「ん...もう朝か」
旅館の部屋でずっとあの時の玲君のことを考えていた。直接は見ていないが、傷に痣だらけの体。昨日旅館で出会った玲君が前にいた高校のクラスメイト。小学校の頃から小学校卒業まで、ずっと一緒にいた玲君のことを私は知っているようで、少しも知らなかった。
「...」
「...んぁ? もう朝ー?」
「...あぁ、おはよう。千秋」
私の隣で寝ている千秋が目覚める。その目は細く、髪もボッサリしていた。
「ほら、起きて、工藤さん」
「んん...」
起床時間まで、あと一時間あるが、女は色々と身支度があるのだ。ぐっすりしている工藤 優理那(くどう ゆりな)さんを起こす。全然起きそうにないけど。
「あぁー...わたしに任せろ」
そう言って、千秋は工藤さんに馬乗りに工藤さんの両頬をつまみ、
「せいっ!」
「んぐぐぐぐぐ!!」
(うわー...痛そ)
両側へと思い切り引っ張る。超痛そう...。
「痛い...」
「これが最善策でしょ」
「ほら!早く色々整えないと!」
「ふぁ~い...」
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「それで? 昨日のことはどうだったの?」
「ん? 昨日って?」
「昨日のお風呂で聞いたやつ。あれ私も聞こえてたんだよね」
「...そう」
「都神君、密かにいじめられてたりして」
「そ、そんなこと...」
無い。とは言えない。実際私だってずっといた訳じゃない。もちろん、この学校でいじめられた訳じゃないのかもしれないし。
ふと、昨日出会った男子2人を思い出す。
「もしかしたら、あいつらが」
可能性はある。前の学校にいた時に何か弱みを握られたのかもしれない。
それが辛くなって私のいる学校に転校してきたのかもしれない。
「ふっふっふっ...」
「なに?その不敵な笑みは」
「その謎を今から解明してやりましょうぜ...」
「あんたは何でそんなに私の考えが分かるんだか...」
「今日の朝ごはんもバイキングかな」
「...」
工藤さんはこう...天然である。そこが可愛いって言う男子生徒もいるようだけど。
「ま、まぁとにかく...今日でどうにか玲君の秘密でも...」
「おういぇい」
「朝はやっぱりご飯だよね」
「...」
この子、アホな成分もある...?
____________。
「あ、おはよう」
「おはよう。心奏」
朝ごはんも食べ終わり、玲君、奈夜君、勇吾君と出会う。
「よおー...玲...」
「...またあいつか...」
あいつ。というのは昨日出会った不良の霧生である。
「昨日はやってくれたなぁ...」
「別に? やられ足りないなら、また技を掛けてもいいけど?」
「...ちっ!!」
霧生はバツが悪いように振り返り、歩いていく。
「ねぇ...玲君?」
「ん?」
「その...さ。向こうの学校で何かあったのかなーって...」
「んー...あいつが人の彼女を寝取りまくったって事ぐらい?」
「そ...そうじゃなくて...玲君にあった事っていうか」
「僕に? ...何もなかったかなぁ」
「...そう」
...嘘だ。 断言出来ないけど、なんとなく、今の玲君は嘘をついている。玲君の汗でも舐めてみるか...? いや、どこのギャング組織のチームリーダーだ私は。
「じゃあ、行こうか」
「ん...うん」
...玲君の傷の理由を、後で聞かないと。というか、知らないといけない使命感を感じる。
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「うおー! スゲー!」
「来て早々はしゃいでるな勇吾」
「当然だろ! こんなスゴイのここでしか見られないんだろ!?」
「まぁ...僕もこういう所は初めてかな...」
やって来ました水族館。私達は今、水族館でイルカショーを見ております。イルカめっちゃ可愛い。
「可愛い...」
工藤さんも見とれていらっしゃる。
...と、そうじゃなくて。玲君のことについて、色々聞かないと。
「ねぇ、玲君?」
「ん?」
「その...昨日の...冷たぁ!!」
「だぁぁぁ!!」
急に水しぶきが飛んできて、私たちに水がかかる。今冬だぞ。一番前の席に座った私たちも私たちだけど。
「...死ぬ...」
「やばい! このままだと玲君が凍え死ぬ!」
「とりあえず室内いくぞぞぞぞ!!」
「呂律が可笑しいぞお前...」
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「あー...生き返る...」
自販機で買ったホットココアを飲み、体を温める玲。その光景を見ている心奏は玲に、
「玲君?」
「ん? あー、ココアありがとう。お金は後で返すよ」
「そうじゃなくって、その...」
「よっしゃ! 玲!次行くぞー!」
「えぇ!? まだ飲み終わってないんだけど!!」
「...」
なんかタイミングを見計らって居るように邪魔が入る。知るなって事なのかな...。
「ねぇ...千秋」
「んー?」
...どうにかして、玲君から聞かないと。
「...玲君と2人きりで話がしたいんだ。だからさ...」
「あー...わかった。とりあえず奈夜君と勇吾君を連れてけばいいんだね?」
「...相変わらず私の心を読むのが上手いね」
「まぁ、読みやすいから」
「そ...」
「おーい!!心奏ー!」
「ん?玲君?」
突然、玲君が私たちの元へ戻ってきた。玲君の右手には、小さな紙で包まれた箱を持っていた。
「ごめん。昨日渡そうと思ってたのに、どう渡せばわからなかったから...」
「え?え?」
玲君が持っていた箱を、私に手渡す。
開けてみると。
「...ネックレス?」
「うん。文化際の日から、発注したものが、一昨日届いてさ。良かったらつけて欲しくって」
「でもこれ、高かったんじゃ...」
「まぁね。でも予算は足りてたから。...ネックレスは嫌だった?」
「そ、そんな事...じゃあ、付けてみるね」
玲君から渡されたネックレスを首に飾る。ネックレスについている飾りがとても綺麗なハート型で、玲君が考えたものだと思うと、心が踊る。
「似合ってるよ。よかった」
「おふたりさん、お熱いねー」
「か、からかう暇があるなら勇吾君達を追いかけてよ!!」
「はいはーい」
そう言って、千秋が勇吾君達の向かったところへ走っていく。
「...僕達も行こっか」
「うん...」
手を繋いで、歩き出した瞬間。
「んぐ!」
「ん...!」
突然、背後から襲われ、口元をハンカチで押さえつけられた。ハンカチに睡眠薬でも付いているのか、私たちはそのまま気を失ってしまった。
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「ん...」
「あ、起きた」
「おーい!霧生!」
「あー...やっと起きたか」
「...!!」
目を覚ましたそこは、薄暗い部屋だった。5人の男が私を囲んで立っている。
「ん、んー!」
ガムテープで抑えられているのか、喋ることが出来ない。腕と足もロープで縛られていて、身動きをとることが出来ない。
「んじゃあ、始めっか」
「痛!」
口元のガムテープを思いっきり剥がされる。とても痛い、痛いし怖い。
「な、何を...!」
「ん? 何って...」
そうして、霧生という男は、私の服を掴み、
「お前を虐めるために決まってるだろ?」
...私はその恐怖に体を震わすことしか出来なかった。