真・恋姫†無双 鬼龍伝   作:三十路のおっさん

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貫いた想い

少女はたった今、自分の主君、華琳様から出た言葉に沸き上がる怒りを抑えるので必死だった。

 

「「華琳様!!」」

 

華琳様の言葉に驚きの声を上げる春蘭様、桂花様。他の皆様も、華琳様の言葉に声こそ上げてこそいないが、一様に驚愕の表情を浮かべている。

 

そのお二方の声の後、重苦しい雰囲気の中、静まりかえる玉座の間。そんな中、沈黙を破ったのは、秋蘭様だった。

 

「……華琳様、もう一度、先程の言葉をお聞きしてよろしいでしょうか?」

 

「聞こえなかったのかしら?私は八雲と結婚すると言ったのよ」

 

八雲……それは司馬懿様の真名だ。司馬懿様は後漢有数の名家のご出身で三国同盟のすぐ後に華琳様に仕えて今は魏の華北四州の都督として華琳様の信頼の厚い将軍だった。

 

武は一般兵より少し上くらいの物だが、知では魏が誇る三軍師と比較しても勝るとも劣らず、兵を率いる能力は自分はおろか、霞様も超えて、華琳様にすら匹敵するかもしれない。

 

確かに家柄と能力で言えば、華琳様の相手にふさわしいと思うが、自分にとって問題はそんな事ではないのだ。

 

「華琳!あんた、一刀の事をどないするつもりや!!」

 

そう、今、霞様が言った様に、司馬懿様がどうこうではない。あの方、隊長の事だった。

 

北郷一刀……天の御遣いと言われたあの方に自分は色々なモノをもらった。そしてあの方が天の世界に帰って後、数ヶ月で四年の時が、経とうとしている今になっても自分はあの方をお慕いしている。

 

いや、自分だけではない。今、この場に居る魏の首脳陣の女性の全てが自分とは形は違うかも知れないが、心の中にはいつもあの方の姿がある。

 

華琳様はそんな自分達の中で、誰よりもあの方と深い絆を結んでおられた。それなのに何故?……

 

「……一刀はもう戻って来ないわ」

 

「なんで、そないな事が言えるんや!!」

 

華琳様のその言葉に霞様が激昂する。霞様だけでは自分も声を荒げそうになるのを何とか堪えていた。

 

「一刀が消えて三年と半年が過ぎたわ。霞、いい加減に諦めなさい」

 

 

「イヤや!一刀は絶対に戻ってくる!だって約束したんや、ウチと羅馬に行くって……」

 

「では、いつまで待てばいいの?私は王よ。このまま結婚もしない、後継ぎも生まないなんて私自身が許しても民が許さないのよ。稟、風、例えば今、私に何かあればこの大陸はどうなると思う?」

 

「華琳様、それは……」

 

「この大陸は再び戦乱になるでしょうね~。劉備さんや新しく王になった孫権さんが理性的な判断をしても、従っている人まではそうはいきませんし。特に呉は豪族の集まりの国ですからね~」

 

「霞、これが答えよ。私には王としての責務がある。築いた平和……一刀がその身を賭けて築いた平和を次代に渡す責務が!」

 

「それでもウチは……」

 

「霞だけじゃない。皆にも言っておくわ。一刀の事は諦めなさい。それから凪、真桜、沙和、貴女達を実戦部隊の将軍に任命するわ。今まで臨時でやってもらう事はあったけどこれからはそれに専念してもらう」

 

「「「っ!」」」

 

「北郷一刀は警備隊長を解任。後任は……そうね朱霊に任せるわ。貴女達三人は今居る新兵の調練が終わり次第、将軍に昇格よ」

 

……もう我慢出来なかった。華琳様の結婚自体は自分なんかでは想像出来ない様な苦悩があるのだと思えば何とか納得は出来る。

 

けれど、あの方を諦めろ、あの方の警備隊長の役職を解任するなどと言う行為は自分のあの方への想いをないがしろにした上に自分の……そしてあの方が帰ってきた時の居場所を奪う行為。そんな事は断じて許せる物ではない!

 

だから少女……凪は決然と声を上げる。

 

「お断りします!!自分は北郷警備隊小隊長楽文謙!それは今までも、今も、そしてこれから先も変わる事はありません!!」

 

「……ちょっと凪!あんた、華琳様に何を言ってるかわかってるの?!」

 

「桂花様、無礼なのは重々承知しています。それでも自分の隊長への想いを否定する事は誰にもさせません!……それが例え華琳様でも!」

 

「凪!貴様ぁ!!」

 

怒りの声と共に春蘭様が七星餓狼を構える。……死ぬ覚悟は出来ていた。ここで果てたとしても自分の心を偽る訳にはいかない。この想いは自分の女としての誇りなのだ。

 

「凪!よう言うた!やめぇや、惇ちゃん!凪を斬ろうとするならウチが相手になんで!」

 

そう言って、霞様が自分の前に立つ。

 

「おやめなさい!春蘭!」

 

