遊戯王 Replica   作:レルクス

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二十三話

「海だああああああ!……あれ、みんな乗ってくれないの?」

 

 海で大はしゃぎする天音。

 その姿は紫のビキニである。

 

「俺は海ではしゃぐ性格じゃないしな」

「私は海は慣れてるわよ」

「はしゃぐほど私は子供ではないので」

「大声出すの無理です」

「思ったより疲れるわよ。それ」

「楽しいとは私も思いますけど」

「僕はそんなことで一々テンションなど上げない」

 

 誠一郎、彩里、フォルテ、刹那、聖、聡子、宗達の七人からフルボッコにされる天音。

 ちなみに、女性陣は全員ビキニで、彩里は黒、フォルテは黄色、刹那は白、聖は赤、聡子は水色だ。

 どうでもいいが、誠一郎は赤のボクサーパンツのようなもので、宗達は黒のラッシュガードである。

 

「みんなしてそんなこと言わなくていいじゃん……」

 

 急にいじける天音である。

 まあ、なんだ。美少女が海で戯れるというのも悪くはないものだ。

 

(久しぶりに来たな。ここ)

 

 誠一郎は、ここに来るまでの経緯を思い出していた。

 

 彩里が海に行きたいと言いだして、皆予定がなかったので行くことになった。

 刹那が最後まで反対していたが、彩里が賛成で、誠一郎とフォルテは棄権。

 だが、ここで彩里は、聡子に電話したのだ。

 当然のことながら、聡子は賛成。

 

 刹那は誠一郎とフォルテの懐柔を始めたが、はっきり言ってこう言うときの彩里は手に負えないのでスルー。

 結果的に行くことになった。

 

 海に行く。と言ったものの、実質は強化合宿。

 その話を聞いた宗達が話に入ってきて、どこから聞きつけたのか天音が参加。

 誠一郎はツッコミ役を求めて聖を説得。今に至るということだ。

 

 ちなみに、砂浜はとてもきれいで、海も透明度が高くリゾート地にすごく適しているが、誠一郎の私有地である。

 

「刹那ちゃん。サンオイル塗ってあげるよ」

「嫌!」

 

 彩里がギラギラした目で刹那を見る。

 ダッシュで海に逃げようと走りだす刹那だが、簡単に捕まった。

 スポーツ全能の彩里に対して、単にバランス感覚がいいだけの刹那では抵抗など不可能である。

 

「んっ!ちょっ。変なところ触らないで!」

「ムフフフ……ここまで無防備な刹那ちゃんは普段は見ないからねぇグフフフ」

 

 女子が出してはいけないような黒い笑みと声で刹那の体をまさぐり始める刹那。

 

「あっ!……うんっ!」

 

 敏感なところを触られるたびに喘ぎ声を出す刹那。

 

「フフフ、もう私も我慢できません!」

 

 聡子も参加。

 

「い、いやあああ!」

 

 刹那の悲鳴が響く。

 だが安心したまえ、ここは誠一郎の私有地、関係者以外は誰もいないのだ。

 

「一体何がしたいんだあのバカは」

「ラッシュガードなんて着て一番ガードが堅いお前が言ってもなぁ」

 

 興味がないとばかりに、表情を変えず波を見る宗達に対して、誠一郎は呟く。

 

「あ、なんか天音も混ざり始めた」

「いじると面白いからじゃないの?」

 

 聖が溜息を吐きながらそう呟く。

 見方がいないのはいつも通りだが、まあ、小動物的な雰囲気で生まれてしまった刹那の運命である。

 

「平和ですね」

「フォルテ、この状況でそれを言える君の神経、太すぎるだろ」

 

 何かを悟ったような、そんな顔をフォルテはしていた。

 

 ★

 

 海と言うのは発想力があれば意外と遊べるもので、単純に泳ぐのはもちろん、砂浜で城や空母(!?)を作ったり、ボードがあればサーフィンも行ける。

 なお、泳ぐのは当然とばかりに誠一郎が一番。二番が彩里だった。

 まあ、このあたりは安定である。と言うか化け物である。

 

 あと……胸って浮くのだ。

 刹那は泳げないが、溺れないのだ。

 バストサイズだけで言えばこの中で一番すごいのである。

 

 ちなみに宗達も泳げなかった。意外とクールにこなしそうな雰囲気があったのだが、そんなことはなかった。

 

「ひっく……ぐすっ……」

 

 シャワーも浴びていろいろながした後、別荘に入った誠一郎たち。

 なのだが、刹那だけは部屋の隅の方で泣いていた。

 いじられ過ぎて精神にダメージがあったのだ。

 フォルテが『ダメージ・ワクチンΩMAX』を使うような感じで慰めている。ディアン・ケトでは足りません。

 

