番外編として今回はあのドラグ・ソボールのアレをやってみたくなりました。
それではどうぞ。
第1話 偽乳の前のディアボロス
「あ~、おっぱい揉みてぇ~っ」
「激しく同意」
「右に同じく」
春の校庭の隅の3バカ、イッセーとその友人の松田と元浜によるいつもの光景のようなことが行われている。
ただ、いつもとは違って俺達組織の連中が通りかかったのが、彼らの不運だったのかも知れない。
「揉んじゃう?」
「ええっ!?」
俺は適当な女の声真似でそう言っては彼等の目の前にご所望らしきおっぱいをぶら下げてやった。
洗濯物のブラジャーの様に、変装用の偽乳を。
「それで、コレが騒ぎの元なのね?」
場所を部室に移し、互いに相手の顔をたっぷりと殴り合って腫れあがらせた俺とイッセーがその場で正座させられている。正座させた当の本人は胡散臭そうな眼付きで右手で摘まんでいる偽乳を睨みつけている。
「パッと見は本物みたいに出来てるのね」
「潜入捜査用のモンだからな、本職のお墨付きってヤツだ。しかも乳がん患者御用達でもあるんだぜ」
「……なんかサイテーだよ」
「騙されるヤツが悪いんだよ。潜入捜査はタヌキの化かし合いだぜ? 出来なきゃあ殺される、そういう世界だ。それに乳がん患者にとって乳房は胸に穴が開くほどの衝撃的な出来事だ、埋める物は大事だろ」
俺はそう言ってリアスから偽乳を受け取る。再生治療が受けられなかった乳がん患者のためにもこの偽乳の製作は急務だったこともあり、組織では最高品質の精度を誇る一品として知られている。またこの偽乳の売り上げはかなり高く、シーカーやダークネスでも引っ張りだこなのだ。
「患者の為にこう言うのを作るのは必要なのは解るのだけれど」
「未成年のガキには刺激が強いか? 笑っちまうぜ」
リアスの棘のある言葉を俺は鼻で笑ってやる。こちとら大真面目に開発生産してるんだ、ガキのおふざけに用意した覚えはない。
すると小猫が妙に強い眼差しで偽乳を見つめているのに気づいた。ああ、そうか、そういう事か。
「……搭城、気になるのは分かるがそいつは男用だ。お前なら細身の女性用の方、がはっ!?」
……どぼぉっ!
小猫の為に別物を用意しようかと言った俺に対して彼女は重心を落とした姿勢で俺の腹をえぐる。危なかった。的確に心臓を狙ってくるから腹筋を締めて引いてたらモロに入ってたな。この場の最適解は腹筋を締めて押すんだ。するとあばら骨のすぐ下の部分にも厚みが出来て肉の楯が作り出せる。
「俺……アドバイスしただけ……だよな……?」
「……最低です」
身体を前に倒してうずくまる俺に対して小猫は一言吐き捨てる。相変わらず俺相手だと容赦しないな、小猫。
「乙女が気にしてる事を言うのは藪蛇、って言うんだっけ?」
トリーが俺の顔を覗き込みながら余計な事を口にしてくる。言わぬが華とも言うんだよ。
そんな俺達を他所に、リアスがイッセーに声を掛ける。
「イッセーはもう日が無いから勉強を始めなさい」
彼ははその声に慌てて返事をすると立ち上がる。
アイツは何の勉強があるって言うんだ?