「誠一郎。これを見なさい」
「……」
とある日の放課後。
彩里が見せてきたのは、近くの遊園地の優待券だった。しかも五枚。
運営している会社が『フレイムブレイズ㈱』となっている。
確か、元素四名家の火野和春が運営しているところだったか。
「どうやって手に入れたんだ?」
「とじ込みハガキよ」
運だけは良いな。俺の彼女は。
「……ちょっと待って。この優待券に書かれてる日付。大きなイベントがある日じゃない?ここ最近休園してたけど、その間に大改造してるって聞いたことがあるよ」
聖が思いだしたように言う。
……別に文句を言いたいわけではないが、そこまでの改造をしてしまうと、デッキを持っていないと何も楽しめない可能性があるのだが……。
「そうですね。確か、アトラクションを利用した特殊デュエルが行われると聞いています」
「コースターや観覧車でデュエルするってデモ映像があった」
フォルテと刹那も興味はあったようだ。知らないのは誠一郎だけである。
ていうか……コースターはともかく、観覧車でどうやってデュエルするんだ?
「と言うわけで、明日、休日だから行きましょう。私は明日着る服を選んでくるからね。それじゃ!」
彩里はパッパと家に帰って行った。
……というか、今集まっているメンバーで帰る家が違うのは聖だけなのだが。
「それにしても、優待券とかよく当たるわね……」
「彩里はあんな感じの懸賞はよく当てるからな」
「む。確かによく当たる」
「当選確率は97・2%ですね」
「高すぎ!」
なんでだろうな。才能に恵まれているのは分かるが、運にも恵まれているんだよなぁ。
というか、そこまで正確な数値を出せるほど懸賞を出しまくっているのは逆に問題があるような気がする。
「それにしても張り切ってるわね……」
「特殊ルールのデュエルが気になっているんだろうな。ていうか五人分も当ててくるとは……」
一体何がどうなっているのやら……。
「お兄ちゃんの財力を考えれば、別に優待券がなくても問題はないと思う」
「まあ、実際はそうなんだがな」
アノニマス・トーナメントで暴れたからな。
しかも、カードの価値と言うのはかなり流動するものだ。
デュエルモンスターズが政界や財界に匹敵するのが現代の社会であり、株のトレーダーの知識があれば荒稼ぎするのはたやすい。
「それにしても、アトラクションを利用した特殊ルールですか……誠一郎様なら問題はありませんよね」
「ないだろうな。ライフが1あれば相手を叩きつぶすことはできるからな。土俵に上がればこっちのものだ」
なかなか理不尽な話である。
「サイドデッキもいろいろ考えておく必要があるわね……ところで、誠一郎は彩里とはどうするの?変なところに入りそうな雰囲気よ。彩里って」
「どうする。というのがどういうことなのかよくわからんが、どうせレディーファーストだとか言いだすからな。お化け屋敷にでも放りこんでおけばいい」
クズである。
「誠一郎様……それは後でひどい目に合いますよ」
「お兄ちゃん。似たようなことをして服や鞄を買いに行かされて諭吉が何人もいなくなったのに……」
学ばないのではない。面白いと思ったことをするのが誠一郎クオリティだ。
まあ、それはそれとして、楽しむことは大切だろう。
「……それはそれとして、リニューアルイベントもいろいろあるみたいだな」
誠一郎が呟いた時、タブレットで情報を確認していた刹那が固まる。
「刹那。どうした?」
「リニューアルイベントで、アイドルデュエリストの
「誰だ?」
誠一郎が疑問を口にした瞬間、聖、フォルテ、刹那から「何言ってんのこいつ」見たいな視線を受けた。
「……え、有名人?」
「そうよ。御堂天音って言ったら、プロデュエリストとしての一面も持つアイドルデュエリストよ」
「女性でも見惚れる整ったルックスとスタイル。さらには、その圧倒的に清楚な印象と、見た目に合わないすさまじいスタミナで有名です」
「クリスマスでは、御堂天音のスペシャルライブで八時間のモンスターイベントが開催されたこともあるって聞いた」
……何かごめんなさい。
しかし、アイドルデュエリストか……。
強いデュエルなのか。見せるデュエルなのか。それとも、両方なのか……。
見たことが無いものを見せてくれることを、ただ、誠一郎は期待する。
★
「ふああ……」
用事がない場合、誠一郎はカードショップに行く。
カードを買うわけではない。シングルで発売されているカードを見るのだ。
