結局、遺跡には何もなかった。と言うことにした。
「でまあ、あー……うん。そんな感じなんだけどさ」
「どうしたのですか?そんな苦い表情をして」
「いや、なんで宗達が聡子の膝枕で寝ているのかってことを聞きたいんだよ。俺は」
遺跡から帰って来た次の日。
誠一郎は聡子と話していた。
宗達のこともちょっと話しておいた方がいいと思ったからである。
で、近くにいるので来てほしいということで行ってみると、小さな公園のベンチに聡子が座っていた。
そこまでなら誠一郎としても何も言う必要はないのだが、聡子の膝枕で宗達が寝ているとなればいろいろ言いたいことがあるのも当然である。
しかし、公園のベンチで着物姿で座っているというのもなかなか聞かない話である。
ていうか、聡子の着物姿以外の格好を誠一郎は知らないわけだが。
「zzz……」
すやすやと眠っている宗達。
昨日まで見せていた隙の無い雰囲気も、聡子の母性の前には防御力はゼロだったようだ。
「遠い親戚なのですよ。時々あっていますから」
「まあ、そういう仲だということにしておくとして……しかし、どっちも諜報部隊を持っていて、内容のジャンルに差があると思っていたが、それはこういうことだったのか」
「そうですね。常にアンテナを立てているのが私で、宗達君は深いところまで潜りこんでいます。優秀な部下が二人いますが、基本は宗達君が動いていますからね」
そういいながら宗達の頭をなでる聡子。
宗達は気持ちよさそうな表情になった。
「こうしてみると、宗達も普通の高校生だな……」
学校には通っていないようだが。
「あら、誠一郎さんは違うのですか?」
「知らん」
だって気にしないし。
「で、リアリティ・テーゼの目的は分かったのか?」
「ええ……どうやら、『神のカード』というものを研究している要です」
「神のカード?」
「はい。六体の神と、それらを束ねる何かが存在する。ということは分かりました」
「ふむ……」
「黄金色の遺跡ですが、あの遺跡に存在する『普通なら白紙にしか見えない三つの石板』には、そのうちの一体の力を三分割して封印している。という研究結果の要です」
「神の力ねぇ……」
まあ、まだよくわからない部分もあるが、それは言っても仕方がないか。
「誠一郎さんは何か知りませんか?」
「分からん。が、それ以上に気になるのは、その神のカードを研究するうえで、ホワイトブランクモンスターが開発することが出来た。ということだが……」
「確かに、そこから切り崩していくのもいいですね」
「で、ハーベリアは?」
「宗達君から身柄は預かりましたが、水谷家の本家からいろいろと横やりが入って、今は私にも手を出せない状態になりました」
……。
「とはいえ、宗達君によると、ハーベリアは末端の研究員と言うことらしいですね。だからこそ、私に法に送ってきたということもあります」
「用済みってことか」
「簡単に言うとそうですね」
「ま、何か分かったら教えてくれ。ヤバくなったら俺が無理矢理に介入する」
「それはそれで助かりますが……」
ん?何か気になることがあるのか?
……ああ。そう言うことか。
「一応言っておくが、世界って言うのはイーストセントラルだけじゃないからな?」
「……!」
誠一郎の言い分で、聡子は自分が持っていた疑問を解決させたようだ。
「そんじゃまた」
「ええ。そうですね」
誠一郎は公園を後にした。
★
さて、朝っぱらから会っていた誠一郎だが、授業があるのは確かなことで……。
「ん?今日はイベントがあるのか?」
「デュエリストの養成学校だから、そういったイベントに関しては豊富なのよ」
誠一郎は基本的に自分に関係のないスケジュールには目もくれない。
というか、興味がわく精神年齢ではない。
付け加えるなら、興味を持っても大概意味が無い。
「高等部一年生は、全員が中等部二年とデュエルする見たい。まあ、私たちにとっては、中等部を相手にすることで、高等部に上がったばかりで若干調子に乗っている生徒を引き締める部分もあるだろうし、中等部にとっては、高等部の生徒の実力を実感することが必要になるってことだと思うよ」
「ふむ……なるほど」
聖の説明で理解した。
「誠一郎様はどうするのですか?」
「さあ、具体的にどういうイベントなのかは知らないからな……」
何をやるのかわからない。
「……まあ、午後になればわかるだろう」
かなり軽く考えている誠一郎だった。
★
基本的には聖が説明した感じの通りだ。
イーストセントラルはデュエリスト養成学校で、かなりの実力者が毎年輩出されている。
プロと言っても、首都圏で活動するものと地方で活動するものの二種類に分かれるのだが、まあ、中等部二年と言う年齢も、高等部一年と言う年齢も、それ相応に多感な時期なので、こう言った部分は必要なのだそうだ。
それぞれのクラスで割り当てられ、一応ランダムで選出される見たいなのだが……。
「……なんで、お兄ちゃんと……」
第四実習室。
そこに、それぞれのクラスがランダムに選ばれてマッチングが行われる。
中等部二年からランダムで選ばれたのは遊霧刹那。
そして……高等部一年から選ばれたのは、遊霧誠一郎。
まさかの兄妹対決だった。
しかも、それはそれなりにギャラリーがいる中で。
「まあ、安心しろ。刹那のプレイングを温かく見守ってやるから」
「これから対戦相手としてデュエルするんですよね」
後ろからフォルテのツッコミが入るが、誠一郎は気にしない。
「おかしい、絶対に誰かたくらんだ人がいる」
刹那がきょろきょろとあたりを見渡す。
すると……こちらに向かって手を振っている聡子が目に入った。
「……むうううううう!」
何を言えばいいのかわからなくて結局意味の分からない唸り声を出す刹那。
