夢、記憶の中にある夢だろうか。家族と共に過ごし、将来を誓い合った女性と一緒に居る夢。この幸せが一生続くと信じていた。だが、あの日コロニーが全てを吹き飛ばした。家も家族も愛する人も。何もかも。
ジオンを憎め。ジオンを殺せ。ジオンに慈悲を与えるな。ジオンを生かせば同じ事をする。スペースノイドに自由を与えるな。奴等は悪だ。悪に自由を与えれば悲劇が起こる。
仇を取るのだ。愛する者達の為に武器を取るのだ。その為の器は用意している。さあ、己の正義を持ち悪に対し容赦無き鉄槌を降すのだ。
(違う…違う違う違う!こんな記憶は知らない!俺は…俺は……分からない。俺は一体誰なんだ!!!)
……
宇宙世紀0085.3月15日。オーガスタ基地
オーガスタ基地の地下研究室では捕獲した3人の調整が行われていた。彼等は頭に大型のフルフェイスヘルメットを被り座った状態になっていた。
「ブラックモア博士、2番目が再び拒絶反応を示してます。しかし前回より抵抗力は落ちています」
「ふぅむ。このままでは廃人確定だな。折角良い素体が手に入ったと言うのに」
ブラックモア博士はやれやれと言った雰囲気を出しながら指示を出す。
「再度マインドコントロールを行え。そうだな…マインドコントロール中に私が少し話し掛けよう」
「は?話し掛けるですか?それでは上手く出来なくなると思うのですが」
「確かにな。だが2番を簡単に死なせたくは無い。1番と3番も中々だが2番はそれ以上の身体能力を持っている。現にこの環境に身体は適応しつつ有る。後は理性の方を抑えれば行ける筈だ」
「分かりました。マインドコントロール再開します」
そして再び実験が再開される。それと同時にブラックモア博士は2番に話し掛ける。
「よく聞くんだ。お前は今日新しく生まれ変わるのだ。そしてその流れに身を任せれば良い。そうすればお前は死ぬ事は無い。お前は知っている筈だ。戦場で生き残る戦いをしていたお前なら」
ブラックモア博士の言葉に反応を示す2番。
「さあ、生き残れ。この環境で生き残る方法を選べ。そうする事が最良の方法だと言えよう」
そして2番のマインドコントロールは最終段階に入る。
「2番目の調整は今の所順調です。まさかこうも上手く行くとは思いませんでした。流石ブラットモア博士です」
助手の1人が博士を褒める。それに対しブラットモア博士は饒舌になる。
「2番の勘は鋭い。流石は一年戦争から生き残って来た者だ。それ故に死には敏感だ。極め付けに此奴は幾度となく死に掛けたのだ。人一倍死に対する恐怖心は強い」
それは戦士に対する皮肉だろうか。戦場で無い場所でも生き残ろうとする彼を嘲笑うかの様に言い放つ。
「生き汚いと言える存在だからこそ、この実験には丁度良い素体なのだよ」
その言葉に2番目は反応を示す事は無かった。
……
宇宙世紀0085.12月25日。
オーガスタ基地の研究者達は着々と強化人間の調整を済ませていた。そして彼等が搭乗する機体の完成も間近となっていた。そんな中、アモス・ベアリー中佐はブラックモア博士の元に赴いていた。
「失礼するよ。ブラックモア博士は居るかな?」
「これはベアリー中佐、如何されましたか?素体の調整はほぼ完成してますよ?」
「素体の調整は勿論だが、此奴らは何時になったら使える様になるのだ?」
アモス中佐はブラックモア博士をひと睨みしながら言う。
「勿論通常機での使用も可能です。しかし、もう少しお待ち下さい。そうすれば新しいシステムが完成します」
「その新しいシステムとやらは何時完成するのかと聞いているのだ!ロイ・ブラックモア博士!何も成果を出せぬ研究に何時までも上層部は黙ってはいないぞ!」
アモス中佐は血管を頭に浮かべながら叫ぶ。それは彼自身が多大な苦労をしているのに関わらず、何も成果を掲示しないブラックモア博士らに対する憤りだ。
「大丈夫です。基礎の部分は完成しています。此方をご覧下さい」
しかしブラックモア博士は動揺する事無くリモコンを弄る。そしてモニターに映し出されるのは新システムの理論値だった。