レアカードやらなんやら、いろいろと持っているのだが、それだけでは確認で着ていない部分もあるし、カード情報がまとめられているサイトもあるにはあるが、店では値段も一緒にタグに記載されているし、何より、在庫数が分かるので、ある程度のカードの流動性が分かる。
カードのネットトレードで稼いでいる部分があるので、軽視できない情報なのだ。
イーストセントラルから少し離れたカードショップだが、実のところ、特定のカードショップにしか置かれていないものがあるので、それが目当てと言うこともある。
「……お、今日は順番待ちは無しか」
デュエルマシンがあるのだ。
コンピュータ対戦やら、ランダムでマッチングされるデュエリストと対戦できる。
これ、戦績に応じて、カードショップの運営会社の系列店の専用ポイントやクーポンがもらえる。
デュエルディスクに管理データをインストールしておくだけでいいのだ。
ちなみに、難易度的に理不尽といえるのはコンピュータ対戦の方だ。
CPUが組んだデッキであり、最高難易度に設定した場合、生半可なデュエリストだとワンキルされるレベルである。
というか、カードを手に入れる必要がなくデジタルなので、デッキの構成もかなりヤバい。
のだが……。
「ふああ……いつも通りだな」
デュエルマシンの難易度がどれほど高かったとしても、初手エクゾでもされない限り、『自前のデッキを使えるのであれば』問題など何一つない。
コンピュータで効果を処理するので、一々カード効果を口で説明する必要もないしな。
「ん。勝った」
一回百円だが、確実に百円以上の価値になっているのは間違いない。
一応人気のゲーム媒体なので、いつもは順番待ちが発生する。
あと、最高難易度のコンピュータ対戦に勝利すると、もらえるポイントにボーナスが発生するのだが、これは一日に一度だけだ。
まあ、よくこの店に繰る理由の一つが『デイリーボーナスを拾うため』とも言えるので、あながち間違いではないが。
まあ、一回勝てば、もうそれ以上する理由はない。
「……で、何か用か?」
デュエル中、後ろから見られていることを感じとっていたので、誠一郎は振り向いた。
パーカーを着て、フードと帽子を被って、さらにサングラスをかけた少女だった。
特徴的な薄紫色の髪を隠すことがあまりで着ていないようだが、まあ、それはいいとして。
「……なんでもない」
「別に見ていたとしてもマナー違反だとは言わんぞ。さっき見せた程度のアドバンテージならくれてやるくらいがちょうどいいからな」
「!」
ちょっと煽ってみると頬が動いた。
が、すぐに戻った。
「……なるほど、ここで暴れるにはいかない事情があるみたいだな」
アノニマス・トーナメントでも、似たような雰囲気を出すデュエリストは多かった。
誠一郎は、隠したいと思う感情には敏感である。
まあ、だからこそ煽ってみたのだが。
「それと……使っているデッキに迷いがあるような雰囲気だが、それだと、優秀にはなれても、自分がほしい強さは手に入らないぞ」
「……」
少女は、奥歯をギリッとならしたが、何も言わずに店を出ていった。
その背中を見ながら、誠一郎は呟く。
「あの声……どこかで聞いたことがあるような……ないような……まあいいか」
誠一郎は、すぐに他のことに興味が移っていた。
★
「というわけで、行くわよ!」
彩里は謎の張り切り具合である。
全体的に黒で揃えた感じである。
あと、いつも以上にキューティクルがすごくて若干浮いてる。
「かなり気合を入れたな」
ジャケットにジーンズと言う、なんとも原石的な感じがするファッションで来た誠一郎が呟くが、高身長でイケメンなので実のところ彼もかなり目立つ。
「……」
全体的にガーリッシュ系でまとめてきて、いつも通りのポニテマフラーの刹那が何も言わない。
「なんか、すごいことになってるわね……」
ノースリープのシャツとジャケット、そしてホットパンツで活発な雰囲気のはずの聖だが、彩里のオーラには何か思うところがあるようだ。
「前日を使って服を選んだ時はいつもこんな感じですからね……」
清楚系、といっていい服で来たフォルテだが、まあ、胸もそうだがお尻もいい彼女なので、ちょっと年上に感じる。
「で、どうやって行くんだ?」
「誠一郎って免許持ってる?」
「バイクの免許は持っているが、さすがの俺も自動車の免許は持っていないぞ」
「ふむ……電車で行きましょうか」
このメンツと恰好で電車に乗るのか!?
