遊戯王 Replica   作:レルクス

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一話

「終わりだな。モンスターでお前にダイレクトアタックだ」

 

 とあるスタジアムで、一つのデュエルが行われていた。

 異様な雰囲気がある場所だった。

 その分かりやすい部分としては、観客も、審判も、そして、デュエルをしているデュエリストたちも、全員が自分を隠すかのように、仮面を付けていることだった。

 

 少年のそばには、ただ、赤の魔術師が佇むのみ。

 命令を受けた魔術師は、手に持った杖にエネルギーを集中させ、それを放出した。

 

「ぐ、ぐあああああ!!!!!」

 

 男のライフが0になるとともに、観客席がわき上がる。

 

 そして、MC――こちらも仮面を付けている――がマイクを手に叫んだ。

 

『決着うううううう!!!アノニマス・トーナメントの決勝戦。その優勝者が決定しましたあああああ!!!優勝者は、何と、この大会のすべての試合において、ライフを1たりとも減らされることなく勝ち進んできた『ネイジ』選手です!これだけではありません。チーム・トーナメント。及びタッグ・トーナメントにおいても、特殊ルールを採用し、ハンデを負ったうえでソロエントリーして優勝してきました!なんと、三連覇。三連覇達成となります!』

 

 MCが叫んだ少年の功績。

 

 ハンデを背負いながらも、1ダメージも許さぬその鉄壁にくわえて、敵を殲滅するタクティクス。

 

 前代未聞。空前絶後の快挙に、会場の歓声は鳴りやむことを忘れていた。

 

『優勝者であるネイジ選手には、優勝トロフィーと五千万円の賞金、そして、プレシャスパックBOX十箱が送られます!』

 

 表彰台に立ったネイジは、トロフィーと共に賞金五千万円と、プレシャスパックBOX十個を獲得した。

 今回、ネイジが立っているのは、アノニマス・トーナメントの『本戦』であり、一度勝てばそのたびにファイトマネーが支払われる。

 三回分の優勝を手にした彼は、そのすべてを総取りしている。

 

 そして、それを認めさせるカリスマと実績。

 

 アノニマス・トーナメント

 

 それは、決して表に出ることはない裏の大会。

 

 禁止カードの使用はさすがに許されないし、制限を守る必要はあるものの、相手に勝つことが出来るのであれば、イカサマですら許容されるクレイジーコロシアム。

 

 

 そんな狂った世界で、たった一人で、三連覇の達成。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人々は、彼を『グランドスラム』と呼んだ。

 

 

 ★

 

「zzz」

 

 休み時間。

 普通であれば、休む時間なのだ。

 だがしかし、がり勉をしている生徒から見ると『なんで休み時間なのに寝てるの?』みたいなことを言って着たり、言ってこなくてもそう言うことを考える時がたまにあるかもしれない。

 だが、言わせてもらおう。

 授業中に寝るというのならそれは授業放棄と取られても、まあ拡大解釈をする必要はあるが全否定はできないだろう。だって寝てるんだし。

 だが、休み時間に寝て何が悪いというのだろうか。

 だって休み時間なんだぜ。休み時間。

 寝ていたっていいじゃないか。

 

「誠一郎様。今は休み時間ではなく放課後です」

「……え、そうだっけ」

 

 ほぼ白に近い金髪を腰まで伸ばした巨乳の女子生徒が赤いメッシュを入れた黒髪の少年、遊霧誠一郎(ゆうぎりせいいちろう)に話しかける。

 誠一郎は顔を上げると、その緑色の瞳を向ける。

 こちらを見ている少女、フォルテ・シンフォニアの緑色の瞳には『この人は大丈夫なのだろうか』とでもいいたそうなものがあった。

 

「……ついでに聞いていいか。なんで俺が休み時間について考えていると思ったんだ?」

「勘です」

 

 女の勘が鋭いのはフィクションの中だけで十分だ。勘弁してくれ。

 

「それで、どうしますか?」

「帰るぞ。別にすることもないし」

「……そうですね」

 

