もしも八幡とあーしさんが運命の赤い糸で結ばれていたら   作:しゃけ式

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ちょっと真ん中のあたりに追加しました。話の展開に支障はありません。



6話

「じゃあ、お願いね」

 

 

 朝の8時、綺麗な空にいわし雲が連なる。二月(ふたつき)前には見えなかった景色が広がっており、否応なしに季節の移り変わりを感じさせられる。

 

 

 さて、そんなセンチに浸っていた私こと三浦優美子は、約束通り優ちゃんを受け取っていた。

 

 久しぶりに会った優ちゃんは少し背が伸びており、それでも腰あたりに顔が来る程度だけど成長を感じる。逆に髪の毛は短くなっていた。前はロングと言えるレベルだったけど、今は肩くらいまでしかない。

 

 どうでもいいけど今優ちゃんは私のお下がりを着ている。どこか既視感を感じ、思い返すとあれは昔私が子どもながらに親へ買ってとせがんだやつであり、気付いた時には酷く合点がいった。黒タイツの上にライトブルーのホットパンツ、上は英語が入ったTシャツに青と白のストライプのアウター。

 

 これは気を利かせてくれた結果なのだろうか、なんて考えていると優ちゃんは私の服の端っこをつまんできた。

 

 

「お姉ちゃん、お家入ろ?外寒い」

 

 

「ああ、ごめんごめん。でも後でバドミントンとかしようね?」

 

 

「……うん」

 

 

 私は優ちゃんの手を取り、部屋に戻った。

 

 

 

 

 

「お邪魔します」

 

 

 ぺこりと頭を下げた優ちゃんは、自身の脱いだ靴をちゃんと整えて部屋に上がった。ただ部屋にお尻を向けてたところは減点なのかな。……いや、あれは家主にと尻を向けるのがダメだったんだっけ。てことは優ちゃんの行動は満点?だとしたら優ちゃん凄くない?え、マジでヤバい気がしてきたんだけど。

 

 

 どうやら優ちゃんは人見知りしない性分のようで、礼儀正しくはあるがもう座布団に座っていた。足を伸ばしてパタパタしている様子はいかにも小さな女の子という感じがした。

 

 

「優ちゃん、何して遊ぶ?」

 

 

「んーとね、あれやりたい。ポーカー!」

 

 

「え、ポーカー?」

 

 

 子どもの口から出ることに酷く違和感を覚えた私は、思わず聞き返してしまった。

 

 

「うん。ダメ?」

 

 

「いや、大丈夫だよ。じゃあちょっと待っててね」

 

 

 最近の子はなんだろ、成長が早いのかな。それよりも現代知識の乱雑さ?少なくとも私が小さい頃は七並べとかババ抜きくらいしかしなかったな。神経衰弱も覚えんのが面倒くさくてあんまやらなかったし。

 

 

 トランプを引っ張りだし、カードを切って私と優ちゃんの分を5枚ずつ配る。最後に山をお互いの間に置いて、手札を捲る。

 

 全色揃っているのにペアが一つもないというゴミ手。幸先悪いな、と思いながら唯一重なった2枚の同色を残して手札を捨てる。とりあえずコールと言おうとした時、あることに気付いた。

 

 

「ねえ優ちゃん。ポーカーってどんなルールかわかる?」

 

 

 そんなことを聞かれたのが心外だったのか、優ちゃんはちょっとぷりぷりしていた。

 

 

「もう、それくらい知ってるもん!要らないカードをお互いに出して、どっちかがストップって言ったら交換はそこで終わり。勝負して強い方が勝ち、でしょ?」

 

 

「ああ、なるほどね。うん、じゃあ優ちゃんは何枚捨てる?あーし3枚ね」

 

 

「優ちゃんは2枚!」

 

 

 いやあ、ギリギリセーフだったね。危うくガチポーカーを始めて優ちゃんを置いてけぼりにするところだった。優ちゃんが説明してくれたポーカーはとても簡単なルールで(ポーカー自体が簡単なルールというのもあるとは思うが)、初めて聞いた私でも滞りなくできそうだ。