「しかし華琳様!」

 

「春蘭、私はやめろと言ったのよ。…………凪、私が先程の言葉を撤回しないと言ったら、貴女はどうするつもり?」

 

「その時は、この国に自分の居場所はありません。北郷警備隊小隊長の責任を果たした上でこの国を去ります」

 

「ちょっ!凪!」

 

「それは待つなの!」

 

「すまない、真桜、沙和。だけど自分は引けない。いや、引く訳にはいかない」

 

「……そう、なら、勝手になさい」

 

「……失礼します」

 

最後にそう一声掛けて、凪は玉座の間を下がる。後悔など微塵もなかった。自分は自分の想いを貫き通したのだから。

 

 

 

 

 

 

数ヶ月後、凪は自室で旅の支度をしていた。……自分は今日、この国を出る。

 

あの日から、魏に仕える者の自分に対する態度がよそよそしくなった。態度が変わらなかったのは、真桜、沙和、霞様、風様の四人だけ。

 

そんな環境になってもすぐにこの国を出なかったのは、北郷警備隊が無くなるまで、自分は北郷警備隊小隊長だから。それ以外の理由はない。

 

……そして今日、新隊長のお披露目と共に北郷警備隊は終わる。北郷警備隊小隊長としての自分も終わる。

 

他の皆との別れは昨夜の内に済ませていた。今日、華琳様の結婚のお披露目と警備隊新隊長のお披露目に出なくてはいけないからだ。

 

旅の支度を終えた凪は自室を出て城門へ向かう。民の歓声が間近で聞こえていた。どうやら、華琳様のお披露目がもう少しで終わるらしい。

 

華琳様と司馬懿様が城壁の上から下がる姿が見えた凪は外へ向かう足を速める。あの方以外の隊長のお披露目など見たくはなかった。

 

暫く、その速さで歩き城門を出て、歓声が遠くなった所で凪はようやく歩を緩める。……そして立ち止まった。

 

これから、自分がどうすべきなのかがわからない。魏国を離れる事には未練はないのだが、かと言ってやりたい事もない。

 

立ち尽くして頭を悩ませる凪。その所為か普段ならあり得ないのだが、自分の背後から迫る人の気配に気付かず、その人物と衝突する。

 

「すまない、よそ見をしていた。怪我はないか?」

 

「はい、大丈夫で……」

 

凪はぶつかった相手の姿を見た時、余りの衝撃で息をする事すら忘れる。自分は夢でも見ているのではないだろうか……

 

 

 

 

「たい……ちょう……」

 

「凪!?」

 

「隊長ぉぉ!!」

 

凪はぶつかった相手……自分が慕う隊長、北郷一刀の胸に飛び込む。

 

……そして泣いた。四年前の自分には何も告げられなかった別れの時以上に泣いた。

 

隊長はそんな自分が泣き止むまで、優しく抱き締めてくれた。

 

「凪、落ち着いたか?」

 

「はい、格好の悪い所をお見せしました」

 

「いや、可愛かったけどな」

 

「なっ!……元はと言えば隊長が悪いのです!急に天の世界に帰ってしまったから……」

 

「その事については悪いと思ってる……けど、あの時は、俺にはどうしようも出来なかったんだ」

 

「……華琳様からお聞きしましたから知っています。それでも、せめて、一言くらい欲しかったです」

 

「……すまない」

 

「いえ、もういいです。また、こうしてお会い出来ましたから。……ところで隊長はいつ此方の世界に?」

 

「十日前だ。四年間、再びこの世界に来る事を目指して、死に物狂いで足掻いて、ようやく戻って来れた。そして今日、洛陽に着いた……」

 

「……隊長、もう知っておられるのですね」

 

「あぁ、魏には俺の居場所はないらしい。………で、気になったんだが、凪はどうして一人でこんな所に居るんだ?」

 

隊長の問いに凪は魏であった事を説明する。その話を聞いて隊長は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

……笑いながら泣いていた。

 

 

 

 

 

 

「……凪は馬鹿だなぁ。俺なんかの為に国を、仲間を捨てて、本当に馬鹿だなぁ。……でもそんな馬鹿な凪が一人居るだけで俺はこの世界に戻って…来て…良かっ…た」

 

 

隊長が自分の胸で泣きじゃくる。凪はそんな隊長の頭を撫でながら思う。……隊長は変わった。顔付きは鋭くなり、血の匂いもする。自分の腕の中の隊長は触っただけでわかる程に鍛え抜かれていた。隊長の四年間に何があったのかは、自分にはわからない。

 

 

……それでも隊長は隊長だった。大事な所は何も変わっていない。今も自分がお慕いする隊長。それだけで凪は充分だった。

 

 

そして誓う。二度と隊長と離れはしないと……

 




前回投稿後、作者「この展開はどうやろな?」読者「(恐らく)華琳寝取られ許さん!評価1ポチー」作者「なんでや!(残当)」

いや、まぁ、知ってた(白目)リア友もキレてました(笑)


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