 フォルテは二人分の荷物を持ち上げた。

 まあ荷物と言っても、授業に関してはデュエルディスクに保存されている教科書のデータだし、電子ペンもディスク内に保管されているので、結果的に体操服と、作っているものだけがいれている弁当くらいのものなので、五キロもないのだが。

 丁度誠一郎が腰を上げたところで、フォルテが前に立って歩き始める。

 廊下を歩きながら、長いなと思っていた。

 

「……しかし、なんというか、この学校はでかいな……」

「一週間では慣れませんね。学園である故に中等部と高等部が存在し、一クラス四十人で四十クラスずつ存在します。全校生徒九千六百人ですから」

「何度も聞いてるが、多いものは多いな……一万人弱だろ。予算配分が間違えていると思うんだが、そう思うのは俺だけなのか?」

「別にそうでもないと思いますよ」

 

 デュエルスクール・イーストセントラル。

 東なのか中央なのか、最初に聞いた時はよくわからない名前だと思っていたが、『東エリアに存在する中央の学校』という感じだった。

 それぞれの東西南北+中央の中でも代表の学校以外は点在しているのが現状なので、『イーストイースト』みたいなことにはならない。

 

「おい!そこのお前!」

 

 何か来た。

 見ると……たまにどこかで見たことがあるような感じの男子生徒がいた。

 分かるのは、左胸のプレートからの判断だが、中等部三年で一つ年下と言うだけの話である。

 

「なんだ?」

「俺とデュエルしろ!」

 

 ……必要な会話が丸っと省かれたような気がしたが、さすがにそれだけでは状況の把握など無理である。

 

「何故だ?」

「お前にシンフォニアさんの隣にいる権利はないんだよ!俺が勝ったら金輪際シンフォニアさんに会うんじゃない!」

「……はぁ。フォルテ。少し遊んでやれ」

「分かりました」

 

 フォルテは荷物を降ろすと、左腕に付けているデュエルディスクを起動した。

 

「な……シンフォニアさん。なんでこんな奴のために……」

「誠一郎様の命令ですから」

「バカな……」

「まあ、相手なんて双方同意なら誰でもいいだろ。フォルテに勝ったら考えてやるよ」

「くそ……バカにしやがって、火野家の力を見せてやる!」

 

 男子生徒もデュエルディスクを構えた。

 火野家……ねぇ。

 確か、火野、風間、水谷、土門の四つがイーストエリアでは強かったか。

 四つ合わせて『元素四名家』『東の支配者』などと呼ばれてるみたいだが……まあいいとしよう。

 

「シンフォニアさん。今すぐあなたをその男から解放します」

 

 中等部の男子生徒がデュエルディスクを起動すると、その上に『火野正也(ひのまさや)』と表示された。

 フォルテがデュエルディスクを構えると、その上に『フォルテ・シンフォニア』と表示される。

 

「「デュエル!」」

 

 二人の宣言と共に、双方のデュエルディスクの上に表示されていたネームタグが飛翔し、激突。

 二人の中間点の上に大きく表示された。

 

 フォルテ LP4000

 正也   LP4000

 

 先攻は……正也からだ。

 

「俺の先攻。俺は手札から、『爆炎獣ライズ』を召喚!」

 

 明らかに生命活動が行えないレベルで燃え上がっているヤツが出てきた。

 狼なのか犬なのかよくわからん。

 

 爆炎獣ライズ ATK1700 ☆4

 

「爆炎獣モンスターの共通の永続効果で、レベル1につき、攻撃力が100ポイントアップする。レベルは4。よって、攻撃力は400ポイントアップする」

 

 

 爆炎獣ライズ

 レベル4 ATK1700 DFE400 炎属性 獣族

 ①:このカードが表側表示で存在する限り、このカードの攻撃力は、このカードのレベル×100ポイントアップする。

 

 

 爆炎獣ライズ ATK1700→2100

 

 召喚を一回するだけで攻撃力2000を超えてきたか。

 まあ、それはそれとして、元々の攻撃力が1700であることを考えれば、アタッカーになる。

 共通効果と言っていたし、もともと脳筋だが。

 

