ヤッホーみんな!みんな大好き心奏だよー!
え...? 呼んでない?...そう...。
え? 何でそんなにハイテンションなのかって?いやー、当然ですよ。今から好きな人と混浴するのですから!
...え? 混浴って何かって? えーと、混浴と言うのは、男女が同じお風呂に入ることで、日本独自の入浴週間って思われがちなんだけど、ドイツをはじめとして、北欧とか東欧諸国でも見られる習慣なんだって。(Wikipedia参照)
...ということなんだけど、今私と玲君は脱衣所にいます。この旅館には混浴風呂があって、私たちはそこに入ろうという訳で。
「...ほんとに入るの?」
「うん」
「じゃあ、目を瞑ってて、僕から入るから」
「...逃げないでよ?」
「逃げないよ。ほら、目瞑って、5分後に来て」
「ん...」
目を瞑ってしばらくすると、ドアの開く音がした。服を脱いで入ったのだろう。
「5分...と」
5分待って、いざ出陣。
ドアを開けると、玲君しかおらず、大浴場の隅に玲君がお湯に浸かっていた。
「玲君...」
「...体と髪を洗ってから入りなよ?」
「う、うん」
シャワーの前に座って、体と髪を洗う。
「...」
チラッと玲君の方を見る。
玲君は女性の人のようにタオルを巻いていた。私に体を見られないようにしているためだろうか。
キュッ
体も洗い終わり、玲君の隣に座るようにしてお湯に浸かる。
「...」
「...」
...気まずい。
一緒に入ろうと言ったものの、何を話せばいいのかわからない。
「あの...」「あの...」
「あっ...」「あっ...」
「...」
「...」
言葉を発せたと思ったら、まさかの同時。またの沈黙。
「ねぇ、心奏?」
「ん?」
玲君が私たちの沈黙を破る。
玲君の言葉に私は耳を傾ける。
「僕は、君のことが好きだ」
「うぇぇ!? い、いきなり何!?」
「前にもいきなり言ったことあるけどね...まぁとにかく、君のことが好き。 ...だからこそ、心奏に知ってもらわないとなのかな?」
「...」
「よっ...と」
玲君は静かに、自分に羽織っているタオルを外す、外したそこには...
「嘘...ひどい」
「どう...かな。だいぶ昔に付いたもののはずなのに、まだ痛いんだ...」
「そんな...」
異常なまでの数の痛々しい傷に、痣。火傷の跡なんかもあった。むしろ、綺麗な肌を探すのが難しかった。
「はは...思い出したくないのに、時々痛むから、忘れようにも忘れられなくってさ...」
傷のない綺麗な玲君の顔が玲君の涙で濡れる。
「一体なんで...」
「それは...」
「...」
________________。
「ふん!」
ドゴッ
ある部屋から、何かを殴る音が聞こえる。1階からずっとする音は、2階にいる2人の女性をそれを聞いて体を震わせていた。
「ゲホッ!」
「ガキが親に文句垂れてんじゃあねぇ!」
「ガッ!!」
父親に殴られている少年____都神 玲は酒を飲んでばかりの父親に、「お父さんはどんな仕事をしてるの?」と質問をしたところ、逆上した父親に殴られている。
「何も出来ない能無しのガキが、偉そうに口出してんじゃねぇ!」
「ごぼ!」
腹を殴られ、玲の口から逆流物が床に吐き出される。
「おいおい汚ねーなぁ...」
「げほっ...げほっ...」
「...」
すると、どこから持ってきたのか、野球のバットを持ち込み、玲の背中、腕、腰に叩きつけた。
「あぁぁ!!」
「叫ぶんじゃねぇ!」
口を押されられる。
そのまま突き飛ばされて、
「これに懲りて次からは余計なことを口出しするじゃねぇぞ」
「...」
「返事は?」
「...うん」
ドゴッ!!
「...あぁぁ!」
バットで左肩を殴られた。フルスイングで。
「返事ははいだろ?」
「は、はい...」
「よーし、それでいい」
玄関のドアを開ける音がする。タバコを買いにでも行ったのだろう。
「...う、ぐ...」
「玲!」
「玲...ごめんなさい...私が止めるべきだったのに...」
2階から姉と母が降りてくる。すぐさま母が玲の傷を確かめる。左肩は腫れ、所々痣が出来ていた。
「...救急車! 秦!救急車呼んで!」
「う、うん!」
「おい...」
「!!」
母の後ろから、野太い声がする。恐る恐る後ろを振り向くと、父が鬼のような顔をし、立っていた。
「あ、あなた...!」
「何勝手に呼ぼうとしてんだ!」
右手のバットで思い切り母を殴る。部屋は頬を殴る音が反響する。
「いっ...!」
「お父さんやめて!!」
「うるせぇ!!」
玲を庇うために立ちはだかった秦を蹴り飛ばす。秦はそのまま母の方へ飛んでいった。
「ちっ!! 胸糞悪い!! 酒とタバコでも買ってこい!!」
「...」
母はそのまま立ち上がり、財布を持ち、ドアを開けて出ていく。
「...」
「あーくそ! 玲!もう1発殴らせろ!」
「...!!」
父が拳を振り上げ、玲へと振り下ろす。
ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!
「あぅ...!!」
「おら!おら!おら!」
部屋には玲を殴りつける音と、秦の泣き声しか聞こえるものがなかった。
玲達の母親が帰ってくるまで、その音は鳴り止まなかった。