アホかこの女。という雰囲気になったが、タクシーを拾うのもどうかと思ったので、もう電車で行くことにした。
思いっきり目立ったけど。
というわけで到着した。
『バスタード・ドリーム』という遊園地だ。
日本語訳だと『雑種な夢』だろうか……まあ、そのあたりはおいておくとして、若干赤っぽい雰囲気があるものの、かなり雑多な感じがする。
優待券を、腕に付けておくブレスレットに交換してもらって、全員右手首に付けた。
「さて、どうする?」
「イベントまでは自由行動でいいと思うけど。私は行きたいところがあるし、全員、趣味は別々だからね」
「彩里がそういう時って大体集合時間に間に合わないんだがな……」
誠一郎は溜息を吐いた。
聖は同情するような視線を向けてくる。
「とはいっても、行きたいところが別なのは事実か」
「というわけで、イベントがある十八時までは自由行動ってことで、解散!」
言うが早いか、彩里は走り去っていった。
「……俺達も自由行動にするか」
「まあ、いいわ。優待券があるから割引は効いてるし、それじゃ」
聖は買い物コーナーに向かって歩いていった。
おい、アトラクションは?
「それでは、私も気になるところがあるので」
フォルテは『スクリーミングエリア』というところに歩いていった。
スクリーミングの意味が分からないって?『絶叫』である。
誠一郎は残った刹那の方を見る。
刹那は誠一郎をじっと見る。
「……一緒に行きたいところがあるのか?」
「……二人でしか入れないところがある」
そうか。そういうことか。
特に何も言わずに、二人でそこに歩いていった。
ちなみに、地図を全く見ていないので、誠一郎にはどこに何があるのかさっぱりわからない。
歩くこと数分。
アトラクションの名前は『カップル・メリーゴーランド』とのこと。
よくわからん。普通一人で乗るもんだろ。
……それはそれなりに長い列があったのだが、優待端末を見せると普通に通してくれる。
「ほう、そこそこ人が集まって一度に行われるのか……」
レーンがいくつか存在するので、時間がかかるといえばかかるのだが、それでも、それ相応に客を回せるようになっているようだ。
で……。
「何だこの馬……」
馬のような乗り物があった。
どうやらそれに乗るらしい。
「この年になってメリーゴーランドに乗るとは思っていなかったが……まあいいか」
刹那は別の乗り物だ。
……ペンギン?
刹那。ペンギンに乗ってるぞ。
「……っ!」
すごく恥ずかしいようだ。
ていうか、恥ずかしがるくらいならメリーゴーランドなど選ばなければよかったのに。
と思ったら、説明が聞こえてくる。
『それでは皆さん。このたび、カップル・メリーゴーランドにご来場いただき、ありがとうございます』
どうも。
『このアトラクションでは、一人一人がそれぞれ、動物の乗り物に乗っていただき、進んでもらいます。ゆっくり進みますからお子さんでも安心してください』
さいで。
『そして、ご一緒に入場したカップルの方とチームを組んで、タッグデュエルを行っていただきます。デュエルは一度だけですが、勝利したチームには豪華な景品が送られます!』
あ、デュエルは一回だけなんだ。
豪華景品……まあ、あったとしてもカードかクーポンが妥当だろう。
『そして、このメリーゴーランドでは、乗り物にはそれぞれ、別のスキルが用意されており、『スキルカード発動』と宣言することで、一度のデュエルで一度だけ使用することが出来ます。スキルの確認ボタンでいつでも確認できますので、うまく活用してくださいね!ちなみにスペルスピード2です』
乗り物ごとに違うスキルか。
……あ、『スキル確認ボタン』と言うものがある。
押してみた。
『スキル:デッキのカードを一枚ランダムに墓地に送る』
使い物にならんな。
せめて手札ならまだ何とか行けるのだが……。
