宇宙世紀と言う激動の中で。   作:吹雪型

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エースパイロットVS捕らえる者達

第六感と言うのは非常に大事な物だ。確かな確証も無ければ唯の勘に従う行為。だが戦場で嫌な予感がした時、それに従う方が吉と出る事が多い。

一年戦争から鍛えられた第六感。例え戦場から身を離れたとは言え、軍人である以上そう簡単に腐らせる物では無い。常に任務を遂行し、シュミレーターでの訓練。そして任務中でのブースト全開の機動を行い成るべく腐らせ無い様にしていた。そんな第六感が俺に告げていた。

 

「妙に静かだ。いや、静か過ぎる」

 

艦隊からのミサイル攻撃と同時のミノフスキー粒子の散布。更に1小隊のモビルスーツの投入。そして相手にも見える様な派手な機動。これだけやれば普通なら相手は嫌でも反撃するだろう。だが反撃は無く沈黙したまま。

 

「どうなってる?一度母艦に帰還するか?だが彼奴らも探さないと」

 

デブリに隠れて思考する。だが良い考えが浮かぶ気配は無い。それに妙に嫌な予感がする。なんだか落ち着かないのだ。

 

「仕方無い。一度母艦に戻って索跡班を編成して貰うか。それに此処に長居したくない」

 

そしてジム改を移動させようとした時、遠くで一瞬光った。その瞬間背筋が引いた。俺は反射的にペダルを踏む。機体が上に移動した時二条のビームが迫って来る。そして左脚部に直撃し吹き飛ばしたのだった。

 

「び、ビーム兵器だと!?残党軍にそんな戦力が有るなんて!」

 

急いで機体をデブリの陰に入る。だが漸く掴んだ尻尾でも有る。そう簡単に逃がしたくは無い。

 

「左脚部をやられたか。だが逃がしはしないぞ」

 

デブリや岩石の陰に隠れながら移動する。時々反撃は来るが当たりはしない。そんな奴らを挑発するようにオープン通信を繋げる。

 

「偏差射撃が単調なんだよ。一度訓練学校からやり直せ!」

 

それに反応する様にビームが乱射される。そんな時、違和感を覚える。それはビームの色だ。基本的に地球連邦軍はピンク色、ジオン公国軍は黄色が多い。そして今撃たれてるビーム色はピンク色だ。

 

「まあ、面さえ拝めれば答えは出るか」

 

スピードを落とさず移動して行く。そしてモニターとレーダーに反応が出る。敵機は2機、識別はRMS-179と表示される。RMS-179は彼奴らが搭乗していた機体だ。

 

「まさか、お前ら…なのか?」

 

俺は静かに問う。違うと言って欲しい。いや、違うと言わないと行けないんだ。だが返信が来た時、それはアッサリ打ち砕かれる。

 

『流石元隊長なだけあって、逃げるのだけは得意の様ですね』

 

『サッサと機体から降りろよ。死にたくなければな』

 

ビューマン曹長とオールコック上等兵がビームライフルに装備を変えて此方に接近して来る。

 

「お前ら、自分達が何してるのか分かっているのか!こんな馬鹿な事をすれば取り返しの付かない事になるんだぞ!」

 

『そうならない為にもアンタには大人しくして貰うよ』

 

ビームライフルの銃口が此方に向いたのと同時に距離を取る為にデブリ内に突入する。

 

『またそうやって逃げるのか!この臆病者が!テメェなんざ隊長でもエースでも無い。唯の雑魚なんだよ!』

 

『無駄な抵抗はやめて下さい。大人しくした方が利口ですよ』

 

彼奴らの言葉を無視してデブリ内を移動する。だがこの辺りはデブリが多い。不意を突くチャンスは山の様にある。

 

(何が目的かは後から聞けば良い。今は戦闘に集中だ)

 

そして機体の射撃管制装置(FCS)を解除する。これで彼奴らをジム・ライフルで撃つ事が出来る様になった。そのままデブリの陰に隠れる。

 

『クソ!デブリが多くて見失うぞ!細かいデブリは無視して追うぞ』

 

『分かってる。機体性能はこっちが上なのに何で追い付けないんだ』

 

焦ってるのかオープン通信を繋いだままだ。ならこのまま陰に隠れて待ち続ける。そしてジムⅡが前を通る。此方はデブリの陰に隠れて簡単には捕捉されない。

 

『見失った?探せ!まだ近くに居るはずだ!』

 

『出て来い!クソ野郎!』

 

そして丁度目の前で止まる。その間にも俺の事を好き放題馬鹿にして来る。

 

(さっきから臆病者とかクソ野郎だとか好き放題言いやがってよ。今から覚悟しておけよコノヤロー)

 

そして一気にブースターを全開にして近付く。無論相手も此方に気付きビームライフルを向け発砲する。だがその距離でのビームライフルは間違いだぞ。

 

「間合いが甘い」

 

そう言ってビームサーベルでオールコック上等兵のビームライフルを切断。そのまま真っ直ぐに逃走する。

 

