レッド・プラネット   作:イカ大王

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別の作品が主で空間戦闘物語が従なので、ほんっとに更新遅くなりまーす




第二話 運命の号砲

 

「右35度。A群を目視にて視認。距離30宇宙km」

 

船外活動中の主砲弾道観測員の報告が「ムラサメ」艦橋に響いた時、島大吾艦長は、艦橋内の空気が一気に張り詰めたのを感じた。

 

誰かの固唾を呑む音が聞こえる。

 

「A群映像、最大望遠で出します」

 

掌帆長の枝野憲政(えだの のりまさ)二等宙尉が言った直後、天井に設置されているモニターに映像が映し出された。

30宇宙kmという遠方の物体を捉えているためだろう、映像はややぼやけており、画質も悪い。

だが、外宇宙船の形状や船色などは辛うじて視認することができた。

 

「緑色の船体に艦首二箇所の閃光部……。間違いありません。天王星ステーションが観測した宇宙船と同じものです」

 

航海長の霧本司(きりもと つかさ)三等宙佐が、事前ミーティングで配られた外宇宙船の資料とモニターを交互に見ながら言った。

 

「航海長のおっしゃっていることは正しいと思いますが、やや小型の船もいますね。彼らも我々のように船に区別があり、巡洋艦や駆逐艦といったものに分かれているのかもしれません」

 

霧本に続いて、砲雷長の藤川朋信(ふじかわ とものぶ)三等宙佐が発言した。

 

それを聞いて、島はモニターを凝視する。

藤川の言う通り、モニターの船には大型の船とやや小型の船が映っている。

大型の船は普通だが、小型船の閃光部はやや潰れており、目のようになっていた。

 

「なんだか…鮫みたいな形ですね。機動力良さそうだなぁ」

 

砲術士の片倉義信(かたくら よしのぶ)三等宙尉が、ヘルメットのバイザーを開けながら言った。

片倉の実家は代々漁師だと聞いている。子供の頃に見た魚類と宇宙船の形状で、重なるところがあったのだろう。

 

その時、通信長の沢田健次郎(さわだ けんじろう)一等宙尉が声で報告をあげた。

 

「艦長。国連宇宙海軍・極東管区空間戦闘群総司令部より通信です」

 

その言葉に、島は少しの疑問を感じる。

中央司令部から作戦行動中の巡洋艦に対して直々に通信してくるなど、かなり異例のことだ。

通常ならば第八内惑星艦隊旗艦の「キリシマ」を介して来るはずだが、何かあったのだろうか?

 

「モニターに出せ」

 

島が短く言うと、沢田はさっきまで外宇宙船が映っていたモニターの映像を、中央司令部からのそれに切り替えた。

 

映像が切り替わった瞬間、モニターには勲章がぶら下げた軍服を着込み、口ひげを蓄えた壮年の男性が映し出される。

 

島は、その髭面に見覚えがあった。

記憶が正しければ、極東管区軍務局長の芹沢虎鉄だろう。

極東管区の軍務全てをつかさどる地位にいるものが、何の用だろうか。

 

「単刀直入に言う」

 

芹沢は通信が繋がっていることをオペレーターに確認すると、そう言葉を切り出した。

 

「先遣艦『ムラサメ』は、エイリアンの宇宙船に対し、直ちに邀撃行動に移れ」

 

「……!」

 

芹沢の言葉に、艦橋内に衝撃が走る。

島や霧本、枝野、藤川、片倉と言った艦橋要員達は芹沢の映っているモニターを信じられないような顔で見つめていた。

外宇宙船が攻撃してきたのなら、正当防衛としてしかたなく反撃することはあるだろうが、相手は依然敵対的な行動をとっていない。

「可能な限り平和的に解決せよ」との中央司令部からの指令だったが、今になって覆すのだろうか?