もちろん、小動物の雰囲気MAXの刹那がそんなことをしても地団太を踏む小学生のようなものなので、高等部一年の生徒は温かい目で見ている。
ちなみに、聡子は奔放な性格だ。中等部からこんな感じでイベントとなるといろんなところに出はいりしているので、いることそのものに驚いている人間はいない。
「誠一郎。手加減してやれよ~」
「分かってるって」
誠一郎はクラスメイトからそんなことを言われる始末。
もちろん、誠一郎は刹那とデュエルをしてもダメージを追うほどの実力ではないので笑って返す。
「刹那ちゃん!ここは一発お兄さんをぶっ飛ばしてやりなさい!」
「………………………………………無理!」
クラスメイトの物騒な声援に対して、かなり長い時間を空けた後、開き直る刹那。
「さて、そろそろ始めようか。安心しろ。ワンカードキルはしないからな」
「むううううう!!!!!」
今度は両手をグーにして唸り声なのか咆哮なのか判別できない声を出す刹那。
だが、もうあとはデュエルするしかないと思ったのだろう。
デュエルディスクを構える。
誠一郎もデュエルディスクを構える。
「「デュエル!」」
誠一郎 LP4000
刹那 LP4000
「先攻と後攻。どっちがいい?」
「先攻!」
デュエルモンスターズのルール上、後攻の方がドロー出来る分動ける枚数は多いのだが、逆に先攻を譲りたいかと言われるとそういう相手ではない。
刹那はどちらがいいのかを聞かれることを恥ずかしがることもなく、即座に先攻を選択した。
「おう、いいぞ」
「私のターン。私は手札から、『
実習室で跳び始めるライフル搭載の戦闘機。
MJライフル ATK1700 ☆4
「カードを二枚伏せて、ターンエンド」
「なら、俺のターン。ドロー。俺は手札一枚を捨てて、『星王兵リンク』を特殊召喚」
星王兵リンク ATK1700 ☆4
ギャラリーがざわめき始める。
思えば、誰かが見ているデュエルで、誠一郎が自分のモンスターを召喚したのは初めてなのだ。
「そして、墓地の『星王兵テーゼ』の効果発動。自分フィールドに星王兵モンスターが存在する時、墓地から特殊召喚できる。まあ、この効果で復活したテーゼは、フィールドを離れる時除外されるけどな」
星王兵テーゼ ATK1600 ☆4
星王兵テーゼ
レベル4 ATK1600 DFE1300 闇属性 戦士族
①:自分メインフェイズに発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果は自分フィールドに「星王兵」モンスターが存在する場合に発動と処理ができる。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。
「リンクと……星王兵モンスター……」
「覚えてるよな。リンクと、自分フィールドの星王兵モンスターであるテーゼを守備表示にすることで、リンクの効果を発動。デッキから、レベル8以下のオーディナルモンスター一体を手札に加える。俺が手札に加えるのは、『クリムゾン・ワイズマン』だ」
「!」
星王兵リンク
レベル4 ATK1700 DFE1000 闇属性 戦士族
「星王兵リンク」は自分フィールドに一枚しか存在できない。
①:手札を一枚捨てて発動できる。手札のこのカードを特殊召喚する。
②:このカードと、このカード以外の自分フィールドの「星王兵」モンスター一体を守備表示にして発動できる。デッキからレベル8以下のオーディナルモンスター一体を選択して手札に加える。
「そして、闇属性のリンクとテーゼをシンボルリリース。黒き七つの星々よ、閃光の果てに一つとなりて、賢者の宝玉を紅に染めろ。オーディナル召喚!レベル7『クリムゾン・ワイズマン』!」
クリムゾン・ワイズマン ATK2500 ☆7
誠一郎 SP0→2
「い……いきなりワイズマンが……」
「これくらいは俺を相手にするなら普通だぞ。バトルだ。クリムゾン・ワイズマンで、MJライフルを攻撃」
「MJライフルは、戦闘を行うとき、相手フィールドの魔法、罠の効果は無効になるけど……」
MJライフル
レベル4 ATK1700 DFE800 光属性 戦士族
①:このモンスターが戦闘を行う場合、相手フィールドの魔法、罠の効果は無効化される。
「当然、意味はない。『クリムゾン・ビジョン』!」
刹那 LP4000→3300
「カードを一枚セットして、ターンエンドだ」
「私のターン。ドロー!……まずは罠カード『モーメント・ホログラム』を発動。自分フィールドにモンスターが存在しない時、墓地の『MJ』モンスター一体を除外して、同名モンスター二体を、効果を無効にして特殊召喚する」
MJライフル ATK1700 ☆4
MJライフル ATK1700 ☆4
「そして、光属性のライフル二体をシンボルリリース!さらなる進化を得て、刹那の中で飛び立て!オーディナル召喚!レベル8『MJテラドラゴン』TAKEOFF!」
MJテラドラゴン ATK2800 ☆8
刹那 SP0→2
「オーディナル召喚……ま、遊んでやるからかかってこい」
「むうううううう……!」
やはりというかなんというか、誠一郎は余裕を崩すことはない。
そして、ふとここで刹那は何かの視線を感じる。
(……?)
どこからだ?と思っていたが、それはすぐにわかった。
それは……今対峙している、クリムゾン・ワイズマンだ。
なんか頑張る娘を見る父親のような雰囲気で刹那を見ている。
「絶対にダメージを与えるもん!」
「勝つとは言わないんだな」
「無理!」
誠一郎の妹だからだろう。開き直るのがすごく早い。
思わずほっこりするデュエルイベント。
大した駆け引きは、まだあるようには見えない。
ただし、それでも誠一郎は微笑んでいる。