「俺はカードと一枚セットして、ターンエンドです。シンフォニアさん。サレンダーしてください。傷つけたくはありません」

「そうですか。私のターン。ドロー」

 

 聞いたうえでスルーするんだ。

 

「え……」

「私は『魔光騎士ソニック』を召喚」

 

 機械の装甲を持つ白い騎士が出現する。

 あと、微量ではあるが発光している。

 

 魔光騎士ソニック ATK1500 ☆4

 

「何故、茫然としているのですか?」

「さ……サレンダーをしないのですか?」

「する必要はありません。ソニックの効果を発動。召喚、特殊召喚に成功した時、デッキから『魔光具』を名の付いたカード一枚を手札に加えることが出来ます。私はデッキから『魔光具・ジュエルエンジン』を手札に加えます」

 

 

 魔光騎士ソニック

 レベル4 ATK1500 DFE1000 光属性 機械族

 このカード名の効果は一ターンに一度しか使用できない。

 ①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「魔光具」装備魔法一枚を手札に加える。

 

 

「そして私は、手札に加えた『魔光具・ジュエルエンジン』をソニックに装備させ、攻撃力を500ポイントアップさせます」

 

 怪しく光る魔石を動力とするエンジンが背中に装着された。

 

 魔光騎士ソニック ATK1500→2000

 

 

 魔光具・ジュエルエンジン

 装備魔法

 「魔光騎士」モンスターのみ装備可能。

 ①:装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。

 ②:装備モンスターが戦闘で破壊される場合、このカードを墓地に送ることで破壊を無効にする。

 

 

「だが、攻撃力は上がっても、ライズには……」

「いいえ、まだ私の手札には装備魔法があります。私は『魔光具・ピアースリボルバー』を発動し、ソニックに装備させます。装備したモンスターの攻撃力は300ポイントアップ」

 

 今度は赤く、銃身の長いリボルバー拳銃だ。

 

 魔光騎士ソニック ATK2000→2300

 

 

 魔光具・ピアースリボルバー

 装備魔法

 「魔光騎士」モンスターのみ装備可能。

 ①:装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。

 ②:装備モンスターが攻撃するとき、相手はダメージステップ終了時まで罠カードを発動出来ない。

 

 

「超えてきた……」

「バトル。魔光騎士ソニックで、爆炎獣ライズを攻撃」

 

 ソニックがリボルバーを構える。

 

「させない!罠発動……な、『Error』だと!」

「無駄です。ピアースリボルバーを装備したモンスターが攻撃するとき、相手はダメージステップ終了時まで罠カードを発動出来ません」

「な……」

 

 弾丸がライズを撃ちぬいた。

 

 正也 LP4000→3800

 

「私はカードを一枚セット、ターンエンドです」

 

 正也は悔しそうにしていた。

 ただ……ある一点を見ている。

 ……ふむ、何か狙っているのか?

 

「くそ。くそ!俺のターン。ドロー!俺は魔法カード『爆炎の再来』を発動。墓地から『爆炎獣』モンスターを特殊召喚する。戻って来い。爆炎獣ライズ!」

 

 爆炎獣ライズ ATK1700→2100 ☆4

 

 

 爆炎の再来

 通常魔法

 ①:墓地の「爆炎獣」モンスター一体を対象にして発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

 

 ……もうちょっと後の方で使えばいいと思うんだけどな。だって、カテゴリーを指定するが、それ以外の制約はないのだから。

 そう思うのは誠一郎だけだろうか。

 

「俺の言うことを聞かないのなら、力ずくだ!火野家の力を見せてやる。俺は炎属性の爆炎獣ライズをシンボルリリース!」

 

 正也の宣言と共にライズが消滅していき、赤い結晶体を出現させた。

 そして、異空間に消えて、正方形のゲートが出現する。

 

 序数世界から、呼び出される。

 

「オーディナル召喚!現れろ。レベル6。『爆炎獣オルトロス』!」

 

 爆炎獣オルトロス ATK2200→2800 ☆6

 

 召喚された燃え上がる二つの首の番犬……やはりと言うか、生命活動ができるのかどうかは怪しかった。

 あと、ライズが犬なのか狼なのかよくわからなかったが、これで犬だと判別できた。

 