 

若干の沈黙のあと、艦橋内全員の気持ちを代弁するかのように島が口を開いた。

 

「それは…平和的接触を放棄し、外宇宙船を攻撃ということですか?無抵抗の船に対して…先制攻撃を仕掛ける、と?」

 

それを聞いて芹沢はピクリと眉毛を動かした。

島の言葉に不快感を示したのかわからないが、咳払い一つして言葉を続ける。

 

「彼らは、もはや無抵抗な存在でない。こちらからのあらゆるコミュニケーションを無視し、太陽系という我々の領域に侵入してきている。これだけでも、彼らを『敵』として認識するには十二分だ」

 

「しかし…」

 

「これは中央委員会の決定だ」

 

なおも食い下がる島に対して、芹沢は叩きつけるように言う。

だが、島はもっとも気にかかっていることを質問した。

 

「沖田提督は何とおっしゃられているのですか?」

 

島の直属の上司である沖田十三提督は、人間としても軍人としても尊敬できる人物である。その人が、無抵抗の宇宙船を攻撃するなどという命令を下すとは思えなかったのだ。

 

「彼は解任された!」

 

芹沢の発した突拍子も無いことに、さすがの島も衝撃を隠せない。

 

「現在の艦隊指揮権は、極東管区空間戦闘群司令部にある。『ムラサメ』は直ちに邀撃行動に移り、敵を撃退せよ!これは命令だ!」

 

芹沢は、それだけを言い放つと、強制的に通信を終了させる。

通信終了後の艦橋内では、重々しい沈黙が広がった。

だれも口を開かず、困惑したような表情をしている。

 

「艦長…」

 

「やるしかない」

 

霧本のすがるような言葉に、島は数秒間思案してから答えた。

 

「よろしいのですね?」

 

藤川が確認するように聞いてくる。

 

「司令部からの直々の命令な以上、軍人として無下にはできまい」

 

島は制帽を深めにかぶりながら言い、さらに凛とした声で言葉を続けた。

 

 

高圧増幅光線砲(主砲)発射準備。目標、右35度のA群先頭艦」

 

「了解。主砲、発射準備。目標、A群先頭艦。一番、二番、三番主砲への回路接続。エネルギー転送管開け」

 

島の命令を、藤川は素早く復唱し、主砲発射準備へ入る。

艦内でけたたましくブザー音が鳴り響き、にわかに活気を滲ませながら発射手順が進められ始めた。

 

艦橋目の前に配されている第一高圧増幅光線連装砲塔が、機械的な音響とともに右前方へと旋回し、外宇宙船に狙いを定める。

艦橋と艦尾安定翼との間に位置している第二主砲塔や、第一主砲塔直下の艦底部に位置している第三主砲塔も、右前方へと旋回しているはずだが、艦橋からはわからない。藤川からの報告でそうと分かるだけだ。

だが、訓練通り一つのミスもなく、発射体制は整えられていく。

 

「ムラサメ」は村雨型宇宙巡洋艦の一番艦であり、進宇は2172年である。艦の乗組員は経験豊富であり、中には第二次内惑星戦争を戦った猛者もいる。

そのベテラン揃いの艦が、ミスなどするはずがなかった。

 

「測的開始。目標、射程に入るまで残り18秒」

 

射撃照準スコープを覗いている砲術士の片倉が、コンソールを操作しながら報告する。

島は空間双眼鏡を手に取り、A群がいる方向へと筒先を向けた。

丸い視界の中には、さっきモニターで映った外宇宙船が見えている。

 

こちらが攻撃しようとしているのに、A群の宇宙船は依然変わらない針路、スピードどで航行していた。

 

「目標、射程に入った。照準点、外宇宙船艦首。照準よし!」

 

「主砲、発射準備よし!」

 

片倉が報告し、続いて藤川が報告した。

 

「砲門開け。撃て!」

 

島の号令一下、光線砲発射の独特な砲声が艦内に響き渡り、それとほぼ同時に六条の高出力ビームが放たれた。

 

艦橋内が光に反射して緑色に染まる。

それを眩しいと感じつつも、島は発射されたビームを目で追った。

 

 

 

20cm高圧増幅光線砲から数秒間照射されたビームは、全弾が直撃コースである。

 

 

命中の瞬間を、島はひたすら待っていた。

 

 

 

 




良いお年を!
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