真・恋姫†無双 鬼龍伝   作:三十路のおっさん

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飛将軍の洞察

「さてと、そろそろ帰るか」

 

厳顔の武器を破壊し終えた一刀はおもむろにそう呟く。

 

「董卓殿、賈駆、何か持って行く物があるなら、用意する時間ぐらいは待つが?何も持って行かないなら必要な物は言ってくれれば、此方で用意しよう」

 

「いえ、大丈夫です。それから私の事は月とお呼びください」

 

「ちょっと!月!」

 

一刀に真名を許した董卓に賈駆が気色ばむ。

 

「良いのか?俺に真名を許しても?」

 

「構いません。これからお世話になるお方ですから」

 

「……そうか、ならばこれからは月と呼ばせてもらおう。俺の真名は荊州に到着したら預ける。ここは他人の耳が多いからな」

 

「はい。……詠ちゃん」

 

月が賈駆を瞳を真っ直ぐ見つめる。

 

「……うぅ〜!わかったわよ!私の真名は詠よ!これでいいわよね!」

 

月の無言の圧力に耐えられなかった賈駆がやけくそ気味に一刀に真名を預ける。

 

「いや、無理に真名を預けなくても良かったんだが……」

 

「何よアンタ!月の気持ちを無駄にする気!?」

 

「お前は真名を預けたいのか、預けたくないのか、どっちなんだ?」

 

「預けたくないに決まってるじゃない!アンタみたいな顔も見せない怪しい奴に真名を預けたいと思う方がどうかしてるわよ!」

 

「賈駆、お前それ、その怪しい奴に真名を預けた月を侮辱してるからな」

 

「詠ちゃん……」

 

「あぁぁ!ち、違うのよ!月!私はそんなつもりで言ったんじゃ……」

 

「じゃあ、どういうつもりで言ったんだ?」

 

「アンタは黙ってなさい!あー!もう!詠で良いわよ!」

 

怒ってそっぽを向きながらそう吐き捨てる詠に一刀は思わず笑ってしまう。

 

「何が可笑しいのよ!?」

 

「いや、面白い奴だと思って」

 

「アンタ、私を馬鹿にしてるでしょ!?」

 

「そんなつもりはないさ、これからよろしくな、詠」

 

「アンタなんかとよろしくしたくないけど、月の為だもの、よろしくしてあげるわよ」

 

「詠ちゃん、そんな言い方……」

 

「別に構わんさ、公式な場でないなら言葉遣いをいちいち気にするほど、上品な育ちじゃないんでね。月もこれからよろしく頼む」

 

「はい」

 

そんなどこか、和気藹々とした一刀達の会話を蜀の人間は苦々しい表情で見つめていた。

 

「で、お前は俺に用でもあるのか?」

 

一刀は自分に向けられる視線の中でも、一際、強烈な視線を向けている人間に話しかける。

 

「……お前……強い」

 

「あぁ、お前より強いぞ、呂布」

 

一刀は自分に視線を向けていた飛将軍呂布にそう応える。それと同時に瞬時に体内の気を眼球に集めた。

 

 

一刀は気を凝縮した眼球で呂布を解析する。これは一刀が新たに会得した気の使い方、わかりやすく言えば、某七つの玉を集める漫画のスカウターみたいな物だ。勿論、漫画みたいに数値でわかる訳ではなく、体内の内部情報、例えば、骨の密度や身体どの部位がどれくらい鍛えられているか等の大雑把な物、それでも十分に役に立つ。関羽達に使わなかったのは、使わなくても大体の技量は見抜けたから、逆に言えば、呂布は使わなければ測り切れなかったという事。

 

その眼球で呂布を視た一刀の背中に一筋の冷たい汗が伝い落ちる。

 

 

……うわぁ、マジか……お前より強いって言ったけど勝てんのこれ?

 

 

思わず、素に戻ってしまうほど、呂布の情報は凄まじい物だった。

 

尋常でない程の骨密度と筋密度、それなのに天性の身体の柔軟さがその動きを阻害してない。まさに戦う為に創られたと言っても過言ではない身体だった。

 

恐らく、ヒュペリオン体質だろう。筋肉が表に出てないのは、無意識に気の膜で筋肉を体内に押し留めている。

 

さっき、戦った張飛や多分、季衣や流琉もヒュペリオン体質だろうが、呂布のそれと比べると明らかに劣っていた。

 

「……お前……今、何した?」

 

「別に何もしちゃいない。お前を視ただけさ」

 

……勘までいいのか、厄介だな。

 

それが、一刀が呂布に抱いた感想だった。

 

「……お前……何で……そんなに強い?」

 

「んっ?どういう事だ?」

 

「……前は……弱かった」

 

「何を言ってる。俺とお前は今日が「……白い煙の人」」

 

 

なん…だと!?

 

 

呂布の一言で先程まで一筋だった冷や汗が全身から噴き出して来る。

 

何故わかった!?自分が先の戦乱で呂布の前に姿を現したのは、あの時の華琳を救う為に飛び出したあの一瞬だけ。あの一瞬で自分を認識していたのか!?七年も前の事で自分は今、仮面を被っているのに!?

 

一刀は驚愕の余り、思わず声を挙げてしまいそうになるが、何とかそれを飲み込み、平静な表情を取り繕う。今日ほど表情を隠す仮面が有り難かった事はない。

 

「何の事を言ってるかは知らんが、お前の勘違いだろう」

 

「……」

 

そう、言葉を絞り出した一刀に何処か納得いかない感じで呂布は首を傾げる。

 

「そんな事より、月と詠に別れを告げなくていいのか?長い付き合いなんだろう?」

 

何とか会話を逸らす為に、一刀は呂布の意識を自分から月達に向ける様に誘導する。

 

「……月……詠……行く?」

 

「恋さん、ごめんなさい」

 

「……(フルフル)……また……会える」

 

「はい、それまで恋さんもお元気で」

 

「……(コクコクッ)」

 

「まぁ、恋の事だからその心配はしなくて大丈夫そうだけどね」

 

「……月達も……元気で……」

 

月達に別れを告げた呂布は再び一刀に視線を向ける。

 

「……お前……嫌な感じしない……月達……お願い」

 

「わかった、俺の力が及ぶ限り、全力で守ると約束しよう」

 

その言葉は一刀にとって掛け値なしの本心だった。自分には二人に対する責任が出来たのだから。それがわかったのだろう、呂布も柔らかい笑みを浮かべて一刀に礼を言った。

 

「……ありがとう……恋の事は恋でいい」

 

「お前の真名だろう?いいのか?」

 

「……いい」

 

「……そうか、悪いが恋、俺の真名は此処では言えない。次に会った時に俺の真名を預けよう。……まぁ、次に会うのは恐らく戦場だろうが……」

 

「……(コクコクッ)」

 

恋が頷いたのを、見届けた一刀はゆっくり、三人に背を向けて歩き出す。これから荊州への帰途につくのだが、最後にやらなければならない嫌な仕事が残っていた。

 

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