宇宙世紀と言う激動の中で。   作:吹雪型

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迫り来る狂気

宇宙世紀0085.2月6日。

 

現在第031パトロール部隊は通商ルートの警備を行なっていた。通商ルートなだけ安全性は常に高い状態を維持していた。

 

「ヘイルズ1よりポプキンス。今の所異常無しだ」

 

『此方ポプキンス、了解しました。引き続き任務遂行お願いします』

 

「了解した」

 

この部隊に配属して丁度一年位が過ぎただろう。相変わらず安全な任務を行なっていた。そんな中、そろそろ潮時な感じもしてるがな。

 

『隊長、この任務に意味はあるのでしょうか?自分には唯無駄に時間を潰してる様にしか思えませんよ。まあ、やる気の無い隊長には丁度良いのかも知れませんが』

 

『あーあ、こんな警備に何の意味が有るのやら。早く別の部隊に行きたいぜ』

 

「どんな任務にも意味は有る。例えつまらない任務でも遂行するのが軍人だ。それに、やる気の無いのはお前達もだろ?」

 

ビューマン曹長とオールコック上等兵の軽口に軽口で返す。どんな任務も遂行する姿勢を見せれば誰かが見ている。そんな中、常にやる気を見せて無い連中が転属したとしても居場所なんて無いだろう。

そしてオールコック上等兵に関しては悲しい知らせがある。以前まで模擬戦等やっていたが、最近ではやらなくなっていた。理由として俺との模擬戦で勝て無いだけでなく、内容が厳しいからだとか。

 

(あの程度で厳しいか。チェイス教官の内容に比べたら全然甘いんだがな)

 

一年戦争当時、たった3日間だけでは有ったが非常に為になった訓練だった。尤も、3日間に凝縮された訳だから超スパルタだったけど。

昔を思い出してると乗機から振動が走る。モニターを見るとバックパックに異常を検知していた。

 

「チッ、またか。最近よく咽やがる」

 

そう言ってペダルを2、3回踏み込む。するとバックパックは正常に稼働する。ここ数ヵ月前から何度もバックパックが咽せるのだ。今が平時だから良い物の、戦時だったら速攻で直させるんだがな。

 

『隊長、またバックパックの異常っスか?』

 

「まぁな。此奴には結構無理させてるからな」

 

ジム改は一年戦争末期の量産機だ。この機体も一年戦争終結後直ぐに配備された機体だ。それに各関節部の強化やブースターの出力強化もしている。それ故にバックパックは通常より負荷が掛かってしまう。整備班には何度も説明してるし、修理もして貰っている。だが2、3回出撃すると同じ様に咽るのだ。恐らく根本的に全体が劣化しているのだろう。此処まで来たらバックパックを丸ごと交換した方が早いだろう。

 

「やれやれ…ん?味方の反応だと」

 

レーダーを確認すると前方より反応がある。そして識別を確認する。

 

「アレキサンドリア級にサラミス改か。然も、ティターンズ所属艦とはね」

 

其処にはアレキサンドリア級1隻にサラミス改4隻が航路予定無い所に堂々と移動していた。本来なら注意の一つ位はすべきだろう。だが今のティターンズを無闇に刺激したいとは思わない。

ティターンズ。ジオン残党狩りを主とした精鋭特殊部隊だ。ジオン残党狩りを徹底的に行った結果、各地域での治安はかなり回復している。しかしジオン残党狩りと称して、スペースノイドへの弾圧等と言った事もしているとか。勿論やり過ぎの声も有るが表立って言う奴は居ない。反逆者として尋問されたいとは思わないからだ。

その時、アレキサンドリア級から通信が来る。

 

『此方、ティターンズ所属第25独立部隊のアモス・ベアリー中佐だ。貴官等の部隊は第031パトロール部隊で合っているな』

 

「そうです。此方は地球連邦軍ルナツー方面軍所属第031パトロール部隊。部隊長シュウ・コートニー大尉で有ります」

 

『そうか、君が。では早速で悪いがブリュッヒャーに着艦してくれるかな?』

 

