真・恋姫†無双 鬼龍伝   作:三十路のおっさん

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交州到着それは面倒事の始まり

交州―――それは、大陸の最南端に位置する州で、三国同盟のどの国にも属しておらず、独立勢力を保っている。

 

現在、交州を治めているのは、士燮と言う人物で、この人物は政治感覚に優れ、現代日本で言うベトナムとも不可侵条約を結び、南海貿易で利益を挙げている。

 

更に自分の親族を各地に送り、持っている権益を強化して、外交面でも交州を手に入れたい蜀呉の二国を相手取り、一歩も譲らない見事な外交手腕を見せていた。

 

州内の様子も商業を促進し、治安の維持に努め、民からの人気も高い。

 

一言で言えば名君と言っていいだろう。

 

「そう、名君のはずなんだがなぁ……」

 

呟く一刀の前方には三十人程の賊の集団。

 

その集団の中には、手枷を付けられた数人の少女。それを見て一刀は思う。

 

 

 

 

 

……あぁ、面倒くせぇ。

 

 

 

 

 

 

今、一刀達が助けなければ、少女達の末路は容易に想像出来る。

 

気の毒だとは思うが、それと同時にありふれた話でもあった。

 

そんなありふれた話に無関係な自分が身体を張るのは、面倒な事以外何物でもない。出来る事なら見て見ぬフリをしたいのだが……

 

そうさせてはくれないのが、一刀の隣に二人。

 

凪は閻王を装着し、華雄は金剛爆斧をしごいている。凪はともかく、華雄は何でやる気になっているのか、一刀にはわからない。華雄は向こう側だったはず……

 

「隊長!」

 

「高長恭様!」

 

……どうやら自分には賊退治をするという選択肢しか残されていないらしい。

 

「賊は俺が倒す。凪と華雄はあの子達の安全を確保しろ」

 

「「はい!」」

 

その声と共に三人は賊に向かって駆ける。そんな中、一刀の頭を過ったのは

 

 

 

 

 

 

……ひょっとして、俺って尻に敷かれてる?

 

 

 

 

 

 

その一刀の疑問に答えてくれる人間は誰も居なかった……

 

 

 

 

一刀は一刻(十五分)も掛からず、賊を殲滅していた。散らばる賊の亡骸の中で、自分達が助かった事を抱き合いながら喜ぶ少女達。

 

凪と華雄はその様子を微笑みながら眺めているが、一刀にはある危惧があった。

 

……これってこの子達を街まで送らないと駄目なフラグか?

 

疑問符を付けたが、答えはわかっていた。二人がこの子達を此処に放置なんて真似を許すはずがないからだ。

 

一刀は内心、ため息を吐きながら、仕方ない事だと自分の心を納得させる。

 

一度、凪の前で格好を付けてしまった以上、幻滅させない様に最後まで格好を付けるのは自分の責任だろう。

 

例え、それが自分の首を締める事になってもだ。そんな諦めの境地に達している一刀に近付く人影。

 

その人影は、賊に捕らわれていた少女の一人。だが、他の少女と違うのは、抜群に身なりが良いのだ。

 

恐らく、良い所の生まれなのだろうと一刀は思う。髪は青のウェーブがかかったロングヘアー。目鼻立ちは整っていて美少女と言えた。スタイルも出る所は出て、引っ込む所は引っ込んでいる。

 

まぁ、賊も狙うわなと一刀も納得出来る容姿の少女だった。だが、そんな少女を見ても、一刀の心は動かない。美女、美少女の類いは魏で散々見てきているからだ。

 

そんな事より、その少女に何を言われるのかが気になる。面倒臭い事じゃなければ良いが……

 

一刀が自分に対してその様な事を考えているとは、露知らず、少女は一刀に話し掛ける。

 

「この度は危ない所を助けて頂きありがとうございました。心よりお礼を申し上げます」

 

頬を赤らめながら礼を言う少女に、一刀の先読みが警鐘を鳴らし始める。

 

「別に気にしなくていい。君達を助けようとしたのは、あの二人だ。礼なら二人に言うといい」

 

厄介事の匂いを感じ取った一刀は自分への関心を無くさせる為に凪と華雄に少女を押し付けようと企む。

 

やっている事は最低だが、本来、自分は関わりたくなかったのだ。それくらいは許して欲しい。

 

「勿論、後ほど、お礼は言わせてもらうつもりです。ですが、賊を倒してくれたのは貴方です。その立ち振舞いといい、漂う風格といい、名のある方とお見受けします。失礼とは思いますが、名を聞いても宜しいでしょうか?」

 

……だが、駄目!どうやらこの少女は自分にしか興味がないらしい。一刀の中での警鐘音が大きくなる。

 

「あぁ!失礼致しました!私は劉子初と申します。以後、お見知り置きを…」

 

名乗らなくていいと一刀は思うが、名乗られてしまった以上、こちらも名乗らない訳にはいかない。……それに劉子初と言う名前に一刀は聞き覚えがあった。

 

一刀は頭の中で三国志辞典を開く。この世界から元の世界に戻った時に三国志をしっかりと読み直していた。

 

……劉子初…劉子初……そうか!劉巴だ!

