遊戯王 Replica   作:レルクス

21 / 25
二十一話

 いろいろな意味で日常に戻った誠一郎たちだが、それでも、やることは多かった。

 

「俺個人のやることが増えたな……」

「お兄ちゃん。今回で散々暴れたもんね」

「しかも、デュエルするとなれば基本的に手は抜きませんからね……」

 

 ここ数日でかなり目立った誠一郎。

 実力があるのは確かだし、大会荒らしまでやったのだ。

 しかも、明らかに手を抜いていたことが分かるステージでのデュエルを除けばすべてパーフェクトである。

 いろいろなところから呼ばれるのも確かだし、スポンサー契約を済ませておきたいという会社も多い。

 言ってしまえば内定が確定しているといえる。

 

「しかも、その影響が私たちにもあるのよね……」

 

 彩里がそうつぶやいた。

 誠一郎の妹である刹那、従者であるフォルテ、交際中の彩里も例外ではない。

 誠一郎の実力の一端を持つと言われているのだ。

 とはいえ、やろうと思えば、誠一郎が持つ精霊力を詰め込んだデッキを作ることも可能であり、それを使うだけでもそんじゃそこらの奴には負けない。とは言え、癖の強い感じになるのは避けられないが。

 

「それにしても、天音ちゃんも強くなったね」

 

 彩里はタブレットに映る天音の記事を見ている。

 誠一郎に敗れた天音だが、そこからの戦績は良かった。

 ステージの回数も多くなったそうだが、誠一郎と回ったような自由時間も多くなったらしい。

 振り回されるスタッフには合掌である。

 

「そうだな」

 

 誠一郎はその記事を見て、人はカードで変われるものだと思った。

 

「さて、そろそろ行く時間だな」

 

 誠一郎は立ち上がると、全員が立ち上がって、学校に向かって歩きだした。

 

 ★

 

 放課後。

 誠一郎にもいろいろと人脈はある。

 今日は、その中の一つに寄っていた。

 

 学校から少々離れたところにある研究所。

 出入り口には二人の警備員が立っているが、誠一郎を見ると、即座に道を開ける。

 研究所の所長の知り合いであり、さらに言えば、資金的に言ってもスポンサーである誠一郎を止める理由はないし、仮に暴れたとしても誠一郎を止めることなどできないので、即座に開けるのだ。

 受付に行って、女性に確認する。

 

(あきら)は今はどこにいるんだ」

「第三研究室にいます」

「わかった」

「こちらがパスになります」

 

 それだけで会話終了。

 誠一郎はカードを受け取って、研究所の中を歩く。

 途中で白衣を着た研究員が歩いているが、誠一郎を見ると軽く礼をしている。

 

 誠一郎の影響力と言うのは、大きいところでは本当に大きいのである。

 

 第三研究室と書かれたドアの前に立つと、パスを当てて開錠した。

 自動で開いていく扉の向こうには、様々な計測器がおかれている。

 

 そして、三台並んでいるディスプレイの前で、ボサボサの黒髪と白衣が特徴の少年が唸っていた。

 

「晶。来たぞ」

「……………………………ん?」

 

 かなり長い沈黙があったが、少年はこちらを向いた。

 目の下に隈がある顔で、最近あまり寝ていないのがよく分かる。

 かなり痩せているが、いつも通りだ。

 

「ああ。誠一郎か。と言うことは前から二週間たっているんだな」

「相変わらずお前の時間の認識方法はいかれてるな……」

「ほとんどの工程に『待つ』と言うことを要求される実験が多いものでね」

 

 川下晶(かわしもあきら)

 今いる研究所の研究員の一人で、デュエリストとしては、誠一郎の弟子の一人。

 現在は、ノースセントラルに通っている。

 いや、在籍しているだけでほとんど通っていないか。

 

「で、分かったことはあるか?」

「リアリティ・テーゼが狙っているカードのことだったな。資料はそこにまとめてる」

 

 そういって晶が指差した先には、大量のお菓子の袋があった。

 

「……」

 

 誠一郎はその山を崩していくと、ファイルが出てきた。

 しかもファイルも大量にあった。

 

「……」

 

