レッド・プラネット   作:イカ大王

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第三話 ムラサメ撃沈

 

1

 

「テロン艦。発砲!」

 

「う、撃ってきた⁉︎」

 

「ムラサメ」がA群に発砲した刹那、ガミラス艦隊はやや混乱状態に陥っていた。

 

ガミラス艦隊の名は、第258戦術巡航戦隊。

テロン攻略に当たり、ガミラス航宇艦隊内で新たに新設された銀河方面艦隊に所属する巡航艦隊である。

その名の通り、高速艦艇のみで編成されている部隊であり、星間通商破壊、外縁部偵察、艦隊での主力艦護衛や、今回のような攻略惑星への初接触も主任務としている多用途艦隊だ。

 

編成としては、旗艦「ロルビンス」を筆頭にしたケルカピア級航宇高速巡洋艦三隻、クリピテラ級航宙駆逐艦六隻の、計九隻である。

現在は、クリピテラ四隻を前衛に配し、その後方に巡洋艦「ロルビンス」「セラスト・ゴイル」「カルカピア」の順で展開している。

残ったクリピテラ二隻は、巡洋艦三隻の後衛として付き添っていた。

 

テロン艦から放たれた六条の光緑色のビームは、駆逐艦六隻の先頭に位置していたクリピテラに襲いかかる。

六つのビームはやがてひとまとまりになり、クリピテラの艦橋部分を直撃した。

小柄な艦橋は数秒間ビーム照射に耐えたが、やがて耐久値を超えて貫通され、溶鉱炉から取り出した鉄の塊のように真っ赤に染まる。

直後、艦橋を薙ぎ払われたクリピテラは、力尽きたように速力を低下させ、後続していたもう一隻のクリピテラの艦首に激突した。

二隻目のクリピテラは、味方駆逐艦激突の質量に耐えきれず、とんがっていた艦首を大きくひしゃげさせる。

 

二隻のクリピテラは、もつれ合うようにして大きく爆発した。

無数の破片が火焔と共に八方に飛び散り、後方二隻のクリピテラは泡を食ってその破片を回避する。

 

「クリピテラ二隻、轟沈!」

 

旗艦「ロルビンス」の艦橋にレーダー員の報告が上がる。

第258戦隊司令のゲヴァレフ・カーゼ中佐は、クリピテラ二隻の爆沈を目の当たりにして、大きく顔を引きつらせた。

 

一隻のテロン艦が接近してきていることは、とっくに把握している。

その後方から主力と思われる大部隊が展開していることも、偵察機からの報告で察知している。

だが、まさか真っ先に発砲してくるとは思っていなかった。

それに、事前の銀河方面艦隊情報軍によるテロン宇宙軍の戦術分析で、「テロン艦の主砲にガミラス艦の装甲を貫く威力はない」という結果だった。

クリピテラの当たりどころが余程悪かったのか、それともガミラス艦に匹敵する火力を敵が本当に持っているのかわからないが、ガーゼは情報軍の分析結果を頭から信じて、無防備な状態でテロン艦の射程内にのうのうと侵入してしまったのだ。

自分の迂闊さを呪いたい気分だった。

 

「テロン艦増速。距離を置きます」

 

「逃すな、撃て!」

 

ガーゼは泡を食って命じた。

「ロルビンス」上面前部に搭載されている330ミリ三連装陽電子ビーム砲塔が、狙いもままならない状況で発射される。艦内を通じてビーム発射の音響が響き渡り、無砲身の砲台から真っ赤なビーム光線三条が放たれた。

赤い光が艦橋に指しこみ、カーゼは思わず目をつぶる。

 

ガミラス帝国軍のほとんどと言ってよい艦艇に搭載されている、高性能陽電子ビームだ。命中すれば、テロン艦の防御力ならひとたまりもない。

 

だが、期待した「命中」の報告は上がらなかった。

放たれた三条の赤色ビームはテロン艦の艦尾をかすめ、虚空へと消える。

 

間髪入れずに、射撃は連続される。

断続的に赤紫色の閃光が砲塔前部に走り、第二射、第三射、第四射が続々と打ち出される。

後続の「セラスト・ゴイル」「カルカピア」も「ロルビンス」に続いて撃つ。

二十条近いビーム光線が冥王星沖の宇宙空間を貫き、小癪なテロン艦に殺到する。

 

だが、そのテロン艦は機動力が高く、俊敏にに左右へと舵を切る。放たれたビームはほっそりとした艦体の上下をかすめるだけだ。貫通するビームは一発もない。

 

「駆逐隊、突撃。巡洋艦も増速」

 

カーゼは早口で命じ、

 

 

 

 

〈執筆停止中〉


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