真・恋姫†無双 鬼龍伝   作:三十路のおっさん

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反省はしてません。


心に流し込む甘い毒

賊の男の尋問を終えた一刀達は、四刻(一時間)後、賊の男の言っていた洞穴付近に到着していた。

 

近くの草むらに潜んで、洞穴の方向を観察するが、入り口付近に人影はない。

 

偵察に行かないといけないと考えた一刀は凪に声を掛けた。

 

「凪、ちょっと此処で待っていてくれ。俺は洞穴の偵察に行ってくる」

 

「隊長、危険です!」

 

「心配するな。偵察、潜入に関しては俺はプロフェッショナルだ」

 

その二つの後に拷問と暗殺も付くのだが、それは言わなかった。

 

「ぷろふぇ?」

 

「専門家と言う意味だ。何かあれば大声を出せ。じゃあ、ちょっと行って来る」

 

一刀はそう言うと同時に気配を消しながら、洞穴に接近する。久しぶりの潜入だった。元の世界での潜入に比べれば、赤外線センサーやレーダー、爆破トラップがない分、難易度的には容易いと言わざるを得ない。

 

それでも油断はしていなかった。一瞬の油断で死んだ戦友を一刀はウンザリする位見てきている。洞穴に近付けば近付く程、一刀の感覚は研ぎ澄まされていた。

 

 

……先読み。

 

 

洞穴の入り口内部に二人、一刀は素早くその二人の頸動脈をサバイバルナイフで掻っ切り、命を刈り取った。

 

その時、奥の通路から誰かが近付いてくるのを一刀の感覚と予測が読み取る。

 

人数は恐らく四人。一刀はベストから投げナイフを四本抜き出し、立て続けに投擲する。

 

「ぎゃ!」

 

短い悲鳴。男達が死んだと判断した一刀はその亡骸に近付く。ナイフは男達の急所に的確に突き立っていた。

 

一刀は投げナイフを回収しながら自嘲気味に呟く。

 

「やってしまったな……」

 

本来なら入り口の二人を片付けた後は、死体を隠して偵察するつもりだった。

 

だが、流石に六人も死ねば騒ぎになるだろう。此処に来るまでに殺した十五人の事もある。

 

「……仕方ないな」

 

その一言は一刀の目的が偵察から殲滅に変わる合図だった。

 

一刀は駆ける。

 

 

 

 

 

 

……(はや)く、深く、静かに、そして的確に賊の命を刈り取っていく。

 

 

 

殺した賊の数が二十の半ばに達した頃、一刀は洞穴の最奥、少し拓けた広間に到着した。中の様子を伺うと、男が三人と女が一人。この女が頭目だろう。明らかに今までの賊とは比べ物にならない立ち振舞いだった。

 

……それと、何処かで見覚えがあった。

 

一刀は少し考え、投げナイフを男達に投擲する。女に投げなかったのは、自分の既視感が何なのかを知りたかったからだ。

 

 

倒れる男達を見て、女が此方に声を上げる。

 

「誰だ!」

 

「お前達を始末しに来た者だ」

 

そう言って、一刀は女の前に姿を現す。

 

「鬼の面とは奇妙な……だが、此処まで来たのだ、腕は立つのだろうな」

 

「後はお前だけだ」

 

「……私に勝つつもりか?面白い!我が名は華雄!我が武をもってお前を叩き潰してくれる!」

 

華雄……その名前を聞いて一刀の頭の中の線が繋がった。反董卓連合で見ていたのだ。

 

そして一刀は華雄に挑発する様に言い放つ。

 

「あぁ、董卓軍の猪か。仮にも将軍だった人間が賊になっているとはな。お前の亡き主が見たらどう思うだろうな?」

 

「だ、黙れぇ!」

 

華雄は一刀の挑発に激昂し、突っ込んで来る。どうやら、血が昇り安い所は変わっていない様だ。

 

だが、一刀は見逃さなかった。一刀が挑発した時に華雄に浮かんだ感情。……後悔と自己嫌悪と言う感情を。

 

向かってくる華雄に一刀も刀を抜いて迎え打つ。

 

何合か打ち合った頃、華雄が一刀に話し掛ける。

 

「貴様、やるな!」

 

そんな華雄に一刀は口元に薄い笑みを浮かべつつ、冷ややかに返す。

 

「お前は大した事ないな」

 

「何だと!」

 

「俺の知っている強者に比べれば明らかに格が落ちる」

 

「言わせておけば!」

 

一刀の言葉に華雄の攻撃が更に激しくなる。その攻撃を受けながら一刀は思う。

 

凪よりは強いが、春蘭、霞よりは下。大体予想通りだった。才能はある。恐らく自分よりも……

 

けれど攻撃が雑で素直過ぎる。凪より強いが一刀としては凪の方が戦い辛い。と言うより、このタイプの敵は一刀にとって先読みが利きやすいからカモだった。

 

「そろそろ終わらせていいか?」

 

一刀は華雄と間合いを取って尋ねる。

 

「何っ!」

 

「まぁ、答えは聞くつもりはないがな!」

 

一刀は華雄に向かって駆ける。華雄の大斧の構えは下段。そこから繰り出される華雄の攻撃を予測。

 

九割の確率で自分の左下半身から右上半身を切り裂く切り上げ……

 

