「ん...」
目を覚ます。 辺りを見渡すと、薄暗く、身動きが取れなかった。
「くそ...」
不覚だった。後ろをつけていた霧生達に後ろから睡眠薬で拘束されるとは。
...多分、隣にいた心奏も襲われたはず。 近くから声が聞こえないから、恐らくどこかに連れていかれたのだろう。
...とりあえずどこかにロープを切れるものは...。
「あ」
思えば、ここは見たことがある。旅館の部屋だ。水族館はこの旅館の近くにあるから、きっとその場で寝てしまった僕を旅館まで連れてきたって感じか?
「これは...」
部屋の壁際にあった瓶。酒の臭いがすることから、ビール瓶だということはすぐにわかった。中身は無い。きっと昨日の夜に飲んでいたのだろう。
「未成年だろあいつら...とりあえずこれを毛布で包んで...」
包んだ瓶を壁に叩きつける。
瓶の破片を使ってロープを切る。
「しょっ...と」
とりあえず拘束を解くことは出来た...問題は...
あいつらがアレに気がついたかどうかだ...。
玲はスマホの画面を開き、目的地へ走りだした。
________。
「ぐ...んん!!」
無理やり服を脱がそうとする霧生の手を体を捻らせて抵抗する私。
「ほら...おとなしくしろ...よ!!」
「がっ!!」
お腹に霧生の鋭い一撃。あまりにも重い一撃に、私は胃からの逆流物をそのまま吐き出した。
「ゲホッ!!ゲホッ!!」
「おいおい汚ねーなぁ...おい!押さえつけろ!」
「なっ!離して!」
肩を押さえつけられ、ほとんど身動きがとれなくなった私。...遠くの方から足音が聞こえる。
「おー、きたきた。...お楽しみはこれからだぜ...?」
「がっ!」
「ぐほっ!!」
「あー、やーっと着いた...」
ドアの向こうから出てきたのは、玲君達だった。
...私を助けに来てくれたの? でもどうしてここが?
「さーて...どうする?」
「ん? 半殺しでしょ?」
「笑顔で怖いこと言うな...」
「て、テメェら!何でここが!」
「んー...超能力?」
「わけわかんねえ事いってんじゃあねぇぞ! ...テメェら!やっちまえ!!」
どこにいたのか、10人程の男が玲君達に向かう。その瞬間。
「ぐぁっ!!」
「抵抗するの辞めたら? 警察だってもうこっちに向かってきてる」
1人の男が吹っ飛んだ。玲君が蹴り飛ばしたらしい。
「勇吾...何人いける?」
「んー...人数も人数だからなぁ...」
「じゃあ、奈夜君と一緒に後ろの2人を守ってて」
「は? まじで?」
「うん...こんなヤツらには負ける気しないよ」
「おらぁ!!」
もう1人の男が、玲君に向かって鉄の棒を振り下ろす。玲君はそれを腕で防御して、鉄の棒を奪い、男を殴る。
「ぐはっ!!」
「君たち、殺す気ゼロでしょ。優しいんだか優しくないんだか...」
「がっ!!」
「だぁ!!」
1人、もう1人と霧生の仲間が倒れていく。そして...。
「嘘...」
「まじで1人で...」
「さっすがー...」
「嘘だろ...おい!」
霧生の仲間達はなす術なく、全員倒れていた。残すは霧生のみ。
「さてと...どうされたい? 歯を全部引っこ抜くか、指を全部千切られるか、それとも海のど真ん中に落とそうか?」
「くっ...くそがぁ!!」
「...あ! 危ない!!」
懐からナイフを取り出し、玲君に向かう霧生。
「まぁ...とりあえず獄中生活でも送ったら?」
玲君は涼しい顔で、霧生の顔を蹴りつける。そのまま霧生は膝を震わせながら倒れていった。
_________。
「...それじゃあ、君達2人は旅館に返すけど、こういうことに巻き込まれないように注意してね」
「...はい」
「わかりました」
あの後、警察が来て、霧生達16人を連れていった。その際僕たちは事情聴取として、警察についていくことになった。
今、旅館に着いた所。
「ねぇ...玲君?」
「今日は君に呼ばれてばっかだね...どうかした?」
「その...どうして私の居場所が?」
「んー...企業秘密」
「...玲君は私には何も教えてくれないんだね...」
「...」
「...どうして教えてくれないの?」
「...逆に聞くけど、君は知りたいの?」
「うん。私、玲君のこと、何一つ知らないんだもん」
「...後悔しない?」
「うん...」
「って...もうお風呂の時間じゃん。話は風呂の後で...」
「ダメ、今聞かせて」
「い、今から入らないと間に合わないよ?」
「じゃあ、お風呂で聞かせて!」
「What?」
「だから、お風呂で聞かせてって言ってるの! その...玲君の体の傷も気になるし...」
「随分大胆だね...わかったよ...」
どうせ引き下がらなそうだし。
「ほんと!? やったぁ!!」
僕の裸を見れるとわかって、ぴょんぴょん跳ねる心奏。正直見られたくないけど...。ていうかそんなに見たかったのか...?
...まぁ、心奏に話せば、僕のこの傷の痛みも無くなったりするのかな...?