「あいだだだ...」
「え、と、ほんとにごめんね?」
「いや、いいよ...よくよく考えたら付き合ってまだ2ヶ月もしないうちに混浴風呂っていうのg...」
「だにぃ!? 混浴だとぉ!?」
「あ、面倒くさそうなのがきた」
翌日。
修学旅行も終わり、帰りのバスで昨日のことで玲君と話をしている時に、後ろの席についていた勇吾君が話に割り込んでくる。
「貴様、楠さんと混浴しただとぉ!?」
「ちょっ、勇吾! 声がでか...」
「なぁっ!? 都神!貴様ァ!」
「前から怪しいとは思っていたが...そこまで欲求不満だったとは!」
「どうだったんだ!都神!楠さんの体はぁ!!」
「スリーサイズ!肌!髪はどうだったんだぁ!!」
勇吾の声を聞き、バス内の男子が玲君に質問攻めをする。戦慄ってこういうことなのかな。あとさり気なく私のスリーサイズを聞こうとしないでください。殴りますよ。
「...」
(寝た振りしてる...)
案の定、私の隣の玲君は狸寝入りをしている訳だけど...
「どうなんだ都神ぃ!!」
「ちょっと!勇吾君!」
後ろから勇吾君が玲君の襟を掴んで揺さぶる。それを私が止める。あんなに全力で揺さぶられているのに、玲君は体の力を抜ききって全力で狸寝入りを決め込んでいる。
「くそ...こいつ...」
「学校についたら喋ってもらうからな!」
狸寝入りが成功したみたいで。勇吾君も諦めて席につく。バス内を見渡すと、大騒ぎだったのに、寝ている人の方が多かった。
...私も寝るか。
目を閉じて、眠りに入ろうとした時、
ぽふっ
私の左手に冷たい何かが乗っかる。
ひんやりとした物に睡眠の邪魔をされ、左手を見ると、
「...」
玲君の右手だった。そのひんやりとした手を、私は握った。その際、玲君の笑顔が見えたような気がする。
「...ふふっ」
私は玲君の白い肌に顔を近づけ、そっと私の唇を玲君の頬へキスをし、
「昨日は...ありがとね」
耳元でそう囁いた。すると、
「ふぁぁ...」
なんとも気の抜けた声が玲君から漏れる。
...耳が弱いのかな?
帰って玲君が寝てるところに耳に息でも吹きかけてみるか...?
そんなヤラシイことを考えている私でした。
_________________。
「修学旅行も終わったし、あとは期末かなー」
「帰ってきて早々やる気の削げること言わないでくれよ...」
「それはそうと、帰ろうか、心奏」
「うん」
「じゃあ、また...明日と明後日は代休だから会うのは3日後かな?」
「おう、じゃーなー」
下校路。辺りはもう暗く、街灯がやけに綺麗に感じた。
あと超寒い。
「うぅ...寒い」
「心奏、大丈夫?」
「...玲君は寒くないの?」
「まぁ...これ付けてるし。...そうだ」
すると玲君は自分の首に巻いているマフラーを半分解いて、私の首に任せる。
「...どう?」
「ん...暖かすぎて死にそう」
「じゃあ外す?」
「...このままでいい」
「手も繋いじゃおうか」
「玲君て結構大胆だね」
「そう? 帰りのバス内の君の方が大胆だと思うけど」
...!?
なぜその事を...起きてたの!?
「ふふ...あくまで寝た振りしてただけだから」
「ななな...」
「まぁ...耳元で喋りかけてきたのはビックリしたけど」
「あ...そ...」
...ん? じゃあ...
「ねね、玲君」
「ん?」
「ちょっと耳貸して」
「...」
すっと耳を私の方に向ける玲君。
ふへへ...。
「ふっ...」
「うぅっ!?」
やばい。想像以上の破壊力だこれ。
「何するのさ!」
「み、耳を傾けるのが行けないんだーっと!!」
玲君のマフラーを解いて逃げる私と、私を追いかける玲君。
まぁ私には追いつけないんだけどね。
私たちの住むアパートに着いたところで、
「れぇぇぇぇぇぇぇい!!」
「ぐぼはぁ!!」
「玲君!?」
玲君が何者から鳩尾にタックルを喰らう。誰かと思ったら、
「はぁはぁ...玲の、玲の香りぃぃぃぃ!!」
それはもはやゾンビに近い玲君の姉、秦さんだった。
「ちょっ! 姉さん! 待って!離して! 臭い嗅がないで!痛い! 主に肋があばばばば!!」
玲君に抱きついた秦さんは朝まで離してくれなかったんだとか。