム・カスタムFbを活かし切れない。

 

『俺達は負けない。貴様等傲慢な連邦軍に負けて堪るかよ!!!』

 

ザクはデブリを使い回避機動を取る。しかし、多勢に無勢。更に圧倒的な火力がザクを追い詰める。

 

『デブリごと撃ち抜く。喰らいなさい!』

 

『よし、これでも喰らえ!』

 

ガルム1の持つ90㎜ガトリングガンが火を噴く。更にガルム3からのビームキャノンからビームが放たれる。それに続けと言わんばかりにロック、ウィスキー小隊のジム改からの攻撃も続く。

 

『数で攻めるしか出来無い癖に。俺達は、そんな…貴様等の傲慢に俺達は潰されて来たんだ!!!』

 

多数被弾するザク。手持ちのザクマシンガンも大破、更に左腕も吹き飛ぶ。だが、止まらない。大破したザクマシンガンを放棄してヒートホークを構えガルム2に接近する。

 

『うおおお!!!ジーク・ジオン!!!』

 

だが、その勢いは潰される。いつの間にか上方を確保していたシュウ中尉の乗るジム・カスタムFbの持つロング・ライフルがザクのバックパックを撃ち貫く。ザクは瞬く間に爆散して行く。そしてヒートホークだけがガルム2に向かって行くが、そのままシールドに刺さって止まるのだった。


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