真・恋姫†無双 鬼龍伝   作:三十路のおっさん

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前半シリアス、中盤ちょいギャグ、後半シリアスって感じ。


卑怯者

一触即発の玉座の間、関羽と魏延以外の将も各々が武器を取り出す。

 

「気は進まんが、仕方ない」

 

「そうね」

 

「あのお兄ちゃんからは悪い感じはしないけど仕方ないのだ」

 

そんな将達を一刀は鼻で笑う。

 

「論戦で負けたからと言って、外交の使者を将総出でなぶり殺しか?仕方ないと言うなら黙って引っ込んでろ!この卑怯者共め!」

 

「ぬぅ」

 

「……」

 

「鈴々は卑怯者じゃないのだ!」

 

その時、外から蜀の兵、数十名が玉座の間に雪崩れ込んでくる。

 

「皆様!ご無事ですか!?」

 

「良い所に来た!入口を固めてその男を逃さない様にしろ!」

 

「関羽はこう言っているが、劉備、お前はこれでいいんだな?」

 

「……」

 

一刀が劉備を問い詰めるが、劉備は何も答えない。だが、その目には一刀に対する明確な敵意が宿っていた。

 

「諸葛亮!お前は本当にこんな国で、こんな主君でいいのか!?」

 

「わ、私は……」

 

「朱里ちゃんを誑かさないで下さい!!貴方は邪魔なの!!」

 

「化けの皮が剥がれたな劉備!何が皆が笑って暮らせる国だ!結局は自分に従わない人間は問答無用で殺そうとする独裁者じゃないか!」

 

一刀はさらに腰を落とし、ゆっくりと構えを取る。

 

「まぁ、いいさ。お前ら程度が俺を殺せると思うなら、その思い上がりを叩き潰してやる」

 

気を全身に巡らせ、バネの様な瞬発力で地を這うストライドで駆ける。

 

「こんのぉぉ!!」

 

立ち上がった魏延が一刀を迎え打つ様に棍棒を振り下ろすが、あえて飛び込み、前転で回避、加速を落とさないまま方向を左に切り返す。

 

「その武器、ここでは使えないとは思うが厄介だ」

 

一刀は厳顔に狙いを定め、さらに加速。

 

「だからここで沈め」

 

間合いに入り、厳顔を行動させる前に水面蹴り、態勢を崩した厳顔の脇腹に鬼炎を突き立てる。

 

「ぐあああぁぁぁ!!!」

 

「桔梗さん!!」

 

「桔梗様!!」

 

「「桔梗!!」」

 

一刀が厳顔に止めをさそうとするが、

 

「止めるのだ!!」

 

張飛が突っ込んで来る。

 

「ちっ!」

 

一刀は急いで鬼炎を抜き、厳顔の鮮血を浴びながら距離を取る。殺し切れてはいない。だが、厳顔は気絶しているし、しばらくはまともに動けないだろう。

 

「まず一人」

 

そう言った一刀の顔に狂気が浮かぶ。その狂気にその場に居る誰もが息を飲んだ。

 

「鈴々、焔耶、連携して行くぞ。あの男、尋常ではない」

 

「だから鈴々は言ったのだ!」

 

「あぁ、私の咎だ。それはあの男を討つ事で晴らさせてもらう。紫苑、援護を頼む」

 

「えぇ……」

 

「では私から行かせてもらう!桔梗様の仇ぃ!!」

 

魏延の攻撃、一刀はそれをスウェイで躱す。

 

「この関雲長の一撃、天命と心得よ!!」

 

関羽の豪撃もスウェイで躱す。

 

「うりゃ!うりゃ!うりゃぁぁぁ!!」

 

さらに張飛の連撃をスウェイで躱す。

 

猛将三人の一振り一振り、確実に死に至らしめる攻撃を一刀は黄忠の射線に入らない様にスウェイのみで躱し続ける。

 

「なんで……なんでなのだ!?当たっているのに当たらないのだ!!」

 

「一体どうなっている!?」

 

「この!訳のわからない事しやがって!!」

 

驚き、困惑する三人を見て一刀は思う。

 

……まぁ、初見じゃ驚くだろうな。俺があの人にされた時も驚いた物だ。

 

一刀のやっている事に一番最初に気付いたのは一刀から距離のある黄忠だった。

 

「……影よ。その人の避ける早さが早すぎて、その人の影がその場に残る。皆はその影を攻撃しているの」

 

「なっ!!」

 

「そんな事が出来る物なのか!?」

 

「……すごいのだ」

 

三人は一刀がやっている事がわかって驚愕しているが、この影残しはあの人からすれば序ノ口だ。

 

一刀はあの人と戦った時の事を思い出す。

 

あの時、一刀は自分が負けるとは思わなかった。相手は五十歳を過ぎた男で影残しには驚いたが、戦いは明らかに自分が押していた。だが、あの人が本気になった途端、自分はほとんど何も出来ずにぶちのめされた。あの理不尽な技によって。

 

 

 

 

……あの分身は反則だろぉぉぉ!!!