 オーディナル召喚。

 特定の属性のモンスターをリリースして召喚する。

 特殊召喚ではない。アドバンス召喚の派生なのだ。

 なお、召喚ではなくアドバンス召喚の方の派生のため、レベル4以下のモンスターが存在しない。

 そして、その最大の特徴が……

 

 正也 SP0→1

 

 今まで、モンスターにカウンターなどを乗せるカードはあった。

 しかし、このオーディナル召喚は、成功した時、チェーンブロックなどを一切つくらず、SP(シンボルポイント)をデュエリストに付与する。所有上限は存在しない。

 奈落の落とし穴に落ちるとしても、その発動前に、シンボルポイントを付与する。

 基本的にはリリースの数がそのままポイントになる。

 序数世界に生きるモンスターは、その管理システムゆえに『ポイント』を持っている。

 こちらの世界に呼び出される場合は、マスターであるデュエリストにそのポイントが付与されるのだ。

 

 なお、オーディナルモンスターそのものがポイントを使う効果を持っているかどうかは、実は別問題だ。

 

 ちなみに、ポイントは、カードの効果のコストになることが多いが、これは『プレイヤーが手に入れてため込んだエネルギー』を使っていると思わせるようなカードも多い。

 

「オーディナル召喚ですか」

 

 フォルテは若干頬を動かしたが、それ以上の変化はなかった。

 

「そう、これが火野家の力だ。効果発動。SPを一つ消費して、一ターンに一度、相手の魔法、罠を破壊する!」

 

 フォルテが伏せたカードが破壊された。

 

 

 爆炎獣オルトロス

 レベル6 ATK2200 DFE900 炎属性 獣族

 オーディナル・効果

 炎属性×1

 ①:このカードが表側表示で存在する限り、このカードの攻撃力は、このカードのレベル×100ポイントアップする。

 ②:シンボルポイントを一つ消費し、相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

 『SP1』

 

 

 正也 SP1→0

 

「これで伏せカードはない。バトルだ!爆炎獣オルトロスで、魔光騎士ソニックを攻撃!」

 

 オルトロスが走りだした。

 

「墓地から罠発動、『エネルギー・アウト』!」

「ぼ……墓地からトラップ!?」

 

 リアクション大きいな……。

 

「い、一体いつ……」

「先ほど、ご自分で破壊していましたよ。効果発動。墓地のこのカードを除外することで、一度だけ、相手モンスターの攻撃を無効にします」

 

 

 エネルギー・アウト

 通常罠

 ①:相手モンスター一体を対象にして発動。攻撃力を500ポイントダウンさせる。

 ②:このカードを墓地から除外することで、相手モンスターの攻撃を一度だけ無効にする。この効果は、このカードの①の効果を使ったターンは使用できない。

 

 

「くそ……これでターンエンドだ」

「私のターン。ドロー」

 

 フォルテがドローした。

 そして、合計で四枚になった手札を見る。

 誠一郎の目に、フォルテの口が「つかうまでもありませんね」といったのが見えた。

 

 ただ……誠一郎は、一つ、確かめたいことがあった。

 

「フォルテ、使え」

「……わかりました」

 

 フォルテは何も聞かない。

 まあ、そんなこともよくあったので、そんな感じなのである。

 

「私は手札から魔法カード『魔光技術・アポーツコード』を発動。自分フィールドの表側表示の『魔光具』装備魔法すべてを手札に戻します」

 

 

 魔光技術・アポーツコード

 通常魔法

 ①:自分フィールドの表側表示の「魔光具」装備魔法すべてを手札に戻す。

 

 

「そして、自分フィールドに「魔光騎士」が存在することで、手札から『魔光騎士パワード』を特殊召喚」

 

 ソニックがややシャープな印象だったが、今度はかなり身長も高い。

 装備もかなり分厚いものだ。

 

 魔光騎士パワード ATK1800 ☆4

 

「パワードの効果発動。手札一枚をコストにして、デッキから「魔光具」装備魔法一枚を手札に加えることが出来ます」

 

 

