「______あ」
ある日の放課後。夕飯のための材料の買い出しに言っていた玲は、帰り道で、道路の端に捨てられたダンボール箱の中に、1匹の猫を見つけた。
「今でも、捨てる人っているんだな、よいしょ...っと」
ダンボール箱を両手で持ち、そのまま自分の部屋へと連れていく。
「ほーら。ここが君の新しい家だよ」
部屋に帰ってきた玲は、部屋に猫を放す。どうやら、うるさくさえしなければ問題は無いとのことだ。玲は皿を1枚取り出し、牛乳を入れる。
「明日はキャットフードを買いに行かないとかな...心奏に頼んだら買ってきてくれるかな」
_______________。
「うーん...」
教室に一つの声が響く、誰にも届かない声を出したのは、玲のクラスメイト、心奏だった。
「文化祭の出し物、どうしようかなー...」
二学期の中間テスト後に行われる、高校生活で誰しもが経験する、文化祭。心奏は教室でずっと自分の出し物を考えていた。
すると、
「楠さん...!」
突然、心奏を呼ぶ声がした。
「...どうかしたの?」
「あの、俺、楠さんのことがずっと好きでした。付き合ってください!」
それは心奏への告白だった。
「...また、か...」
今ので恐らく100人目であろう、この高校の男子生徒の告白に、心奏は呆れていた。
「ごめんね」
「...」
そして、100回目のお断り。
...結局人は見た目なのかなと心の中で諦めかけていた。きっとこの人だって、私の『中身』ではなく、私の『外側』を見て、勢いで来たものだろうと、私はそう思っている。...男は皆一緒だ。
...きっと、玲君だって...。
「...ん?」
スマホから着信音。画面を見ると、それは玲からの電話だった。
「...どうしたの?玲君」
『あぁ、まだ学校?』
「まだ学校だけど...どうかしたの?」
『いや...実はさ、猫拾ってさ。猫の餌を買ってきてくれないかなーって』
「その猫、生まれてどれくらい?」
『うーん...大きさ的には五ヶ月位かな?』
「大分微妙なところだね...いいよ。買ってきておくね」
『頼んだよ』
通話を終えた心奏は、帰り際に猫の餌を買って帰る。
「あ、おかえり。心奏」
「ただいま...拾ってきた猫ってその子?」
「うん。名前なんだけど...『ココロ』でいいかなーって」
「そう...いいんじゃないかな? ところで何で突然?」
「ん? なんて?」
「いや、なんでそんないきなり猫とか拾ってきたのかなーって」
「うーん...。可愛かったから?」
「そうなの?」
...ほんとにそんな理由なのかな。何だかもっと別の理由がある気がする。...根拠は無いけど。
「ねぇ、玲君」
「ん?」
「ほんとにそんな理由なの?」
「...聞きたい?」
待って。急に真面目な顔しないで。怖いから。突然のシリアスな展開に私は、
「ううん。やっぱいい。嫌なら言わなくていいよ」
「別に嫌とは言ってないけどね」
「あ、うん...じゃあ、私、失礼するね」
「そう...」
「じゃあね。また明日」
「うん。また明日」
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...ははっ...何やってんだか。
心奏は自分の住む部屋へと戻り、玲は自分の住む部屋で一人、自分の言ったセリフに笑っていた。
「人になんてもの聞かせようとしてるんだか...ましてや心奏に聞かせようとするとか...」
...心奏には僕の苦しみは知って欲しくないな。出来れば僕の『内側』だけ見ていて欲しいな。...僕の『外側』は、きっと傷だらけだ。
「今日はもう寝ないとな...」
そう言って玲は自分の布団に潜り込み、眠りにつく。
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「ねぇ、心奏?」
「うん?」
翌日の昼。学校の屋上で心奏、玲、千秋の三人で弁当を食べていた。食べている時、不意に、
「玲って、ほんとに男なの?」
「...男だよ」
唐突の千秋からの質問に、ため息をつきながら答えた。次には、
「そう言えば、玲君の身体って結構切り傷とか、アザとか多いよね」
「へ?」
いきなりの言葉に、心奏は素っ頓狂な言葉しか出なかった。男の娘だってことは知ってるけど、アザとか切り傷? 全く聞いたことがなかった。
「? 知らないの? 心奏なら知ってると思ったんだけど」
「どこでそんなこと知ったのよ」
「服が透けて、ビミョーに肌に黒い部分とかあるんだよね。喧嘩でもしてたの?」
「喧嘩は...してないよ」
「そうなの? でもそのアザって...」
「よく転ぶからさ、その時についたんじゃない?」
...結局わからないままだったな。あれからじーっと玲君の背中あたりを見ていると、確かに肌が黒くなっている部分がいくつかある。
...ほんとに転んだだけなのかな?