 

 

 さ、後はいい感じに優ちゃんを楽しませるだけだ。

 

 

「あ、ストップストップ!」

 

 

「え、早くない?じゃあいっせーのーで、で見せよっか」

 

 

「うん!」

 

 

「「いっせーのーで!」」

 

 

 私のはノーペア。対して優ちゃんはスリーカードだった。どう見ても私の負けである。

 

 

「やったあ!お姉ちゃんよわーい」

 

 

「やっぱブタじゃ勝負になんないね」

 

 

「ブタ?」

 

 

「ああいや、何でもないよ。次やろっか!」

 

 

 こうして私達はそれから1時間ほど、ポーカーやスピードなどをして遊んでいた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「じゃ、そろそろバドミントンしに行こっか」

 

 

 トランプも一段落し、このままでは午前中に運動させてあげることが出来なくなると焦り始めた私は、半ば強引にそう切り出した。

 

 

「…もうちょっとだけお家いちゃ、ダメ?」

 

 

「ダーメ。それはお昼ご飯に取っとこ?」

 

 

「……うん」

 

 

 優ちゃん、露骨にテンション下がってるなあ。もしかして運動嫌いなのかな。でもおばさんに怒られるのも嫌だし、ここは我慢してもらわなきゃ。一応ルーティーンを守るという大義名分もあることだしね。

 

 

 

 

 

 

 近くの大きな公園に行くと、幸い誰もおらず伸び伸びとバドミントンをできそうだった。

 

 

「じゃあいくよ。はい!」

 

 

 パン、とアンダーから羽根を軽く打ち上げる。しかし優ちゃんは取ろうともせずにただ落ちる羽根を見ていた。

 

 

「どうしたん?ほら、打ち返さなきゃ」

 

 

「……ねえ、お姉ちゃん」

 

 

 俯きながら、控えめな声で言う。優ちゃん、というより幼稚園児らしからぬその態度に何事かと私は目をむいた。

 

 

「これお母さんに言われたから?」

 

 

「これ、っていうと、バドミントン?バドミントン自体はあーしが考えたけど」

 

 

「じゃあなんでお外なの?これもお姉ちゃんが考えたの?」

 

 

「いや…、それは優ちゃんのお母さんからだけど…」

 

 

「ほら!!みんなお母さんばっかり!!お母さんばっかりずるい!!」

 

 

「お母さんばっかりって…」

 

 

「知らないもん!」

 

 

 吐き捨てるように大声を出し、優ちゃんはその場から逃げようと走り出した。無論私が追いつけないわけないし、そもそも公園だから見失いもしないだろうけど…。

 

 

「痛ったあい!」

 

 

 言わんこっちゃない。コケてしまった優ちゃんは泣きそうになりながら、それでも立とうとする。私は患部を水で流すために優ちゃんのもとへ歩き出した。

 

 

 なんともなかったらいいんだけど。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「マジで1年終わったらやることねえなあ…」

 

 

 俺は朝イチにあった講義を受けた帰り、1人そんなことをぼやいていた。

 

 いや、別に不満なわけじゃない。楽に越したことはないし、その今の楽な分1年の時に頑張ったというわけだが、にしても落差が酷くて拍子抜けを覚えずにはいられない。

 

 

 帰り道、そのまま帰るのは本格的にこの早起きを否定するような気がし、俺は適当に散歩をしていた。

 

 歩道にいる小鳥が必死に地面に落ちた人の食べかすをついばみ、煽る風に驚きながらも再び食べる。今日の強い風は木枯らしなのか、いつもの撫でるような冷たいものとは違い刺すという表現が実に的を射てる感じだった。

 

 

 あてどもなくさまよっていると、車の音がない静かな場所に出た。どうやらこの辺は住宅街のようで、この時間は往来が少ないようである。

 

 将来はこういったところで静かに暮らしたいな。そう思わずにはいられなかったが、よく考えたらこんなところに住めるのはちゃんと働いて、なおかつ収入が高い人だけか。なら俺は一生あの部屋でもいいか、ネガティブだとは自覚しつつもそれを否定しない自分がどこかにいた。