 

 

 

 

 

その時の苦い経験を思い出し、一刀は内心で絶叫する。

 

 

本気になったあの人はなんと十人に分身したのだ。いや、分身自体は今の一刀なら出来なくもない。身体に全力で気を巡らせ、超高速で動けばそういう現象は起こせる。けれどそれはあくまでそう見せると言うだけの事。分身は本体の動きに追従するし、実体はない。

 

だが、あの人の分身は違う。分身の一体一体が己の意識がある様に動き、実体もあったのだ。簡単に言えばあの人が十人に増えた様な物。

 

ただでさえ、やばいあの人が十人に増える。一刀にはどうしようもなかった。

 

ぶちのめされ、地に倒れた一刀にあの人はこう言った。

 

『カズトちゃんは三番目やな』

 

『三番目?』

 

『そや、儂が今まで喧嘩した相手では三番目に強いわ』

 

『上の二人は?』

 

『一人は儂の兄弟で、儂と互角ちゅうとこやな。もう一人は』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『儂よりゴツいでぇ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時の事を思い出した一刀は蜀の将との戦いの最中だというのに、思わず白目を剥きそうになる。

 

あのクラスが最低でも後、二人……

 

 

 

日本のヤクザ……やば過ぎだろ……

 

 

 

正直言ってこの三人は強いと言えば強いのだが、あの人ほどの怖さや理不尽さはない。

 

三人の力量を測り終えた一刀は勝負に出た。

 

「俺もそろそろ帰りたいから終わりにしてやる」

 

一刀は再び全身に気を巡らせ黄忠に向かって加速。弓の弦と持ち手の左手を鬼炎で斬る。飛び道具は邪魔だからだ。

 

「きゃあああああ!!」

 

 

「紫苑!貴様ぁぁ!!」

 

関羽の一撃を片手だけのバク転で避け、鬼炎を後ろ手で宙に放り投げ、前方に落ちて来た鬼炎の柄を蹴り抜いた。

 

「ぐっ!!」

 

一刀が蹴り抜いた鬼炎は関羽の右肩に突き刺さる。一刀は高速で関羽に近付き、鬼炎をえぐりながら引き抜く。

 

この一連の動きをあの人はドス流しと言っていた。

 

「ぐあああぁぁぁぁ!!」

 

あまりの激痛に関羽がその場でのたうち回る。

 

「愛紗ちゃん!!」

 

「愛紗!!」

 

「だ、大丈夫です。誰か!恋を呼んで来い!!翠と斗詩と猪々子もだ!!」

 

……ここまでだな。

 

一刀は見切りを付けた。これ以上暴れても切りがなくなる。ただ、もう少し蜀の将を減らしておきたい。厳願と関羽はしばらくは戦線離脱だろうが殺せてはいない。

 

そう思った一刀は一番近くに居た魏延に狙いを定めた。

 

魏延も一刀の視線に気付いたのか、棍棒を振りかざして一刀に突っ込んで来る。

 

「うおおぉぉぉ!!」

 

「そんな大振りが当たる訳ないだろ」

 

魏延の棍棒を躱し、その顔面を玉座の間の柱に向かって殴り飛ばす。

 

一刀は殴り飛ばされてた魏延を即座に追い、魏延の髪を掴み無理矢理起き上がらせて、その頭を柱に叩き付ける。

 

「死ね」

 

そして後頭部を殴り付け、崩れ落ちた魏延の頭を全力で踏み抜いた。 

 

頭蓋が割れる嫌な感触が足裏に伝わってくる。

 

魏延の身体は二度、大きく痙攣し、人からモノへと変わった。

 

「……え、えん…や…ちゃん……いやぁぁぁぁ!!」

 

「うそ、えん…やちゃん……」

 

「「焔耶ぁぁぁ!!」」

 

魏延の死に慟哭する劉備、呆然とする黄忠、叫ぶ関羽や張飛を見つめながら、一刀は冷笑を浮かべながら語る。

 

「お前達が斬らなくても結局こいつは死ぬ事になった。でもこいつが死んだのは自業自得だ。だが関羽や黄忠、厳顔は怪我をしただけ無駄だったな。……では、そろそろ俺は帰らせてもらうぞ」

 

「このまま帰すと思っているのか?」

 

関羽が右肩を押さえ、一刀を睨みながらそう告げる。

 

「いや、帰るさ。……那由多、もういいぞ」

 

一刀のその声で那由多が玉座の横に舞い降り、劉備に剣を突き付ける。その周りは屍鬼隊の者達が固めていた。

 

「ひっ!」

 

剣を突き付けられ、劉備が微かに悲鳴を漏らす。

 

「桃香様!」

 

「桃香お姉ちゃん!」

 

一刀は劉備の身を案じる関羽と張飛を横目で見つつ、那由多と会話を続ける。

 

「高長恭様、お戯れが過ぎます」

 

「すまない。でも良く我慢してくれたな」

 

「高長恭様がこの程度の相手に負けるはずはありませんから」

 

「ありがとう。……さて、見ての通りだ。劉備の命が惜しければ、俺達を帰らせてもらおうか」

 

 

「卑怯な!!」

 

「外交の使者を寄って集ってなぶり殺しにしようとしといて、良くそんな事が言えた物だ」

 

「ぐっ!」

 

「これもお前達の選択の結果だ。あぁ、心配しなくてもいいぞ。俺達の安全が確保されたら劉備は解放してやる。俺達はお前達の様な」

 

 

 

 

 

 

『卑怯者じゃないからな』

 

 

 

 

 

 

そう言って笑う一刀。それはこの場の主導権が全て一刀に移った証だった。

 

 

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