「このオーガスタ基地は一年戦争時に中々ユニークな研究をしていました。一つは【EXAMシステム】。そしてもう一つが【ペイルライダー計画】の【HADES】です」
そして同じ様に数値とグラフが並べられて行く。それを黙って見続けるアモス中佐。
「先ずEXAMシステムは決定的な欠点が有りました。それは戦場に於いての暴走により敵味方問わず攻撃をしてしまいました。まあ、最終的には適合者が居た為運用され続けましたが搭載機は戦闘により消失。更にEXAMシステムの再構築が不可能になってしまいました」
ブラックモア博士は手でグラフを弄り次の内容に移して行く。
「次にHADESですが、所謂人間型CPUと言えるでしょう。然も搭乗者は多大な負荷が掛かり、記憶障害を起こしてしまいました。更に悪い事に関連施設も何者かにより破壊されてしまい、殆どは残っておりません」
「ならどうやって新システムを作り出したのだ?二つ共消失してるでは無いか」
「ご安心下さい。初期理論に関しては私は熟知しております。何せ…私も少なからず関わっておりましたので。そして今回の新システムのベースになってるのはHADESになります」
ブラックモア博士の言葉にアモス中佐は驚きを隠せなかった。何故ならオーガスタ基地でのニュータイプ研究関係の資料は本当に限られた者のみにしか見る事が出来ないからだ。にも関わらず、その一部を知る人物が目の前に居る事に驚いたのだ。だが、その感情を抑え話を進める。
「HADESだと?それでは記憶障害が起こるのでは無いのか?私の部隊は素体の介護をするつもりは無いぞ」
「ご安心下さい。あくまでベースの部分のみです。そしてシステムは非常に単純な物になっております」
そしてグラフ、数値、映像を映し出して行く。
「今迄のシステムは無駄が多かったのです。ですが人を殺すのに複雑なシステムは必要有りません。それこそニュータイプ何て存在は必要無いのです。私は考えた結果、ある結論に至りました。要は相手の攻撃が見えれば良いのです。その為に多少の負荷は掛かりますが…まあ、理論上は問題有りませんので」
其処には映像が映し出される。その映像を見てアモス中佐も納得といった表情になる。
「成る程な。ん?このシステムの名前は何だ?」
「ああ、名前ですか。【Zeit Erweiterung】で【ZEシステム】になります。あ、因みにドイツ語から取りましたよ」
「何処の語源でも構わん。しかし【時間拡張機能】か。大方予想出来る名称だな」
「はい。相手の攻撃、動きを見える時間の中に居る。つまり、より正確で精密な攻撃が可能となっております。更にその時間軸が広がった世界を有効活用出来るのが歴戦のエースと言う訳です」
ブラックモア博士の目に狂気や憎悪は映し出されてはいなかった。寧ろ純粋に過程と結果を追い求める研究者其の物である。
「そして、それを可能とした機体も完成しております」
「何?機体は完成しているのか」
「はい。機体はRGM-79Qジム・クゥエルになります。あの機体は良好な状態が多いので入手するのに苦労はしませんでした。それに改修するのに一番適した機体でもあります」
そしてモニターにはジム・クゥエルに近いシルエットの機体が映し出される。だが所々改修されていた。
「そしてベース機はあの有名な最強のニュータイプと言われたアムロ・レイに渡される筈だった機体です」
「アムロ・レイ。最強のニュータイプと言われてる奴だな。そのニュータイプに渡される筈だった機体…まさか」
アモス中佐はブラックモア博士を見る。それに対しブラックモア博士は頷く。
「そうです。【RX-78NT-1】通称ガンダムアレックスになります」
一年戦争末期に開発された機体。ニュータイプ以外扱う事は困難だと言われてる機体。そのコンセプトを受け継ぐ機体が3機格納庫に鎮座されていた。
やったね!パイロットがパワーアップ出来るよ!(強制的に)
やったね!ジム・クゥエルがガンダム並のパワーを手に入れるぞ!(尚一年戦争末期の奴)
やったね!……特に無いや←
後更新は暫く止まります。