「で、そもそもの目的は合宿だからね。デュエルするんでしょ?」

「そうなるな」

 

 あくまでもそうなのだ。それをしないと単に遊びに来ただけになってしまう。

 そうなると、泳ぐのが苦手で、合宿だから付いてきた宗達が怒りだすだろう。

 

「で、誰と誰がする?」

「くじで決めよう!」

 

 どこから取り出したのか、彩里が割り箸をとりだした。

 八本ある。

 

「赤く塗っている箸が二本だけあるから、その二人がデュエルする。これでいいかな」

 

 全員が頷いた。

 というわけで……。

 

「あたった」

「む……」

 

 宗達と刹那というカナヅチコンビが引いた。

 

「……まあ、引いたんだし、二人でやってみなよ」

 

 と言うわけで、デュエルコートに移動する。

 

 ★

 

 別荘の近くにはデュエルアリーナが存在する。

 それはそれなりに広いもので、なんでこんなものを立てたのか自分でも思いだせないが、とりあえずあるのだ。

 

「ちょっと待て、なぜギャラリーが多いんだ」

「当たり前だろ。この広さの施設を俺達だけで回せるわけないだろうが……」

 

 多くの使用人がいるのだ。

 彼らの仕事は、誠一郎が保有するリゾート地を転々として、何時でも使用可能な状態にしておくことである。

 意外と使用回数が多いのだ。弟子たちがそれなりにいるので。

 

「まあいい。いつも通りデュエルするだけだ」

「負けないもん!」

 

 クールな様子でデュエルディスクを構える宗達に対して、両手を腰に当てて「ふんす」と言った雰囲気の刹那。

 客席からは本当に小動物でも見るかのような、そんな空気が充満する。

 誠一郎は『ヤベエよだれ出てきた』というのを誰かが言ったような気がしたが、あえて聞き流すことにした。

 

 そうしている間に、二人がデッキからカードを五枚引く。

 

「「デュエル!」」

 

 刹那 LP4000

 宗達 LP4000

 

 先攻は刹那。

 

「私の先攻。手札から『MJ(モーメントジェット)メタル』を召喚!」

 

 盾をとりつけた戦闘機が出現する。

 

 MJメタル ATK1900 ☆4

 

「私はカードを一枚セットして、ターンエンド!」

「僕のターン。ドロー」

 

 宗達は一瞬だけ伏せカードを警戒するそぶりを見せたが、すぐにカードを使い始める。

 

「僕は手札から魔法カード『リグレット・トレード』を発動。手札の『リグレット』モンスター一体をコストに、デッキからカードを二枚ドローする」

 

 

 リグレット・トレード

 通常魔法

 ①:手札の「リグレット」モンスター一体を捨てて発動できる。デッキからカードを二枚ドローする。

 

 

「そして、墓地に送った『リグレット・カウント』の効果。自分フィールドにカードがない時、500ポイントのライフをはらうことで特殊召喚できる」

 

 宗達 LP4000→3500

 リグレット・カウント ATK2400 ☆7

 

「そして、カウントが自身の効果で特殊召喚に成功した時、デッキから、このカードよりも低いレベルのリグレットモンスターを手札に加えることが出来る。僕は『リグレット・バロン』を手札に加える。そして、リグレット・バロンがドローフェイズ以外で手札に加わった場合、特殊召喚して、相手フィールドのモンスター全てにリグレットカウンターを置くことが出来る」

 

 リグレット・バロン ATK2000

 MJバリア RC0→1

 

 

 リグレット・カウント

 レベル7 ATK2400 DFE1500 闇属性 戦士族

 このカード名の①の効果は一ターンに一度しか発動出来ない。

 ①:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、500ポイントのライフをはらって発動できる。墓地のこのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたこのカードがフィールドを離れる場合、除外される。

 ②:このカードが、このカードの①の効果に寄って特殊召喚に成功した時発動できる。デッキから、このカードよりもレベルが低い「リグレット」モンスター一体を手札に加える。

 

 

「む……」

 

 ここまで、実質的に手札消費はゼロだ。

 だが、宗達の場には、攻撃力2400の2000のモンスターがいる。

 しかも、リグレットカウンターもしっかりおいている。

 

 観客席では誠一郎たちが唸っていた。

 

「……あのカウントってカード、強いな」

「そうね。墓地にさえ送れば、自身の特殊召喚とサーチを行える。それでいて、もともとサーチカードと相性抜群のバロンもいる。それなりに強力なデッキね」

 