『なお、今日はリニューアルオープンでお客様も多いので、恐れ入りますが、初期ライフを2000にさせていただきます』
それ、ターンが回ってこないパターンもあり得ると思うんだけど。
『それでは、カップルで頑張ってください!スタートです!』
それと同時に、ペンギンの乗り物がうぃーんと隣に動いてきて、二体同時に進みだした。
乗り口は暗かったが、出口を抜けるとそれはそれなりに煌びやかなステージが広がっている。
「で、刹那。このアトラクションに挑戦したのはどういうことだ?」
「……遊園地。来るの久しぶりだから」
「……そうか」
あえて何も言わん。
と思っていると、別のレーンから二人組が来た。
……おい、どっちも小学校低学年じゃねえか。
まあ、大丈夫か。背の高い誠一郎が隣にいれば、刹那は小学生に見えるからな。
ええと、向こうは、男の子がドラゴン(動物?)で、女の子の方はハムスターだ。
「あ~。高校生の兄ちゃんがおうまさんにのってる~」
「あはは。おもしろーい」
「……」
……いや、怒るところではないか。
だが、デュエルで語らせてもらおう。
刹那もデュエルディスクを構える。
「よーし。頑張るぞ!」
「おー!」
向こうの二人は無邪気だな。
愛と恋と恋愛の違いもわからん子供だからな……。
刹那もこういう時代があったな……。
それはそれとして、全員がデュエルディスクを構える。
「「「「デュエル!」」」」
誠一郎&刹那 LP2000
「先攻は僕だ!」
男の子、努武からだ。
ターンは、努武→刹那→雛子→誠一郎である。
さて、小学生のデュエルを見せてもらおう。
「僕は手札から、『勇気の剣士』を召喚!」
勇気の剣士 ATK1700 ☆4
出てきたのは茶色を基調とする剣士。若干おっさん的な感じ。
通常モンスターだ。
テキストはこんな感じ。
勇気の剣士
レベル4 ATK1700 DFE1400 地属性 戦士族
通常
世界の困難に立ち上がった剣士。
勇気の一撃「ブレイブ・セイバー」で敵を切りさけ!
「僕はこれで、ターンエンド!」
どうだ!と言わんばかりに胸を張る努武。
……刹那にもあったなぁ。通常モンスター棒立ちフィールド。
「私のターン。ドロー」
刹那も思いだしているのだろう。
こんな時代があったなぁ。と言うフィールドだ。
「私は、『MJガトリング』を召喚!」
MJガトリング ATK1800 ☆4
戦闘を行うとき、相手モンスターの攻撃力が、ダメージステップ終了時までそのモンスターの元々の攻撃力で固定される。
攻撃力が10000を超えた『究極封印神エクゾディオス』だろうと『偉大魔獣ガーゼット』だろうと、戦闘中なら上から叩き潰す変態だが、通常モンスターなら普通に相手するものだ。
「バトル!MJガトリングで、勇気の剣士を攻撃!」
ガトリングが銃口を剣士に向ける。
まあ、ダメージは100なのだ。我慢してもらおう。
「スキルカード発動!相手モンスター一体の攻撃を無効にして、そのモンスターを破壊する!」
「……え?」
「……ん?」
MJガトリング。爆☆砕!
「うおお!ガトリングが吹きとんだ!」
しまった。完璧に忘れていた。
このデュエルはスキルと呼ばれるものがある。
そして言っていたではないか。
全て『スペルスピード2』だと。
言ってしまえば、相手ターンでも発動できるものしか存在しないのだ。
っていうか、なんで『炸裂装甲』なんだよ。おかしいだろ!
こっちなんて『デッキからランダムに一枚墓地に送る』なんて効果だぞ。
差がありすぎるって!
……ん?スキル確認スイッチのちょっとしたに何か書かれてる。
『このアトラクションは小学生向けのものです。中学生以上の方が参加する場合、スキルの強さが落ちますのでご了承下さい』
ああ悪かったな!確認しなかったこっちが悪かったよ!
