「うっ!!」
背中に父からの一撃。
あの日以来、父は気に入らないことがある事に玲に暴力を振るっていた。
玲もそれに対して慣れ始めていた。顔を殴りつけないだけまだマシだと思っていた。顔なんかに殴られた跡があったら学校の方が騒ぐと考えたのだろう。とにかく父は玲の服で隠れるところばかりを殴りつけていた。酷い時はドライヤーで体の一部を焼いていた。
「あ...ぐ」
「はぁ...はぁ...」
気がすんだのか、玲を放って自分の部屋へと戻る。玲の姉、秦と玲の母はそれを見ていることしか出来なかった。それが3年間続き、ある日。
「おい! 誰だ! 警察に言いやがったのは!」
突然、家に警察が訪問し、父を連れて行った。
「...」
「...ねぇ、お母さん?」
「玲、秦。ここから引っ越すわよ」
「...どうして?」
「あの男とは、もう住まないから...」
玲が虐待を受け続け、我慢の限界が来たのか、父からの報復覚悟で母は警察に連絡した。
父は署へと連れていかれ、そのまま父と母は離婚し、荷物をまとめ引っ越し、僕達も学校を転校した。
___________。
「今日から、暁島小学校で勉強することになりました。都神玲です」
「はい!みんな仲良くね。席なんだけど、あそこでいいかな?」
「はい...」
担任の先生が指さした先は、ある女の子の席の隣だった。玲は周りを見ずに席へ座る。
「...」
「隣か...よろしくね」
「...うん」
隣の席の女の子_______楠心奏は玲の方を見ず、俯いたまま、返事をした。
_____________。
「そんな所かな...」
「それで...何で私を助けたの?」
「...ほっとけなかったから」
玲君の話は終わり、もう一度玲君の体を見る。いつ見ても痛々しい傷だった。
「ほっとけなかったって...どういうこと?」
「そのまんまだよ。一方的に苛められるのを見ていたくなかっただけ」
「...」
確かに、私は3年生に上がってからは苛められていた。給食の時にカレーかけられたり、授業中に椅子蹴られまくったり。
結構ねちっこいものだった。
「担任の先生なんかも君のことを苛めてたしね」
「あー...うん」
思い出したくない記憶。そんな最悪な時間の中にいる私を玲君は救ってくれた。
「まぁ...そんな感じだよ。僕の傷のことは」
「そっか...あ、じゃあさ」
「ん?」
玲君の話を聞いて、もう一つ疑問が出来た。
「それなら何で小学校卒業の時に転校したの?」
「あー...それも聞いちゃう?」
「あ...まずいこと聞いた?」
「...まぁいいか...ざっくり言うと、母さんが死んだから」
「へ?」
「出所した父親に殺されたんだ」
「そんな...」
「それで身寄りが無くなったから母方の祖母の家に預かることになったんだ。そこがかなり遠い地域だったから、転校することになったんだ」
「...」
驚きだった。母親を亡くしていたなんて。それを話している玲君は、途中から涙を流していた。
「ぐす...ひぐ...」
何かを言おうとしても、言葉が出ないようだった。私はただ玲君の嗚咽を聞いていることしか出来なかった。
...あるじゃあないか。
...今の私にしか出来ない事。
「...!? 心奏?」
「...1人で、寂しかったんだよね? もう、大丈夫だよ? 私が、いるから」
私は玲君を抱きしめた。力一杯に。
「...」
「もう、独りぼっちは、寂しいもね。これからは、私が一緒だから」
「...ぐす、うぁぁぁぁ...」
優しく慰められた玲君は、声を上げて泣き出した。
___________。
「...落ち着いた?」
「...うん」
あれから5分。泣き止んだ玲君は顔を赤くして、私の方を見ないように俯いていた。
「どうしたの?」
「いや、その...胸が...」
「あ...」
...。
......。
.........。
「玲君のえっちぃぃぃ!!」
自分のやったことに気づいて一気に顔を赤くし、玲君を思いっきりビンタしてしまった。
「いっだぁぁぁぁぁ!!」
その日、混浴風呂から1人の男の子の叫び声が聞こえたという。