 誠一郎は少しイライラしていた。

 そのファイルも、何も目印がない。

 全て無地なのだ。どうやって見分けろというのだろうか。

 中身を確認しながら開いていき、三つ目が該当書類だった。

 

「お前、これ、いつ作ったんだ?」

「……さあ?」

 

 時間の感覚が違う奴に対して『いつ』という質問をした誠一郎もある意味で間違っている気がしたが、この男も大概である。

 

「……『神のカード』か」

「具体的には、『抜け殻の神の再生』と言ったところだろうね」

 

 五枚存在するらしい『神のカード』は、そのすべてが、三つの強力な効果を持っている。

 

「三種類の強力な効果を分割して封印しているのが、このデュエルスクールエリアの役割のようだ。リアリティ・テーゼはそれを狙っていて、それぞれに存在するデュエルモンスターズの名家がそれを防ごうと動いている。というのが、『裏』での動きらしい」

「晶はどう思っているんだ?」

「どんなカードだったとしても君は倒してしまうんだ。調べても無駄」

 

 それを言うと物語が終わってしまう。

 

「……」

「ただ、リアリティ・テーゼは君を回避して動く可能性もあるだろうし、止める意味はあるだろうね」

「まあ。言いたいことはよくわかった」

 

 誠一郎は近くの椅子に座った。

 

「そう言えば、晶はどれくらいデュエルしてるんだ?」

「腕が錆びない程度に」

「要するに上達はしていないのか……」

「それよりも研究だからね」

 

 晶の言い分に、誠一郎は溜息を吐いた。

 

「まあいいや。だが、デュエルを一回だけやろうぜ」

「ん?ああ、そうだね」

 

 晶は近くのアタッシュケースからデュエルディスクを取り出した。

 

 近くにおいている。と言うことは、最近触っている。ということだ。

 晶はそういう人間である。

 誠一郎は少しうれしくなった。

 

 

 晶は、研究所『DEラボ』の中では主任研究員として多くのプロジェクトに参加しているが、デュエルの回数は少ない。

 研究員の中でも、デュエルを見たいと言う人間は多かったようだ。

 

「あまりギャラリーが多いのは好きじゃないんだけど……まあいっか」

 

 だるそうにデュエルディスクを構える晶。

 相変わらずだが、それでも、デュエルの腕は下がっていないだろう。こいつはコイツでプライドが高いのだ。

 

 誠一郎もデュエルディスクを構える。

 

「さて、師匠。一戦やろうか」

「ああ」

 

 お互いにカードを五枚引いた。

 

「「デュエル!」」

 

 誠一郎 LP4000

 晶   LP4000

 

「先攻と後攻。どちらがいい?」

「師匠に先攻を渡したくないなぁ。僕のターンからだ」

 

 晶は一枚のカードを手に取った。

 

「まずはフィールド魔法『バクテリアラボ』を発動」

 

 デュエルコートが、一転して研究所のような雰囲気になる。

 

「ほう……」

「発動時の処理として、デッキから『バクテリアコロニー』一体を特殊召喚できる」

 

 

 バクテリアラボ

 フィールド魔法

 ①:このカードの発動時の処理として、デッキから「バクテリアコロニー」一体を特殊召喚する。

 ②:自分スタンバイフェイズ時に発動する。デッキから「細菌兵装」カード、または「覚醒水」カード一枚を手札に加える。

 ③:一ターンに一度、自分の墓地、または装備カード扱いになっている「バクテリアコロニー」一体を、自分フィールドに特殊召喚することが出来る。この効果は、このカードの①の効果を使ったターンに発動出来ない。

 

 バクテリアコロニー DFE0 ☆1

 

 出現したのは、水色に集まる細菌たち。

 見た感じ強そうではないし、実際に強くはないが、ここからの汎用性が真骨頂。

 晶のデッキのキーカードである。

 レベル1で、攻守0の通常モンスターだが、サポートカードが豊富だ。

 

 

 バクテリアコロニー

 レベル1 ATK0 DFE0 水属性 水族

 小さな細菌たちの集合体。

 集まっても小さな力しかないが、水に溶け込んだり、機械に侵入することで、その力を発揮する。

 

 

「カードを一枚セットして、ターンエンド」

「俺のターン。ドロー」

 