『野郎!やりやがったな!』

 

『逃すな!オールコック接近して奴を抑えろ!』

 

背後からビームが来るが回避して行く。その間にジム・ライフルに切り替える。そして追い掛けて来たのと同時に反転してジム・ライフルを構える。

 

「先ずはお前からだビューマン曹長」

 

ジム・ライフルでビューマン曹長のジムⅡを撃つ。ビューマン曹長は慌ててシールドを構えて防ぐ。その間に再び接近する。

 

『野郎!やらせるかっ!?』

 

「踏み込みが甘い」

 

オールコック上等兵はビームサーベルを振るうが、此方が銃口を向けるとスピードを緩めてしまう。その隙にビューマン曹長のジムⅡに接近。

 

『何簡単に抜かれてるんだよ!使えない奴め!』

 

『んだとお!?』

 

戦闘中に口論するとは随分余裕がある様だ。それらの会話を無視してジム・ライフルを仕舞い再びビームサーベル構える。ビューマン曹長は後退しながらビームライフルを撃つが、此処には障害物が沢山有る事を知らない様だ。

 

『しまっ!?デブリが!』

 

「先ずは1機」

 

『あ、あああああ!?!?』

 

ジムⅡがデブリにより止まった瞬間、ビームサーベルを突き出す。そして頭部を貫く。そしてビームライフルを蹴り飛ばし脚部をビームサーベルで切断する。最後にバックパックに60㎜バルカンを撃ち込み行動不能にする。

 

「さて、オールコック上等兵。大人しく投降すれば多少の罪は軽くなるぞ」

 

『ざけんな!俺はティターンズに入るんだ!こんな所で!』

 

ビームサーベルを展開して此方に接近する。だから此方もビームサーベルを展開して突っ込む。そしてお互いの距離が零になった瞬間、ジムⅡの右腕が切断される。

 

『そんなバカな!?』

 

「訓練から逃げる奴に負ける程、腕は落ちて無い」

 

そしてジム・ライフルに切り替えてジムⅡの手足を撃ち抜く。無論回避機動はしているが回避予測して当てて行くのだった。

 

……

 

大破したジムⅡはこのまま放置すれば漂流するのは間違い無いだろう。無論彼等を見捨てるつもりは無い。

 

「さて、お前達には色々聞きたい事は有る」

 

『……』

 

『クソ、クソ…こんな筈じゃあ…』

 

ビューマン曹長は沈黙、オールコック上等兵は悪態を続けるばかり。そんな彼等に一言だけ言っておく。

 

「幸いにも一番知りたい事は知る事が出来た。お前らが黙り続けても意味は無いからな」

 

『っ!そ、そんな』

 

『ふざけんな!そんなの嘘だ!』

 

喚き続ける2人を無視して本命が来るであろう方へ視線を向ける。ジム・ライフルの弾をリロードして暫く待ち続けるとモニターに反応が出る。俺は其方に向かい近付く。すると向こうから通信が来る。

 

『ほう、これはこれは。コートニー大尉無事だったか』

 

「ええ、無事でしたよ。幸いにも残党軍は居ませんでしたからね。ティターンズの情報網も当てになりませんな」

 

俺はアモス中佐を挑発する様に言う。しかし、アモス中佐はそんな言葉を軽く流し平然としていた。

 

『フフフ、耳が痛い言葉だね。所で…君の僚機はどうなったのかな?』

 

やはりと言える。寧ろ意外にもストレートな言い方に関心すら覚える。

 

「唯の連邦兵を気遣うとはね。アモス中佐は懐が深いのですかな?」

 

『答えたまえシュウ・コートニー大尉。奴等はどうなったのかと聞いている』

 

「現在近場で待機中ですよ。序でに最低限必要な情報も言ってくれましたからね」

 

そう言った瞬間アモス中佐の雰囲気がガラリと変わる。そう例えるなら殺気立つ獣が一番近いだろう。

 

『ほう…それはどんな情報かな?』

 

「手前が俺の部下を先導した証拠だよ。これだけ言えば充分自分の立場が理解出来ただろ?」

 

アモス中佐はストレートな言い方をして来た。だから俺もストレートな答えを渡してやった。先程の戦闘でオールコック上等兵がティターンズへの入隊と言っていた。そしてそんな無茶が出来る人間は目の前に居るアモス・ベアリー中佐以外居ない。お互いの通信は痛い程沈黙している。すると小さく笑い声が聞こえる。この場ではとても不釣り合いな笑い声。それが通信から聞こえてくるのだ。

 

『そうかそうか。なら覚悟は出来てるのだな。シュウ・コートニー大尉?』

 

その言葉と同時にハイザック3機は銃口を此方に向ける。

 

「その言葉は鏡に向かって言うんだな。アモス・ベアリー中佐殿?」

 

そして次の瞬間ハイザックの銃口から火が吹くのだった。

 

……

 

再び戦闘が始まる。そして相手は優秀な連中が多く所属するティターンズ。更に新鋭機であるハイザック4機を相手にだ。

 