 

劉巴……一刀の世界の三国志では蜀漢の尚書令となった人物でその政治手腕は諸葛亮も認めていたと言われる。

 

そう言えば一時期、交州に居たという記述があったな。

 

一刀が別の世界の自分の事を考えているとは予想もしていないだろう。この世界の劉巴がおずおずと一刀に声を掛けてくる。

 

「……あの」

 

「あぁ、悪い。俺は姓は高、名は長恭、字は鬼龍と言って何処にでも居る男だ」

 

……だから、俺に興味を持たないでくれ。

 

「高長恭様とおっしゃるのですね。素晴らしいお名前です!……ところで高長恭様はどちらからこの交州にお越しに?」

 

満面の笑みで一刀に尋ねる劉巴。一刀の中の警鐘が限界に達していた。

 

「……洛陽からだ。暫くこの交州で腰を落ち着けようかと考えている。とりあえずはあの子達を安全な所に送らないといけないから交阯に向かうつもりだ」

 

「まぁ!それでしたら、是非、私の屋敷にお越し下さい!今は私と使用人だけで住んでいるので、部屋も余っておりますので」

 

「いや、一緒に旅をしているあの二人にも聞かないと……」

 

「でしたらお二方もご一緒にどうぞ。この度のお礼をさせて欲しいですから」

 

劉巴が一刀の右腕を自分の胸に押し付ける様に抱えてそう述べる。

 

……柔らかいけど、ちょっと止めて欲しい。……凪さんが見てる。

 

「隊長、自分は宜しいと思います。これから先はどうするか決まっていませんでしたし……」

 

凪がジト目で一刀を見ながら、劉巴に賛同する。一刀としては、そんな目で自分を見るなら反対して欲しいのだが……

 

「私は高長恭様に着いて行くだけです」

 

あぁ、うん、華雄、お前ならそう言うと思ってた。

 

……何にせよ、二人が賛同した以上、一刀に断る理由がなくなってしまった。

 

「じゃあ、世話になるとするかな。劉巴、宜しく頼む」

 

「あらっ?私、名の方を名乗りましたか?」

 

「あぁ、それは俺が偶々、君の事を知っていたんだよ。君の親御さんは以前、江夏の太守だった事があるだろう?その時に優秀な娘が居ると聞いた事があるんだ」

 

一刀は自分の世界の三国志の知識で言い訳をする。外れていたらどうしようかと思ったが……

 

「そうでございましたか、高長恭様に名前を知って貰えているなんて光栄です!」

 

そんな事はなく、それより何でこの子は怪しい仮面を付けている俺をそんなに上に見ているんだろうか……?

 

その事が一番疑問だった。

 

北郷一刀の名前ならまだしも高長恭の名ははっきり言って無名なのに……

 

それから保護した子達を連れて交阯の街へ向かう途中

 

「そちらのお二方の名前も聞いて宜しいでしょうか?」

 

劉巴が思い出した様に、二人に名前を尋ねる。その態度にちょっと自分に対する対応と違い過ぎないかと一刀は思う。

 

「自分は楽進と申します」

 

「私は華雄だ」

 

「楽進……華雄……何処かで聞いた覚えが……」

 

「ん、あぁ、気の性だと思うぞ。俺達は只の旅人だし……」

 

この二人も結構な有名人である事を一刀は失念していた。咄嗟に誤魔化しはしたが、劉巴は何処か怪訝な顔をしている。そんな状況で一刀が取った方法は

 

「そう言えば、なんであんな所に賊が居たんだ?交阯の街からもさほど離れていないし、何より俺達は交州の治安は良いと聞いていたんだが」

 

話題を変える事だった。

 

「高長恭様、その情報は正しいですが、少し前の情報です。確かに以前は治安は良く、民の過ごしやすい州で御座いました。ですが、士燮様が三カ月前に病で倒れられてから、士燮様の親族の方が勝手な事をする様になり、交州の治安は徐々に悪化しているのです」

 

「そうだったのか……」

 

「はい、私も高長恭様に助けて頂かなければ賊の慰みものとなる所でした。重ねてお礼を申し上げます」

 

「いや、これからは俺達が君の世話になるんだから、堅苦しいのは辞めにしよう」

 

「……はい。高長恭様がそうおっしゃるなら。……あっ、あちらが交阯の街になります」

 

劉巴の言う方向に顔を向けると、其処には交阯の街。面倒を避ける為に交州に来たが、一刀は面倒に巻き込まれそうな予感を感じていた。

 

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