 

 

 ……なんか誰かと会う気がする。もう一つ言えば最近よく出会うやつ。こういう俺が普段しない無駄なことをしている時は、大抵あいつがいるはずだ。

 

 

 衝動に駆られてあたりを見渡すが、あいつはどこにもいない。安心するやら、落胆するやら。

 

 

 いやいや、何言ってんだよ俺。落胆とかないわ。会えなくて落胆とか材木座でもしねえよ。気持ち悪い。

 

 

 そろそろ帰るか。俺は住宅街を大回りして帰ろうとした時、ふと視界に遊具が見えた気がした。もう一度見るとやはりそこには公園があり、最後にブランコでも乗っても罰は当たらないだろと考えてそこへ歩き出した。

 

 

 ──そこにいたやつに、俺はついぞ気付かぬまま向かってしまった。

 

 

 気付いた時には時すでに遅し、そこには猛スピードで突進し器用にこけたロ…、女児がいた。器用なこけ方というのは、スピードの割に受け身を取ってこけたということだ。つまり普通に前にこけるより傷が少ないというわけである。

 

 

「大丈夫か?…おお、ちょっと血出てるじゃねえか。水で洗わなきゃな」

 

 

 なるべく優しい、具体的には葉山を意識して声をかける。しかしこの子には全然効いていないようで、それどころか警戒さえされているように見える。

 

 

「…いや」

 

 

「え?いやだって傷…」

 

 

「お母さんが言ってたもん。変な人にはついて行っちゃダメだって。先生も言ってた。だから行かない」

 

 

「ぷっ、あはははは!ヒキオそれマジウケるし!」

 

 

 最近めっきり聞き慣れた声。予感も馬鹿にできないな、切に感じた。

 

 

「…やっぱりお前か、三浦。俺のことは後で笑ってくれていいから、早くこの子の手当してやってくれ。俺じゃ変な人みたいだ」

 

 

「はいはい。ほら優ちゃん、血流そっか。あと絆創膏は…」

 

 

「俺が持ってる」

 

 

「おっけ。んじゃ出発!」

 

 

 三浦は涙目の優ちゃんとやらと手を繋ぎ、蛇口のところまで歩いて行った。俺はどうしようか一瞬悩んだが、絆創膏のこともあるのでついて行くことにした。

 

 

 ……べ、別に変な人って言われたのを気にしたわけじゃないんだからねっ!

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、ありがとう」

 

 

「気にすんな。…どうせ俺は変な人だからな」

 

 

「ヒキオ根に持ちすぎだし」

 

 

 私にさとされて、優ちゃんはもじもじしながらヒキオにお礼を言った。これもまたうつむき加減で言ったため聞き取りづらかったが、しっかり言えただけ偉いね。私は何も言わずに優ちゃんの頭を撫でた。

 

 

「親戚の子か?」

 

 

「そうだけど、なんでわかったの?」

 

 

「そりゃお前の娘ってわけにはいかないだろ。姉妹って年齢差でもなさそうだし」

 

 

「ああ、なるほどね」

 

 

「ねえ、お兄ちゃんはお姉ちゃんの…、えっと、かれし?なの?」

 

 

「「ないない」」

 

 

 2人して変にハモった。なんか若干恥ずい。

 

 

「そうだ、ねえ優ちゃん。さっきのお母さんばっかりってどういうこと?あとヒキオは帰ろうとしない」

 

 

 一応乗り掛かった船ということで、ヒキオには帰らせない。2人より3人のが楽しいはずだからね。それと先ほど走り出した理由。おおよそ検討はついているが、一応確認する。

 

 

「…お母さんに言わない?」

 

 

「言わないよ」

 

 

 しゃがんで視線を合わせ、そう誓う。安心したのか優ちゃんはぽろぽろと言葉を紡ぎだした。

 

 

