副司令はようやくリアスの悶台に意識を向けようとしていますが、どうなるのか。
それではどうぞ。
「そして次は彼女か」
副司令はそう言ってリアスに視線を向ける。彼女の方はこちらに気づいていないのか顔を伏せたまま俯いている。
「あっと、その前に」
副司令はリアスに着手する前に用事があるのを思い出したのか、上着のポケットに左手を入れ、緑色をした何かの塊……手榴弾を取り出した。しかもその手榴弾のピンを抜き、ヒョイと気軽に放り投げると次の瞬間。
キィイイィ~ンン!
「ぐぎゃぁあああぁぁぁぁ~!」
ゴロゴロゴロゴロ~ッ! ドパァーン!
時間差で股間を押さえている司令が姿を現し、そのままドップラー効果を残しながら地面を転がって行く。そしてついには盛大な爆心地と化した。
司令の何を心配すれば良いんだ?
「司令なら心配無いだろ。あの程度で物理障壁が抜けるならすでに殺せてる」
司令を心配する俺をよそに、副司令は何でもない様に司令の心配をしない。もっとも司令を殺す殺せない等とのたまう彼に良心の呵責が有るのかさえ疑問なのだが。
「やはり歳のせいか、奴の相手をするにはいささか手を焼く様になったか。術式を抜きにしておるのだがな」
爆裂音の後から程なくして隊長が俺の近くに姿を現す。音速の壁を越えた亜光速下での戦闘にも関わらず、差程息が上がってないのは初老の身体じゃ無いとしか思えないのですが。
「ふむ、今回は引き分けにでもしてくれ」
「止むを得んな」
引き分けも何も、副司令のアンタが水を差したんだろ?
あきれ果てて声も出ない俺に対して副司令は何も無かった様なすまし顔を見せながら辺りを見やる。そして目的の物を見つけたのか、そのまま歩き出した。
俺もそれにつられて移動先に視線を向けると、そこには物憂げな表情を浮かべるリアスの姿があった。
「もしもしお嬢さん、浮かない顔をしている様だが?」
「……ええ、この組織の詳細を聞きたいのに誰も答えてくれないのよ」
リアスは声を掛けて来た副司令に手厳しい返事を投げ寄越す。しかしそこは組織の次席、素知らぬ顔で惚け始めた。
「それは困った話だ。組織の守秘義務を忠実に守っている者達の面目が立ちそうに無いな」
「貴方までそう言うの?」
「言われたいから訊いたんじゃ無いのか?」
副司令は苦笑を浮かべながらそう切り返してリアスの憤慨を正面から受け流す。
「現状では決して話せない。そう受け取ってくれ」
「……いつかは話すって事なのかしら」
「そういう話だよ。平和に事を進めたいならな」
副司令は恨めしそうに自分を見やる彼女宥め賺し、希望がある事を仄めかす。それを聞いて彼女もさすがに諦めが付いたのか肩を落としながらため息を吐いた。
「全く、どこの世界に正面から極秘事項を聞いてくるヤツが……」
彼はそう呟くと、その視線を彼女に向ける。彼女は彼女でその視線に意味を解していないのか不思議そうな顔を向けている。そこに何か気付いた彼が不意に俺達2人を呼び出した。
「おい! トリーに時渡、ちょっと来い!」
「えっ? 何すか?」
俺とトリーはその足で副司令の所に行き、事情を聞こうと口を開く。だが相手から来たのは叱責だった。
「あの嬢ちゃんに渡したレザーのセット『クィーン』と『タイラント』か、股布は革に縫い付けた物らしいな。どうして着脱可能なホック式にして股布を丸洗い出来る様にしなかったんだ?」
お叱りの言葉を受けた俺達はあまりの事に目が点になる。俺とトリーとグレモリー眷属しか知らない話を、副司令がどうして知ってるのかという疑問もあるんですが、言ってる意味がサッパリ分かりません。
ほら、話が聞こえてたのかリアスがこっちを睨んできたし。
「股布を個別に洗える様にしないとデリケートゾーンが被れたらどうする! 革製品の布地はただでさえ洗い難いというのに、プレイ中に汗を掻いて皮膚が被れたら大変で恥ずかしいだろ!」
「聞いてるだけでも恥ずかしいわよ!」
「うおっ!?」
副司令は後ろから叩き付けられた声に驚き、狼狽える。聞こえて無いと思ったら大間違いな地獄耳、というヤツだ。悪魔ってのはとんでもないときたモンだ。
「そういう事を議論しないでちょうだい!」
「そうは言っても年頃の娘さんのお大事がお大事になるのは忍びないものだぞ!」
「な、何おバカな事を言ってるのよ!」
「そして皮膚病にでもなったらその衣装を着なくなる! そうなったらその衣装が可哀想だろ!」
……やっぱり言うか、副司令……。