 魔光騎士パワード

 レベル4 ATK1800 DFE800 光属性 機械族

 このカード名の①②の効果は一ターンに一度しか使用できない。

 ①:自分フィールドに「魔光騎士」モンスターが存在する場合、このカードを手札から特殊召喚できる。

 ②:手札一枚を捨てて発動できる。デッキから「魔光具」装備魔法一枚を手札に加える。

 

 

「私はデッキから『魔光具・コンセントレーション』を手札に加えます」

 

 準備は整った。と言うかのように、フォルテは目を閉じた。

 そして開くと、右手を天に掲げる。

 

「私は、光属性モンスターであるパワードとソニック二体をシンボルリリース。魔の光を綴る機械の兵士よ。光の意思を手に、任務を遂行せよ」

 

 二つのシンボルと共に、ゲートが展開して、モンスターが出現。

 二つの石が胸に埋め込まれた機械の兵士だった。

 

「オーディナル召喚!レベル7。『魔光騎士アクセプター』!」

 

 魔光騎士アクセプター ATK2600 ☆7

 フォルテ SP0→2

 

「お……オーディナル召喚。今までシンフォニアさんは使っていなかったはずなのに……」

「必要がなかったので。ですが、誠一郎さまの命令となれば話は別です」

「な……どうしてそんなことで……」

 

 まあ、別に聞かなかったとしても何もしないけどね。別に。

 

「私に取って、最も優先順位が高いというだけの話です。アクセプターの効果発動。SPを1消費して、デッキからカードを一枚ドローします」

 

 フォルテ SP2→1

 

 

 魔光騎士アクセプター

 レベル7 ATK2600 DFE1500 光属性 機械族

 オーディナル・効果

 光属性×2

 一ターンに一度、SPを1消費して、以下の①②のうちいずれかを発動できる。

 ①:デッキからカードを一枚ドローする。

 ②:相手に500ポイントのダメージを与える。

 『SP2』

 

 

「そして、私は手札の三枚の魔光具、ジュエルエンジン。ピアースリボルバー。コンセントレーションを、アクセプターに装備させます」

 

 アクセプターの背中にエンジンが、右手にはリボルバーが、左肩にはアンテナが装着された。

 

 魔光騎士アクセプター ATK2600→3100→3400

 

「くそ……ん?コンセントレーションは、攻撃力を上げないのか?」

「すべての魔光具に攻撃力上昇の機能が備わっている訳ではありませんよ。そして、このターンで終わりです」

「何!?」

 

 フォルテは宣言した。

 3800ある正也のライフを削り切るつもりなのだ。

 2800あるオルトロスがいるなか、どうする?

 

「バトル。魔光騎士アクセプターで、爆炎獣オルトロスを攻撃!」

「罠は……ピアースリボルバーの効果で発動出来ない……」

「その通り」

 

 正也はそれを聞きながらも、にやりと笑った。

 

「だが……手札のモンスターの効果なら別だ!俺は手札から、『爆炎獣ハウリングレオン』の効果を発動。自分フィールドの『爆炎獣』モンスターが、相手のオーディナルモンスターから攻撃を受ける時、このカードを手札から墓地に送ることで、相手モンスターの攻撃力分、自分のモンスターの攻撃力をアップする!」

 

 

 爆炎獣ハウリングレオン

 レベル3 ATK1400 DFE1000 炎属性 獣族

 ①:このカードが表側表示で存在する限り、このカードの攻撃力は、このカードのレベル×100ポイントアップする。

 ②:自分の「爆炎獣」モンスターが、相手のオーディナルモンスターから攻撃宣言を受けた時、このカードを手札から墓地へ送って発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップする。

 

 

 攻撃された時、しかもオーディナルモンスターが攻撃してきたときしか対応しないが、『オネスト』のような効果だ。

 咆哮と共に、オルトロスの攻撃力が上昇する。

 

 爆炎獣オルトロス ATK2800→6200

 

「見ろ。この圧倒的な攻撃力!どんなモンスターであっても、この攻撃力にはかなわない!」

「そういう状況を作るようにデザインされたカードを使っているのですから、そういう攻撃力になるのは当然です。コンセントレーションの効果により、装備モンスターが攻撃するとき、私への戦闘ダメージは0になり、装備モンスターは戦闘では破壊されません」