「優ちゃん来年から小学生でね、でもみんな一緒の小学校に行くのに、優ちゃんだけ別のとこに行くの。優ちゃんは嫌なのに…」

 

 

「要はお受験したくないってことか。けど優ちゃん自身はそれを言えない」

 

 

「うん。言ったらお母さん怒るもん」

 

 

「あんたよく今のだけでわかるね…。あーし言えないことは初耳だし」

 

 

 そう言えばヒキオって雪ノ下さんとよく話してたからね。頭の回転は早いのだろうか。奉仕部でも色んな問題を解決してたみたいだし、そのあたりは素直に尊敬する。

 

 

「なあ三浦、なんで優ちゃんはこのことを言い出したんだ?走ってたのと関係あるのか?」

 

 

「どうでもいいけどやけにヒキオ首突っ込むね。キャラじゃなくない?」

 

 

「ロ…、小さい子が困ってるのは見過ごせないだろ?」

 

 

「ロリコン」

 

 

「ば、ちょ、ちげえよお前。誰がロリコンだよ誰が」

 

 

「焦りすぎ。……多分だけど、決められたルーティーンが嫌なんだと思う。今午前中は運動して午後は勉強をさせられてるみたいだし」

 

 

「なるほどな」

 

 

「ねえ優ちゃん、何かしたいことある?」

 

 

 声を掛けられると思っていなかったのか、優ちゃんは目をぱちくりしていた。

 

 

「…したいこと?」

 

 

「今日だけはお姉ちゃんがしたいことさせてあげるから。運動も勉強も一切無し!ただお母さんには言ったらダメだからね?」

 

 

 依然しゃがみこんでいる私はふわりと優ちゃんの頭を撫でる。この瞬間だけはちょっと口角が上がり、可愛くはにかむ。

 

 

「じゃあ、優ちゃんショッピング行きたい!ショッピング!」

 

 

「最近の子はこんなこと言うのか…。俺なんかこの頃はずっと公園にいたわ。1人でな」

 

 

「んな悲しい事実知りたくないし。ならショッピング行こっか!」

 

 

「うん!」

 

 

「え…、俺も?」

 

 

 当たり前だし。言わずもがなでしょ。私達3人はバドミントンの用具を家に置きに行ってから、改めて近くの大型のモールへと向かった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「優ちゃんが1番乗り!」

 

 

 自動ドアをくぐり抜けてジャンプする。ませたところがあるとはいえ、やはりまだ幼稚園児。年齢相応の行動に私とヒキオは目を細めた。

 

 

 ……こいつマジで大丈夫だよね?ロリコンってネタだよね?

 

 時折見せる鋭い眼光に少しの疑惑を持ちながらも、私達は歩を進める。

 

 

 初めに入ったのは子ども服が沢山売っている店で、優ちゃんがいかにも気に入りそうなところだった。

 

 それもそのはず、雰囲気が普通の服屋と何ら変わらないのだ。普通ならもうちょっとファンシーな気もするが、ここはそういった気遣い(?)は一切無い。それでいて優ちゃん、現役の幼稚園児が気に入ったわけだから、ここの戦略は大いに成功しているのだろう。

 

 

「ねえねえお兄ちゃん、これどお?かわいい?」

 

 

「ん?ああ、世界一可愛いよ」

 

 

「きっも!ヒキオマジきっも!」

 

 

「おいやめろ三浦俺の傷を抉るな。その単純な言葉が1番鋭いんだからな」

 

 

「あはは!お兄ちゃんきもーい」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

「うっわ…、それはマジできもい」

 

 

 やっぱりこいつロリコンだし。ただこんなキツい言葉の応酬でも笑っていられる優ちゃんは、私に似て将来有望だね。間違ってもヒキオみたいにはならないだろう。

 

 

 ただその分、そうなった時には女王様だけじゃダメだってことを教えなきゃね。先人の轍は踏むだけ損だ。

 

 

 その後も優ちゃんは逐一ヒキオに似合うか聞いており、初めの変な人との印象は既に消えているようだ。そう言えば高校生ん頃の林間学校手伝いの時もヒキオは子どもに懐かれてたっけ。