「其方の旗艦にで有りますか?しかし、我々にはパトロール任務が有ります」

 

『その任務はたった今無効になったよ。兎に角艦橋で待っている。着艦後直ぐに来る様に。以上だ』

 

そして通信が切れる。

 

「…各機、これよりアレキサンドリア級のブリュッヒャーに着艦するぞ。上手く着艦しろよ」

 

『え!ティターンズの艦に着艦ですか?それにカタパルトに着艦ですか…』

 

「不安なら機体を外に待機させておけば良い。考えてみたら俺達はカタパルトでの離着陸は殆どやらなくなってるからな」

 

ビューマン曹長の不安そうな声に苦笑いしながら指示を出す。

 

(さて何が出て来るかな)

 

横暴なやり方に少々思う所は有る。だが、反抗して痛い目に遭いたいとは思わない。大人しくアモス中佐の指示に従ってブリュッヒャーに着艦するのだった。

 

……

 

ブリュッヒャーの格納庫にジム改を収容させる時、最新機とも言える機体が数機待機していた。

 

「確かハイザックだったか。見た目は殆どザクだな」

 

RMS-106ハイザックはルナツーへの配備は殆どされて無い筈だ。代わりにRGM-79Qジム・クゥエルが配備され始めている状態だ。元々ジム・クゥエルはティターンズ優先に配備されていた。そして次期主力機がハイザックに決まった為、機体更新の煽りを受けてティターンズから地球連邦軍へ払い下げされてるのが現状だ。

しかし、此処で面白い状況になる。ティターンズのパイロット達はハイザックの配備を手放しで喜ばなかったのだ。何故ならハイザックには致命的な欠陥が有るのだ。その結果ジム・クゥエルを使用続ける部隊も居る現状になっている。

 

「まあ、俺にはもう関係無くなる話だけどな」

 

独り言を呟きながらコクピットから出てアモス中佐の居る艦橋へ向かう。

 

「隊長、何故俺達はティターンズの艦に?」

 

「オールコックか。正直言って分からん」

 

俺と同じ様にカタパルトに着艦したので直ぐに追い付いて来たみたいだ。

 

「分からないのに俺達はティターンズの艦に乗ったんですか?」

 

「仕方無いだろ。ティターンズに反抗して良い事何て無いんだよ。嵐がサッサと過ぎ去るのを待つしか無いな」

 

暫くオールコック上等兵と話をしてるとビューマン曹長も追い付いて来た。因みにビューマン曹長も不慣れながらもカタパルトに着艦出来た様だ。

 

「よし、全員揃ったな。今から艦橋に向かうぞ。ちゃんと礼儀正しくしてろよ」

 

「勿論ですよ。しかし自分がティターンズの艦に乗る機会が有るなんて。運が向いて来たかも」

 

「あ、それは俺も思うわ。此処でしっかり俺の実力を示せればティターンズ入隊も夢じゃないぜ」

 

どうやら2人はティターンズへの入隊を諦めきれてない様だ。だが仕方無いだろう。確かに横暴な行為は目立つ。だが、それらの行為を黙認されるのが今のティターンズだ。それにジオン残党狩りも積極的に行ってるのも有る為、尚更強く言えないのだ。そして若干興奮している彼等を連れて行きながら艦橋へ向かうのだった。

 

……

 

俺達はブリュッヒャーの艦橋まで来た。するとアモス中佐が此方に視線を向ける。

 

「漸く来たか。さて、早速だがこの宙域マップを見て貰いたい」

 

モニターに映し出されるマップ。それはデブリや岩石が多数浮遊している宙域だった。

 

「我々はこの宙域にジオン残党軍が居るとの情報をキャッチした。その為、この宙域に詳しい部隊が必要になった」

 

「つまり、この宙域は我々のパトロール宙域なのですか?」

 

「その通りだ。勿論君達を責めるつもりは無い。特にコートニー大尉の任務に対する忠実な所は此方でも確認済みだ。これだけのデブリが浮遊しているのだ。鼠にとって住み易い環境なのだろう」