 

 

 魔光具・コンセントレーション

 装備魔法

 「魔光騎士」モンスターのみ装備可能。

 ①:装備モンスターが攻撃するとき、自分への戦闘ダメージは0になり、装備モンスターは戦闘では破壊されない。

 ②:装備モンスターが相手モンスターとバトルを行ったダメージステップ終了時、そのモンスターをバトルフェイズ終了時まで除外する。

 

 

「何!?……では一体なぜ……いや、もう攻撃は終わった。これでもう攻撃は……」

「コンセントレーションの効果により、バトルを行った相手モンスターをバトルフェイズの間除外します」

 

 フォルテの説明と共に、爆炎獣オルトロスが、コンセントレーションのアンテナから発生したゲートに飲まれようとしている。

 そして、その燃え盛っている炎がゲートに向かっており、なんとなくフォルムが分かった。

 ……犬にしてはちょっとがっしりした体つきのような気もするが……。

 

「な……だが、もう攻撃が終わったことに変わりはない!」

「いえ、速攻魔法『オーディナル・セカンド・バースト』を発動します。自分フィールドのオーディナルモンスター一体を選択し、このターンのみ、二回目の攻撃が可能。そして、私のSP1につき、攻撃力が300ポイントアップします」

「バカな……」

 

 

 オーディナル・セカンド・バースト

 速攻魔法

 このカードは、自分フィールドにオーディナルモンスター以外のモンスターが存在する場合、発動できない。

 ①:自分フィールド上に表側攻撃表示で存在するオーディナルモンスター1体を選択して発動する。ターン終了時まで、選択したモンスターの攻撃力は自分のシンボルポイント1につき600ポイントアップし、1度のバトルフェイズ中に2回まで攻撃する事ができる。この効果で選択したモンスターしかこのターン攻撃はできない。

 

 

 魔光騎士アクセプター ATK3400→4000

 

「攻撃力4000だと!」

「先ほどあなたはそれを超えていましたよ。アクセプターで二回目の攻撃。『ミッション・ローディング』」

 

 銃弾は今度こそ、正也を貫いた。

 

 正也 LP3800→0

 

「私の勝ちです」

「ば、バカな……こんなことは認めない!おい、お前!何で自分でデュエルしないんだ!この腰抜け!臆病者!」

 

 正也は負けを認めないというより……『誠一郎とデュエルすること』を望んでいるように見える。

 

「俺には負けていないが、敗者だろう。お前は」

「くそ……覚えてろ!」

 

 正也は捨て台詞と共に走り去っていった。

 

「さて、帰るぞ。フォルテ」

「はい」

 

 再び二人分の荷物を持ったフォルテが歩きだした。

 誠一郎は、内心溜息を吐きながら歩いていた。

 

 ★

 

「誠一郎様。なぜあの時、オーディナルモンスターを出すように指示を出したのですか?」

 

 学生寮があるイーストセントラルだが、全寮制ではないので自宅から通うこともできる。

 もちろん、近い人間だけだが、誠一郎とフォルテは近くの家で過ごしている。

 寮の部屋に置いておくにしては少々困るものがいろいろあるから、と言うのもあるが。

 

「フォルテが使わなかったとしても負けなかったのは分かっているが、オーディナルモンスターを出すことで、あえてどんな反応をするのかを見ておきたかった。二ターン目。フォルテのターン終了時、アイツはフォルテのエクストラデッキの部分を見ていたからな」

「そうですか」

「あと、あのオルトロス……あれは犬ではなく狼だ」

「……そうですか」

「これが気になっているのは、オルトロスという存在が、二つ首の犬であるという設定が存在すること。そして、あの燃え盛るようなフォルムゆえに、常に体の大きさや形を隠すことが出来るという状況だからだ」

「ということは……」

「まあ、断定は何もしないけどな」

 

 少し、面倒なことに巻き込まれたような気がする。

 誠一郎は、そう思うのだった。

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