 

 でも確かあの子はぼっちだったわけで……。

 

 

「優ちゃん!ヒキオから離れた方がいいよ!ぼっちになる!!」

 

 

「お前今日どんだけ俺のこと切りつけるんだよ!!」

 

 

「大丈夫だよー!優ちゃん友だちいっぱいいるもん!だからぎゅー!」

 

 

「おうふ、お、おい。やめとけって。三浦がやべえ目付きになってるから」

 

 

「幼女に抱きつかれる。意訳して殺してください…か」

 

 

「エキサイト翻訳かお前は!」

 

 

「あははは!」

 

 

 私達の漫才みたいなやり取りに、優ちゃんはけたけたと笑っている。外に出た時の暗い表情は晴れていた。

 

 

 

 

 

 お昼も済ませ、日も暮れてきたのでそろそろ帰ろうと2人に告げる。ヒキオはやっとかと言いたげな表情で、対称的に優ちゃんは残念そうな顔をしていた。

 

 

「そろそろお母さんも迎えに来るからね」

 

 

「うん…。でも今日は楽しかったよ!ありがとう、お姉ちゃん。お兄ちゃん!」

 

 

「こちらこそ、遊んでくれてありがとね。優ちゃん」

 

 

「俺にはないのか」

 

 

「ヒキオは終始きもかっただけじゃん」

 

 

「……だからその言葉は切れ味が鋭いんだよ。しかもお前のやつは刃こぼれしないしな」

 

 

 またヒキオが意味のわからないことをぶつぶつと呟いている。言葉遊びが好きなのか、ヒキオはたまに私にわからないことを言う。素直な気持ちを遠まわしに言う、何ともヒキオらしいところだ。

 

 

 それに雪ノ下さんとも相性が良さそう。

 

 

「ただ今日は俺も楽しかったよ」

 

 

 そう言うとヒキオは突然しゃがみ、優ちゃんと目線を合わせた。

 

 

「ありがとな、優ちゃん」

 

 

 私と同じように頭をぽんぽんとしながら、ストレートに想いを伝える。

 

 

 なんだ、ヒキオもやればできんじゃん。

 

 

「……ん」

 

 

 優ちゃんは恥ずかしそうに添えられた頭の手を両手で包み、左右に動かした。

 

 

「……優って呼んでくれなきゃ、やだもん」

 

 

 手は頭に押さえたまま、優ちゃんはそっぽを向き呟いた。顔は朱に染まり、不格好ながらも必死にヒキオの手を動かす。やっとヒキオは優ちゃんの要求を理解したようで、自分から撫で始めると、優ちゃんはえへへと控えめにはにかんだ。

 

 

 ……ん?ちょっとこれまずくない?なんでヒキオは齢4歳の女の子を虜にしてんの?

 

 

「ちょ、ヒキオ!あんたそれ以上は犯罪だし!」

 

 

「だよな、だよな!?やめ時見つかんなくて焦ったけどこれ事案だよな!?優ちゃんも俺みたいなヒモを通り越して糸みたいなやつはやめとこう、な?」

 

 

「……だから、優ちゃんじゃなくて優。ダメ?」

 

 

 身長差も相まって優ちゃんは上目遣いになる。同性の私から見てもあれは可愛いと思える仕草に表情で…。

 

 

「…ごめんな、優。俺働くわ」

 

 

「あんたそれ今日(いち)きもいからね!!」

 

 

 

 そんなやり取りもしつつ、私達は家路を辿っていた。このまま柔らかい時間がずっと続けばいいのに。そう思わせるには充分な穏やかな一時だった。

 

 

 

 

 しかし、それが続くほど運命は甘くなくて。

 

 

 

 

「優……?それに優美子ちゃんも…。……ねえ、お勉強は?この時間はお勉強してなきゃダメでしょ?ねえ」

 

 

 私たち3人と優ちゃんの両親が出会うのは、それからすぐのことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




長くなったのでここで分割。てなわけで次回もロリは出ます(歓喜)


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