 誠一郎の呟きに対して、彩里が頷く。

 パワーカード。と言えるだろう。

 自分フィールドにモンスターがいないことを条件とするモンスターはそれなりに多いが、カウントはその中でも汎用性が高い。

 

 宗達はバトルフェイズに入ることにしたようだ。

 

「バトルフェイズ。リグレット・カウントで、MJメタルを攻撃!」

「MJメタルが攻撃表示の時、戦闘では破壊されない!」

 

 

 MJメタル

 レベル4 ATK1900 DFE200 光属性 戦士族

 ①:このモンスターが攻撃表示の時、戦闘では破壊されない。

 

 

「だが、ダメージは受けてもらう。そして、バロンも攻撃だ」

「む……」

 

 刹那 LP4000→3500→3400

 

 戦闘破壊耐性。

 それはそれなりにダメージを抑えることができるものだ。

 

「……僕はカードを一枚セット。ターンエンドだ」

「私のターン。ドロー!」

 

 刹那はドローしたカードを見て頷いた。

 いいカードを引いたようである。

 

「罠カード『モーメント・オブジェクション』を発動。フィールドにいるMJと同名モンスターをデッキから特殊召喚する!」

 

 もう一体のメタルが飛んできた。

 

 MJメタル ATK1900 ☆4

 

「来るか」

「私は光属性のメタル二体をシンボルリリース。竜の核を宿し、刹那を超えて飛翔せよ!オーディナル召喚!レベル7。『MJ《モーメントジェット》ギガドラゴン』。Takeoff!」

 

 MJギガドラゴン ATK2500 ☆7

 刹那 SP0→2

 

「ギガドラゴンか」

「効果発動。SPを一つ使って、相手フィールドの魔法、罠を二枚まで選択して手札に戻す!」

 

 宗達のセットカードが手札に戻る。

 

「そして、バトル!MJギガドラゴンで、リグレット・カウントを攻撃!モンスターとのバトルを行うとき、相手に与える戦闘ダメージは倍になる!」

 

 宗達 LP3500→3300

 

「……」

「私はこれで、ターンエンド!」

 

 『フフン』と言いたそうに胸を張る刹那。

 大きな胸が揺れるが、やはりそこは刹那。色っぽさは薄く、小動物っぽさしかない。

 

「……なんというか、君が大人になる日は遠いんだな。と僕は思う」

「むううううううう!」

 

 両手を突き上げて怒りを表す刹那。

 だが……確かに、遠いようだ。

 

「僕のターン。ドロー。僕は闇属性のリグレット・バロンをシンボルリリース」

「え!?」

 

 刹那が驚く。

 刹那の頭の中では、宗達が使うオーディナルモンスターは、あのドラゴンしかいなかったのだ。

 

「何を驚いている。確かに、ギルティアイズは僕のエースモンスターだが、他にオーディナルモンスターが入っていないとは一言も言っていない」

「む……」

「小さな想定外はたくさんあるものだ覚えておくといい。後悔におぼれる魔の貴族よ、自責の(つるぎ)を振るい、活路を開け」

 

 シンボルが騎士になる。

 

「オーディナル召喚、レベル6『リグレット・ニアガード』!」

 

 リグレット・ニアガード ATK2500 ☆6

 宗達 SP0→1

 

「レベル6のリグレットモンスター……」

「ほう、初見で考え着いたみたいだな。君が考えた通り、このモンスターはリグレット・カウントの効果でサーチ出来る。覚えておくといい。あと、ニアガードの効果により、僕のフィールドのリグレットモンスターは、戦闘では破壊されない」

「!」

 

 

 リグレット・ニアガード

 レベル6 ATK2500 DFE1000 闇属性 戦士族

 オーディナル・効果

 闇属性×1

 ①:このモンスターがフィールドに存在する限り、自分フィールドの「リグレット」モンスターは戦闘では破壊されない。

 『SP1』

 

 

「バトルフェイズ。リグレット・ニアガードで、ギガドラゴンを攻撃」

 

 攻撃力は同じだが、破壊されるのはギガドラゴンだけだ。

 

「む、むぅ……」

「僕はカードを一枚セットしてターンエンドだ」

「私のターン。ドロー!」

 

 刹那は若干焦っているようだ。

 とはいえ、宗達は強いからなぁ……。

 

「私は手札から『モーメント・ロンギング』を発動。墓地の『MJ』オーディナルモンスターをデッキに戻すことで、自分フィールドに、墓地のMJ同名モンスターを二体特殊召喚できる」

 

 