 さてと……。

 

「俺は手札一枚を捨てて、『星王兵リンク』を特殊召喚」

 

 星王兵リンク ATK1700 ☆4

 

「そして、墓地の『星王兵テーゼ』の効果発動。自分フィールドに星王兵モンスターが存在する時、墓地から特殊召喚できる。まあ、この効果で復活したテーゼは、フィールドを離れる時除外されるけどな」

 

 星王兵テーゼ ATK1600 ☆4

 

「リンクとテーゼを守備表示にすることで、リンクの効果を発動。デッキから、レベル8以下のオーディナルモンスター一体を手札に加える。俺が手札に加えるのは、『クリムゾン・ワイズマン』だ」

 

 晶の表情が変わった。

 さすがに、誠一郎のエースを警戒しないわけではない。

 

「そして、闇属性のリンクとテーゼをシンボルリリース。黒き七つの星々よ、閃光の果てに一つとなりて、賢者の宝玉を紅に染めろ。オーディナル召喚!レベル7『クリムゾン・ワイズマン』!」

 

 クリムゾン・ワイズマン ATK2500 ☆7

 誠一郎 SP0→2

 

「さて、晶。どこまで食らいつけるか試してやる。魔法カード『序数賢者のナイフスキル』を発動。ライフを1000ポイント払う必要があるが、それを踏み倒して、相手モンスター一体を破壊する」

 

 

 序数賢者のナイフスキル

 通常魔法

 ①:1000ポイントのライフをはらい、相手モンスター一体を対象にして発動できる。そのモンスターを破壊する。

 

 

「通さないさ。罠モンスター『細菌兵装シャワーユニット』を発動。バクテリアコロニーを装備しつつ。このモンスターを守備表示で特殊召喚する」

 

 細菌兵装シャワーユニット DFE2000 ☆4

 

 シャワーが付いた箱が出現し、バクテリアコロニーが入って行く。

 すると、起動し始めた。

 

「これで、ナイフスキルの効果は不発になる。そして、シャワーユニットがバクテリアコロニーを装備している時、相手フィールドのレベル5以上のモンスターは攻撃できない」

 

 

 細菌兵装シャワーユニット

 永続罠

 ①:自分フィールドの「バクテリアコロニー」を一体を対象として発動できる。このカードは発動後、効果モンスター(機械族・地属性・星4・攻0/守2000)となり、モンスターゾーンに守備表示で特殊召喚する。その後、対象の表側表示モンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。このカードは罠カードとしても扱う。

 ②:このモンスターが「バクテリアコロニー」を装備している時、相手フィールドのレベル5以上のモンスターは攻撃できない。

 

 

「2000のライフコストを踏み倒して、魔法カード『序数賢者の慧眼』を発動。デッキからカードを二枚ドローして、その二枚が、モンスター、魔法、罠の三種類で見て同じ種類のカードだった場合、ターン終了時まで、自分フィールドのオーディナルモンスターは相手のカード効果を受けない」

 

 

 序数賢者の慧眼

 通常魔法

 このカード名の効果は一ターンに一度しか使用できない。

 ①:2000ポイントのライフをはらって発動できる。デッキからカードを二枚ドローし、カードの種類(モンスター、魔法、罠)が同じだった場合、ターン終了時まで自分フィールドのオーディナルモンスターは相手のカードを効果を受けない。

 

 

「二枚ドロー。俺がドローしたのは『序数のバリア -オーディナルフォース-』と『序数賢者の領域』。どちらも罠カードだ。これで、俺のワイズマンは、シャワーユニットの効果を受けない」

「な……」

「クリムゾン・ワイズマンで、シャワーユニットを攻撃。『クリムゾン・ビジョン』!」

 

 ワイズマンの攻撃で、シャワーユニットが破壊される。

 

「俺はカードを二枚セット、ターンエンドだ」

「僕のターン。ドロー!スタンバイフェイズ。『バクテリアラボ』の効果が発動。デッキから『覚醒水ブレイジウム』を手札に加える」

「ほう……」

「そしてメインフェイズ、バクテリアラボの効果で、墓地のバクテリアコロニーを特殊召喚」

 

