夏休みが明けたと言えど、まだまだ蝉の鳴き声がうるさく感じる朝。朝から太陽は高いところにあり、その光はコンクリートを熱していた。
そんな暑い道路の上を歩く2人の学生。
1人は首周りに切りそろえられた黒髪を揺らし、高校では1、2位を争うほどの容姿を持つ少女。
もう1人はもみあげが長く、後ろはふんわりとした髪が首に軽くかかっている黒髪で、初めて見る人は誰もが彼のことを女の子だと言うだろう。だ が お と こ だ。
家から学校へは徒歩で30分でつく。もちろん、心奏はその容姿のため、登校の際には色んな男子生徒から話しかけられ続ける。もちろん心奏は全ての話を軽く聞き流してる。
「人気者なんだねー」
もちろん、家から一緒に登校している玲からも話しかけられるわけで。
「どうだろうね、男達の目線が今日は私よりも玲君の方にも向いているみたいだけど?」
「え? あ、ホントだ。」
玲に向けられる視線。それは、
「なんだあの子、可愛すぎる...」
「見ない顔だし、転校生かな?」
「でもなんであの人、なんでズボン履いてるんだ?」
「スカートが恥ずかしいからじゃないか?」
「何それ萌える」
「...男に好かれるような趣味は持ってないんだけれど」
「いや、その見た目で言われても」
そんな会話をしていると、いつの間にか学校についてしまった。玲君は「改めて先生方に挨拶してくるから」と言って職員室に行き、私は教室で本を読んでいた。席の場所はと言うと、一番後の窓際の席、いわゆるぼっち席である。毎日男子たちが話しかけてくるから、ぼっちと言えるかどうか怪しいけど。
「おっはよー!心奏ちゃーん!」
「おはよ、千秋。」
私の友だち、長い黒髪の、畑岡 千秋(はたおか ちあき)。高校で知り合ってからは何かとこの子と関わっていることが多い。あとでかい。何がとは言わないけど。
「で、大ニュースなんだけど」
「?」
「この学校に転校生がくるって話!」
「へー」
玲君のことだろう。とりあえず知らないふりしとこ。
「それも女の子!」
「毎度どこ情報なんだか...」
「さてね」
いつも通りの会話をしていると、チャイムが鳴り、教室に担任の先生が入ってきた。
「おーっす。夏休みが明けてから突然の朗報だ。このクラスに転校生が来た!」
「うぉぉぉぉ!」
「もしかして、朝見かけた子かな?」
「最高かよぉぉぉぉ!」
「先生、転校生は女の子ですか!?」
「いや、男だ」
「ヴェァァァァァァァァ!!」
このクラスに入ってきたんだ。学園生活がもっと楽しくなりそ。あと男子うるさい。
「よし、入れ」
そう言うと、ドアから男の娘、玲君が入ってきた。玲君が入ってきたと同時に男子たちが「うぉぉぉぉ!」って。叫ばないと死んじゃうんですかね。もう一度言うけど、だ が お と こ だ。
「...都神 玲です。よろしくお願いします」
「え、何あの子。可愛い」
「髪すっごいフワフワしてる、パーマかけてるのかな」
「でもなんでズボン履いてるんだろ」
男だからだよ。とまぁ、そんな心の叫びが届くはずもなく。
「じゃあ、席は、楠の隣についてくれ」
「はい」
そう言って玲君は私の隣に座る。
「よろしくね、心奏」
「うん、よろしく」
「...ほんとに男なのか?」
「なんか、怪しいよな」
___________。
朝のHRが終わって始業式。やたら長いその話をまともに聞く人はおらず、むしろこの暑い中、時には熱中症患者を生みだしている、もはや殺戮兵器だった。
「あづい...」
心奏もその暑さに耐えている人間の内の1人だった。チラッと隣の玲を見る。皆が汗をダラダラと流している中、玲は...
「嘘...立ちながら寝てる...」
いや凄いけど。起こすべきなのだろうか。立ちながら寝てるってことは、その内思い切り倒れる可能性だってある。起こそう。
「玲君...起きて」
「...ん、ああ、おはよう」
「おはようって...この暑い中よく寝れるね...」
「まぁ、暑さには強いから...お陰様でね」
「はは...そう」
「...顔色悪いよ?大丈夫なの?」
「ああ...」
会話をしている途中で、視界が微妙に暗くなる。足にも力が入らなくなる。
「無理」
ドサッ...
あまりの暑さに、遂に倒れてしまった。...もうダメだ...意識が...
___________。
「...」
目が覚める。起き上がって周りを見ると、すぐに保健室だということがわかった。
「あー...寝てたのか、私」
「あら、起きた?」
保健室の先生だ。この人がこの氷を用意してくれたのだろうか。とりあえず教室な戻ろうとするが、
「あら、だめよ?もう少し寝てないと、帰りのHRが終わるまで待ってなさい?鞄はベッドの横に置いてあるから」
「は、はい」
ベッドに寝転んで、HRが終わるまでの時間をひたすら待つ。すっごい暇。もう一度寝ようかと思っていたところで、
「失礼します」
「...あ、来たみたい。後は彼に任せるわね」
保健室に入ってきたのは玲君だった。
「じゃあ、帰ろっか」
「ん...」
___________。
帰り道。朝よりも強い太陽の光に、耐えながら、玲と共に帰っていた。
「はい、水、買っておいたよ」
「あ、ありがとう。ふぅ...生き返る...」
「体調はもう大丈夫?」
「うん、まあ」
「そう」
そう言いながら、玲君が手を私のおでこにくっつける。ヒンヤリとした手が気持ちいい。
「熱はもう無いみたいだね、顔は赤いけど」
「へ? そんな赤い?」
慌てて鏡から手鏡を出して顔を見る。うわ、ホントだ。顔赤い。熱中症てここまでくるのか。帰ったら冷房ガンガンにして寝てやる。
「暑いからって冷房ガンガンにして寝たら普通に風邪引くからね?」
「なんで私の考えてることがわかるのよ...」
「さぁ?何でだろね」
そんなところで、家につく。
部屋に戻ろうとしたところで、
「...自分の体調管理位、しっかりしてよ? 君が死んだりしたら、僕も悲しいからさ」
「あなたは私の母親か...」
「そんなんじゃないよ、君のことが好きなだけ」
「そ...」
部屋に入って、冷房つけて、寝る。...ん? 今なんて言われた?好き? 好きって言われたの? 私。
結局その日の夜もあまり寝れなかったのはいい思い出。