……いや、それでも差がありすぎませんかね。
ていうか、カップル云々言ってたのに小学生向けなんだな。
まあ……そのあたりのことは置いておくとして。
刹那は何かのショックを受けたようだ。
「……カードを一枚伏せて、ターンエンド」
モンスターは出なかった。
まあ、この際それはいいか。
多分オーディナルモンスターを一体くらい握っているだろうし、これ以上の展開は別に望まん。
「よし、うまく言った!」
「初等部のタッグチャンピオンの実力。見せてあげるんだから!」
そうか。まあ頑張れ。
世界の広さを教えてあげるから。
「私のターン。ドロー!」
次は雛子のターン。
「私は手札から『ハーピィの羽根帚』を発動!」
「罠カード『黄泉の工場』を発動。墓地の機械族モンスター一体を、攻撃力を500ポイントアップさせて特殊召喚する」
黄泉の工場
通常罠
①:墓地の機械族モンスター一体を対象にして発動できる。そのモンスターの攻撃力を500ポイントアップさせて自分フィールドに特殊召喚する。
MJガトリング ATK1800→2300 ☆4
ガトリングの蘇生に成功した。
「む……私は『勇気の女剣士』を召喚!」
出てきたのは、勇気の剣士と同じ配色の女剣士、若干オバハン。
勇気の女剣士 ATK1900 ☆4
勇気の女剣士
レベル4 ATK1900 DFE1000 地属性 戦士族
このカードは「勇気の剣士」モンスターとしても扱う。
①:このカードが相手のカード効果の対象になった時、または相手モンスターの攻撃対象になった時に発動する。自分フィールドの、このカード以外の「勇気の剣士」モンスターにその対象を変更する。
しかも夫(?)よりも強い。
なんていうか……かかあ天下だなぁ。
あの、もしかして、あのタッグチーム。実は女の子の方が主導権を持ってたりする?
「まだまだ!私は『二重召喚』を発動して、召喚権を増やす!そして、地属性の『勇気』モンスターである勇気の剣士と、勇気の女剣士をシンボルリリース。夫妻合体!」
女の子がそんな問題発言して大丈夫なのだろうか。
夫妻がシンボルに変わる。
ドラゴンとハムスターの乗り物のそばで、ゲートが開いた。
「オーディナル召喚!レベル7『勇気の愛剣士』!」
ぴっちりしたうえにフルフェイスの全身甲冑を着ているので夫なのか妻なのかわからんモンスターが出現した。
剣士と言うより騎士である。
勇気の愛剣士 ATK2600 ☆7
努武&雛子 SP0→2
「勇気の愛剣士の効果発動。一ターンに一度、SPを一つ消費することで、相手フィールドのモンスター一体の攻撃力を、元々の攻撃力の半分にする!『パワー・オブ・ラブ』!」
勇気の愛剣士
レベル7 ATK2600 DFE1200 地属性 魔法使い族
オーディナル・効果
地属性×2 「勇気」モンスター
このモンスターのカード名は「勇気の剣士」としても扱う。
①:一ターンに一度、SPを一つ消費し、相手の表側表示のモンスター一体を対象にして発動する。そのモンスターの攻撃力を、ターン終了時まで元々の攻撃力の半分にする。
『SP2』
努武&雛子 SP2→1
MJガトリング ATK2300→900
「……」
「……」
愛の……力?