 バクテリアコロニー DFE0 ☆1

 

「そして魔法カード『覚醒水ブレイジウム』を発動。自分フィールドのバクテリアコロニーは、炎属性になる。そしてこのターン。炎属性のバクテリアコロニーオーディナルモンスターを、デッキからオーディナル召喚できる」

「バクテリアコロニーの真骨頂だな」

 

 

 覚醒水ブレイジウム

 通常魔法

 「覚醒水」と名の付いたカードは一ターンに一度しか発動出来ない。

 ①:自分フィールドの、全ての「バクテリアコロニー」の属性は炎属性になり、この効果を使ったターン終了時まで、デッキのオーディナルモンスターをオーディナル召喚できる。

 

 

「僕は炎属性のバクテリアコロニーをシンボルリリース。オーディナル召喚!レベル5『バクテリアコロニー・ブレイズ』!」

 

 バクテリアコロニー・ブレイズ ATK0 ☆5

 晶 SP0→1

 

「ブレイズの効果発動。相手モンスター一体を対象にして、そのモンスターを攻撃力と同じにする」

 

 バクテリアコロニー・ブレイズ ATK0→2500

 

 

 バクテリアコロニー・ブレイズ

 レベル5 ATK0 DFE0 炎属性 水族

 オーディナル・効果

 炎属性×1

 このカードは「覚醒水」魔法カードが発動されていないターン中、オーディナル召喚はできない。

 ①:このモンスターは戦闘では破壊されない。

 ②:一ターンに一度、相手モンスター一体を対象にして発動できる。このカードの攻撃力は、そのモンスターの攻撃力と同じになる。

 『SP1』

 

 

「なるほどな。バクテリアコロニーオーディナルモンスターは、戦闘で破壊されない共通効果を持っている。だが、分かっているよな」

「さすがの僕も、伏せカードを警戒しないわけではない。魔法カード『ハーピィの羽根箒』を発動。魔法、罠を全て破壊する」

「やるなぁ……」

 

 全て破壊された。

 

「バトル。バクテリアコロニー・ブレイズで、クリムゾン・ワイズマンを攻撃」

「……だが、その程度では俺のワイズマンは越えられない。墓地の『序数賢者の領域』の効果を発動。墓地のこのカードを除外することで、自分フィールドの魔法使い族オーディナルモンスターは、戦闘、効果では破壊されない」

 

 

 序数賢者の領域

 永続罠

 ①:このカードが表側表示で存在する限り、自分フィールドの魔法使い族オーディナルモンスターは、戦闘では破壊されない。

 ②;墓地のこのカードを除外して発動できる。ターン終了時まで、自分フィールドの魔法使い族オーディナルモンスターは、戦闘、効果では破壊されない。

 

 

 ブレイズは燃え上がった何かを放出するだけで終わった。

 お互いに戦闘で破壊されないのだから当然である。

 

「僕はカードを一枚セットして、ターンエンド」

「俺のターン。ドロー……一応言っておくが、このターンで終わるぞ」

「!」

 

 晶が気を引き締める。

 だが……。

 

「俺を相手に気を抜かない方がいいのは、今に始まったことじゃないんだがな。SPを1つ使って『ゼロ・クライシス』を発動。ブレイズの攻撃力を0にする」

「しまった……」

 

 バクテリアコロニー・ブレイズ ATK2500→0

 

「そして、『一騎加勢』『サイクロン』を使い、攻撃力を上げて、セットカードを破壊する」

 

 クリムゾン・ワイズマン ATK2500→4000

 

「あっけなかったな。クリムゾン・ワイズマンで、バクテリアコロニー・ブレイズを攻撃、『クリムゾン・ビジョン』!」

 

 晶 LP4000→0

 

 一ターン長くなっただけ、ほぼワンショットキルだ。

 

「なんか。あっさり負けちゃったな」

 

 晶はうなだれているが、誠一郎のデュエルはシンプルなものだ。

 ただし、マストカウンターは決まっているが、仮に止めたとしても反撃してくるのが誠一郎と言う男である。

 

「まだまだ精進することだな」

「……わかったよ。師匠」

 

 晶は溜息を吐いて、誠一郎は微笑んでいた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。