一刀の予測通り、華雄の攻撃は切り上げ。一刀は鉄の鞘でその攻撃を受け流しながらその反動を利用して、その場で側宙。側宙しながら華雄の肩口に蹴りを叩き込む。着地後、蹴りで怯んだ華雄を追撃。左手の鞘で大斧を叩き落として、刀を華雄の首筋に突き付ける。

 

「俺の勝ちだな」

 

「くっ、殺せ」

 

まさかのくっころ発言に一刀は思わず吹き出しそうになる。

 

実際、殺すのは簡単だった。だが、何故、それをしなかったのか。

 

 

……もったいないと思ってしまったからだ。今の華雄は自分の才能を腐らせている。

 

それだけなら一刀は華雄を斬っただろう。斬らなかったのは華雄の目だ。深く沈んだ目をしているが、腐ってはいない。やり直せる可能性があった。

 

只、この手の人間は正面から説き伏せても逆効果になる可能性が高い。自分という自己が確立しているからだ。

 

だったらその自己を壊せばいい。一刀は思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……此処に凪が居なくて良かったと。

 

 

 

 

 

 

 

「お前は何言ってるんだ。勝ったのは俺だ。お前をどうするかは勝った俺が決める事だ」

 

「私を犯すか……好きにすればいい」

 

「それも魅力的だが、それより俺と話をしないか?」

 

「話だと?」

 

「あぁ、華雄、お前はどうして賊なんかになったんだ?」

 

「……反董卓連合の時、私の失敗で戦は負け、董卓様は亡くなられた。あの方が亡くなったと聞いた時、私はこれからどうすれば良いのか分からなくなった。あの方は私の全てだったのだ」

 

「それで流れ流れて賊の頭目か。……流石は猪、無様だな!」

 

「何だと!」

 

「猪に猪と言って何が悪い」

 

「私は猪ではない!」

 

一刀の声音が優しい物に変わる。

 

「あぁ、君は猪じゃない」

 

「えっ!?」

 

「君に猪なんて言ったら」

 

一刀の声音がまた変わる。

 

 

 

 

 

 

 

「……猪に失礼じゃないか」

 

「なっ!?」

 

一刀は口元に酷薄な笑みを浮かべ

 

「猪はまだ人間の食料として役に立つ。だけどお前は違う。何の役にも立たない。まさに役立たずだな」

 

「違う!違う!違う!私は役立たずではない!」

 

「あぁ、そうだ。お前は役立たずではない。役立たずは役に立たないだけで済む。しいて言うならお前は足手まといだな。反董卓連合で致命的な失敗をしたお前に当てはまるじゃないか!」

 

「私は……」

 

「お前の様な奴の為に死んだ董卓が不憫だよ」

 

「私は……私は……」

 

「お前と共に戦った呂布は天下の飛将軍として名を残し、張遼も魏の将軍として押しも押されぬ名声を手にいれた。それに比べてお前はどうだ?」

 

「……」

 

「お前は賊の頭目として悪名が、いや、こんな小さな賊、悪名すら残らない。お前は誰からも認めてもらえず、誰からも忘れ去られる。そんな人生を送るお前は始めからこの大陸に居ない様な物だ」

 

「……私は死ねばいいのだな……」

 

隠し持っていた短剣で自害しようとする華雄。一刀はその短剣を叩き落とし、仮面を外して、包み込む様な優しさで華雄を抱き締める。

 

「でも俺は違う」

 

「えっ!?」

 

「俺は君を認める。誰も認めなくても、俺は、俺だけは君の全てを認め受け入れる。君は努力したんだろう。今、俺の腕の中に居る君の身体は長い年月、研鑽積んだ事がはっきりと分かる」

 

「わ、私は……私は今まで、厳しい鍛練を積んで来たんだ!だが、武では呂布に勝てず、兵を率いても張遼に勝てない……皆が猪だと言って私を認めてくれない……」

 

「わかっている。君は今まで頑張って来たんだな」

 

「……唯一、私を認めてくれた董卓様も、私に着いて来てくれた兵も私の性で……」

 

今まで堪えていた物が堪え切れなくなったのか、華雄の瞳から滂沱の涙が流れる。

 

「ずっと後悔していたんだな。苦しかったな、辛かったな」

 

「私は……私は!」

 

「もう心配しなくていい、もし、君を責める者がいるなら、俺は君の味方であり続けよう。許しが欲しいなら俺は君を許そう。大丈夫……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『君は悪くない』

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたし……は……わるくない?」

 

「君は悪くない。それに君を必要とする人も居る」

 

「わ……たしを……ひつ…ようと…して」

 

「俺には君が必要だ!だから華雄、俺と一緒に来て欲しい!俺は決して、君の手を離したりしない!」

 

「本…当か?」

 

「あぁ、本当だ」

 

そう言って一刀は華雄の唇を奪う。

 

「華雄、一緒に来てくれるね?」

 

「……はい」

 

「……一刀」

 

「えっ?」

 

「俺の真名だ。君に受け取って欲しい」

 

「……一刀様」

 

二人の目が合う。再びの口づけ。……一刀は思った。

 

 

 

 

 

 

……凪になんて説明しようと。




カズトサンを見て、作者「なんやこいつ(ドンビキ)」

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