ガトリングは力が落ちたというより、げんなりしたような雰囲気だが。
「そして、装備魔法『勇気の一撃』を発動!『勇気の剣士』モンスターが、相手モンスターと戦闘を行って相手に与える戦闘ダメージを二倍にする!」
勇気の一撃
装備魔法
「勇気の剣士」モンスターのみ装備可能
①:装備モンスターが相手モンスターと戦闘を行う場合、装備モンスターが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。
ほう。なるほどな。
ハーフライフデュエルでは、確かにこう言うカードはかなり強い。
「バトルよ!勇気の愛剣士で、MJガトリングを攻撃。これで私たちの勝ちよ!」
愛剣士がガトリングを切り裂いた。
……が。
「クリクリ~」
「!」
雛子が突然聞こえた声に驚く。
と思ったら、毛むくじゃらの悪魔が愛剣士の前でふよふよしていた。
「く……クリボー」
努武が驚愕するとともに、誠一郎は楽しそうに笑う。
「残念だったな。クリボーの効果を使って、戦闘ダメージを0にしたのさ」
雛子と努武がデュエルディスクを確認する。
すると、そこにはしっかりとクリボーの効果が発動していたことを示すアイコンが存在した。
いくら一撃で相手を倒せる準備を整えたとしても、肝心の戦闘ダメージを与えることができなければ意味が無いのだ。
最後まで気を抜くべきではないのだ。
「むううう。私はこれでターンエンドよ」
「なら、俺のターンだ。ドロー!」
さて、もういいだろう。
「おい君たち。カード一枚で勝つ戦術を知ってるか?」
「ど、どういうことですか?」
「カード一枚で勝つなんて……そ、そんなこと不可能よ」
まあ、普通ならな。
だが、アノニマス・トーナメントでグランドスラムを達成した誠一郎は、残念ながら、普通ではない。
「見せてやるよ。魔法カード『優しいフリした恋人』を発動。自分フィールドにカードが存在せず、相手フィールドに存在するモンスター一体の攻撃力が、自分のライフよりも多い場合に発動できる。相手フィールドのモンスター一体を破壊し、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える」
「「そんな……」」
優しいフリした恋人
通常魔法
①:自分フィールドにカードが存在せず、相手フィールドに存在するモンスター一体の攻撃力が、自分のライフよりも多い場合に発動できる。相手フィールドのモンスター一体を破壊し、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える。
「この効果に寄って、『勇気の愛剣士』を破壊して、その攻撃力分のダメージを与える」
「そんな……私のスキルは罠カードの効果を無効にできるけど……魔法カードの効果には対応してない……」
「というわけで、2600ポイントのダメージを受けてもらう!」
勇気の愛剣士が爆発する。
「うわああああ!」
「きゃああああ!」
努武&雛子 LP2000→0
まあ、こんな感じで勝利である。
「ま、こんなもんだ。相手が強ければ強いほど、俺は楽に勝てるんだよ」
「そ……そんなデュエリスト。聞いたことないわよ」
「そんなデュエリストがいたなんて……」
さすがにこんな奇天烈なデュエリストは他にはいないだろう。
まあ、今回はライフが少ないからこそ成立したものでもあるが。
いろいろ驚いているうちに、ゴールについたのでそこで降りた。
景品を後で受け取ることになるが、その前に、デュエルディスクを操作して、二枚のカードを取り出す。
二人に渡した。
「これは……」
「お前たちにやるよ」
「え……でも……」
「いいって、そのカードを渡せる性格をしているからな」
「むぅ……まあいいわ。ただでもらえるものはもらっておきましょう」
雛子はたくましいな。
誠一郎は刹那が待っているところに歩いていこうとした。
「あ、あの……」
努武が誠一郎に何か聞きたいことがあるようだ。
「どうした?」
「あの……どうやったら、強くなれるんですか?」
……ふむ。
誠一郎の片鱗に触れて何か感じたのだろうか。
「強くなるための方法なんて様々だ。この場で語れる程度のアドバイスで人が劇的に強くなるなら、苦労なんてしない」
「……それはそうですよね」
「ただ、一つだけ言えることはある。デュエルは楽しいものだってことを忘れないことだ。人は何かが嫌だと思った時、そこから抜け出そうと考え始める。だから、楽しいものだってことを忘れなければ、少なくとも、強くなるためのチャンスはいくらでもつかめるさ」
誠一郎が言えるのは。ここまで。
ここから先は、個人で考えることだ。
まず、つかめるチャンスを掴むことから始めるべきだ。
チャンスを活かせるかどうかではない。
それは、チャンスを活かす方法を知っているものが近くにいる者が考えることだ。
まずは、チャンスを掴むことからである。
「ま、楽しくやれよ」
誠一郎はそういいながら、刹那のところに向かっていった。
スタッフから景品としてクーポンをもらうまで、刹那は、努武と雛子を見ていた。
「何か思うことがあったのか?」
「……私も、あんなときがあったなって」
「そうだな。俺も、刹那には同じアドバイスをした記憶がある」
刹那がチャンスをつかめているのかどうかは、刹那が考えることだがな。
「……さて、他はどうしているのかね……」
面倒なことになっていないといいんだがな。と思いながら、誠一郎は溜息を吐いた。