 モーメント・ロンギング

 通常魔法

 「モーメント・ロンギング」は一ターンに一度しか発動できない。

 ①:自分の墓地の「MJ」オーディナルモンスター一体をデッキに戻して発動できる。墓地の「MJ」同名モンスター二体を特殊召喚する。

 

 

 MJメタル ATK1900 ☆4

 MJメタル ATK1900 ☆4

 

「そして、光属性『MJ』であるメタル二体をシンボルリリース!限界を超えて、刹那の中を貫け!オーディナル召喚!レベル9『MJペタドラゴン』!Takeoff!」

 

 MJペタドラゴン ATK3000 ☆9

 刹那 SP1→3

 

「レベル9のオーディナルモンスター……」

「効果発動。SPを二つ使うことで、ターン終了時まで、相手フィールドのカードの効果は無効になる」

 

 刹那 SP3→1

 

 ペタドラゴンが音波を発生させ始める。

 

「罠発動。『リグレット・エンハンス』を発動。自分フィールドにリグレットモンスターが存在する場合に発動。相手が発動したモンスター効果を無効にする」

 

 

 リグレット・エンハンス

 通常罠

 ①:自分フィールドに「リグレット」モンスターが存在し、相手モンスターの効果が発動した場合に発動できる。その効果を無効にする。

 

 

 表になった罠カードからレーザーが放出されるが、ペタドラゴンの音波は止まらない。

 

「どうなっている?」

「ペタドラゴンの効果は、『無効にならない』」

 

 この瞬間、観客席のほうでも驚くものは多かった。

 

「無効にならない起動効果ですか……」

「急に来たら驚異的じゃん……」

 

 フォルテと聖が嫌そうな顔をする。

 二人とも、永続罠、装備魔法など、表になっているカード効果をうまく使って戦うタイプだ。こういうのは苦手だろう。

 

「強いモンスターを手に入れましたね……」

「私も初めて聞いたよ。無効にならない効果はそれなりにあるけど、起動効果っていうのは……」

 

 聡子と天音も驚いているようだ。

 ただ、聡子は微笑んでいる。

 どちらかというと自分の娘ががんばっているのを見守っているような雰囲気だ。

 

「バトル。ペタドラゴンで、リグレット・ニアガードを攻撃!」

 

 宗達 LP3300→2700

 

「よし、これでターンエンド!」

 

 そういって笑顔になる刹那。

 宗達はそれを見て微笑んだ。

 

「誠一郎の妹としてしか見ていなかったが、その力は、どうやらそれだけではないようだ」

「え?」

「僕のターン。ドロー。『異次元からの埋葬』を発動し、除外されている『リグレット・カウント』を墓地に戻す。そして、効果発動だ。ライフを払って特殊召喚し、デッキからバロンを特殊召喚。ペタドラゴンにはカウンターを置かせてもらう」

 

 宗達 LP2700→2200

 リグレット・カウント ATK2400 ☆7

 リグレット・バロン ATK2000

 MJペタドラゴン RC0→1

 

「闇属性のカウントとバロンをシンボルリリース」

「む!?」

「正直、君に出すことになるとは思っていなかったんだが、コイツも、君と戦いたくて仕方がないらしい。行くぞ。後悔に呑まれる黒竜よ。今その姿を現し、罪の渦巻く世界で猛威を振るえ!オーディナル召喚!レベル8『有罪眼の後悔竜(ギルディアイズ・リグレット・ドラゴン)』!」

 

 有罪眼の後悔竜 ATK3000 ☆8

 宗達 SP1→3

 

「ぎ……ギルティアイズ……」

「効果発動。相手モンスター全てにリグレット・カウンターを置く」

 

 MJペタドラゴン RC1→2

 

「そして、魔法カード『リグレット・ライズ』を発動。相手フィールドに存在するリグレット・カウンターをすべて取り除くことで、その数一つにつき、自分フィールドのリグレットモンスター一体の攻撃力を300ポイントアップさせる」

 

 MJペタドラゴン RC2→0

 有罪眼の後悔竜 ATK3000→3600

 

「そして魔法カード『ゼロ・クライシス』を発動。SPを使って、相手モンスター一体の攻撃力を0にする」

 

 宗達 SP3→2

 MJペタドラゴン ATK3000→0

 

「バトルフェイズ。ギルティアイズで、ペタドラゴンを攻撃。『壊滅のリグレット・ストリーム』!」

「きゃあああああ!」

 

 刹那 LP3500→0

 

 刹那のLPが吹き飛んだ。

 

「む、むうううう!」

「……周りが小動物という理由が本当に分かった気がする」

 

 唸り声をあげる刹那だが、なんともまあ……うん。がんばれ。と言いたくなるのだった。


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