『各機、奴は手負いの機体だ。だが油断はするな。こんな場所で燻ってる奴だが歴戦のエースパイロットだ』

 

『『『了解!』』』

 

通信から聞こえる言葉は中々嬉しい事を言ってくれる。正直そう言って貰うのは嫌いじゃ無い。

 

「アモス中佐!中々気分の良い事言ってくれるじゃないか!ならエースの実力を存分に味わってくれよな!」

 

俺はジム改のリミッターを解除。更に加速をしてデブリの中を移動する。左脚部を損傷した為スピードは落ちる。だがデブリの中を移動するのはティターンズと言え苦戦していた。

 

『何て奴だ。中佐の言う通り奴はエースだ。ブラーサ1より各機、気を抜くな。手負いの奴程無駄に足掻くからな』

 

『ブラーサ2了解。俺は上から攻める』

 

『ブラーサ3了解。ならブラーサ1と共に奴を抑える』

 

『よし、行くぞ。多少のデブリ片は無視しろ。上手く追い詰めれば行ける。アモス中佐、此処は我々にお任せ下さい。中佐はあの2人の捜索をお願いします』

 

『なら此処は貴様等に任せる。頼んだぞ』

 

ブラーサ小隊は二手に別れて行動を開始。そしてアモス中佐はビューマン曹長とオールコック上等兵を探し始める。そんな中、俺は戦い易い場所を見つけて陣取る事にする。其処はマゼラン級、サラミス級等の艦の残骸が多数漂っている。

 

「さて、この辺りで良いだろう」

 

そして補足し易い様に仁王立ちになる。それに対し向こうも理解したのか攻撃を開始する。

 

『各機行くぞ。奴を捕獲する。攻撃開始!』

 

ビームライフルとザクマシンガン改からの攻撃が来る。それに対し回避しながら反撃する。

 

「そう言えば聞いた事あるよ。ハイザックてさビーム兵器同時使用出来ないんだっけ?お前ら下っ端にはお似合いの機体だな!流石ティターンズ様だよ!」

 

『貴様!調子に乗るな!』

 

更にミサイルポッドからミサイルが放たれる。それらの攻撃はマゼラン級に直撃し誘爆を発生。更に機関部に被弾し爆発を引き起こす。その爆発に紛れる様に機体を突入させる。

 

『来るぞ!野郎頭のネジが外れてるな』

 

『普通回避したりするだろうが!』

 

ビームライフルとザクマシンガン改を撃つ。その攻撃を最低限の動きで回避しながらシールドを前に構える。そしてシールドに多数被弾したのと同時にシールドをパージ。そのままAMBACを行いシールドを蹴り飛ばす。そしてシールドが吹き飛んだのと同時に上に移動しジム・ライフルを構える。

 

「補足した。受け取れ」

 

俺は躊躇無くトリガーを引く。弾はハイザックの頭部に命中。更にザクマシンガン改を破壊する。

 

『グワッ!?畜生!』

 

『ブラーサ3下がれ。これ以上近寄らせはしない』

 

仲間を庇う様に動きビームライフルを撃つブラーサ1。その時ブラーサ2が更に上から接近する。

 

『上を取ったぞ!』

 

ザクマシンガン改の弾幕が再び此方を襲う。俺はそのままの勢いのままサラミス級へと向かう。

 

『逃すかよ。俺達ティターンズを舐めた事を後悔させてやる!』

 

サラミス級の陰に隠れる。そして再びAMBACとブースターで反転。更にデブリを踏み台にして加速を付ける。そして左手にビームサーベルを展開して突っ込む。

 

『これで終わっ!?何っ!』

 

「予測が甘い」

 

そのままハイザックの両腕を切断。更にバックパックも斬り裂き動きを抑える。

 

『ブラーサ2!貴様、これ以上好きにさせるか!』

 

ビームライフルで追撃をするブラーサ1。だが俺は逃げる事なく突撃をして行く。

 

「もうビームライフルの間合いじゃ無いぞ!」

 

『舐めるなああああ!!!』

 

ビームライフルを放棄してヒートホークを構えて突撃をするブラーサ1。そして交差する直前に60㎜バルカンを頭部に向かって撃つ。一瞬動きが止まるブラーサ1。だがそれは最悪の選択だ。そのままハイザックの右腕を斬り裂く。そしてジム・ライフルで脚部を撃つ。それでも悪足掻きをする様にミサイルポッドからミサイルを放つ。それを回避しながら60㎜バルカンで迎撃する。

 

『中佐、申し訳有りません』

 

「後1機。何処だ、何処に居る?」

 

俺はアモス中佐を探す為機体を動かしながら再び弾倉を変える。予備弾倉はこれで終わりになるが充分だ。その時だった。4時方向で2つの爆発を確認する。だがあの場所にはビューマン曹長とオールコック上等兵が居た筈。

 

「まさか、口止めに殺したのか」

 

其処で爆発が起きたと言う事と現状を鑑みた結果の答えだった。




やっぱり戦闘描写は難しいね(小並感)

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