ジオン公国軍。それはスペースノイドに取って希望の光で有り、強大な力を持ち圧政をし続けて来た地球連邦軍に対し果敢に立ち向かい善戦を続けた栄光有る存在。
しかし一年戦争で地球連邦軍に敗戦。その後、地球圏でのゲリラ活動を行う組織とアクシズへ撤退をし機を熟すのを待つ組織と別れる。だが栄光あるジオン公国軍人としての強い意志と信念は簡単には揺るが無いので有る。
だが栄光と言う名の光の裏には屈辱と言う名な闇が存在していた。キシリア・ザビ少将配下、ジオン公国軍突撃機動軍海兵上陸部隊。通称【シーマ艦隊】で有る。彼女達は常に汚れ仕事をし続けていた。特に一年戦争時、ジオン公国軍が行ったブリディッシュ作戦に於いてサイド2の8バンチコロニー【アイランド・イフィッシュ】内に毒ガスで有る【G3ガス】を注入。これによりコロニー内の民間人2000万人に昇る大虐殺を行った。
そして栄光有るジオン公国軍に対する復讐と怨恨と言う名の牙が向けられる。
……
デラーズ・フリート旗艦グワデン
「ふふふ、良く此処まで来たものだ。嘗てジオン艦艇の半数を要した作戦を、儂は今此れだけの艦隊でやっておるのだ」
エギーユ・デラーズ中将は己の作戦が完璧と言える程に上手く行っているのに御満悦であった。地球連邦軍との圧倒的な戦力差が有るにも関わらず、自身の掌で操り続けて来れたのだ。そして星の屑は間も無く完了しようとしていた。
「しかし、柔らかい脇腹を突かれるとは…思いませなんだなぁ」
その時シーマ・ガラハウ中佐がグワデン内の艦橋に来ていた。
「予想外の事は起こるものだ。ガトーは良くやっている」
しかし、デラーズ中将は問題無いと言わんばかりで返事をする。その言葉を聞いてシーマ中佐の表情が一瞬歪む。だが、直ぐに余裕の有る表情になる。
「…予想外の事は起こるもの」
シーマは自身の持つ扇子を叩く。その瞬間、グワデンの艦橋内に銃声が響き渡る。そう、遂に栄光有るジオン公国軍に対し【蜉蝣】が羽ばたいた瞬間だった。
宇宙世紀0083.11月12日。コロニーは阻止限界を突破。同時にデラーズ・フリート軍、戦闘中止宣言。
グワデン内で起こった銃声は一瞬で止まったのである。そしてエギーユ・デラーズは己の見た物を疑う。
「ソーラー・システム…」
「そう言う訳だ。コロニー落としを防ぐ奥の手が有った訳だなぁ。ちょっと温めるだけで、ボン!ハハハハハハ!」
シーマ中佐はデラーズ中将の驚愕した表情を見て笑う。その態度にデラーズ中将は檄を飛ばす。
「貴様…それでもジオンの将か!?」
「あたしはこうして生きて来たんだ!!サイド3でぬくぬくと蹲る者達の顎で扱われ!!」
デラーズ中将の檄に対し、シーマ中佐は栄光有るジオン公国から受けた屈辱を持ってして返事をする。
「私は…故あれば、寝返るのさ!!!」
栄光、名誉、気高き。その美しい言葉とは裏腹とも言える存在が吼える。自分達が蒔いた種が復讐と怨恨が裏切りと言う形によって芽が出た瞬間で有ったのだ。
「哀れ…志を持たぬ者を導こうとした我が身の不覚であった」
「ハッ!アクシズ何て辺境に導かれた日にゃ、商売上がったりさ!」
デラーズ中将の言葉を鼻で笑うシーマ中佐。その時、異変を感じてグワデンまで来た存在が現れた。
『シーマ!?獅子身中の虫め!!!』
アナベル・ガトー少佐はノイエ・ジールをグワデンの艦橋前に止める。そしてエギーユ中将に対し銃口を向けるシーマ中佐を見て激昂する。だが、シーマ中佐は余裕有る態度で返事をする。
「ふふふ、動くなよガトー。敗軍の将は潔くな。連邦への土産を傷付けたく無いからなぁ」
そんな中、デラーズ中将は周りを見渡す。死んで行った戦友達。今尚戦場で戦ってる同士達。そして…目の前に居る託せる存在。デラーズ中将は口を開く。
「……征け、ガトーよ」
静かに。しかし、しっかりとした強い言葉でガトー少佐に託す。
『…はっ?』
「ガトーよ…意地を通せ。現にコロニーは有るのだ」