 

そんな中、アモス中佐は此方に近付いて来る。そして俺の目を真っ直ぐに見ながら言う。

 

「其処でだ、エースパイロットのシュウ・コートニー大尉には先陣を切って貰いたい。一年戦争、デラーズ紛争での戦果は目を見張る物が有る」

 

アモス中佐がそう言うとビューマン曹長とオールコック上等兵は驚いた表情になる。

 

「…お褒めに預かり光栄です」

 

「この作戦後にはティターンズへの入隊を推薦したい。正直言って君程のエースがこんな場所で腐ってるのは許し難い事だ」

 

褒められて悪い気はしなかった。だが俺はもう無理なのだ。

 

「申し訳有りません。自分は後1ヶ月程で軍を辞めますので」

 

「え、隊長は軍を辞めるのですか?」

 

「本当ならもう少し後で言うつもりだったんだがな」

 

そう、俺は軍を抜ける事にしたのだ。半年前にパトロール中に何度かデブリ回収業者とのやり取りをしていた時だった。偶々其処にいた社長から勧誘を受けたのだ。最初は拒否したのだが話が結構合ったのと、何度も勧誘を受け続けた結果軍を辞める事にしたのだ。

元々軍に居続ける事に意味を見出せなくなっていた。其処に再就職先の勧誘。モビルポット、モビルスーツ、戦闘機の操縦可能な人員は場所は選ぶが特定の所なら就職は出来る。

 

「そうか、それは残念だ。ならこれが最後の戦闘になるだろう。その時に君の実力を存分に発揮して貰う」

 

「了解しました。最後まで任務を全う致します」

 

「頼むぞ。それから、其処の2人に少し話がある。良いかな?」

 

アモス中佐は此方を見ながら言う。

 

「勿論です。それからジオン残党への攻撃は何時頃に?」

 

「5日後だ。其れ迄はこの艦に乗っていても構わんよ」

 

「いえ、自分は遠慮しておきます。何分抜ける身の上ですので。お前達は好きに選んで良いぞ。それでは自分は失礼致します」

 

最後に敬礼をして2人を残して行く。恐らく彼奴らはブリュッヒャーに残るだろう。何故なら憧れのティターンズとの交流も出来る訳だからな。その邪魔をする様な野暮な事はしないさ。そして俺はポプキンスに戻る為にジム改に向かうのだった。

 

……

 

アモス中佐はビューマン曹長とオールコック上等兵を連れて艦橋から別室へ移動していた。

 

「さて、君達2人を残したのは他でも無い。単刀直入に言おう。ティターンズに入隊したいか?」

 

アモス中佐は先程迄の軍人風然とした姿を消し、愉快そうな表情を浮かべながら問い掛ける。

 

「ティターンズに入れるんですか!」

 

「俺…自分も勿論入れるなら入りたいです!」

 

その言葉を聞きアモス中佐は小さく笑う。

 

「クックックッ…そうかそうか。誉高いティターンズに入隊したいか。なら私に協力しろ。それを今約束しろ」

 

「勿論約束します!自分は中佐の為なら何でもします!」

 

ビューマン曹長は間髪入れずに返事をする。それを見たオールコック上等兵も遅れまいと後に続く。

 

「自分もです。中佐に協力します」

 

「そうか。なら、貴様等に機体と武装を与える。それを使って、ある人物の機体を行動不能に陥らせろ」

 

「ある人物ですか?それは一体…」

 

ビューマン曹長の言葉を聞きアモス中佐は目標人物の名を口にする。

 

「貴様等の隊長、シュウ・コートニー大尉だ。絶対に殺すなよ。殺したら私が貴様等を殺すからな」

 

其処には狂気に満ちた瞳を抱きながら2人を睨むアモス・ベアリー中佐が居たのだった。




シュウ大尉「俺、この戦いが終わったら軍を抜けるんだ」

ガンダムの世界でフラグを立てるとは…\(^o^)/オワタ

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