「狂ったか!何を!?」
デラーズ中将はガトー少佐に最後の命令を降す。唯、征けと。それに対しシーマ中佐は焦りの表情が出る。
「征け!儂の屍を踏み越えて!」
「黙れ!!!」
自身を顧みないデラーズ中将に対しシーマ中佐は殴る。だが、止まらない。そしてエギーユ・デラーズから徐々にオーラが出る。それは一年戦争で死んで行った同士達が集まってるかの様に。
「儂を宇宙の晒し者にするのか、ガトォォー!!!」
「馬鹿野郎!!ソーラー・システムが狙ってるんだよぉ!!じょ、冗談じゃ無いよ!?」
『…閣下!』
そのオーラに銃を向けながらも気圧されるシーマ中佐。そしてエギーユ・デラーズは言葉を口にする。誰もが口を揃え唱えた言葉。スペースノイドの為に戦い続ける事の出来る呪詛とも言える誓いの言葉。
【…ジーク・ジオ】
その瞬間、1発の銃声が艦橋に響き渡るので有った。
宇宙世紀0083.11月12日20時15分。シーマ・ガラハウ中佐によりエギーユ・デラーズ中将戦死。
名誉、栄光、憎悪、怨恨が様々な形で混ざり合う。それは人々の運命をも歪ませて行く。だが兵士達は止まる事は無い。唯、駆け抜けるのみである。
……
ロイヤル、レオニードは第1地球軌道艦隊と合流後、ソーラー・システムⅡの防衛に従事する。だが異物とも言えるシーマ艦隊が居るのは第218パトロール艦隊の中には納得出来る者は居なかった。
「バスク大佐、奴等は敵です!そんな連中と手を組めと言うので有りますか!」
アーヴィント・アルドリッジ少佐はバスク・オム大佐に通信を繋げ抗議をしていた。
『此れは命令だ。今やシーマ艦隊は我が軍の戦力だ。それとも…命令違反をして貴様の部隊諸共消えるか?』
「そ、それは…しかし!」
『アルドリッジ少佐。貴官等の部隊は優秀なのは理解している。私はそんな優秀な者達の将来を失わせたくは無いのだ。その事を理解した上で良く考える事だ。今はコロニー落としの阻止に全戦力が必要だと言う事もだ』
そして通信は切れる。アーヴィント少佐は己の無力を実感し強く握り拳を作る。
「…ッ!通信を送れ。レオニード、及びモビルスーツ隊に通達する。シーマ艦隊には手を出すな。此れは…命令で有る。反論は許さん…とな」
「艦長…了解です」
そして、その内容を聞いてレイナ大尉は反論をする。
『どう言う事なの!ちゃんと説明して!奴等は敵なのよ!此れじゃあ軍閥政治じゃない!』
『レイナ大尉。これはアーヴィント少佐も納得した上での命令になります』
『ならアーヴィント少佐に繋げて。今すぐよ』
レイナ大尉はルイス少尉では話にならないと判断しアーヴィント少佐に直接話しを付けようする。
『反論は許さないとの命令です。ですので繋げる訳には行きません』
『ルイス少尉!貴女だって』
『解ってます!此れが間違いだと言うのは!アーヴィント少佐も私達の事を思っての命令なんです。だがら…だがら!』
ルイス少尉も苦しい表情になる。何故ならバスク大佐とのやり取りを見聞きしてたのだから尚更だろう。
『…御免なさい。貴方達の事も考えてなかったわ。命令は了解よ』
『レイナ大尉…有難うございます。今はコロニー落としの阻止に意識を集中して下さい。私も気持ちを切り替えます』
『ええ。お互い頑張りましょう』
レイナ大尉は通信を切る。
『聞いての通りよ。彼等は味方として扱う事。これは命令よ』
『レイナ大尉はそれで良いんですか?』
「ウィル少尉、命令に従うんだ」
『シュウ中尉まで!こんなの納得出来ませんよ!』
ウィル少尉は敵と協力する事に納得出来ていなかった。だから心を鬼にして言い放つ。
「ウィル少尉、軍とはそう言うものだ。納得しないならハンガーに戻れ。中途半端な気持ちで戦場に出て来るのは迷惑だ。大人しく引っ込んでた方が助かる」
『…ッ……シュウ中尉。了解…しました。協力します』
ウィル少尉は項垂れながらも頷く。そして遂にコロニー落としの最後の攻防戦が開かれるので有った。